All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 291 - Chapter 300

305 Chapters

第297話・迎え撃つ

「モストロ」「はっ」「確かに今の生神は私と戦うのに十分な力を持っている」 呟くように魔神は言う。「直接力をぶつけ合うしかあるまいな」「はっ」「その時……私と生神が見えた時。それが私の楽しみ、私の望む時なのだ」「申し訳ありません……意味が良く……」「モストロ」魔神は細い腕をゆっくりと持ち上げ、モストロを指した。「今からお前を魔人と呼ぼう」 モストロが目を見開く。「不満か?」「い……いえ……不満など!」「お前は良く尽くしてくれた。ならば、生神と戦う任務を受けてくれるな」 モストロは即座にその意味を理解した。 魔神はモストロに死ねと言っている。 魔神の命令はそういうもの。己の命と引き換えに……いや己の命を使って任務を果たせと言うのだ。 例え魔人であろうと、神ではない。生神に勝てる唯一の存在は魔神だ。 その前哨戦……いくらかでも生神を消耗させること。それが魔神が下した命なのだ。 モストロは魔神の目の前で跪いた。 その身体が小さく震えている。「モストロ?」「そのような……そのような任務をお与えくださるなど……」 モストロは顔をあげる。 歓喜の笑みが満ち満ちていた。「このモストロ、喜んで引き受けましょう! 魔神様の目の前で生神と戦い、場合によっては生神もろともに消し飛んで見せましょうとも! ええ、ええ、魔神様の御命令で死ぬなどと言う名誉を、他の誰に任せるものですか!」 魔神はゆっくりと頷くと、細い腕をもう一度モストロに向けて伸ばす。 青白い光がその手に宿り、手が指す方に移動し、モストロの中に吸い込まれた。「おお……破滅の力……何と素晴らしい……」「せいぜい派手にやることだ……。モーメントが滅べば、どの道この世界も等しく滅びる。残るものなど気にする必要はない」「魔神様の……お望みのままに」 魔人モストロは立ち上がり、魔神の間から出て行こうとする。「モストロ」「は!」 呼び止められ、モストロはすぐに魔神に向き直った。「お前の忠心……役立ったぞ」「勿体ないお言葉」「だが、我らの真の評価は滅ぶべく時にある……」「どうぞこのモストロをご覧ください、魔神様」 モストロはマントを翻し、魔神に最敬礼をした。「例え無駄死にとなろうとも、魔神様の退屈を満たせる欠片にでもなれれば
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第298話・遭遇

 破滅の世界は、まるで水墨画のような世界だった。 陰影だけで出来ている。 山の稜線も、流れる川も、時折見える建築物も、全てが薄灰色と濃淡色。 そして、動くものがほとんどない。 川すらほとんど流れがない。 風も、この世界に入ってからはオルニスが全力で進んでいるのに感じない。 色も、動くものも、何も。「寒々しい世界だな……」 ベガがぽつりと呟いた。「モーメントも、破滅した後はこうなるのであろうな……」「ベガ姉ちゃん様、その言葉はダメだ」 すかさずスシオが言う。「破滅を止めるために行くのに、破滅後の姿を思うってのはダメだ」「……そうだな、済まない。不安にさせた」「オレは別にいいけどさ」 スシオは唇を尖らせる。「それより、魔神は何処にいるんだ? この世界の何処に……」「恐らく、この世界はモーメントの影、あるいは裏側に位置する世界だからな。広さは大陸並みかそれ以上と考えていい」 俺はオルニスの首筋で立って、まっすぐ前を見ていた。「じゃあ、この世界をしらみつぶしに……?」「ああ、それは大丈夫。あちらから直に来るだろう」「来る?」「……来る」 ぽつりヴェデーレが呟いた。「来る……来る……来た!」  きゅぼぼぼぼぼぼっ! 光弾のような何かがこちらに向かって飛んできた。「スシオ!」「う、【風壁】!」 ベガの指示にスシオが反応し、風の壁を作り、光弾を阻んだ。「っし!」 全弾撃破を確認したスシオが小さくガッツポーズを作る。 ちゃんと修行してたんだ。 俺と一緒に来るなら強くならないといけない。だからスシオはケンタウロスと守護獣ベガの下で、剣と体術と魔法の訓練に励んでいたけど、これだけの期間で「ほとんど素人」から「一人前かそれ以上」にまでなっているとは思わなかった。 心強いよ、本当。 俺はオルニスの首筋に仁王立ちになって、剣を……ドワーフから送られたのではない、神具、蒼海の天剣を抜いた。左手に水鏡の盾。一応念のため透過のマントと見通しの眼鏡も装備しておく。神衣は汚れないのをいいことに着たきり雀。だけど今ある神具を総ざらえした、俺の戦闘モードだ。 そして今、オルニスの目の前にまで迫った……翼持つ獣がいる。 魔獣。 巨鳥ほどの大きさはないけど、飛ぶことができる。何やら霧のよう
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第299話・母親

 答えてくれたのは、もちろん俺ではない。 オルニスと魔獣がすれ違う寸前、俺は見た。 恐らくはダークエルフ。 今まで出会った死物の中でも一番大きな破滅の力を持っている。 すれ違った直後、オルニスは右回りに飛び始めた。敵も同じく右回りで、オルニスの後につこうとするが、こいつの大きさが大きさなので敵はなかなか尾羽まで辿り着けない状況となっている。「何者か、聞いてもいいか?」「魔人、ダークエルフのモストロ!」 ついに出たよ、魔人が。「魔神様のご覧のこの勝負、派手にやろうではないか!」「おいおい、こんな高所で魔法のぶつけ合いかよ。落ちたらどうすんだ」「そちらは心配ないだろう? この高さから落ちても心配ないはずだ」「痛いことは痛いんだよ」 モストロを名乗ったダークエルフは魔獣に跨って杖を掲げている。「それに、心配もいらん。魔法のぶつけ合いをする気はこちらにはない。そちらに厄介な神具があるからな。水鏡の盾……魔神様でもないと全ての魔法が跳ね返される」 だから、とモストロは杖を掲げた。「まずは、この一手!」 杖を突き出す。 すると、魔獣を取り巻いていた霧のような何かが動き出した。 もさり、もさりと魔獣の毛が抜け落ちるように霧は形を成していく。 生まれたのは、モストロが乗っている魔獣の小型版……恐らくは、魔獣の仔。母親の身体にしがみついて守られていたのが、モストロの魔人の力で操られているんだ。 ヘルプ機能で以前調べたが、魔人とは人間でいう神子的な存在であると言う。魔神に仕え、魔神の力を借りて使うことができると。 だけど、神子ならこっちにもいるんだよな。 俺が何か指示するまでもなく、既に彼は動いていた。 相手が魔人だろーと使ってきたのが獣なら。 そう、ヴェデーレがこっちにはいる。 敵愾心剥きだして襲い掛かってこようとしていた魔獣の仔が、混乱したように身動きする。 モストロの乗っている魔獣も身をよじるようにしていた。「な、なんだ?!」 まだあっちには情報は行っていないはずだ。獣使師がこっちにいると。 だから……!「いい仔だ……母親の所に戻れ……そうだ……お前も……子供と離れたくないだろう……?」 低い声で泣く子をあやすように、ヴェデーレが囁く。 魔獣は死物であって死物ではない。こちら側だ
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第300話・獣使師の怒り

「ヒギィッ」 逃げ出した魔獣を、光線が貫いた。 羽根を射抜かれた魔獣は、急激に降下する。「ダメだ!」 ヴェデーレが叫んで魔獣の方に手を伸ばす。しかしヴェデーレの手は伸びないし、今からグライフやオルニスを飛ばしても到底間に合わない。「ダメだ、生きるのを諦めるな、最後まで……!」 ヴェデーレの声が届いたのか、落ちていく魔獣からぶわりと毛玉が離れた。 毛皮にしがみついていた仔たちだ。 母魔獣はもう見えない程遠い下に行ってしまった。この高さから地面に叩きつけられれば助からない。「てめえ……」 ヴェデーレは呟いてモストロを睨みつけた。「何を怒っている?」 空中で静止しているモストロは、心底不思議そうな顔をした。「死ぬことを至上の命としたのに逃げ出した。だから処分した。それだけのことだ」「それだけのこと? それだけの?」 ヴェデーレの一言一言に怒りがこもっている。 小さい頃犬に嚙まれ、それから猫が懐こうと犬が懐こうと触らなかったと言っていたヴェデーレは、グライフに懐かれることによって獣使師の才能を開花させた。 彼にとっては、魔獣もまた獣なんだ。 命を狙ってくるのでなければ、魔獣を刺激しないようにし、狙ってくる魔獣には説得と言う手段で何とか彼らが襲ってくることを抑えた。魔獣と意思疎通ができる。これは本当に稀有な才能なんだとヘルプに記載されていた。 そんな、意思疎通ができて、戦闘を避けられそうだった魔獣が、子供を抱えた魔獣が、目の前で殺された。 彼の怒りはどれほどだろうか。 いや、彼だけではなく……。「あの程度の魔獣だ、魔人の私の手にかかったことを感謝して死んでいっただろう」「ふざけんな!」 凄まじいまでの大喝だった。「次の命を繋げようとする母を殺す、それがどれだけ重いことか、てめえには分からないのか!」「我々は死ぬために生きている。生にしがみつく生物と一緒にするな!」「あいつはなあ……あいつは……」 ぼたぼたぼたっと、ヴェデーレから涙がこぼれた。「生きたいと思ってたんだよ! せめて子供が一人前になるまでは死ねないと、そう思ってたんだよ! 命を繋ぐために……次の子供たちの為に!」「生物の理屈をこちらに持ち込むな。我らは死物。……まあ生きたいと思う魔獣などの低級と私を一緒にさ
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第301話・魔獣使い

「あーあ」 モストロの演説をスシオが止めた。「俺、ベガ姉ちゃん様とサーラ姉ちゃん様を怒らせちゃいけないと思ってたけど、撤回するわ」「そうだな」 俺も同意する。「は? 何が……」「要するに貴様は」 ベガの氷点下の声が、モストロに断罪を下すように響いた。「自分の無駄死に執行書にサインをした」「何を……ばか……ば……」 空気がざわめく。 モストロの声が途切れ途切れになる。「馬鹿な……そんな、馬鹿な……」 ざわめく空気が辺り一帯に集まった。「馬鹿なああああっ!」 空一面を覆うのは、魔獣。 この辺りの飛べる魔獣が総動員だ。 ヴェデーレの周りには、さっき死んだ魔獣の仔たちが集まっていた。「そうだ……こいつが……お前たちの母を……仲間を……同種を、殺したんだ……」 ヴェデーレの憑かれたような声。「魔人だから殺してもいいってさ。魔獣なんか死んでいいってさ」 涙を流しながらの声が続く。「許せないよな?」  ぎゃああああ! 魔獣の雄叫びが空を覆う。「仲間をあっさり殺した。仔連れの同種をあっさり。子供を守ろうとした仲間を。認められないよな?」  ぎゃあああああ!「魔獣だから虐げられるって理屈はないよな?」  ぎゃあ!「そんな魔人に、復讐したよいよな?!」  ぎゃああああああああああああああ! オルニスが回るその内周を、外周を、魔獣たちが取り囲んでいる。「魔獣……馬鹿な……こんなたくさん……貴様……一体……」「魔獣の仇は魔獣が討つ、よな!」 スシオは耳を塞いでいる。普通の人間であればあっさり鼓膜が破けているくらいの大音声。「なら……行けぇぇええええ!」「まま……魔獣ごときにっ」 モストロは慌てて魔法を放つ。 光弾を四方八方に撒き散らして、とにかく近付けまいと迫る魔獣を攻撃するが、正直意味がない。 一対圧倒的多数。 モストロは自分は魔神の神子のようなものと言ったが、それは即ち神にはなれないと言うことだ。この空を覆いつくす魔獣を一気に消滅させられるような大技は使えない……使えたとしても連打は難しい。 魔獣は死物の中では一番下にランクされているけど、決して弱いわけじゃない。ただ、獣の生存本能が同種を巻き込んでの自爆を阻む。出来るだけ生きていたい……死ぬのを避けられるなら避けたい、それが魔獣と言
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第302話・魔獣の報復

 キレたヴェデーレの呼びかけに応じた魔獣たちは、一斉にモストロ目掛けて突っ込む。 生物であり死物である魔獣は、同族を殺したモストロに容赦なく襲い掛かる。 魔獣はそれなりに強い死物だけど、魔人には到底勝てない。普通では。 だけど、今は違う。 死物と言う特性で死ぬことを恐れず巻き込むことに躊躇わない魔獣たちは、キレたヴェデーレにブーストされている。 優れた獣使師は使役する動物の能力を引き上げると言う。今ヴェデーレはこれだけの数の魔獣を使役下に置いているわけだ。もっとも、使役って言ってもヴェデーレが魔獣を完全に操っているわけじゃない。ヴェデーレは魔獣に復讐する力を与えただけだ。上位の死物に逆らってはいけないと言う縛りを解き、普段封じられている魔獣たちの全力を引き出すのと。 多分、死物として下位になる魔獣は虐げられ、魔物や魔族、魔人に自在に操られていたんだろう。復讐したいと思ってたとしても無理はない。ただ、魔神が定めた死物の掟を破る手段がなかっただけ。そしてそれから解き放たれた今、仲間を手にかけた魔人を放っておくわけがない。 一体で倒せなければ二体、無理だったら四体、十六体、二五六体。己の命を捨てても次の仲間が殺してくれる、次の仲間が無理だったとしてもその次が……。 魔獣の球体の中に閉じ込められたモストロの、様子は見えない。 時々火花が散って、球が崩れて魔獣が落ちていく。だけどすぐ完全な球に戻り、微かに悲鳴が聞こえる。「はあっ……はあっ……はあっ……」 ヴェデーレが犬のように舌を出して荒い息をしている。「落ち着け」 ベガがその肩を叩いた。「もうお前が怒る必要はない。あの魔人は十分に罰を受けた」「だけど!」「魔獣とは言え、獣だ」 ベガは視線をヴェデーレから空中の球に移した。「心通わせた獣の死が辛いのは分かる。あの魔獣たちが自由意志でお前に従い、あの魔人を攻撃しているのも分かる。だがな、彼らに罪を負わせてはいけない」 ヴェデーレの血走った目が、ベガの目を見る。「殺すのは我々の仕事だ。魔獣たちではない」 ヴェデーレはオルニスの背中にへたり込んだ。 無理もない、あれだけの魔獣を従えたんだ。力を失っても無理ないよ。 灰色の毛玉のような魔獣の仔が、ヴェデーレの周りにい
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第303話・魔人の最期

 魔獣球が崩れた。 グライフが飛び立ち、そこから落ちる襤褸を前脚で掴んで戻ってきた。 あちこちを食いちぎられ、それでも生きている見るも無残なモストロの姿だった。「てめえ……てめえ」 ヴェデーレの一瞬は落ち着いた興奮が戻ってきた。「てめえが……!」「や……だ……」 モストロだった襤褸は、微かに声を絞り出した。「何……も……出来ず……無駄、死には……」「無駄死にだ」 ヴェデーレは唾を吐きかけるように言った。「魔獣を殺したことによって、魔獣に殺された。シンゴ……生神に掠り傷一つつけることもできないで」「イ……や……ダ……」 喉も食いちぎられてひゅうひゅうと息が漏れ、声にならない声でモストロは呟く。「ワ……れ……マジン……アルジ、に……いき、がみ……ヤクソク……」「分かってる」 ヴェデーレはモストロではなく、円を描いて飛び続けるオルニスと同じスピードで回りながらこちらを見ている魔獣たちに言った。「俺が、殺す」「ヴェデーレ、それは」「彼らがそれを求めてる」 そう、魔獣は言うだろう。殺すなと言ったのだから、せめてとどめを刺すところが見たいと。 ヴェデーレは懐からナイフを取り出した。悪友グルートンの母が鍛えたと言うナイフを。 見事な造りのナイフだった。 切り裂くのにふさわしい鋭さと強靱さを秘めたナイフ。これを鍛えたグルートンの母は、本来なら無窮山脈にいた人材だろう。グルートンはまだ母が鍛えた武器はいくつもあるからと言っていたけど、このナイフは魔具の中でも中位から高位に位置する得物だ。  ヴェデーレは、モストロにペッと唾を吐きかけると、ナイフを両手で握り、振りかざした。「セ……メテ……イキ、ガミ、ニ……」「そんな名誉、与えてたまるか。てめえは、俺の手にかかるんだ。ろくに戦いも出来ず、魔獣に食われ、そして直接戦闘に向いてない獣使師駆け出しの俺に殺される。よかったなあ。死ねるぞ? 無駄死にだけどな」「グ……ウゥ……ッ」 モストロは骨が見える右手を無理やり持ち上げて、何かしようとした。 一瞬、右手が赤く光る。 自爆か? 俺たちを巻き添えに?「させないって、言ったろ?」 光が宿っていたモストロの右手の先が、一瞬にして失われた。 ヴェデーレのナイフが骨ごと右腕を切り落としたのだ。
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第304話・『混』

「行け……」 ヴェデーレの命に、魔獣たちは散っていく。 最後の一等が姿を消したのを確認した後、そのまま崩れ落ち、オルニスの背にべたりと突っ伏す。「ヴェデーレ?!」「ヴェデーレ兄ちゃん!」「だい……じょう……ぶ……」「無理もない。あれだけの魔獣を使役して、呪縛を一時的にとは言え解いて、攻撃させればこうもなる。ましてやヴェデーレは正式な訓練を受けていない獣使師、力の配分も知らず全力を出したのだから」 ベガが突っ伏したヴェデーレに手を当てながら言った。「確かに魔人を撃破……しかも生神ではなく神子が倒したのだから、良い結果を出したと思う。思うが、……一人で背負いこもうとするな」 ヴェデーレの背中に当てられたベガの手に光が宿る。「う……」 ベガのしていることに気付いて、慌てて俺も力を送ろうとするが、ベガに止められた。「シンゴの力は取っておかなければならない。魔神との戦いが目前なのだ」「……それなんだけど」 んー……。「何か、力増してる」「ん?」 ベガがヴェデーレに力を与えながら俺を見る。「確かに……だが信仰心と言うには何か……」「あいつら、だ」 やっとまともに喋れるようになったヴェデーレがチラリと視線を辺りに走らせた。「あいつら?」「多分……魔獣の想い、だと思う」「魔獣?!」「ああ。……あいつらが、仲間の仇を取ってくれたってことで、俺に……俺経由でシンゴに行ってるんだ、と思う」「魔獣の信仰心……? ……いや、魔獣が感謝したのは分かるけど、それが信仰心になるのか……?」「スシオではないか?」「スシオ?」「神子認定する時に謎の属性があったろう。【混】とかいう」「そーいやあったな。何だろうと思ったんだけど調べてなかったんだった」 頭の中でスキル【混】をヘルプして見る。【属性/混:破壊に属する者から信頼を勝ち得た時、その信頼を生神や神子への信仰心へと混合することができる】 俺のヘルプを聞いたベガが納得したように頷く。「それなら納得できる。本来魔神に向けられる信仰心を、シンゴに向けられた時、普通ならば力にならない死物の信仰心を生物の方に混合させられるのか」「てぇことは~……あの魔獣の数がいたから~その半分がヴェデーレ経由で俺に信仰心を抱いてくれるとなると~……」 俺は慌てて端末を
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第305話・信じる心

 思えばステータス確認をしていなかったので、最後に見たのがサーラたちがいた頃の五万前後だったから……。「二千倍……?」「魔獣は魔物や魔族に使われることが当たり前……それを破って仲間を殺した魔人を倒してくれた俺と……俺に力を与えてくれたシンゴを……信じてくれるようになったんだ……」「いや、ありがたくはあるけど……」 もちろん、魔獣が俺を信じてくれるのはありがたい。 魔獣がモーメントに攻め込んでこなければ、争う必要はない。モーメントに来たとしても人間を襲わなければ問題はない。魔獣たちがそうしてくれるならいくらでも力を貸す。 だけど……。「ヴェデーレ」「……ああ」 まだ少しふらつくものの、ベガから力を受け取って半身を起こしていたヴェデーレは俺を見た。「お前が使役した魔獣、もしかしてあいつら全部なのか?」「……いいや」 と、また力が増すのを感じる。「ちょっと待ってくれ、見てみるから……」 ヴェデーレは目を閉じて集中し。「魔獣の間で噂……って言うか、生神が魔獣を助けてくれたって、魔人から解放されたって事実が巡り巡ってる」「へ」 う。 また力が増す。「いやいやいやそれおかしいだろそれはヴェデーレに来るものであって俺に回って来るもんじゃないだろ」「神子の行為はそのまま生神の評価に繋がるものだ。そのようなことをする神子を選んだ生神ならば、と言うことになる」 いや理屈としてはそうなんだろうけど! 力がガンガン増して行ってるぞ?! ていうか魔獣全部俺を信じようとしてんのか?! 人間より魔獣に信仰されてる生神ってどうよ?! いや信じてくれるのは嬉しいけどもさ?!「あれ? でも、魔獣って、他に死物……魔神に逆らえないんじゃ?」 スシオの問いにベガが少し首を傾げた。「ヴェデーレとシンゴの無意識がそれを可能とした」「可能ってなんだよベガ姉ちゃん様」「ああ、つまりな。ヴェデーレを通じて、シンゴが願ったんだ。魔獣が魔人を倒すことを」「うん、それで?」「魔神と同等の力を持つ生神が、その掟を解除した。魔獣が上位の死物に逆らえる許可を与えたんだ。魔神の掟を生神が上書きした形だな。生神が魔神に倒されない限りその掟に変更はない」「じゃあこの世界の魔獣が全部シンゴ兄ちゃんを信じてるってことか」「そう言うことだ」 そう言うことってしれっ
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第306話・実験

 すぅ、と気温が下がった。 元々薄寒いこの世界だけど、この冷気は強烈な威圧感を伴っている。「来たぞ」 ベガが笑った。「魔獣の信仰が全部シンゴに渡ったのに気付いたか、大慌てのお出ましだ」 彼方の薄墨色が濃くなっていく。ゆっくりと漆黒に変わっていく。 そしてその漆黒が渦を巻き、形と成す。 魔神と言うからには巨大で凶悪な見た目をイメージしていたけど、俺と大して見た目が変わらない。顔の半分が隠れるような仮面をつけた……多分男。「生神、か……」 呟くように言った声は、何処か懐かしい響きをしていた。「魔神か」「如何にも。私は魔神」 すっと手を伸ばす魔神。 何か攻撃が……と思ったが、黒い空気が凝ったようなタイルみたいなものが空中に敷き詰められた。「降りよ」 その床に立ちながら、魔神は言った。「巨鳥の背では移動しながら出なければ話せまい。戦うにも不便であろう」「罠だよ、兄ちゃん」 スシオが警告する。「降りたら落ちる可能性だってある」「いや、その場合は浮けばいい」 魔神が受けるんだから、俺だって浮けるはずだろ。「みんなはオルニスに乗っていてくれ」「だけど!」 ヴェデーレが叫ぶ。「大丈夫だ。ヴェデーレのおかげで信仰心が増したから」 今の俺なら魔神と互角以上に戦えるはず。 俺はオルニスから飛び降りて、漆黒の床に立った。「お前が魔神か」「そうだ。初邂逅だな、生神よ」「戦う前に、聞いておきたいことがある」 俺は蒼海の天剣を抜いて聞いた。「みんなは……サーラやレーヴェ、ヤガリ、ミクン、アウルム、コトラ、ブランはどうした?」「私の身の内に、封印している」 魔神はゆったりとそう答えた。「私を倒せば、封印は解けるぞ」 ……ん?「初邂逅、って言ったな」「ああ」 憂鬱そうな……戦うのなんて面倒くさいと言いたげな声。「どこかで……会ったことはないか?」「……生神」 魔神は静かに聞いた。「お前は生前、何だった?」「な、に?」 質問の意味が分からない、と言う俺の言葉に、魔神は重ねて聞いた。「生神となる前、どの世界で何をしていた……?」「どの世界で……何って」「私もまた、魔神となる前は異世界で人として暮らしていたからな……」「地球って世界で、普通に暮らしてたよ」「そうか……」 溜め息交じりに頷く、そ
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