「……分かっております」 ナセルさんも簡単にその未来が想像できたんだろう、顔が暗くなった。「このことは妹には言いませんよ。今だ翼の喪失で自分を憐れんでいる愚か者には」 顔をぐしゃぐしゃにして泣き喚いているアウルムさん。その声は俺たちの話し声以上に響いている。「私には分かります。愚妹が今、何を考えているのか」「うん分かる」 ミクンが良く聞こえる耳を塞ぎながら頷いた。「何て可哀想な自分。何て哀れな自分。今の自分を見れば、きっと神様が憐れんでくれる……」「……手の付けようがない。守護獣様直々に罰を下されたというのに、相手が守護獣様とすら気付いていない……」 ナセルさんが吐き捨てるように言う。「まあ、でも、人間はやり直すことができるからさ、ね?」 ミクンがナセルさんの手にぶら下がって宥めた。「そうでしょうか……」「そうだよ。その様子がなかったら、キリキリ働かせるといいよ。羽根がないフェザーマンにできることなんて、言われるがまま働くしかないからさ」「……ハーフリングの神子様は、本当に世の理を知っているのですね」メーディウスさんが感極まる声で言った。「え? ヤダヤダまたそんなことを言ってあたしをからかおうったってヤダそんなマジな顔して言わないでよマジ恥ずい照れる」「そんなことを言われても困ってしまうし照れるので遠回しに言って欲しいそうです」「バカシンゴ!」 ゲシッとふくらはぎの辺りを蹴られた。もちろん神衣のおかげで痛くはないんだけど。「ミクン顔赤い」「赤くなってないっ!」 怒鳴ってから、ふいと顔をずらした。「ミクン?」「またか」 ミクンは小さく溜め息をついた。「自分がこんな哀れな目に遭って苦しんでいるのに、どうして誰も慰めてくれないのだろう。どうして兄さんも巫女さんも自分に優しくしてくれないのだろう。どうして……」 ……改心は難しいかなあ。「とりあえず、フェザーマンの輸送隊の話がしたい。エルフの長とドワーフの鉱山長とビガスの民長を集めよう。ナセルさんとメーディウスさんも来てほしい。……少々、いや多少……嫌な思いをするだろうけど」「多大な嫌な思いはもうすでに味わいましたよ」 ナセルさんは苦笑した。「あの妹に比べれば、エルフもドワーフもヒューマンも、いい人に決まっていますから」
Last Updated : 2026-02-10 Read more