All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 161 - Chapter 170

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第162話・愚か者

「……申し訳ない」「すまん……」 しょぼくれた二人に、俺は息を吐いてからその背中を叩いた。「この計画が上手くいくかどうかは四長にかかっているのですから、自重して、全ての種族が等しく豊かになるために頑張ってください。何処か一カ所でも、自分の種族だけ豊かになればそれでいいと思えば、この計画は終わり。敷いてはこの世界も終わりというわけなんです。世界の為にも、つまらない諍いは避けて、再びモーメントを命溢れる世界にするために頑張りましょう」「生き残ったフェザーマンにはその覚悟があります!」「ビガスを完璧に復興させるまでは、私も死ねませんね」「大樹海を再び拝めた礼替わりとあらば」「無窮山脈の救い主で守護獣の主である生神様には逆らわねえよ」「では、よろしくお願いします。で、村に帰りますか? 一晩ここで過ごしますか?」「私は帰るよ」 ダンガスさんが手をあげた。「年寄りだしね、しかも生神様の召喚で原初に神殿に来ていることを知っているのはあの時の生き残りだけだ。他の新しい民人を心配させるわけにはいかん」「私も失礼させていただきます」 ナセルさんも立ち上がった。「待っている仲間たちにグリフォン編隊の話をしなければ。皆、私が帰るのを待っています」「ではシンゴ、私はダンガス殿を送り届けてくるよ」 サーラが立ち上がった。「守護獣様は我々の元へ戻るのが嫌なのですか……」「いいや違う」 自分たちの守護獣であるサーラがヒューマンを連れて行くと知って落ち込んだヴェルクさんに、サーラは軽く手を振った。「一人、大問題児がいるのでね。その処遇を決めないとナセル、お前は帰れないだろう?」「! ……そうですね。忘れていました……未来を語るのに夢中になって、愚かな者のことを忘れていた」「愚か者?」「フェザーマンに愚者などいるのか?」「ええ、いるんです。この会合と計画に相反する、とっておきの愚か者が」「そういや彼女見なかったな。どこ行ったんだ?」 俺が立ち上がると同時に、部屋のドアが開いた。 ハーフリング代表として加わってもよかったはずなのに「全部のハーフリングに命令を下せないから」とシャーナと一緒に子供たちの面倒を見ていたはずのミクンだ。「子供たちは?」「何刻だと思ってんの。とっくに眠ったよ」 うあーあーと背を伸ばし、ミクンは首を竦める。「ちょうどあ
last updateLast Updated : 2026-02-15
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第163話・やり直し

 ナセルさんの愚妹……アウルムさんは。 怒り狂っていた。「どうして気高きフェザーマンであるわたくしが! こんな所にいなければならないのです!」 俺の顔を見るなりそう言う。「いやもうフェザーマンじゃないでしょ」 思わず俺は突っ込んでいた。「翼ないでしょ」「神がわたくしを見捨てるはずがないでしょう!」「見捨てる、と言ったら?」「気高い色と心を持つわたくしを、生神様は、見捨てると仰いますの?」「このままならね」 俺の言葉に、アウルムさんは顔を赤くしたり青くしたり。「まだそのようなことを言っているのか」 さすがのナセルさんも呆れ果てたようだ。「守護獣様に、翼が必要ないと言われたようなものだろうに」「そ、それは……!」「だから、君に最後のチャンスをあげようと思う」 俺の言葉に、アウルムさんは瞳を輝かせた。「やはり神はわたくしをお見捨てにならなかったのですね! 流石は生神様、わたくしの価値を分かっていらっしゃる!」「君にはやり直してもらう。それで同じに育つようなことがあれば、今度こそ見捨てる」「やり……直す?」「そう」 M端末を取り出した俺に、アウルムさんの顔に脅えが走る。「一からやり直すんだ。それで同じに育ったら、君は根っこから腐ってることになる。ミクンの言った通り」「やり直すって」 元々持っている神威をちょっと変質させて使うつもりだ。 初めて使う力だから難しいけどだけど、そもそもM端末はパソコンのマウスと言ってもいい。キーボードは俺の頭の中に入っていて、マウスがなくても力が使えるのはヘルプ機能とかを頭の中で引き出せるので出来ると言うことは分かっている。 M端末をいじりながら、やりたいことを強烈に頭の中にイメージさせる。 すると、端末に「その力を使いますか? Y/N」と出た。「生神様、何を……」 ナセルさんの言葉を聞いて、軽く首を竦めた。「やり直してもらうんだよ、本当に一から」 Yをタップする。 光が渦巻きとなって、アウルムさん目掛けて放たれた!「きゃあああああ!」 悲鳴が、光の中で薄れ、消えていく。 そうして、光も消えた後には。「…………?」 きょとんとしたフェザーマンの幼女がいた。 淡い金髪と金の瞳、身体の割に大きい金の翼。見た目はミクンと変わらない。「様子はどうだい、アウルムさん」 俺の
last updateLast Updated : 2026-02-16
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第164話・だから、頑張れ

 端末に文字が浮かんでいた。 【神威:巻き戻し/目標の時間を逆行させて若返らせる。脳も巻き戻すので記憶や精神年齢も巻き戻した年齢に戻す。元の年齢に戻すには、生神が解除するほかない】 おし、上手く行った。 ついでにステータスも確認する。 【遠矢真悟:生神レベル60/信仰心レベル80100/戦闘レベル50 神威:再生30/神子認定6/観察40/浄化40/転移10/帰還7/増加40/創造10/神具創造1/巻き戻し1/直接戦闘25/援護戦闘10 属性:水5/大地3/聖15/植物4/獣4/岩3/鉱石3/炎10/風4/神10 直接戦闘神威:[攻撃]水流・水/[防御]木壁・植物/[防御]水壁・水 援護戦闘神威:[攻撃]武器強化・鉱石+大地/[回復]回復・聖 固有スキル:家事全般15/忍耐15/剣術25/盾術20/遠視10/索敵5 固有神具:自在雲/導きの球/白き神衣/蒼海の天剣/水鏡盾/透過のマント/見通しの眼鏡】 うんうん、順調に伸びてる。 M端末を引っ込めて、俺はナセルさんの方を見た。「アウルム、俺のことが分かるか?」「お兄ちゃん、誰……?」「ナセルさんが成長したから、今のアウルムさんには分からないんだよ」「生神様……」「言ったろ、一からやり直させるって」 振り向くナセルさんに、俺は肩を竦めて見せた。「子供の頃からやり直して、成長して記憶が戻った時、その時の記憶を恥じれるか。それを試す」「……そう、ですね」 ナセルさんがアウルムさんを一度、抱きしめた。「この年頃から、俺たちが甘やかしたからだ……。金の髪と瞳と翼を、愛された証と言った……。生神様や多種族の間で育てば、この年齢からやり直せたら、もしかしたらかつての自分を恥じる心を持てるかもしれない……」「お兄ちゃん? なんで? 何?」 混乱したようなアウルムさんの声に、ナセルさんはにっこりと微笑みかけた。「私はフェザーマンの長だ」「嘘だあ、長はお父さんだよ」「うん、昔はね」 膝をつき、アウルムさんと視線を合わせて、ナセルさんは話す。「これから、お前は修行に出なければならない」「修行?」「そうだ。お前が本当に誰からも愛されるフェザーマンになる為の修行だ」
last updateLast Updated : 2026-02-16
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第165話・託す

 サーラが転移で戻ってきた。「ああ、お帰りサーラ」「ダンガスはビガスに戻したぞ」「ありがとう」「それで」 サーラは幼いアウルムさんを見た。「そうしたわけか」「こうした」「……確かに」 きょときょとと辺りを見回す幼いアウルムさんを見て、サーラは息を吐いた。「この年齢からやり直せば、あるいはまともに育つかも知れない。だが、そこまでの面倒を誰が見る?」「俺が見るよ」「連れて行くのか? ここに置いていくのではなく?」「色々な種族の中で世界を見れば、物の見方も変わってくるだろ? 世の中には天才の上を行く化け物がいるってことも分かれば、天狗じゃいられないだろ」「その通りなんだが……子供だぞ」「フェザーマンには生まれながらの魔法の力があります」 ナセルさんが立ちあがって言った。「アウルムの才はこの年代から際立っていましたために、皆で褒め称え……それ故にあんな風に育ってしまった。気が強いくせに臆病な性格も、恐らく私たちが作り上げてしまったのでしょう」「才能とは神から与えられた恩恵だが、恩恵に相応しい人間になるのは努力がいる。心の努力が足りなかったのだな」「返す言葉もありません。……どうか、妹をよろしくお願いします」「では、今一度私がナセルを送ろう」 ミクンに向けるのとは違う少し温度の下がった視線にアウルムさんが怯える。「シンゴに免じて許してやろうよ、一度の失態はな。だが、許されて再び同じ道を辿るようであれば、今度こそ許さない」 サーラのお許しは出た。なら、大丈夫だろう。「ここ、奈落断崖じゃないの? 何処?」「ここはヒューマンの神殿」 ナセルさんは噛み砕くように話しかける。「お前はこれから、その力に相応しいフェザーマンになるために、努力しなければならない。この方……ええと、シンゴ様、か。シンゴ様の言うことをしっかり聞いて、心も立派なフェザーマンになるんだぞ」「よくわかんないけど、修行しなきゃならないんだね。分かった」 アウルムさんが頷いたのを見て、ナセルさんは安堵したように笑って、アウルムさんの髪をくしゃくしゃと撫でた。「では、な。アウルム。今度会う時まで、いい子にしているんだぞ」「はい!」 なるほど、この頃は素直ないい子だったらしい。 ナセルさんがいなくなって、アウルムさんはきょろきょろと辺りを見回す。「えっと、
last updateLast Updated : 2026-02-17
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第166話・契約

「あのお姉ちゃん?」「私よりもっときれいな金の髪をしたお姉ちゃん」 サーラのことな。「大丈夫。アウルムが努力しているって分かれば、嫌いじゃなくなる」「本当?」「本当だよ」 本当、と何度も繰り返して、幼いアウルムさんはにっこりと笑った。「本当、本当……」 そこへ、結局帰ることになったフィエーヤさんとヴェルクさんを送ったレーヴェとヤガリが戻ってきた。「うお、アウルムか?」「翼も元通りだし妙に小さくなっているではないか」 俺が説明すると、二人が納得したように頷いた。「やり直しか。そんな機会が与えられただけでも神に愛されていると言ってもいい」「しかし、ここまで戻さないとやり直せなかったのか?」「エルフと、ドワーフ……?」「そう。エルフと、ドワーフと、ヒューマンと、ハーフリング。みんな、君の先生だ」「先生……」 アウルムは立ち上がると、スカートのすそをちょっとつまんで。「先生、よろしくお願いします」 と礼をした。「おや。随分変わったな」「そうだな。おれはヤガリだ。よろしく」「私はレーヴェだ、よろしくな」 自分の役割じゃないと黙って見ていたミクンが、一歩前に出た。「あたしはミクン。よろしくね」「ミクン?」 ミクン、ミクンと繰り返して、アウルムは心に決めたかのように声をあげた。「ミクン様!」「へ? 様って、あたし?」「あの、お友達になってくださいませんか?!」「へ? へ?」 ああ、そうか。 奈落断崖に残っていたフェザーマンの中に、アウルムと同年代の女性はいなかった。多分、年が上の、神界を目指して行ったフェザーマンたちのような思い上がりの激しい同種にもてはやされて、あんな性格になったんだろう。「ミクン、友達になってあげてくれるか?」「いいけど……あたし見た目はこうだけど成人よ? 結構いい年した大人よ? いいのかなお友達になっちゃって」「構わん」 戻ってきたサーラに、アウルムが思わず俺の後ろに隠れる。「ほう。随分としおらしくなったじゃないか」「あんまりいじめてやるなよ」「まともな子供ならいじめる必要はないだろう?」 そりゃあそうなんだけどさあ。「ミクン、人との付き合い方を教えてやれ」「いいのかなあ」「とりあえず、契約は交わしておこう」 俺はM端末をアウルムさんに向けた。【神子候補:アウルム・プ
last updateLast Updated : 2026-02-17
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第167話・学び

 しばらく、俺たちは原初の神殿に留まった。 フェザーマンの輸送能力やそれぞれの荷の重さなどを調べなければならなかったからだ。 その結果、グリフォンを【増加】したり、強力な荷纏め紐を作ったりとか。 そして、ビガスから食料を運ぶ、五人のフェザーマンと二十頭のグリフォンが飛び立ち、数日後到着したのを確認して、俺たちは原初の神殿を出発することになった。 シャーナを残し、俺、レーヴェ、コトラ、ヤガリ、サーラ、ミクン、ブラン、そしてアウルムとグライフだ。 グライフは既に俺に所有権は移っているけど、俺は頼み込んでアウルムを乗せてもらうことにした。 フェザーマンは成人した後グリフォンが与えられるので、今のアウルムはそれが大きくなった自分がいじめて所有権を移されたグリフォンだと言うことを知らない。だから、子供なのにグリフォンに乗れるのが嬉しそうだった。グライフも俺の頼みで仕方なく最初は乗せていたけれど、アウルムがグライフに八つ当たりもしないで純粋に喜んで乗っているので少し機嫌を直したらしい。 ちなみにグリフォンは空の神獣であるけれど、獅子の後脚で地上を歩くこともできる。空陸両用の便利なヤツである。 グライフが翼を畳んで、ブランと半分ずつの荷を負い、街道を歩く。 もちろん街道には魔物や魔獣がうろついているけど、正直今のレベルの俺たちには敵じゃない。「外はこんなに魔物が多かったんだね」 アウルムがぽつりと口にした。「奈落断崖は空から行くしかないから、魔獣や魔物は来なかったけど……」「魔獣や魔物だけじゃないよ」 ミクンが話しかけた。「自然もシンゴが直してくれるまではぐっちゃぐちゃだった。床も腐って歩くたびにふにゃふにゃしたんだ」「大変だったんだ、ミクン」「そう大変。草原から出たら襲われるし出なくても食べ物ないし」「そうなんだ……」 うん、うんと頷くアウルム。「アウルム、何にも知らないんだ……」「覚えればいいよ」 ミクンは笑った。「アウルムなら、これから先覚えていけるよ。大丈夫。大丈夫だって」「うん。覚える。だから教えてね、お姉ちゃん」 神殿で様子見守りの時間中に、神殿の子供たちやミクンと遊んでいるうちに、ミクンが大人と呼ばれる存在に気付いたんだろう。だから「お姉ちゃん」。それでアウルムとの距離が縮むならと、ミクンは世話役を買って出た。サー
last updateLast Updated : 2026-02-18
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第168話・可愛い

 異世界人である俺が聞いても、この世界の常識が分かりやすく学べる。 好奇心旺盛ってことはつまり向学心が高いってことで、ミクンはサーラから聞いたそれを自分の中で分かりやすいよう理解して、それを他人に教えられるくらいに伝える能力に長けている。もちろんミクン一人の特性なのかもしれないけど、ハーフリングは見た目ヒューマンの子供なだけで損してるところもあるよな。確かに考え方は幼い気がするけど、ちゃんと信念を持っているし、学んだことを役立てる応用力もある。自分たちの小さな体と筋力が役に立たないと言う自己判断能力もあるし、それでも役立つならいつでも呼んでくれと言う空気読める属性もある。 もっと尊敬されて然るべきなのにな。 確かに精神年齢とか発言に幼いものを感じはするけどさ。「すごいなあ、アウルムもミクンみたいに覚えられるかなあ……」「努力」 ミクンは素っ気ない一言で返した。「お勉強、あんまり好きじゃない……」「勉強をしたくないっていうのなら、別にしなくてもいいよ。でもね、きっと後悔する時が来る。あの時ちゃんと勉強しておけばって思う時が、絶対来るよ。その時後悔しても、遅いんだよ」 それまでのフレンドリーじゃなく、言い聞かせる様な発言。「……うん」「ミクン、子供にそこまで言うのもどうかと思うが」 レーヴェが口を挟んできた。「……レーヴェ」 グライフの上から、ミクンが視線を走らせる。「忘れたの? この子が甘やかされると、あれになるんだよ?」「う」「だから、ちゃーんと言い聞かせなくちゃダメなの。せっかくシンゴが暮れたチャンスを、子供だから、可愛いから、って理由で潰しちゃダメ。ちゃんといいことはいい、悪いことは悪いって教えなきゃ」「やはりミクンは賢い」 一番後ろを歩いているサーラの声は、アウルムに向けるものより柔らかい。「そりゃあ元をしっかり覚えてるからね。あたしたちハーフリングはそれまでの行動とか言動で判断するんだけど、他の人間は、結構見た目で惑わされるんだよね。ヤガリもこっそり可愛がりたいみたいだけど、甘やかしちゃダメだよ、フェザーマンが散々それやった結果あれが生まれたんだからね」「……分かった」 そこそこ付き合って分かったことは、ヤガリも可愛いとかキレイには目がないってことだ。一応女性だしドワーフは貴金属の加工も請
last updateLast Updated : 2026-02-18
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第169話・教育

 今俺たちが目指しているのは、更に東、ハーフリングの草原でなく、地球のサバンナに似た熱帯草原地帯だ。 そこに住んでいるのは、上半身がヒューマンで下半身が馬と言う、人間の中でも珍しい四つ足の種族、ケンタウロス。 ハーフリングが草原の民の他に「丘の民」と呼ばれるのは、ケンタウロスとの区別をつける為でもある。 草原を馬の下半身で駆け獣を狩る彼らは、動物寄りだと他の人間に言われるけど、その分生命力も強く何でも自分たちで出来て、交流や品物のやり取りと言った他種族の助けも借りず自力で生きていける強い種族なのだ。 ヒューマンやエルフ、ドワーフやフェザーマンが、あの四種会議のように話し合って品物をやり取りをしなくても、自分たちだけで生活を成立できるってのは、人間の中でも珍しい。 ただ、それも熱帯草原が無事にあればの話。 サーラが言うには、他種族の力を借りないことがケンタウロスの誇りなのだと言う。自由を誇りとするハーフリングにそう言うところは似ている。だから、今でも力を借りることなく草原に住んでいる彼らはヤバい状況にあるとは簡単に想像できる。 大陸中央の原初の神殿から大樹海に向かったのは単にそこが神殿から近い人間の居住区だったから。ついでに北へ向かって無窮山脈を目指したので、後回しになってしまった。 ……俺が二人いればなあ。神威で俺を【増加】させるってできるだろうか。いや、俺が二人いてもM端末は一つだし……。(余計なことを考えるなよ、シンゴ)  ビクゥッ! 意識だけで会話できるのは便利だけど、サーラほど信仰心が高いと言うか神に近しい存在だと、こちらの考えていることが筒抜けになってしまう欠点がある。欠点か? 欠点だな。ぼーっと考え事をしているとサーラが頭の中を勝手に覗いてくるんだから。(生神が二人になれば、いくら元が同一とは言え、分かれた時点で別の存在になる。意見がぶつかれば神同士の争いとなる、世界が滅亡にまっしぐらだ)(……はい) サーラの意見はいちいち正しいので反論すらできない。「お兄ちゃん?」 アウルムの声が聞こえた。「え? あっごめん、何?」「何か難しい顔してるから。大丈夫? アウルムが何か心配させた?」「何でもないよ。ケンタウロスってどんな種族なんだろうなあって思ってただけ」 素直だな。純粋で優しい。 そんな子も、甘やかせば《《ああ
last updateLast Updated : 2026-02-19
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第170話・ケンタウロス

 今おじさんと話せたら、きっと色々教えてくれただろうにな……。 おじさんは立派な人間だった。もしかしたら何処かの世界で同じように生神してるかも。おじさんの創る世界ならきっといい世界だろうな。 おっと、おじさんのことばかり考えていてもしょうがない。「ケンタウロスに誰か会ったことはある?」 いーやと全員が首を振った。あら、サーラまで?「私は炎とドワーフの守護獣として生まれたからな。草原駆ける民とはあまり関りがなかった」「あたしもとうさんから聞いた程度でしかないなあ」「どんな話を聞いたんだ?」「背の高い草生える草原を自在に駆ける、真に誇り高い民。ハーフリングとケンタウロスが力を合わせれば、他の種族は太刀打ちできないって」「何故だ?」「レーヴェは騎士でしょ。今は馬に乗ってないけど」「ぐ……いずれ乗る」「だったら、騎士が馬に乗った時の強さを知っているよね。騎士が馬に乗ると騎士プラス鎧プラス人間分の重さが馬にかかるけど、ケンタウロスはそれがない。臆病な馬を軍馬にする必要はないし、馬と意思疎通する必要もない。自分の望むままに草原を駆ける。歩兵はそれで十分に倒せる。足元が弱いっていうのが弱点だけど、そこをカバーできるのがハーフリング。何より場所は違っても同じ草原の民として尊敬しあっているってとうさんは言ってた。今はどうか分からないけどね」「そうだな、ミクンの草原も滅茶苦茶だったし……」 あの腐り果てた草原と、そこにしがみつくように住んでいたハーフリングたちを思い出す。 ハーフリングも草原諸共滅ぼうとしていたんだ、ケンタウロスはどんな考えに行きつくんだろう……。他の種族とつながりを持たないってことは、いざって時助けてもらえないってことでもあるし……。「ぅな」 突然コトラがジャンプして、頭の上に飛び乗った。「うわ、あぶねえ。首の骨折ったらどうすんだ」「ぅなーお」「腹が減ったんじゃないか?」 ヤガリの言葉に、そう言えば半日ほど歩いていたと思いだす。 アウルムがどれくらい戦力になるか分からない以上、足手まといとして話を進めるしかない。危険を避けるため、灰色虎に前を行ってもらい、野生の勘で魔獣や魔物の出現を警戒してもらっていた。それが半日。歩いてないアウルムやミクン、疲れない俺やサーラと比べて、ヤガリやレーヴェは神子となったことで身体強化はされて
last updateLast Updated : 2026-02-19
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第171話・翼魔法

「ごはんの前には手を洗わないとだめですよー」 アウルムがニコニコ笑顔で言って、球体の水の塊を出した。「お?」「ほう、水か」「ありがたく使わせてもらう」 ヤガリが水球の下に手を差し出すと、水が勢いよく流れる。「なるほど、これが翼魔法か」 レーヴェが感心したように水球を見る。「翼魔法?」「フェザーマンが使う魔法大系を翼魔法と言う。特徴としては自然の精霊をそのまま実体化して呼び出すことだな。水の精霊を呼び出して、その水を自在に使えるなんて他の魔法だと神魔法しかない」「へえー。神威とは違うのかな」「シンゴ、神の力を人間の魔法と一緒にするな。確かに神の力を借りる神魔法はヒューマンやエルフ騎士の得意技だが、シャーナのような癒し、私のような守りだけではなく、神威は神自身が目的をもって地上に何かをもたらすもの。しかも何らかの代償や誓いを必要とする魔法と違って、神威は望む限り疲れもしないで使い続けられるじゃないか」「やっぱそれって俺が生神だからだよな」「自覚なしなのか?」「そうだ、神が地上に影響を与える時に使う、それが神威だ。神の意志そのもの。このモーメントをどうとでも創り変えられる力、それが神に方向性を与えられることで、神威となる」「お姉ちゃん」 小さな声が、サーラの言葉を遮った。「……手」「なんだ」「……手、洗わないと、ダメ、なんだよ?」 幼いアウルムの言葉に一瞬サーラは目を細めるが……。「ああ、そうだな。忘れていた。水を借りる」 少し笑みすら浮かべて、水球が流す水に手を突っ込んだ。 俺もびっくりしたけど、レーヴェやヤガリも驚いてるし、何より言ったアウルムが一番驚いていた。「……? どうした」 手を洗って布で拭いたサーラに、ミクンはパチパチパチ、と手を叩いた。「それでいいよサーラ。今のはアウルムが正しいし、その通りにしたサーラも正しい。アウルム、よく言えた」 て言うか食事の前に手を洗うなんて文化が残っているとは思わなかった。なんせほぼ滅びかけた世界、俺が【再生】するまでは水もまともなのがない以上、食事の前に手を洗えばかえって雑菌が増加しそうな気がする。「翼魔法で水の精霊を使ってまともな水を得ていたわけだ。フェザーマンの生き残りが意外と多いのに驚いたが、翼魔法で精霊を実体化させて
last updateLast Updated : 2026-02-20
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