M端末を出し、目の前の腐った食糧に向ける。 【神威:再生:食糧】を選び、Yを押す。 次の瞬間。 腐ったパンやかびた燻製肉が、焼き立てふわふわパンやいつでも食べられる真新しい香ばしい燻製肉に早変わり。「すごい! 神様の御力……食べ物が……このモーメントにもたらされて……」 感激に目を潤ませるシャーナさん。 俺はパンを手に取った。 カチカチの上腐っていたパンは、焼きたての香りさえ漂わせている。 でも、元が腐ってたんだ、確認してからでないと渡せないよな。 一切れ千切って、口の中に放り込んだ。 ……うん、美味い。焼き立てパンの味だ。異臭や異常は感じられない。 これなら大丈夫かな。「ほら」 俺はシャーナさんに、ひとかけら千切ったパンを差し出した。「俺が食べて大丈夫だったから、多分大丈夫だと思う」 シャーナさんの目に、見る見る光るものが。「ちょ……なんで泣くの、俺なんかした?!」「い、いえ! そうではなく……そうではなくて……」 手の甲で涙を拭って、シャーナさんは微笑んだ。「ありがとうございます。いただきます」「ああ。……急いで食べたら駄目だよ」 俺は慌てて付け加えた。「水分と一緒に、ゆっくり、よく噛んで食べるんだ。飢えて食べると胃袋がびっくりするから」 胃袋、の意味が分からなかったのか、でもシャーナさんは頷いて、ゆっくりゆっくりパンを食べる。 空腹にワインはまずかろう、と、グラスに注いだワインを【浄化】して、綺麗な水にしてから一応毒見して大丈夫だと確認してシャーナさんに渡すと、シャーナさんは何度も何度も頭を下げて、俺が言った通りにゆっくり、ゆっくりと食事を進めた。 「ありがとう、ございました」 一時間ほどかけて、やっと満足したのか、シャーナさんは食べる手を止めた。「空腹に負けて、お見苦しい姿を見せたことをお許しください。そして、その御力で神殿を再生したにも拘らず、毒見までして頂いたこと、非常に嬉しく思います。モーメントに降臨したのがこんなに優しい神様だったなんて……」 また震え出す声を押し殺すように、シャーナさんは奇妙に低い声で言った。
Last Updated : 2025-12-06 Read more