All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 141 - Chapter 150

201 Chapters

第142話・所有権

 おどおどとグリフォンが俺の後ろに下がる。「ああ、こいつは」「大丈夫です。所有権は妹から貴方様に移ったことは承知。元々グライフを共に追放するのは哀れだと言う意見がありました。愚妹が所有権を激しく主張したが為、やむを得ず同行させただけ。グライフの気持ちもわかりますし、生神様が所有するのであればグライフも喜ぶでしょう」「そっか、お前はグライフって言うのか」 頭を撫でてやるとグリフォン……グライフはその手に重みを預けてきた。「いい子だなー。よしよし。良くガマンしたなー」 ぐるぐるとグライフは心地よさそうに喉を鳴らす。「そ……そんな……そんな」 少女の声が震えている。「そんな獣が許されて、何故わたくしが許されないのです! お兄様! その御方が生神様だと言うことを、わたくしは知っておりました! 知って、ここまでご案内申し上げたのです! その功績を……!」「功績?」 レーヴェが軽く鼻を鳴らした。「あれだけ奴隷商人と言っておきながら」「わ、わたくしの言うことに間違いはありません! お兄様!」「お前の言うことで正しいのは千に一つもない」 ナセルさんの声もサーラに負けず劣らず冷たいものだった。「起きたことを自分の都合のいいように解釈し、自分を正当化しているだけだ。お前の言うことを信じるフェザーマンは、最早誰もいない」 少女の顔色が変わっている。「大変不愉快な思いをさせて申し訳ありません。では、参りましょう、生神様」「うん」 俺は自在雲を取り出した。「ぐるる?」「うん、お前に乗ってみたい気もするけど、ブランもいるからこっちに乗るよ。いずれ存分に乗らせてもらうから」「ぐる!」 自在雲にこちらのメンバーを全員乗せる。「ま、待って! お待ちください! お兄様! 生神様!」 …………。「気にするな、シンゴ」 サーラが言った。「もし本気で戻りたいのであれば、自分の力で戻ってきて頭を下げるべきだ。私はそう思っている」「……そうだな」 俺は頷いて、自在雲の柔らかさに感心するミクンを落ちないように真ん中に乗せ直してから、グリフォンに乗ったナセルさんたちと共に宙に浮いた。「お兄様ーーーー! 生神様ーーーー!」 悲痛な悲鳴に後ろ髪を引かれながら、俺は先導するグリフォンに合わせて自在雲を走らせていた。
last updateLast Updated : 2026-02-05
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第143話・神託

(神託って……サーラ?) チラリと見た彼女の横顔は、少し愉快に笑っていた。(ああ。私が下した)(なんでまた)(不安になったからな) 自在雲に横座りしてサーラは涼しげな瞳を前に向けながら、しかし意識はしっかりとこっちを向いていた。(フェザーマンがあの娘のような者ばかりであれば、最早救うべき価値もないと思っていた。だから)(……でも、俺ができるだけ生神ってことをバラしたくないって分かってたろ?)(分かっていた。だが、それ以上に、フェザーマンと言う人間が腐っているかどうかを確かめなければならないと思った。シンゴとて、あの娘の言い草に相当腹を立てていたろう?)(……ああ)(故に、この神託をどう受け止めるかで、フェザーマンを試みるつもりだった。そして今も試みている。神託に喜び勇んでやってくるか、あの愚かな娘を結び付けて慌ててやってくるか。今のところは合格だが……さてどうなるか)(あの娘は……どうするんだろう)(ここから奈落断崖までは結構ある。フェザーマンの翼でも疲れるくらいの距離だ。それを飛んできて心から謝れば、多少は許してやろうと言う気もないではないが) サーラは軽く首を竦めた。(あの様子では無理そうだな)「生神様、申し訳ありません」 ナセルさんが自在雲の脇にぴったりグリフォンを飛ばしながら言った。「愚妹のことでさぞかし腹をお立てになったでしょう。申し訳ございません」「あの……妹さんのことですが」 ナセルさんはちょっと顔をしかめた。「アウルムが、何かご無礼を」「いえ……何故、追放……されたんですか?」「生神様はアウルムとお話になりましたね」「ええ」「あの通りの愚妹です。自分は神を信じている、だから神は自分の為に力を下さる、だから自分は偉いのだ、と言うのがあれの言い分です。私がフェザーマンの長になってからそれが更に酷くなりました。長の妹の言うことを聞けと……。あれだけ懐いていないグライフを連れて行くことに拘ったのも、グリフォンが古の昔、フェザーマンに下された……神獣だからこそ。それなのに自分に従わない神獣はいらないと、主としてふさわしくない行いをしている上に忠誠だけは要求するのですからね……。グライフがあれを振り落とし攻撃を仕掛けたとしても私は何も驚きません。それだけのことをしていたのですから」「…………」「しかし、それで
last updateLast Updated : 2026-02-06
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第144話・奈落断崖

「仕方がないですよ、異種族がぞろぞろパーティー組んでいたら、変な誤解されるのも」 でも、と俺は言葉を続けた。「異種族間の差別をなくす、それも俺の目的です」 ナセルさんは俺の目を見た。 淡い紫の瞳は俺を真剣に見ていた。「フェザーマンの皆さんには、神に選ばれた種族と言う自負があると思います。ですが、それではいけない。平地の民も、森の民も、大地の民も、草原の民も、空の民も、皆が平等に生きていける世界を作りたい。足りないところを補い合って共に生きる世界を作りたいと思っています」「……生神様」 ナセルさんはどちらかと言うと無表情で、でも瞳は真剣に、聞いてきた。「本当に、そんな世界が、できるのでしょうか」「その為に俺が選ばれた、そう思っています」「フェザーマンが、対等に扱われる世界……」「はい」「できれば、嬉しいです」 ナセルさんは笑顔を浮かべた。「我々は他人種とはあまり交流しない民です。断崖の民とも呼ばれています。この通り、足が弱く、地に足をつけている人種と話すことすら難しい。神秘の一族と呼ばれているようですが、実際は他人種と力を合わせることすらできない一族です。我々が皆さん、他人種のお役に立つ……それが出来れば、我々は、とても嬉しいです」「そうですか」「そうです」 ナセルさんは、本当に嬉しそうに笑った。 周りで聞いている人たちは? チラリと視線を走らせる。「大丈夫だよ、シンゴ」 ミクンが小声で言ってきた。「フェザーマン、全員、喜んでる。シンゴの言ったことに喜んでる」「そっか」 ほっとした。フェザーマンがあのアウルム……だっけ、あの妹さんみたいな考え方をする人ばかりじゃなくて。 もちろん、他にアウルムさんのような考えの持ち主がいないってわけではないだろう。その方が自然だ。だけど、平等に扱われることに喜べる人たちが、少なくともここに五人、いるのだから。 ふと雲から地面を見下ろす。 眼下に見える遠い地面は、何故か急激な上り坂に見えた。「フェザーマンと交流しようと言う商人などは、大抵ここで諦めます」 ナセルさんがそう説明してくれた。「奈落断崖の頂上に向かう「試練の坂」、足で歩く一族でも辛い急激な上り坂です」 そう言えば奈落断崖は千メートルってヘルプに書いてあったな。元々の地面が海から高い位置にあったとしても、標高差は結
last updateLast Updated : 2026-02-06
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第145話・巫女

 千メートルもの断崖絶壁。そのあちこちに、穴が空いている。 あれが住居……。 そうか、足が弱いから、平地に建っている家には入りにくいのか。 確かに、フェザーマンは他種族と一緒に暮らすには向いてないなあ……。 グリフォン五体が並んではいれる程デカい穴に、俺たちは着陸した。 狭い穴だと思っていたけど、実際はかなり広かった。 それもそうか、あんな大きな翼を持っていて、足が弱いから飛ぶしかない一族が生きていくには、翼がぶつからないくらいの広さがなければ無理だろう。 翼を広げて俺たちの案内するナセルさんも、翼が俺たちにぶつからないように気を使って飛んでいた。 ドアも何もない廊下を歩いていくと、開けた場所に出た。 原初の神殿にあったのと同じ、円と十字を組み合わせたシンボル。始まりの神に捧げられた証と言う。 その前に、フェザーマンの女性が一人、座っていた。 翼は力なく下に垂れている。 俺より年上に見えるが中年と言うほどでもない女性が、膝をつき、頭を下げた。「生神様……」「巫女のメーディウスです」「は……初めまして」「どうぞ、顔をお上げください」 メーディウスさんは静かに言った。「私は巫女です。神が巫女に畏まる必要はございません」「は、はあ」「しっかりしろ、シンゴ」 サーラが背中をバシッと叩いた。「仮にも生神が頭を下げて回る必要はない」「いや、分かってんだけど……」 地球の日本で周りの人間は全員上の立場だったから、……自分のことを卑屈とは思わないし、おじさんも「無理に頭を下げる必要はない」と教えてくれたけど、俺の為に何かしてくれる人、敬意をもって接してくれる人を相手に頭を下げるなって方が無理だろう。「すまん、巫女殿」 サーラが頭を下げた。「この生神は今一つ自覚が足りないんだ。生神と言う立場をのんでかかることができない。だからどうにも腰が低くなる。あまり気にしないでくれてもらうとありがたい」「ええ、分かっております、守護獣様」「ほう」 サーラが感心したように息を漏らした。「一目で私を守護獣と見抜いたか」「ええ。燃え上がる焔。無窮山脈の守護獣様。貴方の御声は解き放たれた溶岩の如く届きました」「ふわあ……」 ミクンが感心している。 確かに、今まで、俺が端末を使うところを見もせずに、サーラが何か力を振るうこともなく、こ
last updateLast Updated : 2026-02-07
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第146話・希望

「そうか、前の生神がフェザーマンに与えた神との繋がりの証……かつて神子だったフェザーマンに生神が与えた、神と繋がる力。貴方は、その末裔なのだな」 ? きょとんとした俺に気付いたんだろう、サーラは思念で教えてくれた。(リザー家……シャーナ・リザ―と同じだ)(え?)(リザー家は生神に仕えるために最後まで生き残る義務を課せられた。それとは反対に、前の生神に最後まで仕え通した神子のフェザーマンが、最後の褒美としてその一族の血に残した神威。それが神との距離を近付けた。フェザーマンを神秘の一族とするのはその為もあった。遠い昔の話で忘れていたよ) サーラが遠いって言うなら相当昔の話だなあ。千年以上の単位だろうなあ。万年かも知れないなあ。「その通りです、生神様、守護獣様、そして神子の皆様方。私の先祖はかつて生神様にお仕えし、世界再生をお手伝いした神子。その功績を称えられ、神子の血筋の女に神を感じる力を与えられました。フェザーマンは常に神に見守られている……それがフェザーマンの生きる縁になりました。こんな断崖絶壁で暮らすしかできない私たちに、見守ってくれていると感じさせて下さる……」「だが、世界が破滅に向かいだしてから、貴方の力では神を感じられなくなったのではないか?」「……はい」 少しためらって、メーディウスさんは頷いた。「ですが、私は言えませんでした……。神がフェザーマンをお見捨てになったと、どう話せばいいのでしょう。その間にも、奈落断崖は崩れつつあり、神の御声を聞かせろと何人ものフェザーマンが押しかけて……私は何も言えず……多くは神はフェザーマンを去ったと言って、ここから消えていきました」「何処へ?」「グリフォンの翼に乗って、高みへ、高みを目指して」「それって……神のいる世界ってこと……?」「フェザーマンは神に愛でられた一族。ならば、扉を叩けば開かれる、彼らはそう言って、飛んでゆきました……」「……無駄なことを」 サーラは低く呟いた。「神界とモーメントは、重なり合って存在している二重世界……そして決して交わらない世界。フェザーマンが神秘の一族と言っても、神界への扉を出入りできる人間は、神子、あるいは、神に認められた人間だけだ」「ええ。でも、自分たちはフェザーマンだから、と……」「……思い上がりだ」「サーラ?」「なあミクン、お前に聞き
last updateLast Updated : 2026-02-07
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第147話・理解

「あなたは分かっておられるのですね、ハーフリングの神子殿」 メーディウスさんは座った状態のまま、深々と頭を下げた。「この世に生きる者が本来そうしなければならないことを。神ではなく、己の力で働かなければならないということを」「え? いやいやあたしの勝手な思い込みだしそんなフェザーマンの巫女様に頭下げられるなんてちょっと頭上げてよ恥ずかしい」 ミクンがぶんぶんと手を振る。顔が真っ赤。腐りかけた草原で長い間を過ごし、両親やおばあさんからハーフリングがどう思われているか聞いて覚悟の上で俺たちについてきたのに、神秘の種族と呼ばれるフェザーマンの巫女に頭を下げられるなんて思わなかったんだろう、彼女にしては珍しく照れている。「旅立っていったフェザーマンたちに聞かせてやりたい言葉でした。やはり地に足のつかない一族は神に近いと思われ、思いあがったのでしょう。そして、恐らくは生神様とハーフリングの神子殿は同じ意見と思われます」「何で?」「もし生神様がフェザーマンを優先し、彼らが望んだとおりに助けに来たのであれば、そのような意志を持つハーフリングを神子になどしてはいない筈。同じ考えを持ち、ハーフリングの考えを尊重する、そしてエルフとドワーフと言う共にいることをも拒むような二種を等しく神子として扱い、御二方も互いを神子として認めあっている。フェザーマン以外には膝をつかぬ筈のグリフォンや、孤高の野獣、灰色虎の幼獣ですら、貴方とは直接関係のない無窮山脈の守護獣様までもが貴方に従っている。全てを平等に愛する生神様です」「いや……俺が勝手に助けただけなんです」「勝手に助けただけでも、助けられた相手は恩義を忘れません」 メーディウスさんはおっとりと微笑んだ。「ですから神子の方々はついていらしたのでしょう?」 何となく振り向いた。 みんな笑っていた。 レーヴェも、ヤガリも、ミクンも、サーラも。いないけど恐らくはシャーナも。 ブランは少し不満そうに前脚で土を掻いていたけど、グライフが嘴を寄せる。何か感じたんだろう、ブランも顔をあげてこっちを見た。「そう、ですね」 レーヴェは珍しく彼女なりに敬意を尽くした話し方をする。「生神がシンゴでなければ、我々は今ここにいないでしょう」「そうだな。生神ではない、シンゴだからおれたちはついてきた」「シンゴがお人好しだから心配して
last updateLast Updated : 2026-02-08
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第148話・新しいお役目

「何すんだサーラ」「何をしているんだ、ほめてやっているというのに」「背中を全力で叩くのがほめるって意味?」「聞いてないからだろう。何を考えていた?」 それは頭の中で聞けばいいだろうに。「な・に・を・か・ん・が・え・て・い・た?」「分かった、喋るよ、喋るから、そのぜんっぜん笑ってない笑顔やめて」 サーラが頭を引っ込めたので、俺はナセルさんに向かって話し出した。「グリフォンはどれくらいの数いるんでしょうか?」「グリフォンは神獣ですから、大事に守ってきましたので……主がいない者も含めて二百頭ほどは」「なら行けるかな」「我々を、荷運びに?」「あー、嫌なら嫌って言ってくださいね。フェザーマンにもプライドがあるでしょうから、いきなり荷運びの仕事をしろなんて言えないし」 思いついただけだから何とも言えないし。「いえ、生神様のお考えであれば。ただ、何故そのような考えに至ったのかを教えていただけないでしょうか」「今まで、俺が再生してきた大樹海、無窮山脈、ビガス」 俺は指折り数えて言った。「林業、鉱業、農業。どれも人間が生きるには必要なもの。だけど、それが回らないと何処も回らない。俺はできるだけ生神の力を使わなくてもみんなが生きていけるようにって考えたんです」「なるほど……」「街道沿いは魔物が出ます。他の人間が旅をするのは至難の業です。だけど、今まで、空に魔物が出たことはない。フェザーマンとグリフォンなら、安全な場所を、最短距離で、移動することができる」「つまり、他人種との交流も出来、親しみを持ってもらうこともできる……」「そうなればいいなあ、と、思っているんですが」「なりたいです」 うお、食いついてきた。「我々がグリフォンを使って大樹海や無窮山脈、ビガスに荷を運べばよいのですね? その程度ならお安い御用です」「いいんですか?」 思わず俺は聞き返した。「神秘の一族と呼ばれる皆さんが、荷運びに……と思わないんですか?」「いいえ」 ナセルさんは首を大きく横に振った。「奈落断崖をご覧になれば分かると思いますが」その視線が外の方に向く。「私たち一族はこの断崖に住んでいる。ですが、ここは不毛の地です。木の一本も生えない、食べられる草も獣もない、海へ行って海藻や魚を取るしかない。他の種族の手を借りようにも、ここまで来てもらうのが困難
last updateLast Updated : 2026-02-08
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第149話・怒らせた相手が悪い

 アウルムさんは、淡い金の髪はくしゃくしゃ、羽根も毛羽立ち、ここまで必死に飛んできたんだろう、息を切らせながら俺を睨んでいる。「お前は追放したはずだ」 ナセルさんは冷たい声で言った。「出て行け。失せろ」「わたくしのグライフを奪ったばかりかフェザーマンの誇りまで地に落とす、そんな者が生神様であるはずがありません!」「まだそんなことを言っているのか」 ナセルさんはアウルムさんに背を向けた。「生神様は、真っ先にフェザーマンを助けてくれるはず! 土臭い一族を優先するだなんて、そんなこと、そんなこと!」「土臭いね」 サーラが出てきた。炎の守護獣の最近の体感気温が絶対零度なのは気のせいか?「だが、土に触れないと植物は取れない。貴方達が海に入らないと海藻や魚が取れないのと一緒だ。その植物である穀物を欲するフェザーマンが、土の一族や草原の一族を、土臭い、と?」 あ、ヤバい。 表面的には笑顔を絶やさなかったサーラから、表情が消えている。「みんな、俺の後ろに。そっちのフェザーマンの方々も」 アウルムさんに掴みかかろうとしていたフェザーマンたちが、俺の言葉の意味とサーラの変化に気付き、慌てて走ってくる。 サーラは、フェザーマンが全員俺の後ろに来たのを確認して……。 燃え上がった。「思いあがるな空の末!」 ぐお、と炎が渦を巻く。 無窮山脈の奥底に眠り、ドワーフの神聖金属加工に力を貸すマグマの化身は、ついに本気で怒った。「空にあるから多種族と交わらねば生きられぬ空の民が、地の民を、侮辱する?! 今一度言ってみよ……今一度言ってみよ!」「ひ、ひぃっ!」 サーラの逆鱗に触れたアウルムさんは、その怒りの炎に取り巻かれ、ガタガタと震え出す。 土臭い、と彼女が言ったドワーフの守護獣は、もう誰も止められない。「土の民は皆、真面目に日課をこなし、手にマメを作り、身体を痛めつける鉱山の仕事を請け負っている! 皆、何も文句を言わずに! 我はその守護獣であることが誇り! 我が存在理由! 我の誇りと存在理由を侮辱した汝に、如何なる神の救いの手もない! 土の民を生み出せし神に変わり、守護獣の我が汝を食らうが、構わぬか!」「うーわ、サーラ、マジ怒ってる」 ミクンが俺の背中から顔を出して呟いた。「怒ってくださったんだ……おれたちの為に」 ヤガリが喉に詰まったよう
last updateLast Updated : 2026-02-09
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第150話・自業自得

(サーラ……サーラ!)(邪魔をするな!) 燃えるような思念が吠えた。(我はこの娘を食い殺す!)(ダメだ!)(何故邪魔をする! この娘は我を侮辱した、そうである限り許すわけにはいかん!)(貴方は炎の守護獣だが、俺の神子でもあるはずだ!) 俺は必死に思念で説得する。(神子が怒りのままに人間を殺したとなれば、生神への信仰はどうなる!)(……!)(生神は生き残った人間を助けるのが使命だ! それがどんな人間であっても! 罰する事は仕方ない、だけど殺すのはダメだ!)(なら……ならば!) サーラの思念は、本当に限界ギリギリのところで踏みとどまっているので、彼女の要求をのまないわけにはいかなかった。(……分かった。それでサーラの気が済むのなら) ぐおう、と炎が収縮し、アウルムさんにぶつかる。 絹を裂くような悲鳴が広場中に響き渡り、反響し……。 その反響が消えて、ようやっとサーラは炎を引っ込めた。「え? あそこまで怒って、食い殺さずに炎を引っ込めたの?」「食い殺すより残酷かもしれないけどね」 俺の呟きに、レーヴェ、ヤガリ、ミクンは俺の顔を見る。 俺はアウルムさんを指した。「あ、ああ……ひぃっ」 彼女の細い手は背後をまさぐっている。 あの美しかった淡い金色の翼を探して。 でも、今はその背には何もない。 呪詛のかかった炎で焼かれた翼は、再生しない。「これで汝は空の民から外された」 まだ火の粉を散らせながら、淡々とサーラは告げる。「地に生きる人間がどれだけ苦労するか、一生思い知るがいい」「いやっ……いやああああああ!」「自業自得だ」 ナセルさんがその姿を見て呟いた。「アウルムが空へ旅立たなかったのは、この世界を見限ったのではない、単にその度胸がなかっただけだ。あれ以上フェザーマンの名誉を侮辱する妹を見てはいられなかったから、追放した。なのにあのような暴言を吐いて……」 アウルムさんに背を向け、戻ってきたサーラにナセルさんは頭を向けた。「愚妹の言動、兄として謝罪いたします、守護獣様……。貴方様の下した罰は正しいものです。翼持つことを誇りとする愚妹への侮辱の罰は、翼を奪うことで果たされた」 サーラはナセルさんに軽く手をあげて応じてから、俺の前に来た。「済まない」「サーラ」「シンゴの神子である己のことを忘れていた。生神
last updateLast Updated : 2026-02-09
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第151話・汚名

 サーラの肩が上下しなくなったのを確認して、俺はその肩を叩いた。「サーラが正しいよ。でも、殺しちゃダメだ。アウルムさんは確かにドワーフやハーフリングを露骨にバカにした。だけど、殺したら、それ以下の行いをしたことになる。何より、アウルムさんを殺すことによって、無窮山脈そのものが人殺しの汚名を着る。サーラは無窮山脈の守護獣で俺の神子だ。それを忘れちゃいけない。俺の為にも、ドワーフたちの為にも、思いとどまってくれてよかった」「……ああ」 低い声でサーラは言う。その奥底に未だ燻る炎。「少し頭を冷やしてきてもいいだろうか。……すぐに戻る」「ゆっくり冷やしてきて」 サーラは炎に姿を変えると、熱風を伴って外へと出て行った。「……ふう」 俺は冷や汗を拭った。「別に止めなくてよかったのに」「そうもいかないだろ」 ミクンのブーイングに、首を横に振る。「サーラにも言った通りだけど、サーラが本当に守りたいドワーフと無窮山脈に汚名を着せるわけにはいかない」「済まないシンゴ」「何でヤガリが頭下げるの」「サーラが無窮山脈とドワーフを大事に思っていてくれたことが嬉しくて、彼女を止めることなど考えられなかった。シンゴにも汚名が被ることになるとも思わず……」「ああ、それはいいんだ」 手をひらひら振ると、ヤガリは目を見開いた。「俺は別に何言われても構わない。誰かを助ける為なら、汚名なんて百でも二百でも着てやるさ。だけどせっかく助けた無窮山脈やドワーフがそれで見下されたらあんまりだろ。だから、俺はサーラを止めた。サーラもそれを思い出して踏みとどまった。それでいいんだ」「いやあ、いやあ、いやあああ……」 ひきつるような鳴き声が広い岩室に尾を引いて響いている。「これで彼女は十分すぎる罰を受けたと誰もが思う。彼女にとっては翼の喪失は死ぬより辛いことだろうけど、それでも生きている。生きていれば罪を償う機会だってあるだろう。守護獣の呪いは普通は解けないけど、もし彼女が改心したならばサーラが戻してくれるだろう。何故自分がこんな目に遭ったのか、どうしてサーラが怒ったか、その後悔をした時に」「生神様……」 震える声に振り向くと、今まで俺がサーラの炎から守っていたフェザーマンたちは跪いて俺に頭を下げていた。メーディウスさんやナセルさんも。「……我が身内の愚行を止めて頂き、あ
last updateLast Updated : 2026-02-10
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