ベルシビュラは去り、静寂を取り戻した荒地。 その中心に立つアデーレの心境は、あまり穏やかなものではなかった。 結局ベルシビュラの目的を知ることもできず、魔物の襲撃によって大きな被害が出てしまったのだから。 今回は文字通りの辛勝だ。 実力不足という現実を突きつけられ、いよいよアデーレは孤独な戦いに対する限界を知らされる。 現実は小さなトゲとなって心に突き刺さり、絶え間ない不快感が胸中に渦巻く。 これは到底、勝者が抱く感情ではない。 そんな感情を落ち着かせるように、アデーレは自身の胸元に手を置き、地面のひび割れを見つめる。「ヴェスティリアっ」 落ち込む彼女の傍に、どこか落ち着かない様子のエスティラが近づいてくる。 くじいた方の足を引きずりながら、顔をしかめるのは痛みに耐えているためか。 だがアデーレが彼女の方を向いたその瞬間、自分も緊急時のために忘れていた重要なことを思い出してしまった。「ねぇ、アデーレを……私のメイドをどこかで見なかった? さっきから姿が見えなくて」 その言葉にはっとした表情を見せるアデーレ。 後から追いかけてきたロベルトの顔を見やるが、彼は申し訳なさげに頭を下げる。 きっとアデーレの不在に対し彼なりに言い繕おうとしたものの、聞く耳を持たなかったのだろう。 向こうからすれば、さっきまで共に行動していた使用人が目を覚ましてから行方不明になっているのだ。 彼女の性格からしても、そのような状況で落ち着いていられるわけがない。 あなたが探すメイドならここにいる……などと言えるはずもない。 アデーレは平静を装いつつ、エスティラに対しどう誤魔化せばいいのか思考を巡らす。 だが、その沈黙がエスティラの不安を掻き立ててしまったのか。「……まさか、知ってるの?」 そう尋ねるエスティラの表情は、見てる側の背筋すら自然と伸びるような神妙さだった。 言葉の端や胸元で強く握る手が微かに震えており、彼女が最悪の結果を想像していることは明らかだ。 こうなったエスティラを安心させるには、一刻も早く元の姿に戻ることだ。 だが広い荒地に身を隠すような場所はほとんどなく、また下手な理由を付けてこの場を離れたらエスティラの不安が爆発しかねない。 しかし沈黙を続けていては結局エスティラの感情をかき乱すばかりで、決して解決には至らない。「
Last Updated : 2026-03-02 Read more