บททั้งหมดของ 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: บทที่ 311 - บทที่ 320

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第317話・勝手な正義

 別に俺が激怒させたわけじゃない。 俺と子供が一緒に勉強すると不運が移るなぞと言い張ってクラス替えを要求したモンスターペアレンツ。金を寄越さないと、と殴りかかってきた不良。バイト先で、理不尽な理由を押し付けるクレーマー。 そう言う人におじさんは激怒し、徹底的に叩き潰した。 笑うと怖い俺は、激怒して叩き潰すおじさんの影響で作られた俺なんだと思う。そう言えば、怒ったら怖いおじさんを見て、怒っても怖くない顔をしようと思ったんだったんだ。逆にそれが死ぬほど怖いと言われるとは思わなかったけど。 そう、今、俺は笑っている。 皆が怖いと言った、あの顔で。「おじさんの言う正義で人を分別したとしても、違う人間が全く同じ考え方をするなんてありえない。生き残った……新世界に選ばれたと思った人たちは、自分たちこそが正義だと思う。最初はそれでもいいだろう。でもね、おじさん。これ、無理。絶対無理だから。おじさんの定規で測られた正義も、人によって微妙に違う。その微妙な差は、その内問題になる。正義のずれはやがて互いを許せなくなる。その結果、何が起きるか? ……魔神が生き残らせた者同士での戦争だ。結局、誰も残らない」「…………!」 おじさんは仮面の奥から俺を睨んでいた。 そして、微妙な動揺が、俺に伝わってきた。 神としての力じゃない。九年という月日を共に過ごしてきた相手だから分かる動揺。「おじさん、たった一つの正義なんてないんだよ。人は他人から影響を受けて、自分の認めないことを跳ねのけて、それぞれの正義を持っている。正義を持つ人間を救うのであれば全員を助けなきゃいけないし、おじさんの正義を等しく共有している人間は何処にもいない。おじさんは、結局誰も助けられないんだ」「お前は……私が育てたお前は、私の正義を理解しているはずではなかったか」「確かに、俺はおじさんに育てられた。俺の思想や思考、理念。それはおじさんから大きな影響を受けている。……だけどね、俺の正義はおじさんの正義からずれて来てるんだよ」「ずれる……?」「俺は座り込んでいたお年寄りに水をあげた。車に轢かれそうになった子供を庇って死んだ」 両手を肩の位置まで持ち上げて、「やれやれ」のポーズを作る。「それは、お前の正義では……」「正義じゃない。俺の自己満足だよ」「な……!」 おじさんが明
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第318話・自己満足

「自己満足だと……命懸けの行動を、自己満足と……」「ああ、紛れもない俺の自己満足さ」 俺の口角が持ち上がる。「放っておけばおじいさんは救急車で運ばれたろうし、子供は死んだ。それは嫌だった。だから俺は自己満足の為に勝手に助けた。それを正義と言う人がいるかも知れないけどね」「では、お前の正義とは……なんだ」「生きること」 俺は言った。言い切った。「生きる……?」「そう。正義ってのは誰の中にもあって、生きている限り育っていく。他の人の正義と時にはぶつかって、時には理解し合って、形を変えていく。多分、俺の正義は、俺が死んだ時に完成するんだろうな」「死んだ時……? お前は死んだはずなのに」「二回な。生神になった時と、さっき」 俺は腕を組んで魔神を……おじさんを見た。「俺は正義の結果として死んで、正義が完成していないから生神になった。さっき、おじさんに殺された時も、まだそれを伝えてなかったから生き返った」「伝える……何を……」「……おじさん、絶対の正義はないんだよ」 今度は分かりやすくおじさんは動揺した。「おじさんの持っている正義はおじさんだけの正義で、俺の正義は根っこは多分おじさんのものだったろうけど、おじさんと違うところ、おじさんと納得できないことはあった。そしておじさんがいなくなってから三年間、俺は自由解釈して正義を育ててきた」「真悟……。私はお前に教えてきたのは……」「おじさんの正義は広く正義だと思われているものだよ。それは認める」 だけど、と俺は剣を抜いた。「おじさんの正義とかみ合わない、でも立派な正義はたくさんある。そんな人たちに自分の正義を押し付けちゃいけない。どれだけ善意でも、それは押しつけがましいことだから」「私の正義を……馬鹿にするのか……私に育てられたお前が……!」「馬鹿にはしてない。俺はおじさんの正義は立派だと思ってる」 激昂しているおじさんに、俺は冷静に返した。「ただ、それを他人に押し付けるなって言ってるんだ」「真悟……!」「魔神がその正義で全てを裁こうとするのなら、俺は生神として止めなきゃいけない。そう言うことだ」 おじさん……魔神も剣を抜く。背中に背負われていた両手で扱う大剣だけど、おじさんはそれを楽々振る。切っ先が空を切る度にひょう、ひょうと子供の泣き声のような音を立てた。 
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第319話・最終決戦

 本気だな……おじさん。 だったら、俺は生神として、本気を出さなきゃいけない。 蒼海の天剣を握る手に、ピリッとした緊張が走る。 おじさんから放たれる威圧感……自分の正義を是とする世界、それを壊されたくはないと。 だけど、おじさんの正義が実行されたら、俺が助けてきた人たちのほとんどが殺され、生き残った人たちで戦争になる。 それを見過ごせない。 なら。「……あの一瞬、確かにお前を殺したあの一瞬で、お前に何があった?」「すぐに分かるよ、おじさんも」 天剣に意識を集中させ、構える。「私は理想郷を創る……正義しかない世界を……だが真悟、お前は邪魔をするのだろう……?」「正義しかない世界なら、既に成立してるんだ。全員が分かる正義がないだけで」「なら、もう一度!」 おじさん……魔神は剣を大きく振りかぶり、振り下ろした。 切っ先から、破壊の、切り裂く力が俺に向かって飛んでくる。 俺は即座に水鏡の盾で身を守る。  ぎぃんっ! 鋭い音を立てて、水鏡の盾は力を明後日の方向に跳ね返した。「戦うしかないから……本気で行く!」 俺も天剣を構えて距離を詰める!  ぎぎゃっ! 天剣と禁断の剣が噛みあう! あまりの力に手が震える。 すべてのものを断ち切る天剣が、禁断の剣を断ち切れない。 魔神具……魔神が創った、魔神にしか使えない武器。 蒼海の天剣と同レベルの剣だろう。 となると、本格的に肉弾戦になるか。それとも魔法の打ち合いになるか。 おじさんは俺より長く神の力を使ってきた。剣でも魔法でも、俺が不利なのは否めない。 でも、負けられない。 俺が今まで頑張ってきたことを無にされるわけにはいかない。 何が何でも、勝つ! 武器と魔法の扱いはおじさんが上だけど、力の源である信仰心は俺の方が上! ヴェデーレが勝ち取ってくれた魔獣からの信頼が、俺の力になる!「炎剣」 おじさんが禁断の剣に魔法の力を宿す。天剣が風属性と水属性の組み合わせらしいから、逆属性を突いたか。 なら。「生命盾!」 剣から振り下ろされた破滅の炎。 水鏡の盾の水属性、そして盾に宿した生命の力が禁断の剣を完璧に食い止める。「チッ」 おじさんは舌打ちして、一旦後ろに跳びのく。だけど俺は間合いを取ることを許さず、ダッシュで距離を詰
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第320話・第三の目

「てえりゃああ!」「ぬんっ!」 神の剣同士がぶつかり合い、火花を散らす。 魔神の攻撃は、一撃一撃が、重い。 両手剣の全力での攻撃は、今まで受けた攻撃の中でも一番強い。 それを水鏡の盾で受けるのは、正直キツイ。 おじさんてこんな怪力だっけ。いや、神の力でブーストしてるんだ。 なら、俺も!「俺の……力になれ!」 魔獣の信じてくれる力がある。それを【混】の属性で俺の力にする。 信仰心とは言え、その力は破壊の力。そして、生神である俺にとって、破壊とは決して無縁の力じゃない。 だって、何かを作るためには何かを壊さなければならないから。 だから、魔神にも逆に創造の力があるはずだけど、魔神的考えでは自分にはそんな力などないと思うんだろう。そして、死物の正義だって、自分のそれと違っているとは思ってもいないんだろう。 生物にも、死物にも、生きている存在それぞれに正義がある。 魔獣にだって。 魔獣が死物の正義から解放された途端に俺に味方したのは、魔獣たちの正義は魔神の正義とは違うという証拠。 確か、なんか名言があったな。 みんなちがって、みんないい、って。 結局そう言うことなんだよな。 おじさんが激怒したのは、自分の正義を揺るがす存在が現れた時だった。 自分の正義を傷つけられるのを放置できない。 そう言う人だった。 だから、魔神は今、激怒している。 自分の正義を教えた甥っ子が、真っ向からその意見に反論したんだから。 正義を教えたはずの俺が敵に回る。俺も最初おじさんと戦うなんて認められなかったけど、おじさんも俺と戦うことになるなんて思ってなかったはずだ。 だからこそ、悔しいんだ。 正反対ではあるけれど同等の力を持つ相手に、自分の正義を否定されたんだから。 だから。「つぅりゃあっ!」 魔神は禁断の剣を持ち直し、横薙ぎで襲ってきた。 仰け反りになって何とか剣を交わす。 だけど、無茶な体勢をしたものだから、そのままぺたん、と尻もちをついてしまう。 そこへ迫る剣の切っ先。 俺はゴロゴロと横に転がって何とか回避する。「シンゴ!」「大丈夫だベガ! それより」 俺は心の中で叫んだ。(サーラたちを解放する方法はあるのか?!)(魔神の中に封じられていると言うのであれば、あの仮面のキャッツアイルビー) ベガの意識
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第321話・奪還

(じゃあ、あのルビーを壊せば?)(恐らくは。例えそこにいなかったとしても、魔神の力の一部を大きく削ぐことになるのだから、無意味ではないだろう)(ありがとう、ベガ!)(気持ちは分かるが、しっかり倒せ!)「了解!」 俺は返事を声にして叫んだ。 しかし、この距離で、あのルビーを破壊することは難しい。天剣なら砕けるかも知れないけど、仮面を斬りつけるのが難しいだろう。 なら……。 魔神の剣戟を避け、俺は大きく後ろ向きにジャンプする。 禁断の剣の範囲外に出た。「謝る気になったか?」「ならないね」 俺は体の中を駆け巡る力に、属性を与えた。 そして、その呼び名も。 力に属性を与えて名をつけて具現化する。それが、魔法とも、神威とも呼ばれる力。「光の粒、いっぱい!」 叫ぶと同時に、無数の光の粒が俺の全身から現れた。 ……ネーミングセンスは相変わらず最悪なので許してほしい。 とにかく、現れた光の粒を動かして見る。 光の粒は、別々に、バラバラで、俺の望んだとおりに動く。「じゃあ……光の粒、行け!」 俺は魔神を指差した。 光の粒はそれぞれ軌跡を描きながら魔神に向かって飛ぶ。「この程度で、私を何とか出来るとでも?」 出来ると思ったからやってるんだけどな。 魔神は闇の盾を張り、光の粒を受け止めようとするが、粒は大きく迂回したり上から下から魔神を襲う。「闇粒!」 おじさんの身体から闇の粒が現れ、光の粒目指してぶつかっていく。 相殺するつもりか。 でも、信仰力の強さでは俺が上、その分数を出せる! 俺は次々に光の粒を生み出しては指した魔神に向けて飛ばす。 魔神が小さく舌打ちした。 相殺しきれない……ある程度は受けなければいけないと覚悟したか。 まあ、力を絞り込んだとはいえ数が数、一個一個は魔神を傷つけられても貫けるほどの力はない。 ある程度のケガは覚悟した。 それが、俺の狙い! 残った光の粒を、全身全霊で操った。 ぎゅうんっ! と音を立て、粒が合流して、光の塊になった。「む?」「悪いけど……仲間は……返してもらう!」「しまっ……!」 魔神は気付いた。だが遅い! 光の塊が仮面のルビーにぶつかる! 俺は光の塊に力を注ぎ込む。  ぱきっ。 乾いた音がした。「な……な!」 消えた光の塊の
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第322話・ずっと友達で

 解放されたサーラの混乱する意識が伝わってくる。サーラだけでなく、全員が混乱している。 そりゃそうだろ、最果ての地でいきなり争いに巻き込まれて封じられて、目が覚めたら水墨画の世界だったら誰だって混乱するよ。「私……は、魔神に……」「サーラ! レーヴェ! ヤガリ! コトラ! ミクン! アウルム! ブランも! よかった、全員無事だったか!」「シンゴ?! ここは一体……」「それは我が説明する! シンゴは魔神に集中しろ!」 ベガの絶叫が耳と頭脳の両方に届いた。 それもそうだ、相手は魔神、力の源を叩き割ったくらいでぶっ倒れる相手じゃない。 俺はすぐに魔神に目を戻す。 魔神の仮面は、善悪を見抜くという第三の目を印すルビーが砕け、その欠片がまるで血しぶきのように散っていた。「ぐう……う」 魔神は膝をついて、仮面の砕けた額を抑えて震えている。「馬鹿な……馬鹿なっ」「皆を封じることで、防御の力が失われていたんだ」 俺はゆっくりと、ゆっくりと間合いを詰める。「封印なんて真似をしなければ、第三の目が失われることもなかったのに」 魔神が気付いた時には、俺はもう、天剣の間合いに入っていた。「なあ……おじさん?」 よろけながら立ち上がる魔神に、俺はそう呼び掛けた。「なんで、神子を、滅ぼさなかった? 全てを滅ぼす魔神が、生神の神子を」「……気紛れだ」「本当に?」「…………」 聞かなくても、分かってた。 魔神が……おじさんが、神子を殺すのではなく、第三の目が弱体化するリスクを冒してまで封印した理由。 ……俺の、仲間だったから。 俺はおじさんの世話になっていた身なので、小学校の時から滅多に友達を家に連れて行くなんてことはしなかった。子供心に迷惑をかけると思っていたから。 でも、俺が風邪を引いて学校を休んだ時、プリントと皆からの「元気出して」レターを持ってきた友達二人に、おじさんは「風邪がうつるから」と俺と会わせなかったけど、お菓子やジュースでもてなしてくれて、「ずっと真悟と友達でいてくれ」と言った。トイレに降りてきて、俺以外の子供の声に気付いて応接間を覗いたのが、その場面だった。二人の手を握って、頭を下げていた。 ……小学生相手に、大の大人が。 友達を連れてきてもいいんだぞ――それが、おじさんの口癖だった。
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第323話・守るために

 ……お前の友達は私にとっても友達なのだから、いつでも呼んできなさい。 そんなおじさんだったから――最終的には俺に甘いおじさんだったから、俺が神子にした仲間……友達を、殺さなかったんだ。 俺を殺そうとした人間をそんな風に信じるなんて馬鹿げてる、と言う人もいるだろう。 でも、身内だから、育てられたから、分かることだってある。 エンドでサーラたちに出会った時、魔神の力なら殺すことだってできたんだ。それをしなかったのは、多分、魔神として生神である俺を殺すことになったとしても、俺の大事な友達は守らなければならないと思ったから。 魔神として俺と戦うことになるかもしれない。その結果、俺を殺してしまうこともあるかもしれない。 それでも、俺が手に入れた大事なもの……友達だけは、守らなければならないと。 例え、その結果、俺を殺し、彼らに殺されることになったとしても。 ああ、笑えるな。 笑えるくらいに矛盾してるな。「全てを破壊する魔神が、生神の神子を守るってどんだけだよ」「そう言う貴様は、生神の力を使い、死物を苦しめただろう」「そうだよ」「全てを救う生神が?」「俺は、全てを救うなんて言ってない」 ゆっくりと、天剣を構える。「手の届く範囲、助けられる人を助ける。全ての人間を救えるなんて思い上がってないからね」 だから、魔獣は助けたけど、他の死物は許せなかった。 俺の手の届く、俺が助けたい人たちを傷つけていたから。 魔獣は、助けてくれと言っていたから、そして俺の手が届いたから助けた。「結局、一人ですべてを救うなんて無理なんだよ。滅ぼすのも」「なら……何のための生神だ……何のための魔神だ……!」「貴船さんなら知っているかもね」「貴船……?」 仮面の下、おじさんの目が丸くなっていることは簡単に想像がついた。「お前、貴船を知っているのか!」「知ってるも何も、さっき会ってきた」 そうして、天剣を構える。「会いたかったら、一度死んでくれるか?」「冗談を」 おじさんはひび割れた仮面をむしり取って床に叩きつけた。  儚い音がして、仮面が粉々に砕け散る。 額から血が流れ続け、止まることがない。鮮血を帯びたおじさんの顔は、これまでにない程激怒していた。「お前が……お前が私を殺すことは出来ないのだ……私がお前を殺せても」「殺さ
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第324話・謝罪

 魔神が仰向けに倒れたのを見届けて、俺はその場に座り込んだ。「っで~……」 魔神の強烈な一撃を受け止め続けた水鏡の盾を持つ左手には感覚がない。 天剣を持つ右手は固く強張っていて剣を手離せない。 信仰力はたくさんあったとしても、血は失われているから、興奮状態から解放された今は貧血がひどい。「シンゴ!」 魔神が倒れたのを見届けたみんなが、オルニスの背から飛び降りて駆け寄ってくる。「シンゴ、済まない……」 サーラが俺の強張る右手の指を、一本一本、解しながら、頭を下げた。「まさか我々が囚われるなど夢にも思っていなかった……守護獣の思い上がりだ……。ベガに聞いた。苦労したのだろう……済まない」「謝らなくていいって」 俺は、何とか怖くない笑顔を作った。「魔神は……死んだのか?」 感覚のない左手からそっと水鏡の盾を受け取って、レーヴェが聞いた。「多分、まだ、決まってない」「多分? まだ?」「多分、生神や魔神の寿命は、周りが決めるんじゃなくて本人が決めるんだ。あっちへ行って、聞かれて……」  ぽかぽかっ。 後頭部をそれ程力はないにせよ二度叩かれて、俺は振り返った。「なーにが、あっちだ」「ヴェデーレ……」「ヴェデーレ兄ちゃんの言う通りだ! シンゴ兄ちゃん、さっき、死ぬ気だったじゃないか……って言うか死んだじゃんか! 服とか床に血の跡残ってないからってごまかされると思うな! あの時、何も抵抗しないで殺された時、オレらどう思ったか……!」「悪い、スシオ、ごまかす気も隠す気もないけど悪かった」「死んだって……」「死んだんだよ! 胸やられて、ひどい血を流して!」「落ち着け、スシオ」 ベガがスシオを軽く小突き、ヴェデーレの背中を撫でて落ち着かせてくれる。「人生の師とも仰いでいた相手が魔神だったのだから、死にたくなるのも仕方はない」「人生の師……シンゴの叔父上か……?」 俺のおじさんの話を聞いていたサーラが思い出してくれた。「そうか、叔父上が魔神だったか……」「ああ、気にしないで。決着はついたから」「気にするわ!」 怒鳴るヴェデーレ。「胸打ちぬかれてぶっ倒れた時、俺たちがどんな気持ちだったか……!」 そうだそうだ、の意識はオルニスからも来た。「シンゴはおれたちがいない間に何かやらかしたのか?」 ヤガリの
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第325話・決別

 ミクンの俺を見る目が痛い。「この人たちの話をまとめるとぉ……シンゴは無抵抗で魔神の攻撃を受けて、一度死んだ、ってそういうことなのかしら?」「……はい、そうです」「はいそうですじゃない!」 レーヴェに一喝された。「尊敬する人物が魔神だというショックは分かる! だからと言って、死を選ぶんじゃない! この世界は、お前がいないとダメなんだぞ!」「そうだよ、シンゴ……シンゴは生きてなきゃダメなんだよ……」 アウルムが泣きそうな顔で言い、コトラが俺の足にごっちんしてブランも頭を押し付けてきた。「心配……かけちゃってたなあ」「当たり前だ馬鹿野郎!」「オレ、兄ちゃんが死んだらどうしようかって……!」 うん、俺が悪い。全般的に。「ゴメン……二度としないよ」「当然!」 ごん、とミクンに殴られた。 その時。「…………」 小さな、呻き声とも言えない声。「……戻って来たか」「戻って?」 ベガが不思議そうに聞いて、そして気付いて慌ててそちらを見た。 魔神の右手が上がっている。 ゆっくりと降りて行って、自分の頭に掌を乗せている。 青白い光が宿って、しばらく。「シンゴ!」「大丈夫」 俺は同じくらいの身長のヴェデーレに肩を借り、ゆっくりと魔神に近付いていく。 魔神はしばらく掌で顔を覆っていたが、ゆっくりと手が離れていく。 額についた傷跡は消えなかったけど、おじさんは虚ろな目を虚空に向けて、それから、俺の方を見た。「……お帰り、おじさん」「…………」 おじさんは何も言わない。 多分、貴船さんに会って来たんだ。俺の時と同じように。「生き帰ることを選んだんだね……じゃあ、どうする? 魔神として俺と戦う? それとも……」 おじさんは……立ち上がった。 皆が身構えるのを片手で押さえて、俺とおじさんは視線を合わせた。「二度と、会わないだろう」「……そっちに、決めたんだね」 貴船さんのように、このモーメントから生神や魔神に相応しい人間を探す役目を請け負ったんだろう。「……ああ。私はこの世界のどこかで、お前の世界再生を見ている。もしそれが誤っていると思ったら、私はこの世界に再び魔神をもたらす」「そうならないよう努力するよ」 おじさんの額の傷跡に俺の目は釘付けになった。 かつてワー・ベアが言っていた、魔神に隠された第三の目。その目
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第326話・新しい道

 鳥の鳴き声に、俺は目を覚ます。 寝る必要はないんだけど、やっぱり精神が眠りを求めるものなんで。 ここは、原初の神殿。 大陸中央にあるこの神殿から、俺の力は秩序となって流れていく。 世界は、滅亡寸前から、俺の知らない繁栄していたころに戻りつつあるとサーラは言った。 大樹海、無窮山脈、奈落断崖、ビガスの要所を結ぶ運輸は、魔獣が出なくなったとはいえ、盗賊なんかが出たりもするので、フェザーマンの輸送隊は重宝されている。それまでフェザーマンが他人種に対して何らかの役割を果たすことができなかったので、フェザーマンたちは役割を与えられたことを喜んでいるようだった。 街も人が戻り始め、ハーフリングも草原から出て来るようになった。 エルフやドワーフもいらない対抗意識を燃やすこともなくなった。 プセマのようなノームも、淘汰されていった。俺の正義……あるいは自己満足に見合った人間だけが生き残っているようだった。 これは、俺のせいなんだろうか。 サーラやベガが言うには、俺の正義は範囲が広いから、これまでの生神と魔神の戦いの内では滅んでいく人は少ないのではないかと言うことだった。 つまり、俺が助けたいと思うだろう人は自然に助かっていくってことだ。 おじさんの望んだような一つの正義以外が淘汰される完璧な世界じゃない。 でも、ちょっといい奴が、他のいい奴に触れて、もっといい奴になっていく世界なら、それでいいんじゃないかな、と。 おじさんから見たらもどかしい世界かも知れないけどな。「シンゴ様?」 シャーナが神殿の最奥にある俺の部屋をノックした。「シャーナ? どうした?」「お忘れですか? ミクン様が、ハーフノームの訴えを聞いてあげて欲しいと……」「あ、言ってた。悪い、顔洗ってすぐ行くから」 服を変え、顔を洗い、面談室に行く。 ミクンが憤慨しているハーフノームをまあまあ、と抑えていた。 ん? あのハーフノーム、見た覚えが……。「ミクン」「ああシン……」「シンゴ?!」 ヴェデーレの悪友。トーノ。「シンゴが何故ここに? ……あ、そうか、お前、ミクン様みたく神子なのか? ならグリフィンに乗ってエンドを目指したのも納得……」「ごめん、トーノ」 俺は頭を下げた。「俺が生神なんだ」 ぶぅっとトーノが噴き出す。「グルートンは元気か?」「ああ元気…
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