「久我ちゃんの正解! コーヒーを淹れたのは俺でしたー!」「えぇっ、何で!?」 びっくりする相楽へ、久我が冷静に根拠を伝えた。「まずは口数が少ないことだな。鯉川さんなら、もっといろいろしゃべってもいいはずだ」「いざしゃべれって言われると、何も言えなくなっちゃうタイプなんだよねぇ」 と、苦笑する鯉川。「粉末が残っている雑さからも、鯉川さんしか考えられませんでした」「あれ、おじさんのこと雑って言ってる? ケンカなら買うよ」「買わなくていいです。それより、相楽はどうして間遠だと思ったんだ?」「コーヒーがちゃんと好みに合わせて作られていたからです。 自分が甘いコーヒーじゃないと飲めないことは、鯉川さんは知らないんじゃないかって思って」「ということは、神崎ではないということは分かっていたのか?」「はい。だって寿直さん、コーヒーを淹れる時はいつも、粉が溶け残らないように、少量の水でペースト状にしてからお湯をそそぐんです」「事前に知っている情報と結びつけたのか、えらいぞ」「それほどでも……」 久我に褒められて恥ずかしくなってしまう相楽だが、対決で負けたことを思い出す。「でも、自分の負けでした。鯉川さんのこと、もっと知ってたらよかったのかもしれません」「その通りだな。情報は多ければ多いほど真実に近づける。よく覚えておくことだ」「はい。心に刻みます」 相楽は言葉通り、しっかりと久我の言葉を胸に刻みこんだ。 翌日、相楽は一週間前に火災のあった現場へ来ていた。新たに調査を依頼されたのだ。 現場は閑静な住宅街の一角にある店舗兼住居だったが、長いこと誰も住んでおらず、空き家になっていた。 依頼人の国枝達彦は五十代の男性で、腕を組みながら険しい表情で相楽に語りかけた。「電気も水も止めているし、室内に燃えるような物はないはずなんだ。 警察には自然発火で片付けられたが、どう考えてもこれは放火だ」 相楽はうなずき、かばんからデジタルカメラを取り出しながら言った。
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