All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 281 - Chapter 290

305 Chapters

第291話・神獣

「神様のシンゴでも厄介なのか?」「生神だからこそ厄介なんだよ」 頭を拭きながらシンゴは唸る。「もうすぐもう二人来る。そうしたら話し合いを始めるから」 俺はきゃあきゃあと甲高い声の聞える場所を見る。 神殿の中庭のような場所で、子供が小さなロバと猫と一緒に走り回って……違う? あのロバ、神獣ではなかろうか。あの猫も猫って言うか、もっとデカい生き物だ。「神驢と灰色虎だよ。その小型版」 俺の様子に気付いたシンゴが教えてくれる。「アシ……ヌス……? 聞いたことないな……でも灰色虎って……岩山の聖獣じゃないか!」「両方とも俺が創った神獣」 シンゴは何でもないことのように言う。「アシヌスはフェザーマンにとってのグリフィンのように、俺がドワーフに創った神獣だけど、ここにいるのはその小型版。あの子たちの遊び相手をさせるために創った」 いやシンゴがフェザーマンしか乗れないグリフィンを自在に操れる理由が分かったわ。神様なら神獣創れるわな。ドワーフにあげたって言うならグルートンにも従うかな。従ったらグルートン喜びそう。自分が半分しかドワーフの血を引いてないのコンプレックスにしてたからな。 そして灰色虎とは。 岩山に住まう聖獣。善に善を、悪に悪を返すとも呼ばれている生き物だけど、聞いた話では相当デカいらしい。だけど子供と遊んでいるそれは大きめの猫ぐらいだ。足は太いけど。「あの子たちの遊び相手兼護衛だ。原初の神殿には俺を信じる者しか入れないけど、いつ何時死物がここを襲ってくるか分からない。だから護衛のために創ったんだ。親御さんにも頼まれたし」 溜め息しか出ねえよ。 種族に与えられた神獣がどれほど尊いか。それは神が信頼してくれた証拠。その種族を神獣で守るという約束。シンゴはそれをドワーフに創り、小さなそれを子供たちを守るために創った。 ……やっぱ、生神なんだな。 その時、風が渦巻いた。「うわ」 中庭のはずの底に激しい風が吹き荒れて、渦を巻いて、消える。 渦のあった場所には、スレンダーな知的美女と言っていいとんでもなく美人なお姉さまと、何処かトーノを思い出させる容貌の少年がいた。「ベガ、スシオ」 シンゴが前に出て手を出す。「済まない、急に呼び出して」「いや、私も状況を何となくだが飲み込
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第292話・行方不明

 はあ、と俺は溜め息をついた。 礼拝堂で、シャーナ、ベガ、スシオ、そしてヴェデーレがこっちを見ている。 何も知らないヴェデーレの為にも、俺は一から話し始めた。 エンドに助勢に行く予定だったが、ヴェデーレたちの無許可隊商が襲われているのを見て、サーラを始めとする神子たちを先に行かせて、俺はグライフと共に旅の守護者希望として同行することにした。 一応毎日心話で連絡は取っていて、先に行ったサーラたちは数日後にエンドに到着して、守護者たちと協力して死物と戦っていたこと。 だが、ある日を境に心話が通じなくなったこと。 サーラやシャーナ、スシオとは心話が通じた。通じないのはサーラ、レーヴェ、ヤガリ、ミクン、アウルム、コトラ。そしてヤガリについている神驢ブラン。 エンドに向かった全員と、心話が通じない。 不安になったが、まだエンドに行ったことがないので【転移】は使えず、かと言ってヴェデーレたちを見捨てるわけにも行かず。 さすがにエンドとは言えサーラを倒せる死物はいないと判断、エンドまで一ヶ月かからないと見て旅を続け。 エンドを目前、生物とも死物とも判断できない獣の気配を感じた。 そして、死の気配。 ヴェデーレたちを留まらせてグライフを護りにつけ、エンドに入って。 炎水と、首をキレイに切り取られた人間の躯。そして、馬の下半身と女性の上半身、その腕と四つ足に鋭い鉤爪を持った獣がいた。「馬の下半身……?」「女の人の上半身……?」 ベガとスシオは心当たりが当然ある。ベガは自分の守護するケンタウロスを実験材料として連れて行かれているし、スシオは死物と取引をしていたノーム、プセマがスラムの女性を売り渡す手伝いをさせられていた。「人体実験、か」 ベガは吐き捨てるように言った。「しかし、何故、炎水がエンドに溢れていたのだ? シンゴの見た記憶の中では相当な量あった。サーラが戦の為に呼び出したとしても、砦の中で呼び出しては意味がないはずだ」「……俺は、サーラたちも死物の手に落ちたと考えている」 俺は自分が思った以上に低い声で、それを告げた。「オレが兄ちゃんについてくって言った時、強くないと人質に取られるって言ってた……。それが現実になっちまったってことか……だけど、何でサーラ姉ちゃんがエンドの砦を炎水だらけにしたんだ?」「サーラ? 炎水? 
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第293話・魔神の手出し

「ベガ、ヴェデーレが混乱するからやめてやってくれ」「ああ、済まない。で、シンゴ、サーラたちとの繋がりはどうなんだ?」「ほとんど途切れていると言っていい」 俺はベガにそう答えるしかなかった。「もちろん、契約が切れたわけじゃない。神子契約は人と神が交わす契約の中でも最大級のもの、例え魔神が手を出してきたとしても破れない。ただ」 俺は一息ついて、現状を言った。「契約が切れない限り俺に届くはずの彼女たちの信仰心が、今の俺には届いていない」「最悪……ではないが、最悪に限りなく近い結果のようだな」 ベガは天井を仰いだ。「サーラたちが信仰心を失ったならばその契約は切れている。シンゴが切れていないと言うのであればそうなのだろう。だが、信仰心が届かないと言うのは……」「そうだな、俺の感覚で言うと……距離じゃない、位相が離れたくらいの場所に彼女たちは封じられている、そう魔神の手出し「イソウ?」 ヴェデーレとスシオが同時に口にした。「あ~……別の世界? モーメントじゃない場所?」「じゃあ、エンドの向こう側か?」「その可能性も十分にある」「魔神が……手を出してきている?」「でなければ、エンドの砦がああなった説明がつかない。守護獣のサーラがドワーフも含めた人間を炎水で殺すなんてありえない。そして、合体種のようなあの獣……」「あの妙な気配の奴か? 俺も死物か生物か区別がつかなかった」「あれは、あのクソッタレのプセマが売ったヒューマンの女性と、研究の為と連れて行かれたケンタウロスの子供や成人が組み合わされた新種の……無理やり作られた魔獣の一種、だと思う」「プセマ? 聞いたことあんな……」 ヴェデーレが呟いた。「ケファルのプセマに心当たりあんのか? 兄ちゃん」 スシオに言われ、ヴェデーレは頭の中の引き出しを片っ端から開いて、答えを導きだした。「思い出した。『嘘吐かない』プセマだ。精霊魔法の使い手で、トーノにちょくちょくもうけ話を持ち込んで……。女性を集めるとか、美容水を売るとか、そう言うヤツだ。あんまりにも怪しいんで、グルートンが片っ端から断ってたけど……」「トーノ? グルートン?」「ヴェデーレの友達だよ。トーノはハーフリングでグルートンはハーフドワーフ。他にハーフノームのクーレもいて、その四人でエンド行を決めたんだ。な?」 今度
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第294話・エンドの向こう側

「敵地に乗り込む」 俺は言った。言い切った。「敵地って、エンドの向こう側……?」 ヴェデーレの言葉に頷いてから、話を続ける。「サーラが囚われて逃げられない、のは、プセマの薬もあるかもしれないけど、多分サーラ以上の力を持つ存在が全員を封じているからだ。魔人……でもない。それ以上の存在……魔神」 スシオが喉を上下させるのが分かった。ヴェデーレが真っ青なのも分かった。 一方ベガとシャーナは俺を真っ直ぐに見つめている。 こういう時、女性の方が肝が強いもんだな。守護獣のベガは違うとしても、シャーナはただのヒューマンなのに、覚悟完了の顔で俺を見ている。「俺がこの世界で神子を増やしても、魔神が全員を捕えてしまえば同じことだ。俺に勝ち目はない。そしてエンドが墜ちた今、【聖域】の魔法をかけてはきたけど、中途半端な今の力じゃ、いずれ魔神に破られる。勝ち目があるとしたら、連中がまだ本格的にこちらに攻め込めない今、裏口から攻め込むしかない」 ベガまでもが、きょとんとした顔をした。おいおい。「エンドが墜ちてない、死物の世界と繋がっていないのに何で死物がこの世界に出没するか考えたことはなかったのか?」「いや……エンドだけがって思ってたから……」「死物は無窮山脈を越えられないんじゃ……」「小さな入り口があるんだよ」 俺は端末を取り出して、画面をタップした。 すぐに大陸北部、無窮山脈の地図が出る。「大陸が続く限り、無窮山脈は北と南としっかり分けて、死物の侵入を防いでいた。だけど、隙間があった。その一番大きいのはこのエンド」 端末の中、無窮山脈の東の果てに、大きな崖が存在していた。そこがエンド。生と死を分ける境界線。 そして、西の果て。「海にまで張り出している無窮山脈の、この辺り。窪みがあるだろ」 俺の指した所には、小さな窪みが幾つかあった。「サーラが教えてくれた。無窮山脈も万全の守りとは言い難い。こういう、小さな、魔獣しか抜けられないような隙間は見逃すしかない。弱い魔獣の侵入を諦めてでも、大物を通さないようにエンドや他の大きな入り口を結界と武力で守っていると」 ベガが頷く。「そんな中でも、サーラが一番気にしていたのがここだ」 ちょうど原初の神殿から真っ直ぐ北に行った所に、亀裂のような隙間があった。「隙間としては小さい。ただ、原
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第295話・ここでの契約

「魔神より、弱いのか?」「力では一応五分って話だ。ただ、信仰心がないのと、もう一つ、力の使い方がな。俺は生神になって一年経ってない。魔神は何年魔神をやっているかは知らないけど、俺はモーメントを救うために生神になった。だったら、俺以上には魔神をやっているはずだ。当然、力の使い方も熟知してるだろ」「力は同等、ただしあっちの方が使い慣れているってことか」「そうだ」 ヴェデーレは眉間にしわを寄せた。「……まずいんじゃないか?」「ああ、まずい」「神子って契約した人間の信仰心を力にしてるんだろ? 神子を増やして、信仰心を増すってことは出来ないのか?」 それが出来れば一番だったんだろうけど。「神子ってのは、サーラたちのように、人質にされる可能性もあるってことなんだ。確かに神子になれば契約が切れるまで不老不死になる。でもな、死なないって言うのは、実は本当にしんどいことなんだよ」「それに、信仰心は質も必要なのだよ。シンゴを心から信じてくれる人。シンゴと彼女たちは旅を続けて、その途中に出会って、親しくなって、信頼関係を培ってきた。今からその一年を作り出す暇はないんだ。第一、不老不死になるから俺を信じてくれって言って集まる神子がどれくらいシンゴの役に立つと思う?」「……無理だな」 ベガの説明に、ヴェデーレが納得してくれた。「でも、俺をここに連れて来たってことは、俺がシンゴを信じていることをシンゴは信じてくれているってことなんだよな?」「ああ。グライフがまず信じた。ヴェデーレが、自分と、そして自分に引き合わせた俺を信じているって。だけど、俺はヴェデーレを神子にする気はなかった。言った通り、危険が伴うからな。獣使師の才能があったとしても、死地へ赴くだけの準備は出来ていないから、俺の旅には連れて行けないと。だけど、あの時、グライフが言った。ヴェデーレを連れてけって。ヴェデーレならきっと俺を助けてくれると。だから」「……役に立つよ」 ヴェデーレは決意を込めた目で言った。「俺がシンゴの役に立つって言うなら、いくらでも」「お前の悪友が死んだのは俺のせいなのに?」「あれはトーノが悪い。俺も、グライフも、グルートンも、逃げろって判断したのに、金欲しさ荷物欲しさに戻っていった。それさえなければ助かった命だったんだ」 ヴェデーレは
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第292話・考えがある

「だけどさ」 俺の神子になったヴェデーレは、首を傾げた。「死物の世界へ、どうやって行くんだ?」「そうなんだよなあ……」「おい、そこはノープランだったのか?」 呆れたようなベガの声に、俺は困り果てた。「最初はエンドから行こうと思ってたんだよ。一度行ったし、【聖域】の魔法を使ったしな。だけど、あそこを通って死物の世界に行くってのは一旦結界を解くってことだ。多分、エンドの向こう側は結界が破れるのを待っている魔族や魔人、下手をすれば魔神が待っている。結界を破ってその目の前に出るのがまずい」「シンゴの判断は正しかったと思うが、こうなるとそれが痛いな…。自在雲はサーラたちに預けたままなのだろ?」「ああ」「我が真の姿を現して空を飛んでもいいが、この人数を乗せるとなるとな……しかも死物の世界へ行こうと言うのに」「ん~」 ヴェデーレは顎に手をやって天を仰いだ。「ぐるるぅ」 グライフが俺を見上げた。「え? ヴェデーレを連れてく? なんで?」「ちょっと援軍連れてきます。ベガさんが天馬でグライフがいたとしてもちょっと厳しいかもしれないし」 ヴェデーレはグライフの背に飛び乗る。獣使師の才能に目覚めて二ヶ月経ってないはずなのに、完璧にグリフィンと意思疎通ができている。生神の俺やフェザーマンが頼まない限り背に乗せないグリフィンに跨って飛び上がる。「大した獣使師だ」 ベガが感心したようにその姿を見上げる。「正式な訓練を一度も受けたことがないのだろう?」「ああ。昔から動物が好きだったけど、仕事中の猟犬に噛まれたことがトラウマでずっと動物に触らず我慢してたらしい。動物に二度と触れない、けどグリフィンに礼を言ったら懐かれて、神獣なんて触る機会がないから存分に触ってたら、グライフも気に入ってブラッシングに腹まで見せる感じだ。神獣と親しくしたことで、獣に対する影響力が増したんだな。ほとんどの魔獣を説得して退けることができる」「なるほど、神獣を従え魔獣を退ける獣使師ならば、守護獣の気配を辿れるかもしれん」「でも、あの兄ちゃん、何の為に空に行ったんだ?」「空を飛べる獣を連れてくるのかな……でも下手な獣じゃ無窮山脈は超えられない」「だが、彼がグライ
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第293話・巨鳥

 と、空を影が過ぎった。 空飛ぶ魔獣はいない、そしてさっきヴェデーレがグライフと飛んで行ったことを思い出して、戻って来たのかと見上げて……絶句した。 空を覆う巨大な影。「でっ……か……」 原初の神殿を覆うほどの翼。「なるほど……聖鳥か」 ベガが感心したように息を漏らす。「無窮山脈に住み、巨象までもさらって食べると言う聖鳥、巨鳥」「ルフぅ?!」 大分できるようになった端末なしのヘルプ検索で、頭の中にルフの情報を広げる。【巨鳥:無窮山脈の山中に住む聖鳥。大きさは最大でケファル街の塀が囲っている範囲程度あり、南海端諸島まで飛び、そこに住む巨象を餌としてさらってくる。人間に対しては敵意はなく(食料にならないと見なしている)、無人島に流されたドワーフがルフの足に己を縛りつけ、無窮山脈まで帰り着いたと言う話がある】 ……いや、神獣と意思疎通できるんだから聖鳥に言うことを聞かせることができてもおかしくないと思ったけどさあ。 こんなデカいの連れてくる?「シンゴー」 その背から小さな影……いやルフが比較対象だから実際には俺と同じ位なんだろうけど……とにかくルフより小さい影がこっちに向かって下りてきた。「この子が乗せてってくれるって」「ヴェデーレ……」 俺は名前を呼んだきり、絶句してしまった。 デカい。デカすぎる。「ヴェデーレ兄ちゃん、こんなの、何処で見つけてきたの!」 ヴェデーレは着地したグライフから下りて、巨影を見上げた。「こいつ、雛なんだって」「雛て……」 中学校の時、動物好きの友達の家に遊びに行って、「可愛い子犬がいるんだ」と連れてきたのがグレート・ピレニーズの子犬(当時中学生として平均身長だった俺の肩に前脚が届いた)だった時のことを思い出した。「親はどうしたのだ?」「はぐれたって」 無窮山脈の力が失われて、何かあるまで避難しようと親と一緒に逃げる途中で、どうしても生まれた場所に戻りたくて親に内緒で戻って来たとか。「話を聞いて、無窮山脈の守護獣を奪うなんて許せない、戦うって」「いや、援軍はありがたいんだけど……」 いくら何でもデカすぎる。海外に行くのにセスナ借りようと思ったらエアフォースワン来たみたいな雰囲気だ。 だけど……。 デカい戦力でもあるんだよなあ!
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第294話・神子志望獣

「神子になりたいって言ってる」 更にヴェデーレの爆弾発言。「例え神子になれなくても、故郷の無窮山脈に帰れないのが魔神のせいなら、魔神を倒す手伝いは何でもするって」「そこまではっきり意思通じるもんなのか?」「そう? ……そうだな、何かこいつの気配とはっきりした目的を感じたんで声をかけたら、頭の中で会話ができた」 俺の心話と同じか? 聖獣や神獣と呼ばれる獣は人間の意図が分かるって言うけど、それでここまではっきり意思疎通できるもんなのか?「大したものを連れてきたな」 俺が慌ててルフが着陸できる広場を創っている横で、ベガが感心したように言う。「確かにこの聖獣なら無窮山脈を越えられるだろう」「……でけー……すげーな、ヴェデーレの兄ちゃんは……」 うん、俺もびっくりした。 獣使師の才能があるから、守護獣探しに役に立つかと思って、決意を捻じ曲げて同行を許したけど。 まさかこんなどぎつい生き物連れてくるとはなあ……。「シャーナ、君は……」「分かっていますわ、シンゴ様」 シャーナは少し寂し気な、でも全部分かっていると言う表情で言った。「私にはこの神殿を守る勤めがありますもの。死界で【帰還】を使っても辿り着くのが難しいでしょう。ですが、私がここで、シンゴ様の無事と勝利を祈っている限り、シンゴ様とこの神殿の絆は切れません。私はここで待っております。皆様がいつものように、賑やかに帰ってくるのを」「本当にそれでいいのかいい、シャーナさん」「ヴェデーレさん?」「本当はシンゴの傍に、いたいんじゃないのか……?」「私は私を分かっております」 シャーナの笑顔はいつも美しくて、男ならみとれてしまう。「私は資質的に戦闘に向いていないのです。【回復】や【聖域】などの魔法は使えますが、どうしても強い敵の前に立つと竦んでしまう。シンゴ様を守らねばと思っても、身体が動いてくれないのです。足手まといと言っていいでしょう」「シャーナ、俺は」「分かってますわ、シンゴ様。シンゴ様は私を足手まといとは思わないでしょう。ですが事実そうなのですから。この神殿と子供たちを守り、シンゴ様と、同じ神子の皆様のご無事をただひたすらに祈り続ける。それが私の役目。原初の神殿の神官最後の生き残りである私の勤めなのです。ですからヴェデー
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第295話・死亡フラグ?

 それをにーやにーやしながら見ているスシオ。 そう、ヴェデーレがシャーナを見初めたことは誰にだってわかる。 何かシャーナの置いてった俺たちの着替えの下着見て赤い顔してたし、シャーナが喋っている間中ニコニコと笑っていた。そしてこの対応……いやー気付かなければ嘘でしょう。 ベガも少し苦笑いして見守ってたし。 ところが……肝心のシャーナには気付かれてないなあ。 シャーナは神殿を守る神官として育てられ、いつ来るか分からない生神を餓死寸前になるまで待って、その後俺と同道していたが、戦闘が確実となった時点で、俺についてくることを諦めた。 理由はシャーナの言った通り。 彼女には強大な敵に立ち向かうと言う能力がない。 かと言って彼女に胆力がないわけではない。餓死寸前まで神殿に留まり続け、俺が来た後はかなり危険な場所でもついてきてくれた。俺の行く場所なら何処へでも、と言っていたし、事実そうしてくれた。 ただ、どれだけ神子だから滅多なことでは死なないし傷付きもしないと理屈で分かっていても、戦いを拒む彼女の本性が強敵を前に身を竦ませる。竦むだけならまだいいけど、それが仲間の足を引っ張って戦いに敗れたり神子や俺が敵の手に渡ったりしたら、それは彼女にとって一番の苦痛となる。 だから、彼女は自分ではなく、俺や仲間を守るために自らこの神殿の管理人として、俺のフォローをしてくれたのだ。戦えないから彼女が神子に相応しくない、わけではない。むしろ戦い以外の場所での彼女の行動は素早く的確で俺を助けてくれた。大陸西部、ビガス、大樹海、無窮山脈、奈落の断崖を繋ぐ輸送ルートはシャーナがいなければ回っていない。彼女が種族の特性や性質を見抜いて必要な場所に必要な物資を届くよう注意してくれている。神子の中で誰が一番役に立ってくれている? と聞かれたら一択、シャーナだ。 シャーナが幸せになってくれればいいんだけどなあ。「い、行くぞっ、シンゴ」「え?」 考えに耽っていた俺の肩を、ヴェデーレがバンと叩いた。「絶対にあっちの世界から生きて戻る! 叶うなら魔神ぶっ倒す! そしてこの神殿に戻ってきてオフロに入って……」 それから、と続けようとして、ヴェデーレは急に真っ赤になって黙った。「それからー?」 スシオがにーやにーやしながら聞く。「なっ、なんっでもないっ、とにかく
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第296話・乗り込み

 巨鳥の雛、オルニス(ヴェデーレが考えて俺が神子契約の時に名前にした)は、力強く羽ばたく。 ダチョウの卵を目玉焼きってのは地球のテレビでよく見たけど、ルフの卵で目玉焼きしたら……まず鉄板から作らないとなあ。 ……いらん事考えた。 とにかく、オルニスは速い。ベガが風の結界を張ってくれていなければオルニスだけあっちの世界突撃になりそうなくらいだ。 オルニスに乗って一時間、もう無窮山脈目の前に来てるしー! 自在雲より速いってどうよー!「シンゴ」「? え、ああ。どした?」「オルニスが聞いてる。無窮山脈のどの辺りから入ればいいかって」「あ、そうだな。もう目の前だもんな」 俺は端末のマップを開いた。 サーラが教えてくれた神殿から真っ直ぐ北の亀裂……。 無窮山脈そのものが結界の重力場のようなもので、どんな生物も死物も無窮山脈の結界は超えられない。時折山脈にある亀裂のような場所を通るしかない。 ……オルニス、通れるかな。「通れる」 俺の心を読んだベガが言った。「お前は神だ、シンゴ。神ならば結界を抜けられる。そして、神子も。神に属する一部なのだから。だからオルニスは十分通れる。必要なのは抜けた後、通った分の隙間を忘れず塞ぐことだ」「……ああ」 俺は意外とふわふわしているオルニスの羽毛に手をやって叫んだ。「このまま真っ直ぐ、目の前の山の亀裂! 迷わず突っ込め、行ける!」 オルニスは一声鳴くと、翼を力強く動かす。「見えた! あそこだろ!」 スシオが指した先に、そびえ立つ稜線の中の亀裂。「行けええええええ!」     ◇     ◇     ◇ す、と神は目を開いた。「魔神様?」「来た」 モストロはその一言だけで、神の言葉の意味を理解した。「生神が」「……意外と早かったな」 開いていた本をパタンと閉じ、魔神は世界の遥か彼方に視線を送る。「……エンドを墜とし、神子を捕えた。弱った生神の能力でエンドに結界を張っても、私が出向けば簡単に破れる。生神が力を補充している間に攻撃を仕掛ければ、と思っていたが、まさか今の戦力で突っ込んでくるとは……思わなんだな」「生神の思い上がりでしょう」 魔族のダークエルフ、モストロは断言する。「魔神様に今のままで勝てると、思いこんでいるのです」「あながち思い込みでもない」 豪奢な玉
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