All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 51 - Chapter 60

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第51話・鉱山の生き物

「鉱山で必要とされる動物?」 うん、と頷いた俺に、ヤガリくんは考え込んだ。「……う~ん……馬やロバのような……それでもう少し小柄な生き物がいればと何度も思ったが……」「小柄な生き物?」「そう、これくらいの」 頷いた俺にヤガリくんはこのくらい、と、そう身長の高くない俺の胸辺りを指した。「おれたちは鉱山を掘るだろう? 鉱山と言えばトロッコと思われるだろうが、あれは設置するのに手間と時間がかかるんだ。しかも鉱脈が尽きれば廃線にするしかない。労力の無駄遣い。だから、頑丈で荷を運べておれたちドワーフも操れる動物がいれば……と思った」「ふぅん……」「だが、鉱山には餌となる生き物がいないし、水も少ないから、そう都合のいい動物はいないんだ」「餌か……」 今度は俺が考える番だった。「鉱山で一番出るのは何なんだ?」「一番出る……それなら土や石だ。深い鉱脈を探すにも、鉱石を掘るにも、大量に土や石が出る。トロッコは掘って出た土や石を運び出すためにも使われたんだ」 ……何か見えてきた。 餌は土や石で……重労働に耐える筋力……渇きに強くて……ドワーフの命令を聞けるほどには賢くて……コボルトを蹴散らせる程度の戦闘力があって……。「馬みたいに四つ足がいい?」「そうだな、確かに獣は四つ足が一番多いな」「見た目は綺麗なのカッコいいのどっち?」「キレイもカッコいいも鉱山の中で働かせる生き物に必要じゃないぞ。頑丈で荷を運びやすい体型なら何でもいい……って、さっきから何を」「いや、無窮山脈のラスト・モンスター対抗策を」「動物の話から何がどうしてそうなった」「コトラを見て思ったんだけど、ラスト・モンスターは要するに錆を食うんだよな」「ああ」「つまり、鉱石や金属の武器じゃなければ大丈夫なんだよな」「……要するに……己の爪や牙を武器とする獣なら、と?」「うん、でも、生き物である限り餌がなくなったら飢えて死ぬだけだから、あえてラスト・モンスターを餌にするんじゃなくてたくさんある石や土を食べて、ラスト・モンスターやコボルトを倒せるだけの力を持って、鉱山の手伝いができる生き物がいれば、生神や神子がいなくてもラスト・モンスター対策が立てられるわけ」「なるほど……確かにその手はありだな。価値のない土や石を餌とし、荷運びをしてくれて、敵と戦える獣か……」「コトラのおかげ
last updateLast Updated : 2025-12-23
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第52話・アシヌス誕生

 基本的にはロバっぽいけど、もっと足が頑丈。土や石を食べるから歯も頑丈。となると、前脚で踏みつけて、後脚で蹴り上げて、噛みつく。尻尾にも攻撃能力があると良いな。暗い世界で生きるから夜目が利いて、やっぱり暗いから色は明るい方がいい。ドワーフには従順で、そこそこの知能もあって……。 土の上に、四つ足の白い毛皮で頑丈で立派な生き物が完成した。「何をなさっているのです?」 それまで自在雲の上で大人しく座っていたシャーナが覗き込んできた。「あら」「こういう獣を作って、無窮山脈を守ろうかと」 土や石を食べて、物を運んで、と説明していると、不意にシャーナさんが難しい顔をした。「その動物って、山から出たら地面を食い荒らしたりしません?」「あ」「そうだ、その問題があった」「どうしよう」「無窮山脈から出られないという習性をつければどうでしょう?」「鉱山以外では生きられないとした方がいいな」「んー……動物としてはそれはどうかとも思うけど、山脈から逃げ出してあちこちで石や土を食い荒らしたら困るし害獣になるし……たくさん子供を産まないって制限と、あとは無窮山脈から出られない……」「生神様が創造なさる動物でしたら、無窮山脈から出られないと言うより、聖地でしか生きられないという方がいいと思いますわ」 シャーナの言葉に、思わず俺とヤガリくんは顔を見合わせた。「無窮山脈はドワーフの聖地なのでしょう? 聖地でしか生きられないとなれば、生神様の被創造物と言う神秘性が増しますもの」「なるほど。それなら他の場所でも生きようと思えば生きられるし」「ここで作ってみることもできるね」 ヤガリくんとシャーナの協力で出来上がった獣のデータを頭の中にいっぱい詰め込んで、端末を起動する。「【神威:創造】!」 馬を二回りほど小柄にして二十倍ほど頑丈にしたような生き物が、澄んだ瞳でこっちを見てきた。 白い毛並みはわずかに燐光を放ち、とても地面の奥底で土を食う生き物には見えない。角のないごついユニコーンみたい。「あら、素敵」「いいのか? こんなに美しい生き物をドワーフのものにして」「ドワーフのために創ったんだから」「何をだ?」 リーヴェさんが覗き込み、その獣を見て絶句する。「なんだ……この生き物は」「無窮山脈のラスト・モンスター対策兼鉱山で働く家畜を作ろう計画の結果」
last updateLast Updated : 2025-12-23
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第53話・早速連れてく

 その前に、と【観察】をアシヌスに向ける。【アシヌス(個別名なし):レベル1/戦闘レベル50/属性:獣/聖/大地/岩/鉱石 生神に創られた神獣。石や土を主な食糧とし、小柄だが力仕事に向いた体躯をしている。夜目が利き、燐光を放って居場所を主に伝える。戦闘能力としては、力強い足と尾による打撃攻撃、強靱な歯による噛みつき攻撃。生神とドワーフ族の命に従う。生神や神子の傍、あるいは聖地以外では生きられない】「戦闘レベルもあるし、そこそこ活躍できそうだな」「聖地以外にも神子や生神様の傍なら生きられるのですね」「聖地と言うよりは聖なる存在の場所でしか生きられないんだな」「他の場所に逃げ出して退治されるよりはいいからね」 ヤガリくんはアシヌスに恐る恐る手を伸ばす。 アシヌスは差し出された手の匂いを嗅いで、その手に頭を擦り付けた。「お」「可愛いですわね」「ドワーフ族に従うことになっているからね、ヤガリくんに懐くよそりゃ」「よしよし」 ヤガリくんが首筋を撫でてやると気持ちよさそうに目を細める。「どう? 役に立ちそう?」「ああ。思っていたそのまま……いや、それ以上だ」 ちょっとドワーフの所に行ってくるから、と伝えて、俺とヤガリくんは【転移】を初めて試してみることにした。「わたくしたちは?」「ここで待機してくれ。レーヴェとコトラも置いてくから」「騎士に主の傍を離れよというのか?」 戻ってきたレーヴェが不満を口にした。「違うよ。レーヴェとコトラとシャーナがいればここは多分安全だ」「シンゴ様は大丈夫なのですか?」「大丈夫。ヤガリくんもいるし、アシヌスも向こうで少し増やすつもりだし」 俺はコトラに手を伸ばした。「この泉を守っていてくれるかな?」「ぅな!」「よし、頼んだ。行くぞヤガリくん!」「おう!」 オレはM端末を手にした。「【転移・無窮山脈生神神殿】!」 しゅうう、と空気が渦巻いて、俺とヤガリくんとアシヌス第一号は無窮山脈生神神殿に辿り着いた。「なるほど……これが転移か」「俺も初めて【転移】したけど、自在雲でも一日以上かかる距離を一瞬だからな、便利だな」「生神様!」 聖地への降臨に気付いたドワーフたちが集まってきた。「ラスト・モンスターは?」「今のところはいない。……が、コボルトの影を見かけたような気がする」「やっぱ襲撃
last updateLast Updated : 2025-12-24
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第54話・二頭目のアシヌス

 ヤガリくんはするすると滑る毛皮を撫でてやった。「しゅう」 息を漏らすような鳴き声。そういや鳴き声設定してなかった。「餌は土と石だから、鉱山を掘っている限りこいつらが飢えることはない。頑丈で強力だから、トロッコの代わりになる。そして、ラスト・モンスターの餌となることもない」「すう」 アシヌス一号は尻尾を軽く振って頷いた。「足と尾と歯で戦える。錆びるものじゃないからラスト・モンスターが出てきても大丈夫だ。そして、ドワーフ族の命に従う。鉱山の手伝いとラスト・モンスター対策、一挙両得」「う~む……」 一番年かさのドワーフが腕を組んで唸った。「確かに足も太い。見た目と違って丈夫そうだ。だが、一頭だけでは」「増やせる」「干し肉を増やしたようにか」「俺が増やせないのは人間って呼ばれる種類だけだからね。でも、まったく同じのを増やしてほしいか、それとも一人一頭ずつ好みの毛色をしたのを創るか」 おお、と歓声。「白だけじゃないのか?」「とりあえず考えただけだから。色の変更とかは楽勝で出来ると思う」「じゃ、じゃあ。ぼくは」 一番幼いドワーフが手を挙げた。「栗毛色の、もうちょっと小さいのがいい。ぼくも乗れる?」「乗れるよ。ドワーフの言うことを聞く動物だし、元々荷運びとか鉱山内の移動用に創ったし」「じゃあ、じゃあ、よろしく!」「任せろ」 【神威・創造】、Y! カッと光が走り、思った通りちょっと小柄な栗毛色のアシヌスが生まれた。「このアシヌスぼくの? ぼくの?」「うん」 幼いドワーフは手を伸ばして首筋を撫でる。栗毛のアシヌスは鼻面を寄せてドワーフの胸の辺りに頭ごっちんをする。「すごい! かわいい!」「可愛いだけじゃないぞ。乗れるぞ」 栗毛のアシヌスは身を伏せて乗りやすいようにする。幼いドワーフがよじ登ると、アシヌスは何の苦も無く立ち上がる。「前へ行け、って言えばいいの?」「ドワーフの言うことを聞くから」「よし、すすめー」 栗毛のアシヌスは幼いドワーフの言うとおりにぽっくりぽっくり歩き出す。「よし! お名前はリウス! お前のお名前はリウス!」「ふしゅう」 吐き出した声が弾んでいた。「手入れはしなくていいのか? 蹄鉄とか」「そんな特別なことはしなくてもいいけど。時々爪の様子を見てやったり、洗ってやったりすると良いと思う」
last updateLast Updated : 2025-12-24
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第55話・アシヌスの実力

「しゃあああっ」「しゅうっ」 幼いドワーフを庇って、淡い燐光を放ちながらリウスが戦っていた。 相手は皮膚の色がピンクと言うなんとも能天気な色をした、リウスよりもう一回り小さいトカゲのような……なんて形容すればいいんだろう、とにかく見た目能天気な生き物だった。 俺は即座に端末を向け【観察】した。【ラスト・モンスター(個別名なし):レベル10/戦闘レベル1/属性:獣/錆/鉱石 敵対勢力によって生み出された魔獣。金属や鉱石を錆に変え、その錆を食べるという習性を持っている。その食性から鉱山などでしか生きられない。コボルトに飼われて鉱山に出没することが多い。戦闘能力は低いが鉱脈そのものや神の装備すら錆びさせる力を持ち、それを食らって成長し巨大化し、最終的には鉱山を食い尽くして餓死する】 なるほど、これがドワーフにとって最悪の魔獣、ラスト・モンスターか。戦闘能力は低いけど、俺が創った装備まで錆びさせる……つまり金属を使わない装備なら大丈夫なんだろうけど……でも戦闘能力は低いな……。「しゃあああああああ!」 ラスト・モンスターは尾を振り上げて、リウスを威嚇する。しかし躊躇わずにリウスは後脚で立ち上がり……。 前脚に全体重を乗せて振り下ろした。  ぷち。「しゃふぁああああ!」 ラスト・モンスターは悲鳴を上げて塵と化した。「ラ、ラスト・モンスターを倒した……」「一撃で……」「リウス! リウスー!」 リウスはくるりと振り向くと、すぐに幼い主の下に行った。鼻面を寄せて腰を抜かして座り込んでいた主を安心させるように顔を擦り付ける。 ぐしゃぐしゃになった主の顔をペロンと舐めて、リウスはその傍らに座り込んだ。「すごい……」「言ったろう、生神様がラスト・モンスター対策に創ってくれた生き物だって」「ここまで強い生き物だとは思わなかった……」「それを一人一頭ずつ創ってくださると?」「それくらいの数がいればあとは自然繁殖で増えるだろ」「うわあ……すごい……」「じゃ、じゃあ、俺は……」「儂は」「僕は!」 たちまち俺の前に列ができた。「じゅ、順番に! 全員に創るから!」 全員、……何て言うか、生まれて初めてペットショップに来た子供みたいに興奮して並んでいた。 にしても、好みの毛色って十人十色だなあ。 鉱山住まいのドワーフだから金色とか銀色だと
last updateLast Updated : 2025-12-25
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第56話・おれのアシヌス

 その様子を、一番最初に創ったアシヌスが、寂しそうに見ていた。 ヤガリくんの背中に頭ごっちんする。「? どうした」「ああ、寂しいのか」「寂しい、とは?」「自分以外のアシヌスには主と固有名称があるのに、自分にはないって」「そうか、お前には主はいなかったな……」 しかし、とヤガリくんは悩む。「聖地以外の場所で生きていけないお前を連れ出すことは……」「アシヌスは生神や神子の傍なら大丈夫だぞ」「……しかし、世界中を巡るのにこいつを連れて行くのは……」 しゅう、と純白のアシヌスが息を漏らす。寂しげな溜め息に近い。「可哀想って言うなら、このままここにおいてかれるのも可哀想だぞ」「しかし……」「自在雲は広がるし、なんか力仕事がある時にアシヌスが役に立つこともあるだろうし」 ヤガリくんはう~ん、と考えた。「ブラン」 白いアシヌス、顔を上げる。「一番最初のアシヌスは、ブランって名前で、おれの相棒だ」「ふしゅう!」 鼻息のような声が喜んでいた。ヤガリくんに頭ごっちんしてスリスリしてる。見た目はロバに近いけど、仕草は猫に近いなあ。「とにかく、これで全員分のアシヌスが出来たわけだけど」 みんなもう、自分のアシヌスにデレデレ。可愛がってもらえそうだなあ。自分が創った存在を可愛がってもらえるのは嬉しい。けど、人の話は聞いてほしい。「定期的にこことエルフの泉に来るけれど、アシヌスとか鉱山のことで困ったこととかあったら何かにまとめといて」「わかったわかった」 本当に分かってるのかいな。「可愛いなあオレのステラは」「うちのフシュマイスも可愛いぞ」「こんな生き物が鉱山で役に立ってくれるって」「何度鉱山やめて可愛い動物に会いに行こうと思ったか……」 ……ドワーフにもモフモフを愛する心があるらしい。 さて、これでエルフとドワーフは安全になったんだが。 ヤガリくんとブランと一緒に【転移】して、エルフの泉に戻った俺に、シャーナさんが申し訳なさそうな声を上げた。「何?」「あの……神子も増え、エルフとドワーフの方々が安全になった今、原初の神殿を何とかしていただけないでしょうか……?」 そう言えば。 忘れてた。俺が一番最初に辿り着いた神殿。干し肉とパンを【再生】したっきりほったらかしだった。「そうだな。神殿にも人が戻っているかもだし、敵対戦
last updateLast Updated : 2025-12-25
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第57話・辿り着いた人

「【転移・原初の神殿】!」 ドワーフたちの御見送りを受け、俺たち一行はまずエルフの泉に集合し、そこから一番最初に来た原初の神殿に【転移】した。 俺とヤガリくんとブランは三回目だけど、シャーナやレーヴェ、コトラは初めてなので、クラっと来たら違う場所にいるという感覚に驚いていた。「便利なのですね、転移は……」「俺は自在雲も好きだけどね。景色流れていくあの感覚がいい」 神殿の一番神聖な場所らしい、祭壇を治めた小部屋に降り立った俺たちの、ブランの鼻が大きく広がった。「どうした? ブラン」 ふんふん、とドアの向こうに鼻と視線を向けた。「どなたかがここに辿り着いているのでしょうか」 シャーナが小さく首を傾げた。「この神殿は神を信じる者にしか見えないし辿り着けない神殿です。つまり、神を信じ、そして困っている人しか入れないはずなのです」「そういう人が辿り着いてる可能性があるってことか?」「そうですね。まずはわたくしが出ますので、皆様方は後から」 レーヴェとヤガリくんは頷いて、いつでも攻撃できる体制を取りながらシャーナの背後につく。 俺は飛び出したがっているコトラとブランを撫でながら落ち着かせて、様子をうかがうことにする。 シャーナは扉を押し開けた。 ぎぎ、ぎぃ、と音がして、扉が開く。 びくり、と竦む気配がした。「に、逃げ……」「逃げる必要はありません」 シャーナが静かに言った。「この神殿は、神を信じる方にしか開かれません。貴方達はここにいるのですからその条件は満たしています。そして私はリザーの神官長。貴方達を受け入れない理由がありません」「リザーの……そうか、生き残って……」 ほっと息をついたのは、人間の家族連れ数組だった。「だけど、ここにあるパンも尽きて……すみません、空腹が過ぎて予備の食料を全部……」「大丈夫ですよ。お気になさらず」「シャーナ、そいつらは安全なのか?」 リーヴェとヤガリくんが入って来たので、家族たちは更に後ずさる。「安全です。ここは創造と再生の神をお祀りする唯一の神殿ですもの。世界の破滅の時、生神様を信じる者のみが入れる唯一の聖域。生神様の御認めにならない人は目にすることも出来ません」「最大の聖域か」 リーヴェは不機嫌そうに呟いた。エルフの泉がオークに侵攻されるのが腹立たしいんだろう。 ヤガリくんも
last updateLast Updated : 2025-12-26
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第58話・頼み

 外に出れば、エルフの森に行く前に大地だけ【再生】して、植物がない地面が広がっている。「じゃあ、【再生:大地/植物/獣】、行くぞ!」 光がぶわりと巻き起こり、俺から円状に広がっていく。 大地が割れ、木々が生え、小さな野ネズミから大きな狼までが【再生】された。 鮮やかなまでの緑。「これ……森ってヤツ……?」「死んだおじいちゃんが言っていた、これが、緑……?」「【属性:獣】もあるから、動物も蘇ったみたいだな」「大地を再生……?」「これは……まさか」「本当に、生神様?」 皆がこっちを見てる。「一応そういうことになってる。まあ、大したことはしてないけど」「大したこと、なんて」 レーヴェが言った。「森エルフの聖域を再生したのが大したことでなければ何なのだ」「無窮山脈も再生した正真正銘の生神が何を知らん顔して」「だって俺自身がやったことってタブレット端末ポチっただけだもん」「灰色虎をお助けになったでしょう」「ドワーフにアシヌスを創ってくれたのも真悟じゃないか」「だから俺ってポチっただけだもん。どっちかって言うとこの端末が偉い」 あ、と思いついて、俺は家族たちに端末を向けた。「とりあえずキレイにしとくか」「え?」「【浄化】【再生】」 汚れも落ち綺麗に再生した服を着た家族が、呆然と立っていた。「え……この服って、こんな色をしてたの?」「身体がこんなにきれいになったのは初めて……」「もうちょっとキレイにしたいなら、そこに川があるから、そこで体洗っても」「川?!」「これが水の色?!」 俺が指した川にまで驚く家族。 それだけで、余程大変な目に遭ってきたのだと分かる。 ブランがぽっくりぽっくりと歩き出した。「どうした、ブラン」 ヤガリくんが一緒に出てくる。 ブランはぽっくりぽっくりと水辺まで行くと、川の水に口をつける。「何だ、喉が渇いてたならそう言え」「ふしゅう」 器用に口で水を飲みながら鼻息を吐き出すブラン。「あっ、あのっ」 娘を連れた父親が、前に出た。「本当に、貴方様が、生神様なのですか」「そう呼ばれてはいるけどね」「ならば……ならば」 父親は叫んだ。「お願いです、どうか、私たちの村を助けてください! ……今すぐに!」
last updateLast Updated : 2025-12-26
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第59話・キガネズミ

「村?」「はい……我々は西のビガスから逃げてきました」「西のビガス」 シャーナが呟く。「あの地域なら、まだもつとこの神殿から出て行った人々がいたのに……」「……はい、ビガスは穀倉地帯でしたから、まだ穀物も動物もいました……あの時までは」「あの時?」 俺の言葉に、娘を連れた父親が頷いた。「私はアンガスです。これは娘のイリス。ビガス村長の息子です……」「……アンガスさん、説明してくれないか? あの時って一体?」 アンガスさんは痩せ細った顔を青くして俯いた。「ビガスは昔から凶作などに備えて、大量の穀物を確保していました。伝説で言う生神様が降臨するまでは何とかもつか、と父と話していました」「もたなかったのか?」「理由はいくつかありますが、大きなものは二つ。リザーの神官長が言ったように、穀物がある、と言う噂が流れて、大勢の人間がやって来たこと。そして……」 アンガスさんは娘を抱く手を震わせて、言った。「キガネズミの大量発生」「キガネズミ」 シャーナは口を押えて青ざめ、リーヴェは軽く首を振り、ヤガリくんは深いため息をついた。 何か、よっぽどヤバいモンスターっぽいけど。 俺は端末でヘルプした。【キガネズミ:凶作の時に現れる、敵対勢力に創り出された超小型の魔獣。子供の掌大の大きさしかないが、常に飢え、満腹すると言うことを知らず、飢餓の時に数千と言う群れで現れて確保していた穀物を食い荒らし、異常なスピードで増殖していき、食物がなくなれば最終的に共食いを始めて全滅する】「無窮山脈のラスト・モンスターに近いのか……いや、食い物を食い荒らす分、ラスト・モンスターより質が悪い」「キガネズミが現れたのですか」 シャーナが深刻な顔をした。「では、ビガスは……」「穀物を食い荒らされ、飢えたネズミは人間さえも食い荒らし始めたのです……!」「うげ」 俺は自分の顔が青くなるのを感じた。掌大のネズミに食い荒らされる人間って、それキツイわ……。「父……村長は残った穀物を比較的若い民に渡し、そこから出すことによって、生き残る可能性を少しでも増やす道を選び……数組に分けて、あちこちに向けて旅立たせました……。私たちは原初の神殿で生神様が降臨される可能性に賭けてここに辿り着いて……」「よく頑張った」 俺はアンガスさんの肩を叩いた。「あんたたち
last updateLast Updated : 2025-12-27
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第60話・数の暴力

 その前に、と食料倉庫に行く。 相当腹ペコだったんだろう、再生しておいたパンや干し肉はほとんど食い尽くされていた。「【再生】【増加】」 あっと言う間にパンと干し肉で倉庫は一杯。 適当な数を道中用の食料として持って行こう。「来る? それともここで待ってる?」 ビガスの民たちは顔を見合わせた。「キガネズミが出たということは、最早ビガスは助からないと言ってもいいでしょう……生神様が成しえない唯一のことは、人を蘇らせること。村長さんも生きていらっしゃるかどうかわかりません。村が蘇っても、人が蘇ることはないのです……それでも」 シャーナさんは真っ直ぐに彼らを見た。「それでも、皆様は、ビガスに戻りたいと仰りますか……?」 アンガスさんは真顔で頷いた。「私は、行きます」「アンガス!」 他の家族がアンガスさんを止めようとする。「村長が生き延びているかもわからないんだ……そもそも村は我々が出た時点で終わっていた……居住地だけ蘇っても……」「それでも、私は、ビガスの次期村長だ……村を守るのが、私の仕事だ……」「私たちは……」「分かっている、ここでイリスと一緒に待っていてくれ……ようやくたどり着いた安全な場所から出ろとは言わないよ……」「お父さん」「イリスはみんなと一緒にここで待っていてくれ。安全になったら迎えに来るから……」 生神の許しがあれば、神子でなくても神具を使える。 だから、全員自在雲に乗って、アンガスさんの案内の元、俺たちはビガスに向かった。 道途中を【再生】せず、ひたすら雲を急がせる。 可能性は、まだある。 アンガスさんの言うビガスの方面に向かって、導きの球から薄い光の筋が伸びている。 ビガスに誰かが生きていて、困っている証だ。 一人でも生き残っているうちに、急がなきゃ……! くん、とコトラとブランが鼻を鳴らした。「どうした、コトラ、ブラン」「ぐるるるるる……」「しゅうううう……」 警戒と威嚇。 俺は自在雲のスピードを緩めた。「きぃ、きぃきぃ」 甲高い鳴き声。 俺は雲を少し上空へ移動させて、端末で思った種を作った。 そして雲から地面を見下ろす。 黄色い大地。 ……いや。 大地じゃない。これは、毛皮? キガネズミ! うわ、数千って言うだけある。気持ち悪い。物騒で怖い。こんなの中に放り込まれたら
last updateLast Updated : 2025-12-27
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