All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 151 - Chapter 160

201 Chapters

第152話・自分を憐れむ女

「……分かっております」 ナセルさんも簡単にその未来が想像できたんだろう、顔が暗くなった。「このことは妹には言いませんよ。今だ翼の喪失で自分を憐れんでいる愚か者には」 顔をぐしゃぐしゃにして泣き喚いているアウルムさん。その声は俺たちの話し声以上に響いている。「私には分かります。愚妹が今、何を考えているのか」「うん分かる」 ミクンが良く聞こえる耳を塞ぎながら頷いた。「何て可哀想な自分。何て哀れな自分。今の自分を見れば、きっと神様が憐れんでくれる……」「……手の付けようがない。守護獣様直々に罰を下されたというのに、相手が守護獣様とすら気付いていない……」 ナセルさんが吐き捨てるように言う。「まあ、でも、人間はやり直すことができるからさ、ね?」 ミクンがナセルさんの手にぶら下がって宥めた。「そうでしょうか……」「そうだよ。その様子がなかったら、キリキリ働かせるといいよ。羽根がないフェザーマンにできることなんて、言われるがまま働くしかないからさ」「……ハーフリングの神子様は、本当に世の理を知っているのですね」メーディウスさんが感極まる声で言った。「え? ヤダヤダまたそんなことを言ってあたしをからかおうったってヤダそんなマジな顔して言わないでよマジ恥ずい照れる」「そんなことを言われても困ってしまうし照れるので遠回しに言って欲しいそうです」「バカシンゴ!」 ゲシッとふくらはぎの辺りを蹴られた。もちろん神衣のおかげで痛くはないんだけど。「ミクン顔赤い」「赤くなってないっ!」 怒鳴ってから、ふいと顔をずらした。「ミクン?」「またか」 ミクンは小さく溜め息をついた。「自分がこんな哀れな目に遭って苦しんでいるのに、どうして誰も慰めてくれないのだろう。どうして兄さんも巫女さんも自分に優しくしてくれないのだろう。どうして……」 ……改心は難しいかなあ。「とりあえず、フェザーマンの輸送隊の話がしたい。エルフの長とドワーフの鉱山長とビガスの民長を集めよう。ナセルさんとメーディウスさんも来てほしい。……少々、いや多少……嫌な思いをするだろうけど」「多大な嫌な思いはもうすでに味わいましたよ」 ナセルさんは苦笑した。「あの妹に比べれば、エルフもドワーフもヒューマンも、いい人に決まっていますから」
last updateLast Updated : 2026-02-10
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第153話・金色

 俺は目を閉じて、原初の神殿にいるシャーナに意識を飛ばした。(シャーナ……シャーナ)(生神様……シンゴ様ですか?)シャーナの慌てた意識が伝わってくる。(ちょっと、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、フェザーマンの代表で話し合いをしたいんだ。何処か話せる場所を用意してくれないか?)(ヒューマン、エルフ、ドワーフ。フェザーマンですね。ならば広い場所がよろしいでしょう。準備しておきます。このこと、お呼びになる皆様は……?)(これからサーラに頼んで神託を伝えてもらう。その後、レーヴェやヤガリ、俺が迎えに行く)(畏まりました) 続いてまだ怒り足りないだろうサーラにも意識を飛ばす。(……なんだ、シンゴ) うわ怒ってる。まだ怒ってる。仕方ないけど。(エルフの長と、ドワーフの鉱山長と、ビガスの民長に)(話し合いの場を設ける話だろう。分かった。すぐに神託を下そう)(ありがとう)(シンゴ) 意識を切ろうとした時、呼び止める意識があった。(人間は、愚かだ)(知ってる)(何処まで知っているのかな)(だって俺も人間だったもの)(そうだったな)(だけど、誰かの為に泣くことも、それを耐えることも、それができるのは人間だけ)(…………)(だから人間は存在する価値がある。そう教えてくれたのはおじさんだった。俺はそんなおじさんに育てられた。だから、俺は信じてる。人間がどれだけ愚かでも、その逆の行動をとれる可能性があるんだから)(……シンゴの叔父上殿と、話がしてみたかった)(おじさんの言葉と背中が、今の俺を作ったって言ってもいい。もう……いないけどね)(だが、シンゴの胸に、行動に、その命は生き続ける) サーラの意識から刺々しさが消えた。(だから、叔父上殿の背中を追って、生きるといい)(そのつもりだ) 通信を切って、俺は円と十字を組み合わせたシンボルを見上げた。「これが、フェザーマンの神殿……聖域ですね」「はい」「原初の神殿で、ヒューマン、エルフ、ドワーフと話し合いをしたいと思います。これから先のことについて……ナセルさんとメーディウスさんにもご同行願えるでしょうか」「当然です」 ナセルさんは大きく頷いた。「わたくしの……わたくしの翼があ!」 ……まーだ泣き叫んでる。 俺の表情にナセルさんも気付いたのか、アウルムさんより濃い、栗色の髪
last updateLast Updated : 2026-02-11
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第154話・落ちた存在

「翼を失えば、金の瞳はともかくヒューマンやエルフで金の髪はそう珍しくはない。自分が貶められたと、そう思ってるのでしょう……」 その時、ごうと炎が渦巻いて外から飛び込んできた。鮮やかな緋色の炎が人の形となり、着地する。 炎の化身は、美しいおねーさん……サーラの姿となって、顕現した。「ひっ」 アウルムさんは息を飲んで後ずさった。まあしょうがないね、自分の翼を焼き尽くした炎だもん。 火にトラウマを抱いてもおかしくない。 怒らせた相手が悪すぎたってのもあるだろう。 俺だったら絶対怒らせたくないね。いつもにっこりしているけど、無窮山脈の溶岩の守護獣だ、怒ったらそれこそ火山のようなものなんだし。  様子を伺ってみると、サーラはご機嫌は斜めだが多少は冷静さを取り戻したようだった。「三者に神託を送った。それぞれ、迎えを待つとの連絡だ」「よかった」「ヒューマン、エルフ、ドワーフ、フェザーマンが一堂に会するなど、この世界が成ってから初めてのことだろう」「ハーフリングも入る?」 ミクンに聞くと、ミクンは小さく笑った。「あたしたち草原の民は、誰か一人がみんなの代表として出て行って決まり事押し付けられても誰も従いやしないよ。自由の民だもん。それに心惹かれるやつらだけが従うよ」 ハーフリングもまた、誇り高い人間だな。 自分の道を決めるのは主でも年長者でも神でもない、自分だと言う自負。ミクンが俺に従うことを選んだように、それぞれがそれぞれの道を行くことを良しとして、違う道を選んだ人間を貶したりはしない。文字通りの自由の民。「じゃあ、とりあえず、原初の神殿に行くけど、ナセルさんとメーディウスさん……」「アウルムもお願いできますか」 メーディウスさんの言葉に、俺の脳みそは一瞬働かなくなり、我に返ったら勝手に口にしていた。「……なんで?」 うん、なんで? だ。フェザーマンを追放されて翼を失ったアウルムさんを連れて行って、どうしようと言うのだろう。「あれの言動は残った皆の恨みを買っています。自分一人が神に選ばれた、自分の為に神は降臨する、と。……あるフェザーマンと友情を結んだヒューマンと出会った時、相手を友人より上に見ろと強制してヒューマンを大層に怒らせてその友情を潰したこともある」 うーわ。最悪。「今回、結局最初に生神様に出会ったのはアウルムでした。翼
last updateLast Updated : 2026-02-11
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第155話・守るべきもの

 視界が切り替わって、目に飛び込んできたのはやっぱり円と十字を組み合わせたシンボル。これが俺の紋章らしい。そう思ってみると何となく親しみを感じる。「お帰りなさいませ」 シャーナが深々と頭を下げた。「留守中、何もなかった?」「敢えて言うなら、魔獣が」 低い声でシャーナが言う。「魔獣?」「はい、さして力のない、しかし明らかにシンゴ様と正反対の位置に坐する存在に生み出された獣が、この神殿の結界付近を嗅ぎまわっています。生神様と信者にしか見えない神殿ですので、魔獣たちは何も見つけることはできず去っていきますが」「……子供たちが外に出たがったりとかは」 シャーナが目を伏せる、それだけで子供たちが外に出たくて大騒ぎしていることが伝わってくる。「小アシヌスや小灰色虎に、言い聞かせておいて。絶対に子供たちをこの神殿の結界の外には出さないようにって」「無論です」 シャーナは力強く頷いた。 本当は、神殿の結界の外、広い世界に出してあげたい。再生しつつある世界をその五感で存分に味わってもらいたい。 だけど、魔獣がいるとなると話は別だ。 敵対勢力がいて、世界の破滅を願う者がいる。そんな世界に、子供を何の守りもなしに放り出しはできない。 もちろん、子供たちは俺が創った神具を持っている。神威【帰還】を一回だけ使える神具だ。三人の子供たちに危険が及べば、神威が発動して原初の神殿に戻ることができる。 でも、それを利用して原初の神殿に入り込もうとするヤツがいたら……? それだけはさせない。 あの子たちはビガスから逃げてきた家族が、一番安全な場所にいてほしいと頼まれて預かった子たちだ。少なくともビガスが安全に子供だけでいられるようになるまでは、俺が責任を持たなきゃいけないんだ。 親に託された子供だ。 守る。絶対に。 ……何があろうとも! レーヴェとヤガリがエルフとドワーフのトップを迎えに行き、俺はビガスへ向かった。 ビガス居住区の中央にある祠に到着した俺を出迎えたのは、村長のダンガスさんとその息子のアンガスさん、それから、アンガスさんと一緒に神殿に辿り着いて、娘と息子を俺に預けてビガスに戻った母親……マトカさん、とか言ったっけ。「大事なお話がるとかで」「うん。でも、その前に、アムリアから逃げてきた人たちは辿り着いた?」「やはり生神様の行いでござい
last updateLast Updated : 2026-02-12
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第156話・贈物

「神殿での話し合いとは別件だと?」「ああ。……他の人たちにも頼みたいけど、俺を生神だと明かさないでほしい」「……理由を聞いてもよろしいでしょうか」「生神がどれか一つの種族に肩入れしているとなると、これから先の、異人種との協力しての世界再建計画が崩れる。エルフ、ドワーフ、フェザーマンにも言ってあるけど、直接会った事がある人以外には、俺は、西の再建の為に東から人を連れてくる役割を負った旅人。そう言う感じで頼みたい」「……分かりました」 ダンガスさんは頷いた。「生神様が平等でなければ、この先の話し合いも成り立ちませんな。何れかの種族に肩入れすれば多種族から文句が出る、大丈夫です、私は生神様に助けられた身、その願いとあれば貫きましょう」「ありがとう」「いきが……ではありませんね、何とお呼びすれば?」 マトカさん……俺の記憶にかすかに残る母親に似た顔立ちをした、神殿の二人の子供の母親が聞いてきた。「シンゴ、と。それが、俺の名です」「……では、シンゴ様。私の子供は……スィンとフィリャは、健やかでありますでしょうか」「様もいらないよ。……元気だってシャーナが言ってた。ただ、神殿の近くに魔獣がうろつくようになったらしい。もちろん結界があるし、いざって時安全に神殿に戻れる神具を渡してはあるけれど、……子供たちが自分から外に出たがっているらしいとなると。……やっぱり、親御さんの手元に置いた方が……」「二人とも、わんぱくですから。そう言うところ、亡くなったあの人にそっくり……」 マトカさんは一瞬遠いところを眺め、目を細めた。「イリスも、スィンとフィリャはもうほとんどいない同世代の子供たち。兄弟のようなものだ。叶うならば手元に置いて、育てたい。しかし」 アンガスさんも真剣な目で俺を見た。「ビガスはまだまだ安全とは言えません。アムリアから来た民全員を信用できるわけもなく、まだ路上で寝起きしている者もいます。そんな所に子供を戻しても、目が行き届きません。世界が再生するまでとは言いませんが、せめてビガスがもう少し安全になるまで、神殿にお預けできるとありがたい」「しかし……俺は幼い頃両親を亡くしたから分かります。友達と、親代わりがいたとしても、それで満足できるほどに彼らは幼くはない。親……あるいは親以上に頼れる誰かがいないと、……寂しいものです」「今は寂しく
last updateLast Updated : 2026-02-12
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第157話・愛情

 ダンガスさんと俺が原初の神殿に着いた時にはまだエルフもドワーフも来ていなかったので、俺は中庭に向かった。 きゃあきゃあと笑い声。 少し大きくなった小灰色虎と、小アシヌスと転げ回って遊んでいる三人の子供。「やあ」「あっ! お兄ちゃん!」「ビガスを助けてくれたお兄ちゃんだ!」 わちゃわちゃと寄ってくる三人と、その後をついてくる神獣。「はいお兄ちゃんだよ。今日はお土産を持ってきた」 お土産? と目を輝かせてくる三人に、それぞれセーターと革靴を差し出す。「これ……」「おかーちゃんの匂い、する!」 スィンとフィリャが目を輝かせる。「これ、おんなじだ……」 イリスがじっと靴を見て、そして足に履いているボロボロの靴と見比べる。「おとうさんが創ってくれたのとおんなじ! でもこっちの方がピカピカしてる!」「何で? おなじ匂いなのに、何でこっちがほわほわしてんの?!」 子供たちが着替えたがらない、と嘆いていたシャーナの、その理由が分かった。 生きていくのがギリギリの中で、それでもある中で一番いいものを使って作った、親の愛情たっぷりの服と靴。それが、嬉しかったんだ。「そう。マトカさんとアンガスさんに頼まれて持ってきた」「おかーちゃん、来ないの?」「おとうさんは来てくれないの?」「みんなは、ビガスで、一生懸命畑を耕して、みんなが自分たちでお腹いっぱいになれるように頑張ってる。もうちょっと外が安全になるまで、待っててくれって。これはいい子で待っていてくれているご褒美」 靴とセーターを見て、三人は聞いてきた。「これはおとうさんやおかーちゃんが作ってくれたの?」「ああ」 力強く頷くと、子供たちは喜んでセーターを抱きしめてくるくる回ったり、靴を履き替えてステップを踏んだりしていた。「よし。もう少し、いい子で待てるな?」「うん!」 破顔一笑、頷いた三人に笑い返して、俺は中庭を出る。 そこにナセルさんとメーディウスさんがいた。「可愛らしいですね」 ナセルさんが子供たちにつられた笑顔で言った。「あの子たちは?」「ビガスから逃れてきた子供たちです」 滅亡寸前のビガスからここに辿り着いた家族の子供で、ビガスが安全になるまで預かってほしいと頼まれた、と手短に説明する。「うちにも預かって欲しいのがいるんですが……」 ナセルさんは苦笑した
last updateLast Updated : 2026-02-13
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第158話・等しく

「ああ、それはいけません」 子供たちに見つからないよう物陰に隠れていたダンガスさんは小声で手を振った。「私が出て言ったら、スィンとフィリャは哀しい思いをするでしょう。イリスだけ喜ばせてもいけません、三人が笑顔で走り回れる地域にするのが私の仕事です」「ご立派だ、ヒューマンの村長殿」 ナセルはそう言うと、ダンガスさんの前に歩いて行って手を差し出した。「フェザーマンの長、ナセルです。公の為に私を堪える、その姿勢は素晴らしい。見習わせてください」「何と、フェザーマンの長ともあろうものがこんな年寄りに頭を下げずとも……。こちらこそよろしく、空の一族に会えたのは光栄です」 そこに、エルフの長フィエーヤさんと無窮山脈の鉱山長ヴェルクさんが到着したので、俺たちは場所を礼拝堂に移して話し合うことになった。「で、我々を聖地から連れてきた理由は」「相変わらずだなエルフ! 己がこの会議の主とでも言わんばかりに!」 フィエーヤさんの言葉尻にヴェルクさんの声が被さる。「怒鳴らないでください」 この二人の怒鳴り合いを見ていると、レーヴェとヤガリが仲がいいのが奇跡なのだと思う。特にヤガリがあまりエルフの言動を気にしないタイプだからよかったようなものの。 ……そう言えば無窮山脈で会ったときはレーヴェが一方的にケンカ吹っ掛けてたな。ヤガリがキレイにスルーしてくれたから助かったけど。「これは、この世界の再生・再建に必要な、異種族同士の協力を求める会議です。フィエーヤさんもヴェルクさんも、これでケンカを起こしたら、自分の一族を貶めることになりますよ」「ぐ……」「……う」 エルフとドワーフの言い争いが収まって、そして俺はあることに気付いた。「初対面ばかりですから、それぞれ皆さんに自己紹介してください。……ケンカはなしで」「大樹海の森エルフの長、フィエーヤ・シンニョーレだ」「ビガスの村長、ダンガス・ビガスと申します」「無窮山脈の鉱山長、ヴェルク・ムヌーク」「フェザーマンの長、ナセル・プテリュクスです」 シャーナがワインを四人の前に置いた。「ああ、ありがとう」「久々ですね、ワインなんて」「生神様が再生してくださったものですわ」 シャーナはにっこりと微笑んだ。「できればビガスでこれが作れればよろしいのですけど」「しばらくは無理ですなあ」 シャーナとダン
last updateLast Updated : 2026-02-13
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第159話・生きている限り

「種族間の協力、ですか」 ダンガスさんが頷いた。「望むところです。我々にできる事なら、何でも」 ナセルさんも頷く。「森エルフの林業、無窮山脈の鉱業、ビガスの農業。これは人間がこの先生きていくのに必要な財産で、財産は回さないと意味がないのです」「どうやって。街道は魔獣の群れで、レーヴェのような騎士や神子でないと危険で移動もできない。一部の商人が使っているような裏道を通れば盗賊共に襲われる」「フェザーマンに頼みます」 俺の言葉にナセルさんが大きく頷く。「今のところ、空を征く魔獣はいない。そして我らには神獣グリフォンがいます。木材、穀物、金属、如何なるものでも運びます。安全な空を通って」「なるほど……」「レーヴェ。森エルフだけで食糧を補給することは可能かい? 鉄や金属なしにやっていける自信は?」「ないな。森に集中すれば畑が出来ないし、畑に集中すれば木が切れない」「ヤガリ、鉱山には木や穀物がないと困るだろう?」「ああ。炎水が蘇った今、燃料としての木は必要ではないが、坑道の補強など、色々必要だし、おれたちドワーフもアシヌスのように土が食えればいいがそう言うわけにもいかん。食糧も絶対必要だ」「レーヴェ」「ヤガリ!」 フィエーヤさんとヴェルクさんがそれぞれレーヴェとヤガリに怒る。「でも、本心でしょう?」 ぐ、と二人の長が息を飲んだ。「こんなことで意地の張り合いしてても仕方ありませんよ」「生神様が……いらしてくれれば、そんなことをする必要はないではないか!」 フィエーヤさんが吠えた。「ヒューマンだけでなく、空の民フェザーマンまで乗り気のようだが、生神様がいらしてくれればこの不愉快な顔を見ずに済むのではないか?!」「言ってくれるな木こりが!」「何だとアリもどき!」 頭を抱えたくなった。 民の主だけあって、自分の種族が大事なのはわかるけど、こんな所にケンカ持ち出すなよ……。「まず一つ」 溜め息ついて、俺は指を一本あげた。「俺は永遠にいられるわけじゃありません」「生神が、この世界を見捨てると言うのか?!」「貴様のような気取った男がいれば見捨てたくもなる!」「ストーップ!」 俺は両手で机を叩きつけて、二人を黙らせ、聞いた。「今、何と言いました? 俺は、何者ですか?」「何とは……生神であろう」「そう、生神です。
last updateLast Updated : 2026-02-14
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第160話・白紙委任

「フェザーマンは喜んで協力します」 ナセルさんが立ちあがった。「元々我々は荒地で海藻を食べることでしか生きられぬ種族。空の民と呼ばれてもその生活は大変な苦労の連続です。それに比べれば荷運びなどお安い御用。我らが翼は生神様と共にありますよ」「最も神に愛されたと言われる種族が……」「愛されるに相応しくない者もいる。思い上がって旅立ち、帰ってこなかった者もいる。それは全ての種族に当てはまりませんか。もっともエルフらしい、ドワーフらしい、ヒューマンらしいと言われる人間ばかりで種族が成り立っているわけではないでしょう」「それは……」「質問なのですが、生神様」 考え込んでしまったフィエーヤさんとヴェルクさんを見て、今が好機と思ったのか、ダンガスさんが手をあげた。「はい、なんでしょう」「ハーフリングは? 草原の民は協力しないのですか?」「ふん、あんな小銭拾いの子の群れなど……」「それは偏見ですよ、ヴェルクさん」 くぎを刺しておかないと、長くなりそうだと話そうとしたら、代わりにサーラが話した。「草原に住んでいたハーフリングからは、自分たちが役に立ちそうなら協力するし、邪魔になりそうであれば近寄らない、との言伝を得ている。草原の十数名の民だけで何もできないだろうが、個人的に頼まれるのであればいくらでも、と」「守護獣様! 何故草原の民の擁護などを!」「ハーフリングは世界のことをよくわかっている」 サーラは淡々と告げた。「草原に住んでいた生粋のハーフリングを一緒にしてはいけないし、かつて仕事もなく裏家業に手を出さざるを得なかったハーフリングもただ責めてはならない。小さい身体で得られる仕事が少なく、生きていくには仕方ないことだった。そして、滅びの日に真っ先に倒れて行ったのは、彼らだ」「守護獣様……」「ハーフリングは役に立つことであれば協力すると言った。つまり、白紙委任状を私に預けたんだ。何か彼らで役立つことがあれば頼めばいい。ハーフリングは喜んで役立ってくれるだろう」 ヴェルクさんはしばらくぶちぶち言っていたが、なんせ自分たちの守護獣に白紙委任状を預けた一族だ、これ以上責めてもサーラを怒らせるだけだと判断したらしく、黙って椅子に座り直した。 しかし、白紙委任状とは。いつ何時持ってきたのかな?(ミクンに言われ、私が行ってきたのだ)(いつの間に)
last updateLast Updated : 2026-02-14
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第161話・世界の半分

 それから話は、細かい内容に入っていった。 送る穀物の量とか、今必要としている物資とか、何をすれば三カ所の生産地帯を渡れるか。 俺は黙って聞いていた。口出しはしなかった。 これは彼らが決めなきゃいけないことだ。俺が生神の権限で中に入ったら、また大騒ぎになるの確実だからな。 ……決して、話が難しくてついていけないわけじゃないぞ? ただ、こういうのはこの苦難の時に民をまとめ上げてある程度の人数を生き残らせた長達に任せるのが一番ってだけで。 時々噴出する種族間争い……主にエルフとドワーフ……は、サーラが止めてくれた。……てか止めさせてた。 会話が罵声に変わる直前くらいに、目の前に紅蓮の炎が燃え上がるんだ。止まらないわけないだろ。 四長……特にナセルさんが非常に協力的で、「それは素晴らしい! 大丈夫です、持って行けます、必要とあらばすぐにでも!」とか「さすがは◯◯の長、考えが深いですね。若輩の私には思いもつきませんでした」とか褒め殺してるので、ダンガスさんだけでなくフィエーヤさんとヴェルクさんもまんざらでもない顔をしてた。 これで空の一族の見方もだいぶ変わったろう。 白熱した談義は夜まで続いて、いい加減四長の喉が枯れてきたところで、俺が手をあげた。「まだ話を詰めなければならない所はありますか?」「この煤ジジイが黙れば……」「このお高いじいさんが黙れ……ば……」 紅蓮の炎が燃え上がる。「……失礼した、ドワーフ殿」「こちらこそすまん、エルフ殿」 ……まあこの二人の仲は一歩前進したと言っていいのかな。「で、話は……」「大体は決まりました」 見た目一番年寄りのダンガスさんが頷いた。「後は行動しながら試すしかありませんな」 とにかく、とダンガスさんは言った。「間もなく畑の刈り取りが始まります。生神様のおかげで刈手も増えております。食糧も皆様方の元へ送れるかと」「生神が再生してくれた森の中に獣もいる。その毛皮や肉も出せる」「神聖金属も取れ始めた。対魔獣対魔物用の武器も送れるし、生活雑貨も今大急ぎで作っている」「それを我々は全力で運びましょう。ビガスにも、大樹海にも、無窮山脈にも、空は平等にあるのですから」 俺ははーっと息を吐いた。 よかった。 ビガス、大樹海、無窮山脈の物資が回れば、世界の半分は助かったも同じ。 俺も未だ分か
last updateLast Updated : 2026-02-15
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