遠くに、半端なく高い山の影が見えてきた。 左手側から照らす夕日が山の稜線を描いている。それが半端なく高く広いのだ。地平線、ではなく山脈線と言えるような感じで。 無窮、即ち果てのない山脈と言われれるだけのことはある。 その中でひと際高い峰が、ドワーフの住む山、『天の屋根』だろう。「滅びかけた世界では金属も採れなくなるの?」「世界に力がなくなると言うことですから」 シャーナさんが目を細めて無窮山脈を見ながら言った。「植物も金属も、世界の力から生み出されていると言います。世界から力が失われたから、植物も枯れ、鉱物も枯渇すると言います」「つまり、あの山の鉱石もなくなったってわけ?」「少なくともこちら側に流れてこないくらいには減ったのだろう。そもそも鉱山は鉱石を加工するために木々を切り、使う。だから、あの山脈はほとんど木が残っていない。食べる物に困って山を下りた可能性もあったが」 導きの水晶は真っ直ぐ北……山脈を指している。「ドワーフはいまだに山脈に住まっているということだな」 チラリとパンと干し肉を見る。まだまだ【神威・増加】で増やせるけど、パンと干し肉だけを増やして人間が生きていけると思えない。畑を耕したり獣を狩ったりするには金属とその加工が必要となる。つまり、無窮山脈を【再生】しなければならないけど、今の信仰心じゃ山全体を【再生】するにはかなりの時間がかかる。 とにかく、ドワーフに会って、その中の誰かに神子になってもらわないと、鉱物の【再生】も農耕具の【再生】も出来ない。 夜になる前につきたいな。 俺は雲を急がせた。 視界いっぱいが山肌になって、陽も沈んで辺りは暗くなった。「そう言えば炎とか光とかって【属性】はなかったな」 水晶の指す光だけが光源。 山に近付くにつれて光が上に向かって行くので、山肌に沿って上昇していく。 やがて、雲が静かに止まった。「どう、なさったのです?」「行動限界だな」 M端末に書いてあった。雲が一日に踏破できる距離には限度があるって。 でも、だからって困りはしない。「とりあえず、ここらで食事して寝るか」「寝る場所は?」「この雲」「……寝心地は良さそうだが、安全なのか?」「雲には結界があって、休息にも役立つって書いてあったから」 雲が広がって、三人と一匹がどれだけ転がり回っても安全な広さ
Last Updated : 2025-12-14 Read more