役所へ寄ってから事務所へ戻り、久我は一人で留守番をしていた事務員へ声をかけた。「急で悪いんだが、明日から三日ほど休む」 神崎寿直は手を止めて顔を向ける。「何かあったんですか?」「今朝の手紙のことだ。知人が孤独死したそうでな。明日火葬されるから、立ち会いたいんだ」「それは、なんというか」 神崎が適切な言葉を選べないでいるのにかまわず、久我は続けた。「遺言書によると、相続人は僕になっていた。彼の部屋の片付けもしたいし、墓も見つけないとならない」「それ、三日で全部できますか?」「分からない。可能なら、一ヶ月ほど休みたいところだな」「そうですよね。そちらの件が片付くまで、おれたちで仕事を回します」「ありがとう、神崎。他のみんなにも伝えておいてくれ」「言われなくてもちゃんと知らせますよ」 と、神崎は少し生意気に言ってから、再びキーボードをたたき始めた。 今日中にできることを済ませて帰宅すると、どっと疲れが出てきたようだ。 重たい体でかろうじて食事をし、浴槽を掃除した。 湯がたまるまでの間に、久我はかばんからノートを出して開いてみた。 春野らしい几帳面な文字で、文章がつづられていた。「昭和40年(1965年)10月15日、群馬県安中市の◯✕病院にて生まれる」 どうやら彼の人生の記録らしい。 時々、古い写真が貼り付けられていて、久我はつい夢中になって読みふけってしまった。「小学2年、おさななじみのユキちゃんを泣かせて母にしかられる。今となってはかわいい思い出だ」「小学6年、従兄のたっちゃんが家で下宿を始める。 夏には花火大会へ連れて行ってもらった。あの日の花火はとても綺麗で、今でもたまに思い出す」 久我の涙腺がゆるみ、あわててティッシュペーパーでぬぐった。「中学3年、通学路にある柳の下で、クラスメイトの佳子ちゃんから告白される。 恥ずかしくて思わず断ってしまったけれど、本当は彼女が好きだった。もったいないことしたなあ」 浴室から異
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