All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 21 - Chapter 30

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第21話・新しい神子

「じゃあレーヴェさん、あなたはここの人ですか?」「この聖なる泉を守る森エルフの守護騎士だ。もっとも、貴方が来るまでは、只の腐り果てた沼だったが……」 白い石で守られた泉は、神殿傍の川よりキレイな水をとうとうと湧き出させている。「全ての神が世界を見捨て、この世界が滅ぶとき、再生と創造の神が降臨して世界を創り直す……この伝説が本当になるとは……」 緑の目に涙を溜めて、レーヴェさんは頭を下げた。「俺は大したことしてないよ。それより、ちょっと【観察】していい?」「かんさつ?」 レーヴェさんは首を傾げて疑わし気に俺を見る。 まあ、観察していい? って聞かれて、いいよって言う女の子は少ないだろうなあ……。「……何だかよくわからないが、神である貴方の言うことだ、お好きに」 美少女に「お好きに」と言われたら襲う、と言っていた生前の俺の友人がいたけど、……確かにちょっと考えてしまうなあ。 と、そう言う場合じゃない。目的を果たさなきゃ。 俺は【神威:観察】を使った。【神子候補:レーヴェ・オリア 信仰心レベル500 属性:植物/水/聖】「あった! 【属性:植物】!」 シャーナより信仰心低いし二つの属性が被っているけど、【植物】を探しに来たんだから結果オーライ、大丈夫!「あった、とは?」 疑わし気なレーヴェさんの声。「あ、ごめん、わけわからないよね。俺が神威を揮うのに、神子の持つ信仰心と属性が必要なんだ。俺は森を再生したいけど、今のところ植物の属性がなくて……それで、君が植物の属性を持っていると確認して」「……確かに私は森エルフの生き残りだが、そんな森を再生させる力があったら真っ先にここを元に戻している」「君が俺の神子になってくれれば、大地だけでなく植物も再生できる」 レーヴェさんはしばらく考え込むような顔をして、俺を見た。「冗談……では、ないのだな」「冗談言ってない」 俺は全力で首を横に振った。「君には【植物】の属性がある。君が神子になってくれれば、まだ大して広い範囲にはできないけど、森を再生することができるかも知れない」「いいだろう。神子とやら、引き受ける」「本当?!」「シンゴ様」 シャーナが小声で伝えてきた。「本当によろしいのですか? あの方は神を信じる心はなさそうですのよ」「大丈夫。その分シャーナの信仰心があるから」 
last updateLast Updated : 2025-12-11
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第22話・森の守護騎士

「……今、何が」「これであなたはシンゴ様の神子となりました」 シャーナが微笑んでレーヴェさんを見た。「あなたの御心がシンゴ様の御力を左右することを、どうぞお忘れなきように……」「何だかよくわからないが、これで貴方はこの森を戻す力を得たということか?」「まだ全部戻すのは無理だろうけど、この辺りくらいなら行けるかな……」 端末で再び【神意】を選び、【再生】を選んだ。【周辺10キロの大地・水・植物を再生できますがよろしいでしょうか? Y/N】 もちろんY! 俺から放射線状に光が溢れていき、腐った大地は黒土となり、ピクリ、と動く。  ごごごごごごご! 地面を割って、草が、木が、花が、植物という植物が溢れかえった!「うお、すげえ!」「これが……緑……?」「……二度と……見ることは出来ないと思っていたのに……!」 たちまちのうちに、見渡す限りの森ができた。「これが……神の力と……?」「やっぱり植物がないと再生したって言えないよな……。神殿に戻ったらあそこにも再生をしよう」 と、唐突にレーヴェさんが俺に向かって跪き、頭を下げた。「レーヴェさん?!」「再生と創造の神よ……わが一族が守り切れなかった森と泉を再生してくださったこと、感謝する……。森の守護騎士レーヴェ・オリアは貴方に剣を捧げ、貴方のために剣を振るう」 短剣の切っ先を喉元に当て、レーヴェさんは動かない。「えー、と、あの?」「レーヴェは貴方の騎士となることを誓ったのです」 シャーナがまたも小声で教えてくれる。「これは、あなたにならば命を奪われても構わない、あなたのためならば命を差し出すという宣誓の儀。短剣を取り、その刃の平で肩を叩けばその忠誠を受け入れたことになります」「あ、うん」 俺はレーヴェさんが喉元に突き付けたままの短剣を、そっと手に取った。 そして、柄を持ち、ナイフの平らな所でレーヴェさんの肩を叩く。「感謝する、我が主君。私の刃は常に貴方と共にある」 神子じゃなくて騎士なんだね。まあレーヴェさんは騎士だから、生神と神子より主君と騎士という関係の方が受け入れやすいんだろうね。「早速で申し訳ないのだが、主君の御力をお借りしたい」 レーヴェさんは深刻な顔で言った。「この地には私の他にも森エルフが生き残っているのだが、圧倒的に食物が足りない。何とかならないだろ
last updateLast Updated : 2025-12-11
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第23話・「増加」

 そして。【生神レベルが20になりましたので、新しい神威を覚えました/神威【再生】が10レベルになりましたので、新しい神威を覚えました】「新しい神威……?」 神威をタップして開くと、二つの神威が増えていた。 【増加】と【創造】。 もしかして、これって……。 即座にヘルプページで確認する。【神威・増加:物を増やす。人間と呼ばれる存在以外を増加させられる】 おお。これがあれば何でも増やせるわけか。【神威・創造:ゼロから望むものを作り出す。信仰心と属性がないと望むものは生み出せない】 おおお。これって本当に神っぽい。 とりあえず、まずは。 俺は弁当に持ってきていたパンと干し肉を取り出す。「生き残りって何人?」「二十人と言ったところで……」「おし。やってみるか」 パンと干し肉にM端末を向ける。【パンと干し肉を増やします。現在の信仰心レベルでは40倍までしか増やせませんがよろしいでしょうか】 200レベルで5倍ってところか。パンと干し肉一つずつで40倍増やせれば、とりあえず今の分はあるな。【増加しますか?】 Yをタップした次の瞬間。 焼き立ての薫り高いパンと、柔らかく仕上がった干し肉が40個、できた。「!!」 レーヴェさんは絶句すると、一礼して走り去った。「まさか、神に怖気づいて逃げ……」「たんじゃないと思うよ」 シャーナの疑念に俺は返す。 少しして、特徴的な耳をした子供や少年少女がふらふら現れた。「あ……ごはん……?」 暗く沈んだ目が、四十人前のパンと干し肉を見て輝く。「はい、一人ずつね。多分全員分あるから」「うわあ!」「焼き立てパンって、何十年ぶりに見ただろ……」 レーヴェさんが栄養失調らしいお年寄りを背負って戻ってくる。 泉のほとりで、食事会が始まった。
last updateLast Updated : 2025-12-11
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第24話・大地の一族

「パンってこんなに柔らかいんだったっけ」「五十年足らずで忘れてしまうとは情けないが……」「美味しい、美味しい!」 森エルフの皆さんは美味しそうにパンと干し肉を食べる。 いや、そんな喜ばれると増やした甲斐があって嬉しいけど。 五十年足らずでってことは、五十年は柔らかいパンを食べていないということで、それを言ってるのが小さい子供なんで、え? あれ? そう言えばヘルプの所で「エルフは長寿」とあったけど、つまり成長も遅いってことか。 俺が死ぬ前に助けた子供と大して変わらないような外見で五十超えとか、すごいなあ……。 全員、パンと干し肉を食べ終わって、ほうっと満腹感に浸っている。「後は何かいるものがあるかい?」「……大地が戻ったということは、残しておいた種を蒔けるということだな。しかし農耕器具がどれもこれもボロボロだ」「それがある場所、見せてもらえる?」「もちろん」 レーヴェさんは立ち上がって、オレとシャーナを連れて、森が再生したギリギリの場所の小屋へ案内してくれた。 ボロボロに錆びた農耕器具がある。 不安がよぎった。「……まずい、な」「まずい、とは?」「説明すると、俺は神子の持つ属性に沿ったモノしか【再生】や【創造】が使えない。俺の今の属性は、水、大地、植物、聖だから、鉄とかの金属が出来ない可能性がある。もしそうだとしたら、多分鉄製の農具の【再生】は難しいんだ」「……そんな」 一瞬レーヴェさんの顔に絶望が過ぎった。「何か、手は」「要は属性を持った神子が増えればいい。【金属】とか【鉄】とかの属性を持った神子がいればいいんだけど」「神子になる条件は何か必要なのか?」「いいや……人間じゃなくても問題はない。信仰心が高くて属性を持ってれば無問題」「ならば、大地の一族に会いに行くべきだと思う」「え?」「ドワーフ」「どわあふ?」「そう。北の鉱山地帯に住んでいた、鍛冶の一族だ」 俺は不機嫌そうな顔をするレーヴェさんに気付いた。「……どわあふは、森エルフと相性が悪いのかい?」「当然だ」 レーヴェさんは苦虫をかみつぶしたような顔で言う。「鍛冶には大量の木材が必要だ。ドワーフ共は鉱物の眠る山を掘り荒らし、木々を刈り取って禿山にして山を死なせる。忌まわしい一族ではあるが、金属についてはモーメントも最も詳しいはず。私の属性が水と
last updateLast Updated : 2025-12-12
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第25話・属性探し

 レーヴェさん……本気で嫌なんだな……。 ふと思いついて、M端末を取り出し、ヘルプページを見る。【ドワーフ:鍛冶に優れた人種。背は低いがそれを補えるほどの筋力を持ち、その肉体で金属を採取する。自然と共にあるエルフと自然を採取するドワーフは仲が悪いが、決して不倶戴天と言うわけではなく、都合によっては手を組むこともある】 なるほどね……。森エルフも畑を作るのには鋼を使っているし、嫌いだけど決して拒絶しているわけではないってことだな。「と、言うことは、今度はドワーフに会いに行かなきゃいけないってことか」 今の状態で何とかならないか、と散々話し合ったけど、森に獣がいないから畑を耕すしかないけど、残念ながら畑を耕すには木製の農具では柔すぎるらしい。レーヴェさんだけじゃなく、残っていた森エルフ全員の同意があるから説得力デカい。「獣はいなかったな」「魚はいるんだけど……」「どうして魚は良くて獣は駄目なんだ?」 早速検索してみよう。【魚の属性は水であるため【属性:水】があれば再生・創造出来る。しかし獣は【大地】【岩】【植物】など【獣】以外の属性が分かれるため、【獣】と組み合わせる属性がなければ望む獣は【創造】【再生】はしない】「あーまあ、確かにね……」 鳥なら行けそうだけど、【属性:空】を持つ神子なんて、文字通りの鳥でなければ手に入らないだろうし、鳥も食べ物がなくて飢えるだろうし……。「家畜がいなければ栄養バランスも偏るよな……」 一刻も早く、【属性:鉱石】と【属性:獣】を手に入れないと、せっかく助かった人たちも俺がいちいち食糧を出さないと生きていけなくなる。 しかし……獣はなあ……。「……とりあえず【獣】を持っていそうなのを探しながら、ドワーフに会いに行こう」「行かれるのか」「あなたも来るのですよ」 シャーナに言われ、レーヴェさんは露骨に嫌な顔をする。確かに、仲の悪いドワーフには会いたがらないだろうし、あっちもエルフが一緒だと嫌がるかも知れないし……。 M端末で片っ端から調べてみると、神子は常に生神に付き従っていなければならないわけではないらしい。生神の本拠地である神殿や聖域を守る神子もいるという。当然生神の本拠地に繋がっているから、信仰心や属性は使えるという。
last updateLast Updated : 2025-12-12
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第26話・無窮山脈目指して

「レーヴェさんはここで泉を守ってくれればいいよ」「シンゴ様?!」「レーヴェさんはここの守護騎士なんだろう? ここを守るのが仕事なはずだ。無理強いできないよ」「……いや」 しばらく無言。そしてレーヴェさんは言った。「私は神に刃を捧げた身。神が行くと言うのであれば、何処までもついて行くのが騎士の任務」 ……んー。この人もシャーナに負けず劣らずの頑固者っぽいぞ。騎士って言うのは頭が固いって言うけれど、森エルフの騎士も騎士は騎士。「それと、主が騎士の名を敬称をつけて呼ぶのはおかしい。レーヴェ、と呼びつけろ」 それって命令か? 命令なのか? シャーナと同じこと言ってるよ。「……分かった。分かったから」 俺は思わず溜息をついてしまった。「さん付けはなしにするよ。でも、ケンカとかもなしにしてね。ドワーフの所に行って、ドワーフと揉めるのはごめんだよ」「……御命令とあらば」 渋々、本当に渋々と言う声色で、レーヴェさ……レーヴェは頷いた。「で、この辺りの地図はない?」「古いものならば」 レーヴェの持ってきた地図は、北の方角に、全ての金属が眠るという無窮山脈があって、そこでドワーフたちが最も高い天の屋根と飛ばれる山を聖地として鉱物を掘って暮らしていたという。森エルフの下に鉄が回って来なくなったの七〇年程前らしいから、それまでは確かにドワーフがいたという。「よし、善は急げだ。早速出発しよう」「従う」 レーヴェはボロボロの長剣を抜いて、眉をひそめてから鞘に戻した。「しかし、ここから歩いていくにはかなり遠いぞ」「歩かない乗り物がある」 俺は自在雲を引っ張り出した。「何だ、これは?」「乗れば分かる」 俺はさっさと自在雲に乗った。シャーナも乗る。「それは……?」「神具。歩くよりずっと早く北に行ける。ここに来たのもこれに乗って来たから」 三人乗りは大丈夫かな、と思っていたけど、自在というだけあって、雲は一人分大きくなっていた。最終的には観光バスが理想かな。「しかし、それでもドワーフの居場所が」「導きの水晶球があるから大丈夫。水晶球、困っているドワーフの居場所を指してくれ」 水晶球は一瞬暗くなると、真っ直ぐ北を指した。「長老、私のいない間頼みます」「任せておけ、この泉は守る」 老けた熟年顔のエルフがそういう。長老ってことは幾つだあ
last updateLast Updated : 2025-12-12
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第27話・信仰心

 一〇キロ過ぎた時点で、再生された森は消え、腐った地面が続いていた。「……戻せないのか?」「戻しながら行くって手もあるけど、手間がかかるよ」 本当なら戻しながら行きたい。けど。「俺の再生は、俺を中心に決まった範囲だけ再生するんだ。範囲は持っている信仰心で決まる」「今の信仰心とやらではあの範囲が限界、というわけか?」「うん。神子を増やすかして信仰心を上げないと、広い範囲を一気に再生することはできない」「信仰心とは神を信じる心。あなたがシンゴ様を疑う心を持てば、その力は弱まるのです」「さっきからなんだこの女は。何故この女を連れ歩いている」 レーヴェ……。シャーナにケンカ売ってるよ……。「私はシンゴ様の第一の神子。そしてこの世界を案内する役を負っているのです。常にシンゴ様と共にあり、その御力となるのは役目」「案内なら滅びが始まる前から生きている私ならばできる。案内する水晶もあるようだし、お前は危険地帯に向いていない。帰れ」「信仰心低い神子だけをお傍に置くわけにはいきません。私は何処までもシンゴ様と共にあります」「足手まといだろう」「あなたこそ、錆びた剣しかないのに戦えるはずがないでしょう」「素手での戦闘も心得ている」「あのー」「何でも武器で解決できるというわけではありませんよ」「あのお!」 俺は声を張り上げて二人を止めた。「気が合う合わないはあるから、ケンカするなって言うのは無理なんだろうけどさあ」「……はい」「……ああ」「せめて移動中は静かにして。こう見えても、生き物がいないかドワーフが倒れてないか見てるんだからさ」「……申し訳ありません」「……無礼を許せ」 はあ。これで静かになってくれるかな。 言った通り、俺はこう見えても辺りに気を配っているのだ。 生き残った動物や植物がないか。 もちろん【神威・創造】を身につけたからには、植物ならゼロから作り上げることができる。 でも、どんな植物を創り上げればいいか分からないし。のんびり考えてる暇もないし。エルフの皆さんが畑を耕して自給自足できるようになるには【属性・金属】と【属性・獣】がいるし。 美女二人連れで乗り心地最高の乗り物で旅行、なんてはた目には見えるけど、こっちは何とかこの世界を元に戻したいのに後ろでケンカやられて集中力削られてるんだからなあ……。 水晶球
last updateLast Updated : 2025-12-13
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第28話・灰色虎

「この辺り、かな?」 うっすらとした光が水晶球全体から漏れている。「何もいないようだが」「神具が間違いを起こすということはないのですが……」「ちょっと二人はここで待ってて」 俺は自在雲を降りると、じっと辺りを見回す。 樹海の腐り落ちた木々の根元をじっくりと見る。 光が照らしている場所をじっくりと眺める。 分からない……なら。 俺は自在雲から導きの水晶球を外し、そっと足元に降ろす。 自在雲の真下に、光が差し込んでいる。 真下か。 俺は自在雲を少し動かして位置を変えると、光が腐った大地の中に差し込んでいる。 手を入れて、腐った地面を掻き分ける。「……みぅ……」 微かな声が聞こえた。「何かいる」「何がですか?」 シャーナとレーヴェが雲の上から覗き込む。 冷えてしまった地面に、かすかな温もり。 引っ張り出したのは、腐った地面で全身がガッチガチに固まった四つ足の小さな生き物だった。 この生き物が、助けを求めていたのか?「……みぅ……?」「動物?」「弱っているようだな」「ちょっと待ってくれよ」 【浄化】を使って、全身の腐った泥をキレイにする。 汚れの移らない自在雲の上で、小さな生き物はぐったりしていた。 ふわふわしたグレイと黒の縞の毛並みの、猫のような生き物。 【観察】する。【神子候補:灰色虎《グレイ・タイガー》 信仰心100 属性:獣/大地/岩】 え? 猫じゃなくて虎? 灰色の虎? これも神子候補?「どうなさった」「レーヴェは灰色虎って知ってる?」「承知している」 レーヴェは頷いた。「岩山に暮らす大猫だ。こんな樹海まで迷い出たということは、相当飢えてここまで降りてきたのだろう」「でも、こんなに小さいのに……?」「大猫も幼獣の時は小さい。育てば人をも食い殺す」 癖になったヘルプ機能で灰色虎の項を調べた。【灰色虎:岩山の王者とも呼ばれるネコ科の大型モンスター。地球のライオンとほぼ同じ大きさまで成長し、岩山に棲むヤギなどを単独で襲い食い殺す。ジャンプ力も高く、高所から落下しても受け身を取れるので、岩山からジャンプして猛禽類などを襲うこともある。毛皮は一級品の柔らかさで、ハンターに狙われるが、滅多なことで狩れる獣ではない】 ふーん。確かに毛皮はふわふわだけど……だけ……ど? 指が思った以上に沈み込ん
last updateLast Updated : 2025-12-13
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第29話・獣の神子

「……みぅ?」 獣は力なく立ち上がり、水を飲み。 ぴちゃぴちゃと音を立て夢中で水を飲み出す。 まあこんな所に飲める水なんてなかったよなあ。「ほれ、これ食えるか?」 干し肉を鼻先に近付けてやった。 虎はふんふんと匂いを嗅ぎ、牙をむいて干し肉に噛みつく。押さえつけ、干し肉を引きちぎっては食らいつく。「おお野生」「やはり野獣です。野に還したほうが」 がつがつと食べる虎を見て、シャーナが首を横に振った。「ふん。野とはどこだ?」 軽蔑しきった声でレーヴェが言う。「この虎が食らう生き物はここにはいない。放っても飢えて死ぬだけだ」「ならどうしろと言うのですか。養えとでも?」「ふん。第一の神子と言う割には何も見ていないのだな」「何ですって」「我が主は既にこの獣を受け入れる気でいるようだぞ」「え、分かる?」「分かる」 レーヴェは口の端を持ち上げた。「我が主が、【属性・獣】が要ると言っていただろう。その虎は確実に【獣】だ。これで獣を再生することも創造することもできると言うことだ。そうだな?」「え? ……ああ、ここに見捨てるわけにもいかないし、属性に【岩】もあるし。育ったらきっと強いんだろうなあ」「シンゴ様?!」「シャーナは嫌なのか? この子を神子にするのは」「え……あの、その……」「この子がいれば獣が増える。食べるものが増えれば、助かる命もある。……そりゃ食うために獣を増やすわけじゃないけど、植物と動物が揃えば、人間にも暮らしやすい環境になるというわけ」「シンゴ様が……そうとおっしゃるなら……」「よし、お前も神子になるか?」「みぅ!」 干し肉を食いちぎりながら虎は鳴く。「よし、契約だ」【灰色虎を神子にしますか?】「Y!」【神威・神子認定成功】「よし、これでお前も俺の仲間だ! 一緒についてくるよな?」「みぅー!」 そして確認した。【遠矢真悟:生神レベル26/信仰心レベル8200  神威:再生10/神子認定3/観察5/浄化6/転移1/増加3/創造2  属性:水5/大地2/聖6/植物4/獣3/岩2  固有スキル:家事全般/忍耐  固有神具:自在雲/導きの球】
last updateLast Updated : 2025-12-13
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第30話・獣の慰め方

 傍から見てもお腹がポッコリと膨らんだ虎は、俺の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしていた。 ペット、飼いたかったんだよなあ。 養われの身でそんなこと言えなかったから黙ってたけど、猫のあつまる公園とか犬の散歩コースとかに寄っては見るだけで心和まされてたんだよなあ。猫カフェは憧れだったけどお金がかかるから無理でした。 でもこの灰色虎は可愛い。 確かに手足はがっしりしてるしライオン並みの大きさになったら迫力、だろうけど、それはそれでカッコいいじゃないか。「ぅな?」 ぼんやりと考えに耽っていた俺の、膝の上の子虎はいつの間にか俺の胸に足をかけて俺の様子をうかがっていた。「え? 考え事してるって気付いた?」「灰色虎は狩るべき獲物と信頼すべきものを見分け、恩義を重んじるという。岩山付近で暮らす一族は虎の餌を山に置くと言うな。それだけで虎に襲われる可能性が低くなるだけではなく、山で他の獣に襲われた時助けに来たという伝承もある。それを真似た毛皮狙いの狩人が山の中に餌を置いたが、結局狩人の餌は一度として食されたことがなく最後には狩りに入った山で食い殺されたそうだ」「へえ。お前そんなに賢いの」「なぅ!」 頭を虎に近付けるとごっつんと頭をぶつけてくる。可愛い。「名前をつけなきゃなあ……」 縞を除けばお高い猫、ロシアンブルーによく似た色と青い目。うん、可愛い。「じゃあ……コトラで」「コトラ?」「虎縞で小さいから」「成長したらオオトラか?」「かもね。どーだコトラ、お前、名前気に入る?」「なぅ!」 天に掲げたコトラは、元気よく鳴いた。 シャーナがずっと不満そうにしているけど、一度雲の上に降ろしたコトラはシャーナの膝に頭をごっちんしてすりすりしてから、レーヴェの匂いを嗅いで、これまたごっちんして、俺のすぐ後ろを定位置に座った。「虎……いえ、コトラは何をしたのでしょう」「挨拶」 レーヴェは呆れたように言った。「猫や大猫は軽く頭をぶつけて挨拶するんだ。知らんのか?」「……私が生まれたのは世界が滅びかけた後ですから……」「じゃあ覚えておけ。コトラが神子となったからにはな」 しゅん、とシャーナは落ち込む。「シャーナ?」 声をかけてみたけれど、シャーナは答えない。 まずいな。何と声をかければいいのか……。 ぅな、とコトラは立ち上がって、再びシャーナの
last updateLast Updated : 2025-12-14
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