なんじゃそりゃ。そんな人間いるわけないだろ。「……ていうか、そんな実験をどうやってやるんだよ」「簡単だ」 俺と一定の距離を保って立ったまま、魔神は言う。「子供を一人、手に入れればいい。その子供を育てるのだ」「……子供」 ピリッと、うなじの毛が逆立つのを感じた。「私の言う真っ当で善良……不正に立ち向かい、正義を行う子供……それを私が作れるかどうか。それが生前の私のテーマだった」「……そんな子供を育てた人間が、何故魔神に?」「気付かれていたのだろうな……私にとっては実験に過ぎないということを」 魔神は顎に手を当て、呟く。「私には正義があった。私には思想があった。だが、それを広める気はなかった。それを実行するつもりもなかった。ただ子供に、その思想を植え付けた場合、どのような人間ができるか実験したいだけだった。正義は思うだけではなく実行しなければならないというのだろうな……思想だけの正義には何の意味もない」「……正義を抱いた人間が、何故世界を滅ぼそうとしたんだ」「それが私の役目だからな」 魔神は平然と答えた。「何かを生み出すためには古い物を壊さなければならない……そう言うことだ」「んな無茶な!」「無茶ではないだろう。お前は、来る前のこの世界を知っているか?」「……いいや」「人間の種族同士の争い。死物に赤ん坊を捧げて危地から逃れようとする親、親を捨てて飢えをしのぐ子。世界として成り立っていないと思った。だから滅ぼそうと思った」「あんたの言う正義はどこ行ったんだよ!」 俺は思わず叫んでいた。「あんたは正義を持っていたんだろう!? それを子供を使って実行しようと思ったんだろう!? それが何で、その正義を捨てて世界を滅ぼそうとするんだよ!」「私の正義は思想でしかない……自ら実行する気は欠片ほどもなかった」「正義の味方じゃなくて、哲学だった……そう言うことか?」「そう言うことだ」 俺は頭をガリガリと掻いた。「その哲学に巻き込まれた子供は……どうして手に入れた」「偶然だ」魔神は淡々と話す。「目の前で両親を失った子を手に入れた。この子供を使えば私の正義を実行する人間が育つかもしれないという興味と好奇に負けた」「じゃあ……じゃあ」 俺は叫んだ。「育てたのも、色々教えてくれたのも、全部……全部、実験の為だったのか? そうな
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