大好きな幼馴染が手の届かない大人気アイドルになってしまった… のすべてのチャプター: チャプター 71 - チャプター 80

90 チャプター

71話

ホテルを出た私と奏斗。 昨夜は凄い雨で、電車が停まっちゃっていたのが嘘のように、空は快晴。 「凄い気持ちいい天気だな」 「ね。昨日の悪天候が嘘みたいだよね」 私と奏斗は、会話をしつつ駅に向かう。 自然に、無意識に。 私と奏斗はどちらからともなく手を繋ぐ。 指を絡ませる、所謂「恋人繋ぎ」 今まではこんな風に奏斗と手を繋ぐと、私はすぐ照れてしまって顔が赤くなってしまったのだけど。 今はもう、こうして奏斗と並んで歩く事も。 手を繋いで外を歩く事も。 嬉しさの方が勝っていて、恥ずかしさを感じない。 朝の爽やかな空気と、気持ちの良い天気も多分関係しているとは思う。 「香月は今日家に帰ったら何か予定あるの?」 手を繋いで、並んで電車を待っている時。 奏斗から問われた私は、首を横に振った。 「ううん、特に無いよ。強いて言えば、大学の課題をやる予定くらいかな?」 「ならさ、家に帰って少し休んだら、俺の家で課題をやればいいよ。まだ香月と一緒に居たいから」 「わ、分かった。着替えたら奏斗の家に行くね」 「うん。待ってる」 帽子を目深に被っているけど、それでも奏斗がとても嬉しそうに笑っているのが分かる。 繋いだ手をきゅっと握られて、奏斗の指先がゆっくりと私の手の甲をなぞる。 「もうっ、擽ったいからやめて、奏斗」 「ごめんごめん、嬉しくてさ。早く2人きりになって思いっきりいちゃいちゃしたい」 「──ばっ、馬鹿な事言わないで!」 「え?香月変な事想像した?ただ俺は、香月とくっついていたいな、って思っただけだけど?」 ひょい、と私の顔を覗き込む奏斗の目が、揶揄うように笑っている。 私は奏斗の背中をべちん!と叩き、ちょうどやってきた電車に乗り込んだ。 電車を降りて、帰ってきた私達は、私の家の前で奏斗と別れる。 ただいま!と声をかけて家の中に入るけど、両親は出かけているみたいで、不在だった。 それなら丁度いいや、と私は急いで着替えを終え、大学に持って行っているトートバッグに課題を詰め込んでいく。 髪の毛を整え直して、軽くメイクも直す。 新作のリップを塗って、鏡の前で全身をもう一度確認する。 「──よしっ、洋服も可愛い!メイクも上手く直せた!完璧!」 アイドルの奏斗は、可愛い子なんて見慣れてる。 だけど、奏斗にはやっぱり可愛い
last update最終更新日 : 2026-01-11
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72話

「香月?鍵は開けてるから入ってきて」 「本当?分かった、お邪魔するね」 インターホンから奏斗の声が聞こえて、私はそのまま玄関の扉を開けて中に入る。 すると、玄関を入ったところで奏斗が待っていてくれて。 「奏斗、わざわざここまで来たの?」 リビングで待っていてくれれば良かったのに、と私が奏斗に言うと、奏斗は照れ臭そうに笑った。 「さっきまで会ってたのに、待ちきれなくってさ」 「ええ、奏斗ってそんなに寂しがり屋だったっけ?」 私が奏斗を揶揄うように笑うと、奏斗は照れ隠しをするように私の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。 「俺も自分で自分に驚いてるよ!くそっ、恥ずかしいっ!」 「ふっ、ふふっ!奏斗の顔真っ赤になってる!」 「ああ、もううるさいうるさい!香月、大学の課題やるんだろ?早くリビングに行こう!」 奏斗に手を取られ、そのままリビングに向かう。 奏斗は私を椅子に座らせると、飲み物を用意してくれて、私の向かいに座った。 「大学の課題って、どれくらいで終わるの?」 奏斗に飲み物のお礼を告げて、私は考える。 「うーん……どうだろう。レポートだから、早くは終わらないかも?」 「そっかー……」 「少し待たせちゃうと思うから、奏斗はテレビでも見てたらどう?それか、奏斗眠そうだから少し自分の部屋で寝て来たら?」 私はとろんとしている奏斗の目を見てそう話す。 何だかすっごく眠そうに見えて、私は奏斗に寝てきたら、と勧めたんだけど私の提案を奏斗は首を横に振って断る。 「いや、いい……。寝るなら香月も一緒に寝よ……」 「えー?私は結構ぐっすり寝たから多分眠くならないよ」 「それじゃあ、俺の抱き枕になってよ。香月抱きしめたらぐっすり眠れそう」 「だ、抱き枕って……」 まさか一緒に寝よう、なんて提案されるとは思わなかった私は、ついつい課題のレポートから顔を上げてしまう。 すると、とろんと眠そうな目をした奏斗がじっと私を見つめたまま、ふっと笑った。 「あ、もちろん変な事はしないから安心して。大人しく普通に寝るだけだから」 「そ、そんな心配はしてないよ……!」 「そう?期待してたら悪いかなって」 「期待もしてない!」 「──ははっ」 眠いからだろうか。 奏斗が嫌に色っぽく見えてしまって、落ち着かない。 きっと、私の顔は赤くなってし
last update最終更新日 : 2026-01-12
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73話

「終わっ、たあー!」 私は、ペンを放り投げて課題のレポートに突っ伏した。 ずっと集中してたから、体がバキバキに固まっちゃってる。 小さく声を漏らし、伸びをする。 すると、パキっと音が鳴った。 「──奏斗、お待たせ……。奏斗?」 随分待たせちゃったかな、と思いつつ奏斗に話しかける。 だけど、私が奏斗を呼んでも、奏斗から返事は返って来ない。 あれ?と思って突っ伏していたテーブルから顔を上げると、いつの間にか奏斗もテーブルに突っ伏して眠っていた。 やっぱり、昨日ホテルであまり眠れなかったのだろう。 私は奏斗が用意してくれた飲み物を全て頂いてから、椅子から立ち上がった。 眠っている奏斗の体を揺さぶって声をかける。 「奏斗、奏斗。待たせてごめん。課題終わったよ」 「ん、んん……?ほんと、香月……」 「うん、もう大丈夫。自分の部屋に上がって寝た方がいいよ?」 「うん……そうする」 もそり、と体を起こした奏斗に、私は安心して離れようとした。 だけど、私の腕を掴んだ奏斗に止められてしまって──。 「──え?」 「さっき、香月を抱き枕にするって言ったでしょ……?俺の部屋行って一緒に寝よ……」 「えっ、え!?あれって本気だったの!?──ひえっ!」 まさか、奏斗が本気で言ってたなんて。 私が戸惑っていると、奏斗はひょいっと私を軽々と抱き上げてそのまま歩き出す。 「かっ、奏斗!階段あるから!危ないから下ろして!」 「んー、大丈夫だよ、香月軽いし……ちゃんとぎゅって掴まってて……」 「ちょっ!」 ぽやぽやとした口調のまま、奏斗が階段を上り始める。 私はひやっとして、思いっきり奏斗に抱きついた。 すると、どこか嬉しそうに笑いながら、奏斗が私を抱く腕に力を込める。 階段を上りきった奏斗は、私を抱き上げたまま自分の部屋に進み、そのまま扉を開けて中に入ってしまう。 「か、奏斗──?」 「ああ、もう限界かも……」 「えっ、あっ、ちょ──っ」 そのまま奏斗は自分のベッドに倒れ込む。 もちろん、私を抱いたまま──。 ぼすんっ!と音を立てて私を巻き込み、ベッドに横になる奏斗。 離してもらおうと身動ぎしたけど、奏斗は目を瞑ったままで。 「ちょっ、奏斗、寝苦しくないの?」 「んー……へいき……」 奏斗はむにゃむにゃとした口調でそれ
last update最終更新日 : 2026-01-12
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74話

奏斗と一緒に寝て、どれくらい時間が経った頃だろう。 奏斗のスマホが着信し、音楽が流れる音で目が覚めた。 奏斗はまだ気持ち良く寝ているみたいで、私は鳴り続けるスマホに目をやって、奏斗を起こすために体を揺すった。 「奏斗、奏斗。電話鳴ってる!仕事用のスマホだよ?急ぎの電話かも……!」 「んー……、んん?俺、休み中なのに……」 奏斗は嫌そうにもぞもぞ、と体を動かしてにゅっと腕を伸ばし、スマホを探す。 私は奏斗の腕から抜け出して、スマホを取ると奏斗に手渡した。 「ほら、奏斗……!ちゃんと起きて!」 「うう、ありがとう香月……」 まだ完全に目が覚めていないんだろう。 しょぼしょぼとした奏斗が目を擦りながら起き上がり、スマホを耳に当てたと同時に、私の体を引き寄せた。 「──っ!?」 「はい、もしもし……」 私は後ろから奏斗にぎゅっと抱きしめられる格好になってしまって。 すぐ後ろには、電話に出ている奏斗。 私が下手に声を上げたりしたら、電話の向こう側にいる人に私の声が聞こえてしまう。 私は慌てて自分の口を手のひらで覆い、じっとする。 奏斗はそんな私ににやりと悪戯っぽく笑みを浮かべて、私のお腹に片腕を回してさらにぎゅうっと抱きしめてきた。 「──っ!」 奏斗の手を叩こうにも、叩く音が電話の向こうにいる人に聞こえてしまうかもしれない。 奏斗は、私が動けない事を知った上でこんな事を! と、私がぷりぷりしていると、電話に出た奏斗の顔色が変わった。 「──RikO?何だ……?良く聞こえない。……泣いてるのか?」 RikO──? 昨日、奏斗を追いかけて私たちの所にやって来たRikOが、どうして? しかも、RikOが泣いている? 何があったのか──。 私が混乱していると、それは奏斗も同じようで。 奏斗は一旦耳からスマホを離すと、画面をタップした。 途端、ぐすぐすと泣くRikOの声がスピーカーから聞こえてきて。 奏斗が通話をスピーカーにしてくれたのだろう。 RikOの声が、聞こえてきた。 「何が怖いんだ?何が起きてるのか分からない。ちゃんと話してくれ」 「──は?
last update最終更新日 : 2026-01-13
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75話

ピリッとした緊張感。 それに、奏斗からは微かな怒りが漂う。 私がびくり、と体を震わせると奏斗は私を安心させるように抱き寄せてくれる。 だけど、その間もRikOの声はスピーカーから聞こえ続けてきている。 「待て、落ち着け、落ち着いてくれRikO。事務所やマネージャーに報告して、対応してもらう方がいいんじゃないか?」 「話してくれないと分からない、RikO」 奏斗の顔色が最初に比べて悪くなっている。 それに、さっきRikOの口から出た「幼馴染の子」って──。 まさか、私の事までストーカーに写真を撮られていたって言うの? 私が不安を覚え、奏斗を見上げると奏斗も混乱しているのだろう。 私に何とも言えない表情を浮かべた。 ぐすぐす、と啜り泣くRikOの悲痛な声がスピーカーから聞こえてくる。 「──は?写真って、この間外で会った時の写真じゃあ」 RikOの声は、それ以上を紡ぐ事はできず、わああった声を荒らげて泣き出してしまった。 それを聞いた奏斗は、難しい顔をしていたけど、暫く黙ったままだった奏斗は、ぐっと目を瞑り苦しそうな顔をした後、口を開いた。 「……分かった。一旦そっちに行く。そこで詳しく話を聞かせてくれ」 「──っ」 「家の住所を送っておいてくれ。今から向かう」 奏斗はそれだけを言い終えると、スマホの通話を切った。 室内は再びしんと静まり返る。 「──ごめん、香月。少し行って、話を聞いてくる……」 「でもっ、でも奏斗……。ストーカーが家に入っていたんだよね?大丈夫、なの?」 私は奏斗の身が危険に晒されてしまうのでは、と心配になる。 私が思わず奏斗の服を掴むと、奏斗は私を安心させるように優しく笑って手を握ってくれた。 「大丈夫。RikOの話を聞いて、すぐに帰ってくるよ。もし、香月の写真も本当
last update最終更新日 : 2026-01-14
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76話

◇◆◇ ふんふん、と女の機嫌良さげな鼻歌が聞こえる。 ぱりん!がしゃん!と室内では大きな音が立て続けに響く。 「Kanatoが私の家に来てくれる」 甘ったるい声で機嫌良さげに笑う。 その女──アイドルのRikOは、荒れ果てた室内をぐるりと見渡し、満足そうに頷いた。 「ああ、そうだ。寝室の下着類も外に出しておかなきゃね。ちゃんとストーカーが散らかしたように見えるように」 るんるんと軽い、弾んだ足取りで寝室に向かうRikO。 下着類を引っ張り出し、乱雑に放り投げる。 そして、横にあるベッドを視界に入れると、いやらしい笑みを浮かべた。 「絶対に今日はKanatoと寝るんだ。あんなぶっさいくな一般人の幼馴染、Kanatoに相応しくなーい。自分から身を引いてもらわないと」 RikOはスマホを操作し、フリマアプリを開く。 「今は簡単にアプリで妊娠検査薬の陽性が出たやつと……エコー写真も手に入るし……ああ、でもエコー写真はもうちょっと時間が経ってる奴が欲しいから……来月くらいに購入しようっと」 ふふっ、と愉悦に口元を歪めるRikO。 「Kanatoには気持ちよーく寝てもらわないと、ね」 RikOは、キッチンの棚に常備している睡眠導入剤を手に取り、ちゅっと唇を寄せた。 RikOが着々と準備を進め、数時間。 奏斗が来たのだろう。 インターホンが来客を知らせた。 「──来たっ!」 RikOは嬉々とした表情で、インターホンに向かう。 モニターにはやはり想像していた通り、帽子を目深に被り、黒いマスクで顔半分を覆った奏斗が映っていた。 RikOはモニターのボタンを押し、声をかける。 「ここまで来てもらって、ごめん……。今解錠するね」 オートロックを解錠する。 奏斗には予め部屋番号を知らせてある。 RikOはそわそわと玄関扉の前で行ったり来たりとしつつ、奏斗が部屋の前にやってくるのを待った。 そして、少し時間が空いて、部屋のインターホンが鳴る。 RikOは急いで玄関の鍵を解錠し、扉を勢い良く開けた。 「──Kanatoっ」 「……っ、やめっ、抱きつかないでくれ。早く中に……っ!」 RikOは奏斗に思いっきり抱きつく。 それを振り払おうとした奏斗だったが、まだここはマンションの共用部。 誰かに見られてしまう可能性がある。 奏
last update最終更新日 : 2026-01-14
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77話

「……で、RikO。香つ──俺の幼馴染も写真が撮られてたって、どう言う事だ?その撮られた写真って?」 奏斗はRikOと距離を保ったまま、なるべくRikOの姿を視界に入れないように視線を逸らしつつ問う。 するとRikOは、リビングのテーブルに向かい、急ぎ足で戻ってきた。 「Kanato、これ……っ!これがポストに入ってたの……!」 RikOから見せられた紙。 それを目にした奏斗は、ぐっと眉を顰め、奥歯を噛み締めた。 その紙には、先日香月と出かけた時の写真。 あの公園で、RikOが奏斗の目の前に現れた時の写真。 そして、その時に撮られたであろう写真には、香月もしっかりと映っていた。 しかも、数枚撮られた写真の中には、香月1人だけがアップで撮られている写真も混ざっていた。 「これが、ポストの中に入ってたって?」 奏斗の声は、怒りに満ち、紙を握る手は力が込められていて紙はぐしゃり、と歪んでいた。 「うん、そう……。奏斗の幼馴染の子も撮られちゃってる……しかもね、その後の紙見て?手紙が入ってたの……」 「何だって……?」 RikOが奏斗に距離を詰め、奏斗が持っている何枚かの紙の中から下辺りにある紙を指差す。 ぐっと近付いてきたRikOを気にもとめず、奏斗は急いで手紙を探し出した。 そして、それはすぐに見つかった。 「──っ、」 手紙には、理不尽な言葉がつらつらと書かれていて。 【RikOに相応しいのはnuageのKanato。Kanatoが一般人の女と一緒にいるのは許せない】 だとか。 【一般人の女の隣に立つKanatoは許せない】 だとか。 【一般人の女には天罰を】 など、好き勝手な言葉を書かれていて、奏斗は怒りを覚えた。 (何も、知らないくせに……。俺と香月の事を何も知らない奴に、外からぐちゃぐちゃ言われる筋合いはない) 奏斗は紙をぐしゃり、と握り潰してRikOに顔を向ける。 いつの間にか腕を組まれていた。 奏斗は自分の腕をRikOの腕からするり、と抜き、RikOに向かって口を開いた。 「──RikO。これは立派な脅迫だ。俺の知り合いに対しても脅迫している。……もう、警察を呼ぼう」 「わ、分かった……」 「室内も荒らされてるから、警察に通報して……あとは、事務所にも連絡した方がいい。マネージャーには連絡した
last update最終更新日 : 2026-01-15
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78話

RikOが、飲み物を持ってきてくれて。 二人で今後について、どうするかを相談している時。 「──っ?」 奏斗は、自分の頭がぼうっとしてくる事に違和感を覚えた。 (何だ……、急に……) ぼんやりとする思考に、目の前が霞む感覚。 頭を振って、何とか意識を保とうとしたが、どんどんその症状は悪化していく。 目の前に座っていたRikOの輪郭すらぼやけてきて。 奏斗はとうとう眠気に耐え切れず、テーブルに突っ伏してしまった。 「──ふふっ、効果てきめんね」 甘ったるい声を出しながら、RikOは椅子から降りると、奏斗に近付いて行く。 すうすう、と寝息を立てる奏斗。 RikOはそっと自分の手を伸ばし、奏斗の唇を指でなぞった。 触れられていると言うのに、奏斗は身動ぎ1つしない。 その様子を見て、RikOは愉悦に顔を歪めた。 「やった、ばっちり寝てる……っ、これでKanatoは私のモノね」 つうー、と指先で奏斗の首筋を辿る。 首筋、喉仏、鎖骨とRikOの指先が好き勝手に奏斗の体を這い回る。 ごくり、とRikOの喉が鳴り、自分の寝室に目を向けた──。 早くベッドに連れて行って、奏斗の服を脱がせて写真を撮らせないとならない。 RikOは自分のスマホを操作し、電話をかけた。 「寝たわ。鍵は開けてあるから入ってきて」 RikOが電話をかけて数分。 玄関の扉が開く音が聞こえ、1人の男が入ってくる。 ひょろり、と細長いシルエットの男は、RikOの姿を見て興奮するように頬を紅潮させた。 「り、RikOちゃんっ」 「おじさんの相手はまた今度ね。Kanatoと寝たら、次はおじさんとシてあげる。だから、Kanatoをベッドに運んで?」 「ほ、本当RikOちゃんっ、本当にぼ、ボクみたいなのとシてくれるの?」 「ええ、別にいいわよ。ただし、今後もちゃんと私を1番に推してよ?リリースした楽曲は少なくとも100以上は買って」 腰に手を当て、そう告げるRikOに細身の男は嬉しそうに笑い、何度も何度も頷いた。 それを満足そうに見たRikOは、顎をしゃくって奏斗を移動させるように命令する。 「Kanatoをベッドに運んでくれたら好きな下着持って行っていいわ。そうしたらさっさと出て行って」 「わ、分かったよRikOちゃん……っ」 細くとも、男。 その男
last update最終更新日 : 2026-01-15
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79話

「ふふふ……本当に格好いい……」 RikOはうっとりと目を細め、薬でぐっすりと眠る奏斗を見つめる。 RikOは写真を撮るために、奏斗が着ていた服に手をかけた。 1つ1つボタンを外して、脱がせる。 「凄い……引き締まってるし、Kanatoってば筋肉も凄いついてるのね……」 ほうっと恍惚の表情でRikOは呟く。 そして、何とか上半身と下にはいていたズボンを脱がし終えると、RikOはそっとベッドに潜り込む。 「ふふ……っ、起きたらKanatoびっくりしちゃうかな?でも、もうこれで状況証拠はばっちりだもの。Kanatoだって、自分が抱いた女が妊娠したって言ったら……逃げられないわよね」 くすくすと笑みを零しながら、RikOは裸の奏斗の胸元に唇を寄せる。 首筋から鎖骨、と何度も辿り強く吸い付くと、そこにくっきりとキスマークがついた事を見て、RikOは満足そうに笑んだ。 何度もその痕を指先でなぞっていると、次第にRikOも眠くなってきてしまった。 「んん……ちょっと寝ようかしら……Kanatoも、まだ全然起きないだろうし……」 呟きつつ、RikOはこてりと奏斗の胸に頭を乗せて、幸せそうに目を閉じた。 ◇◆◇ 「──ん?」 ガンガンと頭の痛みに襲われ、次第に意識が浮上してくる。 俺は、どうしてたんだっけ……。 そう考えつつ、痛みに耐えつつ目を開ける。 すると、周囲は真っ暗で。 「──は?なんだ……?」 ずしり、と胸元に感じる重みに俺が視線を向けると、そこにはRikOの姿が──。 「──っ!?」 どうしてRikOが下着姿で……!? 俺は慌てて自分の体を確認する。 すると、俺は下着を1枚履いただけの状態で、RikOとベッドに横になっていた。 「……有り得ない」 すぐにその答えに行き着く。 俺には香月がいるのだから、RikOとどうこうなるはずがない。 それに、香月以外の女にははっきり言って、興味が無い。 「……まさか、薬を盛られたのか?」 激しく痛む頭に、俺はRikOを起こさないよう慎重にスマホを掴むと、時刻を確認する。 RikOの家に着いて、相当時間が経っている。 「──……」 俺は無言でこの状況の写メを何枚か撮ると、慎重にベッドから降りた。 そして、ベッドの下に散らばっている俺の服をまた、1枚写真に撮る。 そ
last update最終更新日 : 2026-01-16
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80話

◇◆◇ 奏斗から、連絡が来ない──。 奏斗がRikOの電話を受けて、出て行ってからもう数時間経っている。 その間、私がいくら奏斗に電話をかけても。メールを入れても。 彼からは何も連絡は返ってきていない。 「どうしちゃったの、奏斗……」 奏斗は無事なのだろうか。 RikOのあの取り乱し方は、普通じゃなかった。 もし、ストーカーと鉢合わせて、奏斗に危害を加えられていたら──。 そう考えた私は、気が気じゃない。 「ど、どうしよう……待っててって言われたけど……」 奏斗を探しに行った方がいいんじゃないか。 だけど、どこに──? RikOの家の住所は、奏斗しか知らない。 奏斗が帰ってくるまで私は待つ事しかできない状況で。 私は、奏斗の部屋でうろうろと意味もなく歩き回ってしまう。 これ以上奏斗の帰宅が遅くなるなら、私も一旦家に帰らなくちゃいけなくなる。 どうしよう、そろそろ帰ろうか──。 そう考えていた時。 私のスマホに、着信が入った。 「──奏斗?」 急いで画面を確認すると、そこには待ちに待った奏斗の名前が。 慌てて私は通話をタップした。 「もしもし、奏斗!?」 〈連絡が遅くなってごめん、香月〉 「ううん、大丈夫。奏斗も無事?」 私がそう聞くと、電話の向こうにいる奏斗が沈黙してしまった。 「か、奏斗……?」 何かあったのだろうか──。 私が不安に駆られていると、奏斗が重々しく口を開いた。 〈今、夜間にやってる救急病院にいるんだ〉 「病院!?怪我したの、奏斗!住所送って、今から行くから!」 〈いや、大丈夫!大丈夫だ、香月。この後、まだ行くところがあって、帰宅はかなり遅くなりそうなんだ。だから、香月は自分の家に帰ってて?〉 「本当に大丈夫なの?」 〈ああ、平気。あ、夜遅くなるかもしれないけど、香月の部屋の窓の鍵開けておいてもらってもいい?直接話したい〉 「──うん、分かった。待ってる。……急がないでいいからね、奏斗。怪我がないなら良かった」 〈うん、俺に怪我はないから安心して。……ああ、そろそろ時間だ。切るね。また夜中にそっち行く〉 「分かった、また後でね奏斗」 奏斗との通話を切って、私は肩の力を抜いた。 病院にいる、って聞いた時はどうしようとパニックになりかけたけど。 奏斗に怪我がないなら、本当
last update最終更新日 : 2026-01-17
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