All Chapters of 大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった…: Chapter 91 - Chapter 100

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91話

事務所が、所属しているアイドルを守ってくれないで、一体誰が当人を守ってくれるの──? まさか、奏斗も被害届を取り下げて欲しいと言われるとは思わなかったのだろう。額を抑え、苦しそうに息をしている。 「奏斗、大丈夫?」 「──くそっ、ごめん香月。情けない所なんて香月に見せたくなかったのに……っ」 「情けなくなんて無いよ。そんな風に気持ちが乱れるのは、当たり前だよ」 私がそっと奏斗を抱きしめると、奏斗も私を抱きしめ返す。 カタカタ、と体が震えているような気がする。 怒りだろうか。 それとも、行き場のない感情だろうか。 奏斗は、暫く感情を落ち着かせようと何度も深呼吸をしてから、私をそっと離した。 「ごめん、香月……。落ち着いた、ありがとう」 「ううん、大丈夫だよ。えっと……事務所の社長が来るんだよね?私、自分の家に戻るね──」 「待って香月。ごめん、事務所の人と話す時、香月に傍に居て欲しい」 奏斗に手を掴まれ、そう言われる。 だけど、私みたいな一般人が一緒に居てもいいのだろうか。 当事者じゃないのに──。 そう考えた私を、奏斗が真剣な表情で続けた。 「香月も無関係じゃないからな?言ったろ?RikOがストーカーから送られたって言ってた写真に、香月も写ってたって。香月も巻き込まれているんだから、同席するのは当然だよ」 ◇ 数時間後。 奏斗の家のインターホンが鳴った。 「社長とマネージャーが来たかも。香月、ここで待ってて」 「うん、分かった」 私はインターホンに向かう奏斗の背中を見つめた。 あれから、私と奏斗はずっと一緒にリビングで過ごしていた。 時折奏斗が辛そうに顔を歪めるのを見て、それだけRikOに薬を盛られた事がトラウマになっている事を察した。 でも、それは当然だろう。 女性であれ、男性であれ、突然そんな目に遭えばトラウマになる。 自分のあずかり知らぬ所で、自分の身が危険に晒されていたのだ。 奏斗は睡眠薬を盛られて眠っていたから、性被害には遭っていない、と言っていたけど。 目覚めたばかりの奏斗はどれだけの恐怖を感じていたのだろうか、と胸が苦しくなる。 それに、飲まされた薬の量が多くて頭痛が酷かったと言っていた。 奏斗の健康が、害されていたらどうするつもりだったのだろう。 謝って済む問題では無い。 だから
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92話

リビングの扉を開けて入ってきたのは、2人の男性。 奏斗の所属するnuageのマネージャーは、以前女性マネージャーだったけど、Kanatoにキスをした所を週刊誌に撮られ、その時炎上してしまったのだ。 所属するアイドルにそんな事をしてしまったマネージャーは、解雇。 そらからはnuageのマネージャーは今の男性マネージャーになっている、と奏斗が以前言っていた。 多分、そのマネージャーの男性と、もう1人は恐らく社長だろう。 私は挨拶のため、ソファから立ち上がった。 「Kanato……?あれ、お姉さんや妹さんはいないんだよ、な……?」 マネージャーだろうか。 マネージャーは、私を見て不思議そうに、だけど若干戸惑ったような顔で奏斗に話しかける。 奏斗はあっさりと答える。 「ええ、俺に女性の兄妹はいませんよ。彼女は四ノ宮香月。俺の大切な幼馴染で、恋人です」 「初めまして、四ノ宮です」 奏斗の紹介の後、私も名前を名乗り頭を下げる。 マネージャーは「恋人!?」と驚いたように声を上げ、社長は無言のまま、私をじっと鋭い視線で見つめている。 その社長が、ゆっくり口を開いた。 「──Kanato、今日の話は重要な話し合いになる。部外者の女性を同席させるなんて、何を考えている?」 「部外者……?彼女もある意味では被害者ですよ。写真を撮られているんだから」 「何っ!?」 社長の鋭かった視線が、奏斗の一言で驚き、見開かれる。 奏斗は怒り混じりの声で続ける。 「香月は部外者なんかじゃない。俺の大事な幼馴染が、恋人が、ストーカーのあいつに狙われる可能性がある。俺はRikOの恋人役なんてやりたくないって言ったのに、RikOのために目をつぶってくれって言われて、頼まれて、協力した。それなのに本人のRikOには薬を盛られてヤられる寸前だった……。この責任、社長や事務所はどう取ってくれるんですか」 奏斗はそう話しながら、病院で出た検査結果、RikOの家で撮った写真。そして警察で出した被害届の写しをテーブルの上に出した。 それを見た社長やマネージャーの目が、見る見るうちに見開かれて行く。 その顔は真っ青になり、見るからに困惑している表情に変わって行く。 「だ、だが……だけどRikOがやった、と言う証拠は何も無いのだろう、Kanato?やはり被害届は少し行き過ぎ
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93話

「それ、は──」 社長が何かを言う前に、奏斗が口を開く。 「俺は、香月に被害が及ぶ可能性があるなら潰したい。RikOとの事は全部正直に言って、世間に発表してもいいと思ってます。ストーカー被害があったため、事務所の意向で熱愛報道に同意したって。俺はRikOより香月の方が大事なんです」 奏斗の真っ直ぐな視線と、強い意思を受けて、社長は困ったように視線を泳がせた。 その時、私の姿が社長の目に止まったのだろう。 社長は、私に顔を向けて口を開く。 「その、奏斗の幼馴染さんだったかな……?」 社長が私に声をかけた瞬間、奏斗が怒りを顕に社長に向かって告げる。 「香月を懐柔しようなんて思わないでくださいよ、社長……!香月は俺たちの事情に巻き込まれている一般人です……!」 「それは、そうだが……。そもそも、Kanatoももっと周囲に気を付けて行動してくれないと……どうしてストーカーなんかに写真を撮られたり……」 社長の呆れたような言葉に、奏斗は怒りを顕にして答えた。 「それは、俺がどこに行くかを報告させたからでしょう……。それが、何故かメンバーに漏れて、その情報がRikOにも漏れてた。……香月が写真を撮られたあの日、RikOが現地までやって来たんです。俺が休暇中、どこにいるかを話さなければ香月が巻き込まれる事は無かったんです」 「──RikOが現地に来たのか!?」 「ええ、そうですよ。わざわざ俺を探しにね。……それで、タイミング良く俺とRikOが一緒に居る所を一般の人に見られて、香月までストーカーに写真に撮られた。……この偶然、何か出来すぎてませんか?」 そう思うのは、俺だけですか。 そうはっきり告げる奏斗に、社長とマネージャーが気まずそうに顔を見合わせた。 何か隠しているような、そんな気持ち悪さを感じてしまって。 そして、それは奏斗も同じように感じたみたい。 私の手をぎゅっと握った奏斗が、自分のマネージャーに向かって問い掛けた。 「社長は、RikOの事で何か隠している事でもあるんじゃないですか……?」 「Kanato、それは──」 マネージャーの言葉を、社長が片手を上げて遮る。 困ったように眉間を揉みながらどう話そうか思案しているような様子だった。 だけど、社長は奏斗と私を交互に見やって、観念したように「一般人も巻き込んでいるしな…
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94話

RikOが、奏斗の所属する事務所に移籍してきた? そんなのは初耳だ。 てっきり、RikOは初めから奏斗の事務所所属のアイドルだと思っていた。 奏斗もそれは初耳だったのだろう。 驚いたように目を見開いている。 「RikOは、移籍組だったんですか……?それは、初耳ですね……」 「ああ。知っている人はあまりいないと思う。RikOは元々子役で芸能界に入った子だ」 「子役──!?」 「ああ。だが、子役は……その……子供でいる内しか人気じゃないだろう?大人になってからも活躍出来るのは、ひと握りだ」 確かに、そう言った話を聞いた事はある。 子役時代、良くテレビで見ていた子も、途中から全然見なくなって。 そして、気づいたら「あの子どうなったんだろうね」と時折思い出されて話される程度になってしまう。 子役の頃から大人まで芸能界で生きていけるのは、本当にほんのひと握りだ。 私たちの反応を見た社長は、溜息をついてから続けた。 「RikOも、その内の1人だ。子役時代は沢山仕事があったが……成長するにつれて仕事がなくなり……その事で家庭がごたごたしてしまったらしく、両親は離婚。父親に引き取られたRikOは、そのまま事務所に所属させられたまま、仕事の無い日々が続いたらしい」 「そう、だったんですね……」 まさか、RikOがそんな過去の持ち主だったなんて、と驚いてしまう。 だけど、社長の話はそこで終わらなかった。 「RikOが売れなければ、金に困る。父親はRikOに入る仕事は何でも受けた。……次第に、コンプライアンス的に逸脱している仕事……事務所を通さず、直接父親に仕事を依頼してくる個人も増えた、そうだ」 「──っ、それって……」 奏斗の顔色が悪くなる。 芸能界で生きている奏斗は、社長の話だけで察したのだろうか。 だけど、私にはそれがどんな仕事なのかが分からなくて。 そうしていると、社長は続けた。 「奏斗に盛った、と言う薬も……本当にいけない事だとは認識していない。自分も、そんな風に扱われて来たから。……善悪の判断が、出来ていないんだよ、RikOは」 「──は」 衝撃的な話に、私も奏斗も、言葉を失ってしまった。 善悪の判断が出来ない。 善悪が分からない、と言うのだろうか。 それより、奏斗に薬を盛るのが違法だと認識していないって。 自
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95話

「どうするって……どう言う意味ですか、社長」 奏斗の低い声が、その場に落ちる。 社長は気まずそうに奏斗から目を逸らし、答えた。 「被害届を出したままで、警察の捜査が進み、RikOが逮捕されたとしても……。RikOは反省はしない……出来ない、と思うぞ。何が悪かったのか、多分理解出来ない」 「だからと言って、犯罪行為に目を瞑るなんて出来ませんよ。俺は、あんな事をされて……トラウマにだってなってる。……それに、健康被害も被る可能性が高かったんですから」 確かに奏斗の言う通りだ。 いくらRikOの生い立ちが苦しく、大変な日々だったとしても。 それを許してしまったら、きっとRikOはまた繰り返す。 それが、芸能界だ、と言うのなら。 私は奏斗に芸能界を辞めて欲しいとすら思う。 そんな危険な目に遭う可能性があるような場所で、奏斗にアイドルを続けて欲しくはない。 奏斗がアイドルとして活動する限り、一生応援するんだ、一生推し続けるんだ、とは思っていたけど。 こんな風に芸能界の闇に押し潰されて、心も体も疲弊してしまうのだったら、嫌だ。 「──奏斗」 私が奏斗の手を握り、声をかけると奏斗は私を見た。 奏斗の目は、澄んでいて感情の乱れは感じない。 きっと、奏斗の気持ちは固まっていたのだろう。 RikOの話を社長から聞いても、奏斗の気持ちは揺らいでいないように見えた。 奏斗に手を握り返された。 そして、奏斗は社長に向かってきっぱりと言い放つ。 「被害届は、取り下げません。警察の捜査が始まり、警察に逮捕される前に社長がRikOを説得して、自首させて下さい。そして、社長はRikOのストーカー被害によって、熱愛報道を肯定した件の訂正を。それと、RikOのストーカーに関しても、警察に捜査をしてもらって下さい」 奏斗の強い眼差しに、社長は重々しく「分かった」と呟いて、そして奏斗の家を後にした。 ◇ どうして、こんな事になってしまったのか。 RikOが、何を考えて奏斗にこんな事をしたのか。 RikOが奏斗を好きなのは、分かる。異性として奏斗の事が好きなんだろう、と先日会った時に分かった。 だけど、好きだからと言って、こんな事をするのは間違っているのに。 「ごめん、香月。急に色々な事があって、混乱してるよな?」 「奏斗……。ううん、私より奏斗の方
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96話

◇ それから、週末が過ぎて。 大学に行く日になった。 奏斗の長期休暇はまだ続いていて。 私が大学に行くのを、奏斗が送ってくれる事になった。 お父さんもお母さんも仕事に出て行ったあと、私が家で支度をしていると、インターホンが鳴った。 迎えに来てくれるって言ってたから、多分奏斗だろう。 私は玄関に向かい、扉を開ける。 「おはよう、奏斗」 「香月、おはよう」 奏斗は笑顔で私に挨拶をすると、ぽん、と軽く頭を撫でてくれる。 「ちゃんと俺だって事、確認した?」 「うん、もちろん。ちゃんとドアスコープから奏斗の姿を確認してから鍵を開けたよ」 「良かった。これからもそうしてくれ」 奏斗の言葉に、私は頷く。 あの一件があってから、奏斗はとても心配性になった。 それは、私も写真に撮られてしまったから、それも影響しているんだと思う。 以前に比べて、大袈裟なくらい周囲を警戒するようになってしまった奏斗。 私を大学に送ってくれる奏斗の服装も、以前より厳重だ。 奏斗が1人で居たら、不審者だと思われて警察に職務質問をされてしまいそうな程の変装だった。 もちろん、こんな格好の奏斗と電車に乗って大学に行く事は難しい。 だから、奏斗は私を大学に送ってくれる時はタクシーを手配していた。 自宅の前で、奏斗と手を繋いでタクシーが来るのを待っている間。 世間話をしていると、奏斗がふと呟いた。 「──今までは必要無いと思ってたけど、……車の免許を取ろうかな」 「えっ!?」 突然そんな事を言い出す奏斗に、私はびっくりしてしまう。 私たちが住んでいるのは、都内だ。 交通の便も良く、私も奏斗も特別車が必要だと感じた事は無かった。 公共交通機関が充実しているし、今回のようにタクシーだって呼べばそこまで待たずに乗る事が出来る。 だけど、確かに毎回タクシーを使うんだったら、痛い出費にはなるけど。 だけど、タクシーを利用するのがこれからずっとって訳じゃない。 だから、私の頭には車の免許を取るって言う選択肢は今までちっとも出てこなかった。 けれど、奏斗は違ったんだろう。 「今回のように、せっかく休暇を取っても遠出するなら公共機関を使わなくちゃいけないだろ?」 「……確かに、そうだね」 「そうしたら、どうしたって見つかる可能性が高い。……それなら、始めか
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97話

手配したタクシーに乗り込む。 タクシーでは、大学まで30分程だ。 私と奏斗は、タクシーの中で手を繋ぎながら免許の事について話していた。 「こうやって、俺が休みの日には香月を大学まで送って、迎えに行けるからやっぱり車は必要だよな」 「でも奏斗、考えてみて?」 免許を取る方向に傾いている奏斗の考えを、私は一旦ストップした。 今は、冬だ。 そして、来年の春になれば私は大学4年目になる。 卒業も目前で、私は就職をするつもりだから奏斗が大学への送り迎えをする必要はなくなるのだ。 その事を、私は奏斗に説明したのだけど。 奏斗はあっさりと答えた。 「……?大学の送り迎えが、香月の会社に変わるだけだろう?車の必要性は変わらないんじゃあ?」 「えっ、でも、自宅から大学の距離が今は近いけど、もしかしたら就職先の会社はそれより遠くなる可能性だってあるんだよ?」 「問題無いよ」 「そ、それに!自宅からの通勤が不便だったら私は引っ越すつもりだし──」 私がそこまで言うと、それまで前を向いていた奏斗が勢い良く私に振り向いた。 「えっ、香月実家を出るのか!?」 「わ、分かんないよまだ……!だけど、その可能性もあるでしょう?それに、もし……万が一、就職した会社で、転勤を命じられたら?他県に引っ越す事になったら……」 奏斗の送り迎えどころか、気軽に奏斗と会う事だって難しくなってしまう。 だけど、それを口にしたら本当にそんな事が起こりそうで怖くて。 私はその先は口にせず、口を噤んだ。 だけど、その先の言葉は、奏斗にも想像出来たんだろう。 奏斗はぐっと表情を顰め、唇を噛み締めた。 「──無理。香月と離れるの
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98話

「香月ー!おはようっ!!」 「──わっ!美緒!?おはよう、朝から元気だね、どうしたの?」 私は、背後から抱きついてきた美緒に驚いた。 だけど、美緒の顔を見た瞬間、何かあったのだろうな、と悟る。 美緒は、早く私に話したくて話したくて仕方ない、と言うようなうずうずとした顔をしていた。 「どうしたの、美緒?」 私が苦笑い混じりに聞くと、美緒が「大ニュースよ、大ニュース!」と言いながら私の手を引っ張り、構内のベンチに向かった。 「ちょ、ちょっと美緒!私、一限が……!」 「大丈夫、すぐに終わるから!」 そう言いながら私をベンチに座らせ、美緒も隣に座ると自分のスマホを取り出して操作している。 SNSの投稿だろうか?それを見つけ出すと、美緒は興奮したように私にその投稿を見せてきた。 「nuageのKanatoが、もしかしたら二股しているかも!」 「──へ?」 「いえ、二股と言うか、もしかしたら本命はこの一般人の彼女なのかもしれないって、今SNSで凄い討論されてるのよ」 私は、美緒が見せてきたスマホの画面を急いで確認する。 すると、そこには誰かの投稿があって。 【今日、nuageのKanatoが、女の子とデート?してる所を偶然見たんだけど!もちろん、その子はRikOじゃなかったよ!もしかしたら一般人?の女の子かも!】 私は、その投稿を見てヒュッと息を飲み込む。 いつの間に撮られていたのだろう。 その投稿には、1枚の写真も添付されていた。 美緒がその写真をタップする。 「残念ながら、かなり距離がある所から撮ったみたいで、アップにするとKanatoの顔もぼやけちゃうくらいだし、女の子の顔はそもそも隠れてて見えないんだけどね……」 見て!と言うように美緒がKanatoの姿を拡大する。 「ぼやけてるけど、Kanatoが隣の女の子を見て凄く優しく笑ってるように見えるの!こう、映像とかで見るようなキラキラ〜っとした笑顔じゃなくって!なんて言うの?素?みたいな……!」 興奮する美緒とは裏腹に、私は嫌な汗が背中に伝うのが分かった。 心臓もドクドクと鼓動を速め、気が気じゃない。 奏斗の姿ははっきり映っている。 この写真は、先日遠出した時に公園を歩いていた時のものだろう。 私は奏斗の影に隠れているし、顔はほとんど映っていない。 それに、奏斗
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99話

私は、一限を理由に美緒の話を途中で退席して急いで教室に向かう。 確か、一限は講義を聞くだけだった。 後ろの方の席に座って、奏斗に連絡を入れておこう。 私は部屋に入ると、後方に座りすぐにスマホを取り出した。 そして、私は奏斗にメッセージを送る。 【奏斗!時間があったら、SNS見て!この間、遠出した時の私たちの写真が撮られてた!】 続けて、送る。 【今かなりネットでは大騒ぎになってるみたい!奏斗がRikOと付き合ってるのはカモフラージュとか、本命は他に居る、とか凄い考察されてるから、特定班とかも動くかも……!今日、大学へのお迎えはいいよ!タクシーでちゃんと帰るから、奏斗は家に居て!】 そう打ち込むと、私はふうと息を吐き出してスマホをしまった。 「これで……大丈夫かな……?」 奏斗は連絡を見てくれているはずだし、迎えはいらないって言ったから家で待っていてくれるはず。 奏斗が大学に迎えに来て、万が一何かの拍子に正体がバレてしまったら大変な事になる。 ただでさえ、あんな格好で大学近くを彷徨いていると目立つのだ。 「全身真っ黒だからなぁ……悪目立ちするんだよねぇ……」 私がぼそり、と呟いたのと同時。 誰かが私の隣の席に着いた。 「悪目立ちするってどうしたの?」 「──っ!?」 突然話しかけられて、私はびくりと肩を跳ねさせた。 私の隣に座ったのは──。 「え、遠藤くん!?」 「か、香月ちゃんしーっ!もう講義の先生来てるから!」 「えっ、わあっ、ごめん……!」 慌てて自分の口に人差し指を当てる遠藤くんに、私は慌てて自分の口を覆う。 そんな私に、遠藤くんはくすくすと肩を揺らして笑っている。 「ごめんごめん、急に話しかけてびっくりしちゃったよね?なんか、香月ちゃんと講義が被るの久しぶりでさ……つい隣に座っちゃったけど、大丈夫だった?」 「──うん!大丈夫だよ。そうだね、何だか久しぶりな感じがするよね」 私と遠藤くんは、声を潜めてやりとりをする。 大きな声で話せないから、自然と私と遠藤くんの距離が近くなってしまった。 遠藤くんは、そわそわとしながら私に言葉を返す。 「その、今年学祭があるだろう?」 「──あ、確かに!」 遠藤くんに言われて、私ははっと思い出す。 そう言えば、ここ最近は色々と慌ただしくてすっかり頭の中から
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100話

思いっきり参加出来るのは、最後の年かぁ。 私が物思いに耽っていると、隣に座っていた遠藤くんがちらちら、と私に視線を向けているのが分かった。 「──遠藤くん?どうしたの?」 何だか、遠藤くんがそわそわとしていて落ち着かない様子に見えて。 私が不思議そうにしつつ遠藤くんに声をかけると、遠藤くんは少しだけ緊張しているような様子で、私に顔を向けた。 「その……香月ちゃん。学祭って一緒に回る人居る?もし、まだ一緒に回る人が居なかったら……一緒に回らないかな、と思って……」 「──えっ」 まさか、そんな事を言われるとは思っていなかった私は、驚いて目を丸くした。 遠藤くんの顔は、ほんのりと赤く染まっていて。 いくらなんでも。私の自惚れとか、そう言うのじゃなくて。 遠藤くんの反応を見て、薄っすらと悟ってしまう。 どうしよう……。 ここは、きっぱりと断った方がいい、よね。 本当はまだ誰と回るかは決まってないけど、そう言ったら遠藤くんに一緒に回ろう、と誘われてしまうだろう。 遠藤くんはとても良い人で、友人としてとても好きだ。 だけど、そこに男女の情は……無い。 それに多分これから先も、きっと遠藤くんとどうこうなると言う事は無い。 ──私が好きなのは奏斗だけだから。 「えっと……ごめん、遠藤くん。学祭は、一緒に回りたいなって思ってる人が居て……」 「──あ、そっか……そうだったんだね。ごめん、それだったら大丈夫。忘れて!」 にこり、と無理に笑みを作った遠藤くん。 私の返事を聞いた瞬間、一瞬だけ遠藤くんの瞳に悲しみのような感情が浮かんだ。 だけど、遠藤くんとは友人以上の関係にはなれない。 こうして、きっ
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