蘭珠は、楚凌から届いた手紙を何度目か分からないほど読み返していた。――あなたと、我が子に会いたい。その一文へ目が止まるたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。赤子はすぐそばで眠っていた。早く生まれたため身体はまだ小さいが、侍医からは順調に育っていると言われている。蘭珠自身も少しずつ起き上がれるようになり、足の傷も前ほど強く痛むことはなくなっていた。ただ、門番の家へ戻ることはもうできない。火事で焼け落ちてしまったからだ。周蘭も芳玉も、しばらくここにいればいいと言ってくれる。紙問屋には景炎から十分な援助も届いていて、産後の蘭珠と赤子が困ることは何もなかった。それでも、自分の家ではないという思いは残っていた。これからどこへ行くのか。その問いは、日を追うごとに現実味を増している。「また読んでいらっしゃるんですか」芳玉の声に、蘭珠は顔を上げた。「そんなに何度も読んだら、紙が擦り切れてしまいますよ」「そんなには読んでいません」「昨日だけでも三度は見ました」「……見ていたんですか?」「取材ですから」芳玉は悪びれもせず笑った。少し離れたところでは、周蘭が洗った布を畳んでいる。「芳玉さん、蘭珠様をからかってはいけませんよ」「からかってません。こういうところが大事なんです。英雄の妻が、夫から届いた手紙を何度も読み返す――」「書かないでください」蘭珠が思わず言うと、芳玉は楽しそうに笑った。「まだ何も書いてませんよ」「まだ、ですか……」三人の間に笑いが広がる。こんな穏やかな時間が戻ってくるとは、少し前まで想像もできなかった。その時だった。部屋の外から、紙問屋の主人の声がした。「蘭珠様。宮城より正式な使者がお見えです」芳玉の表情が変わる。蘭珠も、自
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