事務所が、所属しているアイドルを守ってくれないで、一体誰が当人を守ってくれるの──? まさか、奏斗も被害届を取り下げて欲しいと言われるとは思わなかったのだろう。額を抑え、苦しそうに息をしている。 「奏斗、大丈夫?」 「──くそっ、ごめん香月。情けない所なんて香月に見せたくなかったのに……っ」 「情けなくなんて無いよ。そんな風に気持ちが乱れるのは、当たり前だよ」 私がそっと奏斗を抱きしめると、奏斗も私を抱きしめ返す。 カタカタ、と体が震えているような気がする。 怒りだろうか。 それとも、行き場のない感情だろうか。 奏斗は、暫く感情を落ち着かせようと何度も深呼吸をしてから、私をそっと離した。 「ごめん、香月……。落ち着いた、ありがとう」 「ううん、大丈夫だよ。えっと……事務所の社長が来るんだよね?私、自分の家に戻るね──」 「待って香月。ごめん、事務所の人と話す時、香月に傍に居て欲しい」 奏斗に手を掴まれ、そう言われる。 だけど、私みたいな一般人が一緒に居てもいいのだろうか。 当事者じゃないのに──。 そう考えた私を、奏斗が真剣な表情で続けた。 「香月も無関係じゃないからな?言ったろ?RikOがストーカーから送られたって言ってた写真に、香月も写ってたって。香月も巻き込まれているんだから、同席するのは当然だよ」 ◇ 数時間後。 奏斗の家のインターホンが鳴った。 「社長とマネージャーが来たかも。香月、ここで待ってて」 「うん、分かった」 私はインターホンに向かう奏斗の背中を見つめた。 あれから、私と奏斗はずっと一緒にリビングで過ごしていた。 時折奏斗が辛そうに顔を歪めるのを見て、それだけRikOに薬を盛られた事がトラウマになっている事を察した。 でも、それは当然だろう。 女性であれ、男性であれ、突然そんな目に遭えばトラウマになる。 自分のあずかり知らぬ所で、自分の身が危険に晒されていたのだ。 奏斗は睡眠薬を盛られて眠っていたから、性被害には遭っていない、と言っていたけど。 目覚めたばかりの奏斗はどれだけの恐怖を感じていたのだろうか、と胸が苦しくなる。 それに、飲まされた薬の量が多くて頭痛が酷かったと言っていた。 奏斗の健康が、害されていたらどうするつもりだったのだろう。 謝って済む問題では無い。 だから
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