別に俺が激怒させたわけじゃない。 俺と子供が一緒に勉強すると不運が移るなぞと言い張ってクラス替えを要求したモンスターペアレンツ。金を寄越さないと、と殴りかかってきた不良。バイト先で、理不尽な理由を押し付けるクレーマー。 そう言う人におじさんは激怒し、徹底的に叩き潰した。 笑うと怖い俺は、激怒して叩き潰すおじさんの影響で作られた俺なんだと思う。そう言えば、怒ったら怖いおじさんを見て、怒っても怖くない顔をしようと思ったんだったんだ。逆にそれが死ぬほど怖いと言われるとは思わなかったけど。 そう、今、俺は笑っている。 皆が怖いと言った、あの顔で。「おじさんの言う正義で人を分別したとしても、違う人間が全く同じ考え方をするなんてありえない。生き残った……新世界に選ばれたと思った人たちは、自分たちこそが正義だと思う。最初はそれでもいいだろう。でもね、おじさん。これ、無理。絶対無理だから。おじさんの定規で測られた正義も、人によって微妙に違う。その微妙な差は、その内問題になる。正義のずれはやがて互いを許せなくなる。その結果、何が起きるか? ……魔神が生き残らせた者同士での戦争だ。結局、誰も残らない」「…………!」 おじさんは仮面の奥から俺を睨んでいた。 そして、微妙な動揺が、俺に伝わってきた。 神としての力じゃない。九年という月日を共に過ごしてきた相手だから分かる動揺。「おじさん、たった一つの正義なんてないんだよ。人は他人から影響を受けて、自分の認めないことを跳ねのけて、それぞれの正義を持っている。正義を持つ人間を救うのであれば全員を助けなきゃいけないし、おじさんの正義を等しく共有している人間は何処にもいない。おじさんは、結局誰も助けられないんだ」「お前は……私が育てたお前は、私の正義を理解しているはずではなかったか」「確かに、俺はおじさんに育てられた。俺の思想や思考、理念。それはおじさんから大きな影響を受けている。……だけどね、俺の正義はおじさんの正義からずれて来てるんだよ」「ずれる……?」「俺は座り込んでいたお年寄りに水をあげた。車に轢かれそうになった子供を庇って死んだ」 両手を肩の位置まで持ち上げて、「やれやれ」のポーズを作る。「それは、お前の正義では……」「正義じゃない。俺の自己満足だよ」「な……!」 おじさんが明
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