All Chapters of 雪の精霊~命のきらめき~: Chapter 91 - Chapter 100

110 Chapters

第91話 カーミラとローラ

 設定は1800年代半ばのオーストリア。その一地方の名士の娘、わたし扮する19歳のローラが主人公。 幼いころに母を亡くし、父と使用人、家庭教師とたまにくる客人以外は誰とも接することのない寂しい生活。 ある夏の日、父の知人であるスピエルドルフ将軍の姪、ベルタが亡くなるというシーンから物語は動き出す。 文香、もう出番終わりだね……。 そんな時、住んでいる城の前で起きた馬車の事故をきっかけにあか姉扮するカーミラという美少女を3か月間城で預かることに。 2人は12年前にお互いが夢で逢った人物と同一人物であると確かめ合い、ローラはすっかりカーミラに魅了されてしまう。 そしていよいよカーミラがローラに愛を語るシーンが回ってくる。「あなたはわたしのものよ。きっとわたしのものにしてよ。あなたとわたしは永遠にひとつになるの」 ローラの頬をなでながら愛をささやくカーミラ。「そんなことを言ってあなたはわたしだけを見ていない」 そんなカーミラに強烈に魅かれてはいるもののどこか恐ろしさも感じており、素直になれないローラ。 そんなローラの心などお見通しとばかりに怪しく微笑むカーミラ。「あなたはわたしを愛しているのね」 そう言ってローラの首筋に唇を触れさせてくるカーミラ。ってあか姉!? そんなこと台本に載ってない!「だめ、カーミラ……」 それでも舞台を止めるわけにはいかない。なんとか演技を続けるものの、あか姉のキスは止まらない。「奇妙な愛だと思われるでしょうね。でも、これは真実の愛なのよ」 ダメ。体に力が入らない……。 まるでカーミラに魅入られてしまったローラのように脱力してしまい、なすがままにされてしまう。「あなたはわたしのものよ、ローラ」 耳元でささやかれさらに体を震わせていると、首に強い刺激が伝わってきた。 暖かくて心地いいような、少し痛みを伴うそれは吸血鬼よろしくカーミ
last updateLast Updated : 2026-01-20
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第92話 文化祭に潜む恐怖

 文化祭2日目。 昨日と同じように校内の見回りをし、クラスで招き猫をして、休憩を挟んで舞台に上がる。 あか姉は今日もすっかりカーミラになりきっていて、せっかくコンシーラーで隠していた昨日のキスマークとは別の場所に吸い付いてきた。 結局2カ所もキスマークつけられちゃったし。恥ずかちぃ。 かくいうわたしもすっかり盛り上がってしまって昨日以上にアドリブを連発。 観客は昨日の噂を聞きつけて新しく見に来た人が大半だったけど、カーミラとローラの絡みをもう一度見たいというリピーターも多かったみたい。 結果2日目も舞台は大成功。 高坂部長も涙を流しながら喜んでくれた。高校生活最後の文化祭が素敵な思い出になったのならローラ役を引き受けてよかったと思う。 やっぱり人が喜んでくれる姿は何よりもいいものだ。 そして今日は舞台が終わってすぐにわたしの休憩の時間だった。 着替えを済ませ、控室からでてきたところで突然両腕をがっちりホールドされた。「かの姉!? あか姉まで」 わたしの腕を抱えたまま不敵に笑うかの姉。「ふふふ、今日は逃がしませんよ。昨日は何も言わずにひとりで自由時間を満喫してたんですよね。ほんとゆきちゃんはひどいです」 拗ねた顔をしてお仕置きとばかりにわたしの二の腕をつねる。痛い痛い。「ごめんてば。かの姉たちもクラスの出し物とかで忙しかったんじゃないの?」「それとこれとは別。時間くらい合わせる」 あか姉もご立腹の様子。 気を遣ったことが逆効果になっちゃったようだ。そんなにわたしと一緒にいたかったのね。「休憩時間も最後のキャンプファイアーももう解放してあげませんよ」 うわ、ずっと拘束するつもりだ。まぁ1日位は姉弟で回ってみたかったからそれは別にいいんだけど、こんなにくっつく必要あるのかな。 はたから見たら両手に花に見えるかな……。そんなわけないよね。どうせ3姉妹とか言われるに決まってる。 もうわ
last updateLast Updated : 2026-01-20
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第93話 より姉の憂鬱

「なんにもねーよ」 うん知ってた。より姉ならそう答えるよね。 文化祭が終わったその夜に何かあったのかと聞いてみたけど返ってきたのは不機嫌そうな答え。 あれだけ来たがってた文化祭に来なかったのもそうだし、今の態度を見ても何かあるってバレバレなんだけどなぁ。 家族に心配かけまいとする気持ちは分かるけどね。 そんなとこだけ姉弟で似なくてもいいのに。 ここは作戦変更をするしかないだろう。 幸い明日と明後日は文化祭の振り替え休日。 名付けて『より姉の秘密大暴露作戦』発動だ! 翌日、より姉が学校に出かけるのを見送った後、すぐに計画を実行する。昨日から用意してあった服にささっと着替えてより姉の後を追うために家を出た。 わたしの変装も完璧。キャップをかぶって伊達メガネをかけただけだけど、変に凝った変装をするよりはいつもと違った印象にするだけで意外と人は気づかないものらしい。こないだ読んだ推理小説に書いてあった。 駅までの道のりをつかず離れず、気配を殺して尾行する。格闘技の経験も生きているため、気配を殺すのは得意だ。時代が時代なら忍者になっていたかも。 得意の尾行術で追いかけていると、何人かの人と挨拶を交わしていた。 わたしの知っている人もいれば知らない人もいる。まだ家の近所なのにより姉にはより姉の人脈があるんだな。当然と言えば当然なんだけど。 そして何事もなく駅に到着。より姉は定期があるから改札をすんなり通るけど、こっちにはこっちでスイイカがある。いつどこにでも行けるように持っていてよかった。 わたしもスイイカをタッチして改札を通過。 さすがに同じ車両に乗るわけにはいかないので、隣の車両に乗り連結部分の窓からより姉の様子を伺う。 痴漢でもされているようなら即ぶっ飛ばしてやるところだけど、そんな様子もなく静かに本を読んでいる。デザインに関する本だろうか。 最近、より姉はさらにデザインの勉強に力を入れていて、自分でデザインした服を何着か作成しているようだ。 164㎝とそ
last updateLast Updated : 2026-01-21
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第94話 ストーカー退治?

 より姉が知らない男を追いかけて走ってくる。 追いかけられている男はなんだか嬉しそうな顔をしている。でもなんか目が血走ってて怖い。 しかも近づいてきているのに勢いが衰えない! まさか飛びついてくる気か!? 予想的中。その男は両腕を広げてわたしに飛びかかってきた。 条件反射って怖いね。 脳が勝手に不審者と判断したのか、わたしは懐に潜り込みひじを男の腹部にめりこませた。そのまま勢いを利用して巴投げの要領で後ろにポイ。 もんどりうって背中を床にたたきつけられた男はそのまま腹と背中を抑えて悶絶。「あーやっちゃったかー」 後ろから追いかけてきたより姉がおでこに手を当てて天を仰いでいる。「な、なんだったの?」 まだ事態が呑み込めていないわたしはそう問いかけるしかない。「そいつだよ」 何が?「そいつがあたしに付きまとってた男だよ!」 えぇぇぇ? どゆこと? なんかわたしに向かってきたんだけど?「ごめん、意味が分かんないから順番に説明してくれる?」「だから元々ゆきのファンだって言っただろ? で、あの時の配信を見て同じ学校に通うあたしがお前の姉だってことを知ったわけだ」 うん、そこまでは分かった。それでなんでより姉に一目惚れしてストーキングしてるんだよね?「そいつが言うにはあたしにも惚れたと。そんであたしと結婚すればお前も妹になって一石二鳥って理屈らしいんだがな」 はい? イミガワカラナイヨ。 大体妹ってなんだ。弟だよ。「結局は誰が目当てなの?」「両方。あたしが思うには主にゆき」 なんだこいつ。どういう思考回路をしてればそういう結論に至るんだ? まだ痛みで唸っている男のそばにしゃがみこみ声をかける。「おーい、生きてますかー?」 へんじがない、ただのしかばねのようだ。「い、生きてます」 あ、返事した。よかった生きてるみたい。見たとこ
last updateLast Updated : 2026-01-21
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第95話 トップニュースになっちゃった

 より姉のストーカー騒動から数日後、わたし達は忙しいながらも平和な日々を送っていた。 今日も夕飯を食べた後、みんなでのんびりとテレビを見ていた。 わたしの要望を聞いてくれて画面には歌番組が映っている。うちではチャンネル争いというものは起こらない。 誰かが見たいと言った番組をみんな文句も言わず一緒に楽しく見ることができるから。もし被ったときは録画をすればいいだけ。 ほとんどの場合、ひよりが見たいものを主張してそれに決まることが多いのだけど歌番組だけはわたしの意見をみんなが尊重してくれる。仮にもプロだし、これでお金を稼いでいるわけだから常に新しい情報をインプットすることを忘れてはいけない、そのことをみんな理解してくれているから。 今日の歌番組には先日10年ぶりに再会した岸川琴音ちゃんが出演している。 あれからも何度か遊びに来ているのですっかりみんな見知った仲なのだけど、彼女に対してはみんな警戒心を隠そうともしていない。 やっぱり婚約とかの話をしたからだろうけど……。 琴音ちゃんには悪いけど、わたしは誰かと結婚するとかそういった考えは全くない。それどころか恋愛すらしようと思わないのだから。 画面の中では持ち歌を唄い終わった琴音ちゃんが司会者と楽しそうにトークをしている。『岸川さんはもうすっかり日本の歌姫として定着していますが、今後の目標などはあったりするんですか?』 司会者の問いに対して笑顔を浮かべて答える琴音ちゃん。話している最中だというのになぜかカメラ目線で。『もちろんあります。わたしの師匠ともいえる人を超えた歌唱力を身に着けることですね』 へえ。わたしが引退してから琴音ちゃんにはそんな存在ができてたんだ。これだけの歌唱力を身に着けることができたんだからよっぽど優秀な師匠に教えてもらったんだろうな。司会者も興味をひかれたようでさらに質問を続けた。『初耳ですね、岸川さんにそんな存在がいたなんて。有名な方なんですか?』 たよね。わたしも初耳だ。いったいどんな人なんだろうな。 他人事のよう
last updateLast Updated : 2026-01-22
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第96話 大ニュース重ね盛り

 ほどなくして、本当にびっくりするくらいの速さでうちに到着したきらりさん。タクシーを捕まえてぶっ飛ばしてきたとか言ってるけど、どんな無茶を言って来たのやら……。タクシーの運転手さんが可哀想だ。 そしてうちに着くなり琴音ちゃんに噛みついていった。「ちょっと! ゆきさんのお嫁さんの座はわたしのもんなんだからね! 後から出てきて勝手なこと言わないでくれるかな?」 威嚇しながら顔を近づけるきらりさんに対して琴音ちゃんは余裕の表情。てかきらりさんまでお嫁さん宣言しちゃったよ。「後から出てきたのはそちらですよ。わたしはゆきちゃんがまだこんなに小さいころから大好きだったんですから」 膝くらいのところに手をかざして主張する琴音ちゃん。いや、そんなに小さくねーよ。どこの小人だ。 両者一歩も譲らずの状態でにらみ合っている中、姉妹たちは少し離れたところで秘密会談を行っていた。「おい、なんか増えちまったぞ。どーするこいつら」「塩でもまいて追い出しますか」「賛成」「ゆきちゃんの友達に乱暴なことしちゃダメだってば!」 丸聞こえだよ、4人とも。 だんだん収集がつかなくなってきたような気がする。このカオスな状況をどうしたらいいんだ……。「あのーみんな好き勝手なこと言ってるけどさ。わたしは何も了承してないんだよ?」「「ちょっと黙ってて!」」 いやおかしい! それはおかしいよ2人とも! 本人不在で勝手に話を進めないで!? なんだこの理不尽な状況は。「2人とも勝手なこと言ってると今すぐ帰ってもらうよー」 最終手段。姉妹たちの手を煩わせるわけにもいかないし、わたしが追い出すしかないだろう。「「イヤだ!」」 息ピッタリじゃん。本当は仲いいんじゃないの?「今日はゆきちゃんのおうちに泊まるつもりでお泊りセットも持ってきてるんだよ!」 また勝手に決めて……。「そう
last updateLast Updated : 2026-01-22
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第97話 和解!かなぁ?

 配信が終わってリビングに戻ってきた。 姉妹たちもしっかりと配信を見ていたようで、呆れたような顔で琴音ちゃんを見ている。「おかえり。琴音、ゆきの配信に出ちゃって本当によかったのか?」 より姉が心配して声をかける。あれだけ敵対視していたのにこういう時は本気で心配してあげる。それもより姉だけじゃない。「琴音ちゃん、事務所に連絡した方がいいんじゃないの?」「そうですよ。騒ぎが大きくなってからより先に報告しておいた方が対策も立てやすいでしょう」「報連相、大事」 姉妹それぞれが本気で心配して気づかいの言葉をかける。さすがわたしの4人の天使様たち。 困っている人を見過ごすことのできない気質は全員に共通する素敵なところ。自慢の家族だ。 琴音ちゃんも今まであれだけ邪険にされていたにもかかわらず、投げかけられた優しい言葉の数々に面食らっている様子。 でも人の心がわからないような琴音ちゃんではない。「みなさん、ご心配をおかけしました。ちゃんと事務所には出演前に報告してあるので後は会社がなんとかしてくれるかと。でも温かい言葉の数々、とてもありがたいです」 そう言って深々と頭を下げる琴音ちゃん。 それに対してどこかバツの悪そうな顔をする姉妹たち。 きらりさんとも実は気が合いそうだし、この人たちの間に漂う緊迫した空気も元をたどればわたしのせいなんだよね。 だからもっと仲が悪くなっていがみ合うようになるんじゃないかとか、そんな心配はまるでしていない。 わたしがいなくなった後にみんなきっと仲良くなれるだろうから。「そんな慈愛に満ちた目でわたし達を見つめて何を考えてるのかな?」 琴音ちゃんが顔を覗き込んできた。「みんなが仲良くしてくれたらわたしも嬉しいのになーって」 悪戯っぽい笑顔でそう伝えると、頭をかきながらペロッと舌を出す琴音ちゃん。「別にいがみ合ってるわけじゃないよ。ただみんなゆきちゃんのことを大好きすぎるだけなんだよ」 ありがとう。気持ち
last updateLast Updated : 2026-01-23
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第98話 優しい嘘

「それでこれからゆきちゃんの入浴シーンを隠し撮りしに行くんですか?」「ぶっ飛ばすぞ」 本当に努力する気あんのか? こんなのが日本の歌姫なんてなぁ……。「なにか気になることでもあるの? より姉」 ひよりはさすがに鋭いな。伊達に姉妹やってねーか。「あぁ。ゆきのことなんだけどな。なんであいつはああも恋愛に対して頑ななんだろうなと思ってな」 もうすぐあいつも16歳だ。そろそろ恋愛に興味くらい持ってもおかしくはねーと思うんだが。「そうですね。いくら初心で奥手で、おそらく女子よりも男子に人気のありそうなゆきちゃんと言えど変かもしれません」 容赦ねーな、楓乃子。「わたしもゆきちゃん以外に興味がないのを除いて、お仕事が忙しくて恋愛どころじゃないって思うこともありますからそのせいでは?」 確かにゆきは学校では生徒会長、家では家族の世話に配信活動とそんじょそこらの芸能人より忙しくしてるけど、本当にそれだけか? それを考慮してもあの拒絶の仕方は普通じゃねー気がする。「やっぱり何か隠してる」 茜の言うとおり、ゆきはきっとまだ何かを隠している。あの海へ行った帰りの電車内のことが頭をよぎる。 ゆきの世界には色がない。後天的なものだと言っていたからきっとあの雪の日の後遺症に違いねー。さすがにこのことを他の姉妹に言うわけにはいかない。これまでゆきが隠し通してきたことをあたしにだけ打ち明けてくれたってことは、あいつにとって何か意味があると同時にあたしのことを信頼して言ってくれたことだろう。その信頼を裏切ることはさすがにできねー。 もしかして後遺症は目だけじゃないんじゃねーだろうか。ゆきの異常なほどの運動神経、反射神経、動体視力や空間認識能力、それに身体能力。そして色覚異常。全部神経にまつわることばかりだ。神経系の異常……。だめだ、あたしには詳しいことは分かんねー。かといって相談するわけにもいかねーし……。「そんなに考え込んでどうしたの?」 ひよ
last updateLast Updated : 2026-01-23
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第99話 共同戦線24時

 想像通りというか当然というか、翌日のニュースはまたしてもわたしと琴音ちゃんのことで持ちきりだった。 なにせ現役のトップ歌手が芸能人でもないただの配信者のチャンネルで素顔をさらして堂々と出演したのだから。 しかも相手はかつての子役時代の相方。 昔の番組がテレビで取り上げられ、当時の映像が10年ぶりに視聴者の目に届くこととなった。『ピーノちゃん』と『ポロンちゃん』、久しぶりに目にする姿は懐かしいと同時にどこか面映ゆい。 琴音ちゃんの事務所としてはあくまでも幼馴染であるわたしのための友情出演ということで、なんら関与をしていないと表明。 実際にギャラも発生していないし、幼馴染というのも間違いではないのでそう発表する以外になかったのだろう。 かなり無理をした印象で、琴音ちゃんがごり押ししたのは明らかだ。 ほんとに何やってんのさ、歌姫さん。 もう年末だというのに特大の爆弾を落としていってくれたね。 でもわたしは今回の案件はてっきり男女の仲としてスキャンダル視されるものだとばかり思っていた。だけど、どの報道を見ても10年来の美しい友情と言われていて、異性スキャンダルとして扱っているメディアはひとつもない。 テレビで確かに婚約発言まで飛び出したのに、それについても友情を超えた親愛と表現されている。 スキャンダルとして炎上しなかったのはいいことだし、うちにマスコミが殺到されても困るから好ましい状況ではあるんだけど、なんだか納得いかない面もある。 どうにも異性同士と認識されていないような……。 どこを見ても幼馴染、友情、親愛の文字しかなくて恋愛とか熱愛とか言った男女間の間柄を示す文言がないんだよねぇ。 世間の人たちに問いたい。わたしを男と認識してる? そしてマスメディアでこれだけ騒がれるということは学校でももちろん話題になっているわけで。「ゆきちゃんの家にあの岸川琴音が来てたってことだよね!?」 文香さんのおっしゃる通りです、はい。「なんで
last updateLast Updated : 2026-01-24
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第100話 共同戦線、さっそく発動

「ってなわけで今日から生徒会業務を手伝ってくれるようになった石川穂香さんです。いろいろ教えてあげてくださいね」 さっそくその日の放課後、他の生徒会役員に穂香を紹介。「雑用だけでも手伝ってもらえるのは助かるけど、今年の任期はもうすぐ終わりだぞ」 谷村先輩の言うとおり、間もなく次期の生徒会長と副会長を選出されるための選挙がある。「次期もわたし立候補するつもりなんで。運よく当選したら続行して手伝ってもらうつもりです。引継ぎを早めにできると思えばお得でしょ。まぁ落選したら目も当てられないんだけど」「ゆき会長が落選するビジョンが見えないな。まぁそういうことならこちらとしては文句もない。それじゃ、さっそく仕事を覚えてもらうことになるんだけど、庶務同士ということで文香さんにお任せしていいのかな?」「はい、お任せください! それじゃ、穂香。まずは資料整理するから資料室に行こうか」 2人連れ立って生徒会室を出ていってしまった。資料室は上の階にあるからだ。「それで、昨日から大騒ぎになってる岸川琴音のことと何か関係があるんですの?」 2人がいなくなった途端、佳乃先輩が尋ねてきた。 そうだよね、時期的におかしいしタイミングが良すぎるよねぇ。「あはは、やっぱりわかっちゃいますか。2人が言うにはわたしがいつ襲われても守れるように下校まで一緒にいてくれるということらしくて」 ボディーガードが必要ってわけでもないんだけどね。2人が何からわたしを守るつもりなのか、よく分からない。「そういうことですか。愛されてますわね、ゆき会長」 上品に笑う佳乃先輩。 友人として大切にされてるなって思う。「えぇ、本当にいい友人関係に恵まれました」 思ったことを言っただけなのに、なぜか呆れ顔の先輩方。「こんなのを相手にしたらあの2人も大変だろうなぁ」 こんなのってわたしのこと? どういう意味かな、睦美先輩。「ゆき会長にとっては恵まれていても、あの2人にとってはとんだ災難ですわねぇ」 
last updateLast Updated : 2026-01-24
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