All Chapters of 雪の精霊~命のきらめき~: Chapter 111 - Chapter 120

161 Chapters

第111話 海だ! ビーチだ! しりとりだ!

 昨日は微妙な空気になっちゃったけど、その後は気を取り直して旅行計画の方へと夢中になり、最終的にはいつも通り仲良く過ごすことができた。 心の中にくすぶるものまではわからないけど。 それでも心境になんらかの変化はあったようで、以前よりもわたしにべったりな状況がひどくなったような気がする。 だからいい人見つけなさいって言ってるのに……。 まぁ否応なくその日はやってくるから、いずれみんなも自分の道を模索し始めるだろう。 その時に何もお手伝いしてあげられないのが心苦しいんだけど。  生徒会長として忙しく働き、家ではきらりさんや琴音ちゃんの襲撃をいなし、家事をこなして配信活動に打ち込む毎日。 先日投下した1人2役動画はすごい反響があって、再生数はあっという間に1000万回突破。今でもぐんぐん増えていってる。「これってゆきひとり?」 あか姉がびっくりした表情で聞いてきた。「そうだよ。重ね撮りしてるだけ」「いや、簡単に言うけど、相当難易度高いんじゃねーのか?」 より姉が疑問を挟む。普通そう思うよね。「まぁ空間認識能力をフルに使ってるからね。全てを覚えているわたしならではのチート技、ではあるかな」 心底感心した様子の姉妹たち。「でも見ている人の中には、別の人を使ってるって疑う人もいるんじゃないの?」 ひよりの言う通り、たまにそんなコメントも入ってる。「いるねー。でも古参のリスナーさんから言わせると、わたしのダンスかそうじゃないかってのは見れば分かるらしいね。だからそんなコメントは勝手に潰されていってるかな」 ファンの存在ってありがたいよね。 以降もたまに1人2役動画は撮り続けているのだけど、評判は上々。 そうやって投稿した『YUKIちゃんが2人』動画はひとつのジャンルとして人気コーナーになり、別に再生リストを作ったほどだ。 公私ともに充実した毎日を送っていると、夏休みはすぐに訪れた。 ひより
last updateLast Updated : 2026-01-30
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第112話 彼女たちのポーラスター

 民宿に到着。 今回はみんな一緒の部屋なので、前のような殺伐とした部屋の争奪戦もなく、平和にくつろいでいる。「いっぱい遊んだからお腹すいたねー」 ゴロゴロしながら空腹を訴えるひより。 もうすぐ夕食の時間だからもうちょっと待ちなさい。 民宿なので部屋まで夕食を運んでくれるサービスはなく、大部屋に用意された夕食を食べにいくという形式。 時間が来たのでさっそく食事部屋に移動したんだけど、浴衣姿の美女4人+1のまぁ目立つこと目立つこと。 それまで騒がしく和気あいあいとしていた大広間に入った途端、急に静かになってしまった。 なんか邪魔しに来たみたいでこういうのはやめてほしいんだけどなぁ。 おじさん、お箸落としてるよ。 部屋の名前が書かれたプレートの置いてあるテーブルに、ちょうど5人分の食事の用意がされてある。ちなみに部屋の名前は「牡丹の間」だ。 全員がそのテーブルにつくと、まさに牡丹の乱れ咲き。 普通の民宿には似つかわしくない豪華な演出。そりゃ目立つわな。 田舎の民宿だから家族連れとかお年寄りが多いのかなと思っていたけど、けっこう若いお客さんも多くて、中にはわたしのことに気が付いた人もいるみたい。「あれ、YUKIちゃんじゃない?」「他の人は家族だよね? 一度配信中に見た」「実際に見るとほんと可愛い」 なんて声がちらほら聞こえてくる。幸い、無遠慮に声をかけてくるような人もいなかったのでよかった。 周囲の目ばかり気にしていても仕方がないので、料理の方に集中する。 旅館のような派手さはないものの、魚介類はどれも新鮮で、ここでしか食べられない美味しさというものがある。 そして、こだわりがあるのか、今まで食べたことのある中でもトップクラスに入るくらいお米が美味しい! どんな炊き方をすればこんなにふっくらとして美味しくなるのか、後で秘訣を聞いてみたい。 そんなお米に合うように作られた出汁巻きがこれまた絶品で、ふわふわの玉子からじゅわっと染み出る御出汁の味でさらにご飯が進む。 
last updateLast Updated : 2026-01-30
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第113話 みんなと過ごす夜

 いつまでも潮風に当たっていたせいで髪がベタベタになってしまった。 お風呂に入りたくて民宿に戻ると、残された3人はご立腹。「2人きりでデートですかー。いいですねー」 かの姉思いっきり拗ねちゃってるし。「いや、デートじゃなくて散歩してたらたまたま会ったから、少しお話してただけだよ」 嘘は言ってない。別に待ち合わせとかしてないし。 というかあんな暗い中、よくわたしを見つけることができたよね。「ゆきちゃんがいなくなったと思ったら一緒により姉もいないし。ひよりはとっても寂しかったんだよ!」 すぐに? さてはより姉ついてきてたな。 より姉の方を向いたら目を逸らされた。やっぱり。 まぁひよりからしたら勝手にいなくなったんだから、わたしも悪いよね。「ごめんね、ひより。その分明日いっぱい遊んであげるから」 かわいい妹のためだ。ご機嫌取りもしておかないと。「やたー! 絶対だからね!」 ほんと子供みたいに喜んじゃって。かわいすぎるだろ、こやつ。 目を細めてひよりの事を見ていると、服の裾を引っ張る感覚が。あか姉?「わたしは?」 コテンと首を傾げて聞いてきた。なにそのあざとい仕草! くっそかわいい! そんなことしない人がやるとこんなに破壊力があるんだ……。 最近みんなあの手この手を使ってアピールしてくるから、いろいろと心臓に悪い。その気持ち自体は嬉しいんだけどね……。「もちろんあか姉も一緒に遊ぼうね!」 喜んだ時にするちっちゃいガッツポーズも死ぬほどかわいいんだよなぁ。なんなんだうちの姉妹は。みんなかわいすぎだろ。 とりあえずみんな機嫌も直ったみたいだし、お風呂に行ってこよっと。「それじゃ、潮風でべたついてるからお風呂入ってくるね」 着替えを用意するために、キャリーバッグを置いてある場所に行くと、なぜかかの姉がついてきた。「どうしたの?
last updateLast Updated : 2026-01-31
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第114話 これはあくまで

 翌日、わたし達は早くに起きて民宿の朝ごはんを堪能していた。 素朴ながらも日本の朝食はかくあるべし! という感じの朝ごはん。 寝起きの体にじんわりと広がるおいしさ。日本人に生まれてよかった。 ゆっくりと朝食を楽しんだ後、部屋でゆっくりしてから着替えを済ませ、そのまま海へ直行。 民宿は海に面しているから、水着のまま行き来できるのが助かる。いつも着替えの場所で頭を悩ませているわたしにとっては大事なこと。 男性用でも女性用でも、どちらの更衣室も使えない体がときにはめんどくさいこともあるけど、みんながかわいいって喜んでくれるから、維持できるよう努力している。「ゆきちゃんかわいい! その水着良く似合ってるよ~!」 ほらね。 今日の水着は黒のスパッツタイプの下地にグレーのパレオを巻いて、トップスは黒のホルターネック。 昨日の快活なイメージのホットパンツとはうってかわって、少し大人びたデザインはより姉が選んでくれた。 もう高校生なんだから少しは色気を意識しろという理由で選んでくれたんだけど。 男子高校生が色気を意識? まぁかわいいし露出もより姉が選んでくれたにしては控えめなので、つい購入してしまったけど。 いろいろと疑問点はあるけど、かわいいから許す。「さすがゆき、何着せても似合うなー。それにその恰好ならいつもみてーにしりとりするわけにもいかねーだろ」 別にやりたくてやってるわけじゃない。しつこく絡んでくる相手が悪いんだもん。 こんな家族連れの多いビーチでナンパなんかするなっての。「ゆきちゃん、大人っぽくてキレイです」「人魚姫みたい」 みんなしてわたしの事を褒めてくれるけど、みんなだって十分にキレイだよ。「かの姉もあか姉もよく似合ってるよ」 本心からそう思う。かの姉は黒を基調にフラワープリントがされたビキニに肩から掛ける大判パレオ。相変わらず優雅だ。 あか姉は競泳水着タイブにサンバイザーを被っていて、なんだかかっこいい。「あたし
last updateLast Updated : 2026-01-31
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第115話 だからあくまで救命措置だってば!

 ひよりは処置が適切だったおかげで脳波に異常もなく、細菌感染防止のための抗生剤を投与するだけで済んだので、わずか数時間で解放されて民宿に戻ってくることができた。 かの姉とあか姉がすぐに着替えを持って合流してくれたので、帰りはみんな揃って仲良くご帰還。 と言いたいところなんだけど、わたしとひよりの間には微妙な空気が漂ったまま。 意識しないようにと頑張ってはみるんだけど、ひよりを見るとどうしても唇に目が行ってしまい思い出してしまう。 ひよりもその視線に気が付いて、2人して赤くなることの繰り返し。 唇の柔らかさや、すっかり成長して女の子らしくなったひよりの体が脳裏から離れてくれない。 あぁもう! 煩悩退散! 民宿に着いてもお互いに話しかけることもなくもじもじ。お見合いか!「それじゃ、あとは若い2人に任せてあたしらは卓球でもしに行くかー」 そのセリフやめてー。ホントにお見合いみたいじゃんか。 なんだ、この後に「ご趣味は?」とか聞けばいいのか? 今2人きりにされるのは気まずすぎるんですけどぉ! そんなわたしの心の声は届かず、3人で外に出ていってしまった。3人でどうやって卓球やるんだよぉ……。せめて1人残していけっての。 そして2人きりの空間には静寂が漂う。いつもならひよりと2人きりで黙っていても、雰囲気が柔らかくて居心地がいいんだけど、今はそういうわけにいかない。 ただひたすらいたたまれない静けさだけがわたし達を取り囲み、心なしか酸素が薄くなってしまったような錯覚に陥る。 でもさすがにこのまま気まずい空気を放置しておくのは、男としても兄としても情けない。 現状をなんとか打破してあげないとひよりもいたたまれないよね。「あの……ひより?」 恐る恐る声をかけてみた。ズバッと笑い飛ばせればいいんだけど、そうもできない自分が情けない。 ちらりとこちらを見るひより。「~~~~~っ!」 声にならない声を発して俯
last updateLast Updated : 2026-02-01
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第116話 変わらぬ想い

 わたしの提案で、もう一度海で遊んでから家に帰ることになった。 それは何よりもひよりのため。海で溺れた恐怖をまだ鮮明に覚えているうちに水へ触れさせて、自分は大丈夫だという体験をさせてあげないといけない。 でないと最悪の場合PD(パニック障害)を引き起こして、水に浸かることすら怖がるようになってしまうかもしれない。 幸いなことにひよりのポジティブさはわたしの予想以上だったみたい。 最初こそ恐る恐るといった様子だったけど、ものの数分でいつものように遊ぶようになっていた。 最後にブイのところまで競争をして、ひよりは難なく昨日の事故を克服。さすがわたしの妹!「むふふ~ん! ひよりはあれしきのことでへこたれたりしないよ!」 わたしの狙いに気が付いたのか、ドヤ顔で胸を張るひより。「調子に乗ってるとまた痛い目見るよ~」 そう言って脅してもキャッキャと笑ってはしゃいでいる。うん、これなら本当に大丈夫そうだ。 午前中いっぱい海で遊んで、昼食をとった後に民宿へ帰還。 少しゆっくりしていたらチェックアウトの時間になったので、受付で清算をして帰路についた。 決して豪華ではなかったけど、家庭的な雰囲気のいい民宿だったな。またいつかみんなで来たい。 いつか……。 帰りの電車の中では朝から泳いで疲れたのか、わたしを除いて全員が眠ってしまった。 わたしはみんなの寝顔を見ながら物思いにふける。 この旅行で明確になったことがある。 それは姉妹たちのわたしに対する想いだ。 今までは家族愛の延長線上にある、過度なブラコンだと思っていた。 ちょっと行き過ぎかな? と思うことはあってもあくまで家族としての情愛なんだと。 だけど、昨日のひよりの言葉と行動で、家族のラインを踏み越えようとしていることが分かってしまった。 それはひよりだけじゃなく、それを温かい目で見守っていた他の姉妹も同じ気持ちなんだろう。 それに対してわたしは&helli
last updateLast Updated : 2026-02-01
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第117話 正妻の余裕?

 問題を先送りしただけとはいえ、わたし達の間には日常が戻ってきた。 いつもと変わらない、温かい食卓と愛情にあふれた家族の絆。 わたしに問い質したいであろう気持ちを封印して、いつもと変わらぬ態度をとることでわたしを安心させてくれている。 その想いを裏切るわけにはいかない。 だからわたしも、いろんな想いを脇に追いやり、今までと変わらぬわたしであり続けよう。 幸いわたしは障害のおかげで、そういった記憶や感情をコントロールすることには慣れている。 もう少しだけ時間をくださいね……。 だけど日常はそんなに長く続かなかった。 台風襲来。 やって来たよ、あの人が。「ゆきちゃ~ん! やっとお仕事にひと段落ついたから会いに来たよ~!」 琴音ちゃん……。 このタイミングで来ちゃったか~。 インターホンのカメラ越しにその姿を確認したわたしは思わず頭を抱えてしまう。どうしよう、このままお帰り願おうか……。 さすがにそういうわけにもいかず、玄関へ向かう。 ドアを開けた瞬間、ホラーゲームで襲い掛かってくるゾンビを彷彿とさせる勢いで飛びかかってくる琴音ちゃん。「会いたかったよ~!」 ぶちかましよろしく、そのままの勢いで突っ込んできた。「ぐほぉ!」 腹部に強烈なタックルを食らったわたしはそのままもんどりうって転倒。とっさに受け身はとったものの、お腹が痛い! 大型犬か! そこへタイミングよく2階から下りてくる姉妹たち。さっきみんなを起こして回ったばっかりだもんね。それにしても今日に限ってみんな揃ってとは。 てゆーか朝早いな琴音ちゃん! 始発で来たの? そしてばっちり目撃されたのはわたしが琴音ちゃんに押し倒されているの図。「あにょ~……。これは……」 ひきつった笑顔でどうにか弁解し
last updateLast Updated : 2026-02-02
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第118話 ゆき会長、受難の文化祭

 密度の濃い時間を過ごした夏が終わり、文化祭に向けて準備を始める時期になった。 今年は生徒会として何をしよう。 さっそく議題にかけるため、ホワイトボードに書こうとしたら文香が鼻息荒く手を挙げた。ヤな予感……。「今年は! 今年こそはミスコンの開催を!」 やっぱりか。 なんで文香はそれにこだわるかなぁ……。「他に案は……」 沈黙。 こいつら……。 今年はもう演劇部の濃い……高坂先輩もいないし、助け舟が入ってくれる見込みがない。 去年わたしも出演した演劇が好評で、その後演劇部にも入部希望者が集まり、今年は人手も足りているようだ。「一応、念のため確認なんだけど、そこにわたしは?」「「「「もちろん出場で!」」」」 くっそー声を揃えやがって! 会長をおもちゃにするんじゃありません! がっくしとうなだれるわたしに向かって文香が優しく語り掛けてくる。「でもゆきちゃんがダントツ優勝なのは間違いないから、審査も兼ねた特別枠で出場ね」 慰めになってねーよ! 何良いこと言った雰囲気出してんの! もはや決定事項と化してしまっている現状、わたしが何を言っても大勢は覆りそうにない。 誰か助けて……。 今年もほら! いつものご都合……天の助けが入る頃合いじゃない!? そろそろ扉がバーンと開け放たれて「話は聞かせてもらった」っていうお約束のあれ! ……。 一縷の望みをかけて扉を見つめるも、音沙汰なし。 チクショー、神様のばかやろー! 燃え尽きてしまったわたしに代わって文香が議事進行を行い、あれよあれよという間に審査内容が決められてしまった。 わたしのあずかり知らぬまま、当然のごとく水着審査も盛り込まれ、挙
last updateLast Updated : 2026-02-02
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第119話 トラウマ文化祭(笑)

 ヤダ、話したくない。 思い出したくもない。 今年の文化祭も盛況に終わりました。 完 これでいいでしょ? ダメ? うぅぅぅ……。 ヤダヤダヤダ~~~!  意地悪な神様がダメだというので今年の文化祭のお話。 ここからはわたしがどのようにしてトラウマになってしまったかを綴る悲しい物語。  今年も生徒会長であるわたしが校内放送で文化祭の幕開けを告げる。『今年度、学園文化祭の開幕だコンチクショー!』 常軌を逸した開幕宣言の後、校内になだれ込んでくる人々の群れ。それを出迎える生徒会役員たち。 道すがら視線をたくさん感じたけど、不機嫌なわたしにはそんなことを気にしている余裕もない。 そして校門で待機している役員たちと合流。「どうしてゆき会長はそんなにやさぐれてるのかしら?」 当然の疑問を口にする薫先輩。ヤダ、話したくない。「あはは、ちょっとクラスでいろいろありまして~。すぐに大人しくなるかと」 代わりに答えてくれる文香。大人しくなるってどういうことだ。わたしは猛犬か。  ガルルルル……。「クラスでいじめられているとかじゃないですよね?」「ゆき会長をいじめられる猛者なんてこの世にいるんですか? まぁクラスの出し物のお手伝いが終われば少しは復活するかと」 その言い方は酷いよ穂香? クラスの出し物……。う、また嫌なことを思い出してしまった。「はい、その話題はおしまい! キビキビ見回りしちゃうよ~!」 こうなりゃヤケだ。気を取り直して笑顔で文化祭を楽しもう! せめて憩いの時間である見回り中くらいは。 そこからはいつもの快活な笑顔を取り戻し、楽しく見回りをして過ごしました。  うぅ、これで終われたらなぁ……。 今年は盛況だった去年に勝るとも劣らないほどの来客者が訪れてくれていた。  今年の卒業生達も大挙して押しかけてきたので、きっと去年の記録は塗り替えているだろう。 そしてとうとうやってきてしまった。何がって? そんなの決まってる。  |クラスの出し物《お化け屋敷》のお手伝いだよぉ! くそーこうなったら来る人来る人全員を腰が抜けるくらいに脅かしてやる!  そう思っていた時期がわたしにもありました。「ひゃあぁぁぁぁ!」「うわぁあぁぁあ!」「んにゃあぁぁぁん!」「はひいぃぃぃぃ!」 暗いの怖い、血まみれの自分の
last updateLast Updated : 2026-02-08
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第120話 終わりよければ全てよし?

『文化祭2日目、ただいまより開幕だコノヤロー!』 またしても狂気を感じさせる開幕宣言の後、開けられた校門からは前日よりさらに多くの来客が押し寄せていた。 前日のミスコンが口コミで広がり話題となって、名物会長がどんなものか好奇心に駆られて見に来た人がほとんど。わたしは珍獣か。 おかげで校門前に赴いたわたしはいろんな人の好奇の視線を一身に浴びる。「あらあら本当にキレイなお嬢さんねぇ」 いや、おばあちゃん、お嬢さんではないです。 いったいどんな噂が広まったんだ? 通りゆく人々からたくさん声をかけられて、わたしの周囲には人だかりができてしまった。 まるで動物園のパンダになった気分。客寄せパンダとはよく言ったものだ。 どうにか人をさばききって見回りを開始。だけどわたしにはこの後試練が待ち構えている。 そのことを考えるとどうしても気分が沈んでしまい、機嫌よく声をかけながら見回りというわけにもいかない。 おかげで「ゆき会長の機嫌が悪い」という評判がたってしまい、わたしに話しかけてくる人もほとんどいなかった。 そんなに怖い顔してたのかな? だけど、来客者が増えたということはそれだけトラブルの種が増えたということでもあり、見回りの間中その対処に追われてその後のことを考えている余裕もないくらい忙しかった。 ほとんどが道案内や迷子の保護とかそんなんばっかだったけど。平和だ。  そして来校者が増えた結果、文化祭2日目はわたしにとってさらに地獄と化していた。 前日、わたし達のクラスの出し物であるお化け屋敷から毎回尋常ならぬ悲鳴が聞こえるということが噂になり、来客が前日比激増。 その悲鳴は|お化け役《わたし》だよ! おかげで今日は休む間もなく人が訪れ、わたしの悲鳴が途絶えることもない。 いい加減疲れたよ……。「お、終わったー!」 ようやく持ち時間が終わったわたしの口から飛び出た歓喜の声、魂の叫び。 怖かった記憶にはさっ
last updateLast Updated : 2026-02-08
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