Alle Kapitel von 雪の精霊~命のきらめき~: Kapitel 151 – Kapitel 160

161 Kapitel

第151話 次の機会

 なんだこの状況。 左右に二人ずつ。四人がかりで頭突きをされているような図。 目が覚めたら周囲を包囲されてしまっていた。 結局四つのベッドに五人がかりで眠っていたのね。みんな幸せそうな顔で眠っている。 なんでこうなったかを考え、昨日のことを思い出す。ひよりが持ってきたジュースを飲んだらなんだか気持ちよくなって……。 ……うん、忘れよう。 お酒のせいで記憶にございません。これでいい。 全記憶障害? お酒のせいだから。ワタシナンニモオボエテナイ。 四人を起こさないようにそっと布団を抜け出て、洗面所へ。時間はまだ六時だからまだ寝かせておいてあげよう。 鏡の前に立ち、自分の姿を眺める。 頭はすっきりしているから、お酒は残っていないようだ。確か三本飲んだよな。オボエテナイケド。 でも昨日は楽しかったなぁ。たった一日の出来事なんて信じられないくらい。まるで一週間経ったような気分。 今日も楽しい一日が待っているのかな。 歯を磨き、髪を整えて戻ってきてもみんなはまだ眠っている。四人の寝顔を見つめ、ひとり微笑んだ。 わたしの愛しい天使様たち。ベッド際に頬杖をつき、しばらく眺めることにした。 いくら眺めていても飽きることがない、愛する人達。自然と笑顔になってしまう。 誰かひとりを選ぶことなんてできないけど、眠っている今なら愛しい気持ちをみんなに向けてもいいよね。「大好きだよ」 ぽつりとつぶやく。「あたしもだ」「わたしも」「わたしもです」「下に同じ」 空耳かと思った。眠っていると思ったのに全員から同時に返事があるなんて。「ぷっ。なんて顔してやがる」 より姉の目が開いている。いや、みんな起きてた。「ね、寝たふりしてるなんて……趣味が悪いよ」 口を押さえてそっぽを向いた。顔が熱い。「あんな熱い視線を注がれたら起きれないよ」 悪い顔をするひより。熱い視線って……。「い、いつから?」「ゆきちゃんが洗面所へ言ってる間にみんな目が覚めましたよ」 最初からやん。はずかちぃ。「長時間大変だった」 それ以上はやめてください。ニコニコしながら眺めていた自分を殴りたくなるので。「幸せそうにじーっと眺めてるかと思ったら『大好き』だもんなぁ。キュン死するかと思ったぞ」 やめろぉぉぉぉ!「ゆきちゃん布団に隠れちゃった。昨日から引き続いて可愛
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-05
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第152話 姫を守る騎士団

「なんでここにいるんだ」 顔をしかめるより姉。第一声がそれ?「ゆきちゃん、昨日はありがとう!」 無視か。 ホテルのフロントに鍵を預けようとしたら、彼女がいた。 日本の歌姫。トップアイドルの岸川琴音。こんなとこで何やってんの。「あれ? イベントは昨日だけって言ってなかった?」「ナイトショーはね。でも急遽新しいイベントが出来ちゃったから、帰りを伸ばしてもらったの!」「へーそうなんだ。がんばってね」 なぜここで待ち伏せしたのかの回答にはなってないけど、なんだか聞きたくないような気がする。「おい、無視すんな」 わたしをかばうかのようにより姉が前に出てきた。あか姉がわたしの右腕を掴む。 正妻の余裕とか言ってたのに、警戒心がMaxだな。「ゆきちゃんは家族水入らずで過ごすんですよ」 ブロックが二枚に増えた。 より姉とかの姉に立ちふさがれては、さすがの琴音ちゃんでも無視はできない。ひよりが左腕に絡みついてきた。「ゆきちゃんを隔離しないでください~。別に取ったりしませんから」 そんなこと言っても昨日のことがあるからなぁ。 わたしがやりたそうにしてたからみんな快く送り出してくれたけど、本当なら家族の時間を邪魔されたことになるんだもんね。「で、今日は何の用なんだ? ゆきはこれ以上イベントには出ねーぞ」 イベントという言葉を聞いたからみんなでわたしを守ってくれてるのね。やだナイト様。「あー、イベントと言ってもお仕事じゃなくてですね。みなさんに園内を案内するという個人的なイベントが出来ただけですよ」 警戒されている理由が分かったのか、目的を説明する琴音ちゃん。やっぱりか。 急遽新しいイベントが出来たって言ってたから、そんなところじゃないだろうかとは思っていた。「パンフレットもあるし、下調べはしてあるから案内はいらねーぞ」 不機嫌そうに言い放つより姉。断固拒否だな。 そんなに昨日のことが嫌だったんだろう
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-06
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第153話 10年の結晶

「それじゃ小学生のガキンチョが名探偵やってるお店に行きましょうか」 いや言い方。怒られるよ。 ちゃんと中身は高校生に成長してるからね。 元気よくみんなを先導しようとする琴音ちゃん。 さっき一瞬元気がなさそうに見えたけど、気のせいだったのかな。「琴音ちゃん大丈夫?」 声をかけてみたら、きょとんとした顔をされてしまった。しまった、思い過ごしか。「わたしのことも気にしてくれてありがとう。でも大丈夫だよ。さ、サンドイッチ食べに行こ!」 すぐに笑顔になって元気よく答えてくれる琴音ちゃん。やっぱりどこか変だ。「サンドイッチじゃなくてもいいよ? 琴音ちゃんの好きなものを食べに行ってもいいからね」「そんなんじゃないよ。せっかく今日こうやって一緒に行動できてるんだから、たくさん思い出を残したいなと思っただけ」 それだけじゃないような気もするけど、無理に聞き出すようなことでもない。 本人が大丈夫というなら……。「もう、そんな顔しないで。ほんと誰にでも優しいんだから。いい思い出、作らせてね」「琴音ちゃん……」 これ以上踏み込むのは野暮というものだろう。琴音ちゃんの言うとおり、いい思い出を作れるように楽しもう。「いっぱい楽しもうね! 琴音ちゃんは何食べるの?」「わたしはチキンカレースープとライ麦パンのオープンサンドにしようかなと思ってるよ」「だったら半分こしようよ。その方がいろいろ楽しめていいでしょ」 琴音ちゃんが目を瞠る。「ゆきちゃん……。いいの?」「もちろんだよ」 そんな話をしている間に、目的の場所にたどり着いた。 さっそくテラス席を確保して各々注文。わたしは琴音ちゃんと分け合いをする約束をしていたので、隣同士に座ることに。 他の姉妹から何も文句が出ないあたり、みんなも何かを感じ取っていたのかもしれない。「ゆきちゃんありがとね」「なに急に改まって。これが最後でもあるまいし気持ち悪いよ」「気持ち悪いってひどい! でもそうか、そうなんだね。ねぇゆきちゃん、いつまでも友達でいてくれる?」 すがりつくように尋ねてくるその瞳は少し潤んでいる。 胸が痛いけど、これもまた乗り越えておくべき「やらなくてはいけないこと」だ。「違うよ」 わたしの返答に驚いた表情をする琴音ちゃん。最後まで聞いてってば。「琴音ちゃんは小さいころからずっとパート
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-07
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第154話 お土産にはささやかな気持ちを込めて

「それじゃ、明日はお仕事もあるしそろそろ帰るね」 お昼ごはんを食べた後、アトラクションも大方回り切ったころに琴音ちゃんが切り出した。 時刻は18時。そろそろお腹も空いてきた頃だ。「晩御飯は一緒に食べないの?」「さすがにいつまでも遊んでるわけにいかないからね。新幹線の時間もあるし、そろそろここを出ないと」 お仕事の都合とあれば引き留めるわけにもいかない。少し寂しい気持ちもあるけど、快く見送ることにした。「それじゃ、お姉さん達もゆきちゃんも、またね」 手を振り颯爽とゲートを潜り抜けていく琴音ちゃん。決して振り返ることなく、前だけを見て進んでいく姿はかっこいい。「かっこいいじゃねーか」 より姉も同じ感想を抱いたようだ。ほんと、わたしなんかよりよっぽど大人だよね。 どうかもっといい恋をして、素敵な人に巡り合ってね。 あらかたアトラクションは制覇したので、もう一度楽しみたいものを回りながらお土産を見て歩いた。「そろそろトートバッグも買い替えないといけないんだよね」「そんなのはその辺で買う方がいいんじゃないの? 記念品なのに普段使いするの?」「こういうのは使ってなんぼでしょ。これなんか買い物の時に持ってたら可愛いと思わない?」 キャラクターが印刷されたトートバッグを手に取り、ひよりに見せる。「うん、可愛いね。……こういうのは何のてらいもなく乙女っぽい物を選ぶんだよなぁ」「何か言った?」「なんでもなーい。買い物目線が主婦みたいだなと思ってただけ」 失礼な。誰が所帯じみてるってんだ。わたしはまだまだイケるぞ。「ゆきちゃん、これなんて可愛くない?」 そう言ってひよりが持ってきたのはキーチェーン。「大きすぎないし、カバンのストラップにつけたら可愛いだろうね」「種類があるからペアで持とうよ」 見てみると色違いがあるようだ。「ちょうど五種類か」 少し考えた後、思い切って全種類買うことに。「ひょっとしてみんなの分も?」「そうだよ。ひよりはどの色がいい?」「ゆきちゃんはどれにするの?」「わたしはこれかな。一番大人しめの色だし」 わたしが選んだのは白をベースにしてピンク色の彩が施されたもの。白だから男の子が持っててもギリいけるでしょ。「ゆきちゃんならどれを持ってても違和感ないけどね。わたしはこれにしようかな」 ひよりはわたしの選
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-08
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第155曲 綺麗なものほど意味がない

 大阪滞在三日目。 昨日までのテーマパークを離れ、今日はまず水族館にやってきた。「でっかーい!」 ひよりがジンベエザメを見て歓声を上げる。「ジンベエザメは魚の中で一番大きい生物だからね。飼うのが難しいから、日本でも三カ所かでしか見られないんだよ」 全て西日本に集中していて、東日本では見ることが出来ないらしい。 しかも残りは鹿児島と沖縄だから、東日本から見に来ようと思ったら大阪が最寄。「ん? 一番大きい魚はクジラじゃねーのか?」「え?」「お?」 おいおい、マジか。「より姉、クジラは哺乳類だって知らないの?」「そうなのか? じゃーサメも哺乳類なのか?」 サメは魚だって言ってんでしょうが。「サメは卵で子供を産むんだよ。キャビアとか知ってるでしょ。卵じゃなくって子供をそのまま産むのが哺乳類。母乳をあげる動物だね」「水の中で産むのか。溺れねーか?」 どこまで本気なんだろう、この人。「もともと水の中に住んでるんだから大丈夫だよ。まぁ母乳は海水中に出して、赤ちゃんは海水ごと飲むらしいけどね」「マジか。しょっぱいミルクだな」 だから海水の中に住んでるって言ってんだろ。四六時中しょっぱいわ。 意識してるのかわかんないけどちょいちょいバカを発揮してるよなぁ。 会話が聞こえてしまったのか、周囲の人がくすくすと笑っている。ちょっと恥ずかしい。「次行こうか。ほら、あっちにクラゲの水槽があるよ。わたしクラゲ見たいな」 より姉の腕を取って連行。バカなことばっかり言ってないで、幻想的な光景を見て心を洗ってください。「おぉ。クラゲだ」 そのまんまやんけ。 もうちょい他にないのか。「ほらほら、半透明でキレイでしょ。触手には毒があるけど、見てる分にはキレイだよね」「まぁキレイと言えばキレイだが。……こいつらがいる意味ってなんだ?」 また身も蓋もないことを。「ぷかぷかと漂ってるだけだろ。ちゃんとメシ食ってんのか」 クラゲをじっと見つめてご飯の心配をしてあげる女性の図。プランクトンとか教えても「どこに口があるんだ」とか言いそう。「ずっとふよふよしてるだけで気楽そうだな。何のために生きてるんだろうな」 クラゲの生きてる意味を真剣に考える人なんて初めて見たよ。 彼らには脳がないからそんなことを考えることもないんだろうけど。 生きてる意味か。
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-09
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第156話 時には惰眠をむさぼって

 大阪旅行も半分を過ぎてしまった。 明日にはもう帰りの電車に乗っているのかと思うと、少し寂しいものがある。考えてみればいろんなことがあったな。 たくさんのことがありすぎて、まだ四日目だというのが信じられないくらい。もう二週間近く経ったような……。そんなわけないよね。 今日はいよいよ食べ歩きの日……なんだけどまだみんな眠っている。 とっくに朝ごはんの時間は過ぎており、誰も起きる気配がないので一人で食べに行った。 なんでこんなことになったかというと。「はい、ひよりさん、茜、お茶入れましたよ」「あ、かの姉ありがと。ん? なんだか変な味のするお茶だね」「これは……おいしい」 かの姉が淹れたのはただの烏龍茶のはずなんだけど。変な味のする烏龍茶ってなんだろう。 まぁみんな機嫌よく遊んでるし、わたしもテレビを見ていよう。 と、思っていたんだけど。 しばらく時間が経って。「あはははは! なんだかわかんないけどおかしー!」「えへへへへ。ひよりご機嫌」 いや二人ともご機嫌になってるし。何があった。「ゆきちゃ~ん」 突然ひよりが飛びついてきた。めっちゃ懐いてくるし。って酒くっさ!「ちょっとかの姉! 二人に何飲ませたの!?」 犯人はやつしかいない。さっき飲ませてた烏龍茶に何かあるはずだ。「わたしは依子さんが作ったお茶を二人にお渡ししただけですよ~」 なんだかいつも以上にフワフワした感じで応えるかの姉。この状況で嘘をつくとは考えにくい。 となると下手人は決まったようなものだ。「より姉?」「なんだよ。あたしは楓乃子が飲むと思ってウーロンハイを作ってやっただけだっての~」 やっぱりお酒じゃねーか! しかも微妙にどっちが悪いと決めにくい状況にしてやがる。狙ってるのか?「そんなことよりゆきも飲めよ~」「未成年に勧めるなって前から言ってるでしょ! 飲ませるのも犯罪なんだからね!」 ほんとにこの酔っ払いどもめ。あか姉とひよりも出来上がってしまったのか、上機嫌で笑っている。何が可笑しいのやら、ちょっと怖い。「さっきのお茶もっと欲しい」「あか姉はそれ以上のんじゃダメだってば!」 おかわりをせがんでくるあか姉を阻止。ひよりも飲みたそうにしてるけど、ダメだからね。 だけど初めて飲んだお酒はなかなか体から抜けないのか、その後もしばらくどんちゃん騒ぎ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-10
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第157話 幸福のスイーツ巡り

「うん、美味しそう!」 ずらりと並んだ多種多様な食べ物。 普段あまり口にすることのないいろんな料理を前にして、期待を隠せないわたし達。 わたしが注文したのはボタニカリー。 鶏がらスープに玉ねぎ、野菜、スパイス、ハーブが煮込まれていてスパイシーで美味しいし、副菜がアートのように盛り付けられている。 より姉はシンガポールチキンライス。 かの姉はお好み焼き。 あか姉はキーマカレー。 ひよりはハラミ重と黒毛和牛フィレステーキ トリュフがけ。「ステーキはみんなで食べようね」 そう言って購入しようとしているのはいいけれど、お値段がべらぼうに高い!「ちょっとひより、お小遣い大丈夫なの?」「そろそろなくなりそうだから、ゆきちゃんに借りないとダメかも」 そう言って苦笑いするひより。苦しいなら無理してステーキなんて注文しなくていいのに。「だってみんなでシェアするもの欲しいじゃない」 そんな可愛らしいセリフを言われては止めることもできない。 もう、みんなのことを考えてくれるのは嬉しいけど、やりすぎだよ。「そのステーキはわたしが買うから。ひよりはこの後に行くデザートでお金を使いなよ」「そんな悪いよ。わたしが勝手に買おうとしてるだけなんだし」「みんなのためでしょ? わたしもみんなと食べたいから買うだけだよ」 みんなで食べるものを末っ子に負担させるというのもなかなかに目覚めが悪い。 ここは一番経済力のあるわたしが出してもみんなから異論は出ないだろう。「ゆきちゃん、ありがとう」「いいんだよ。どれも美味しそうだね」「うん!」 元気よく返事をするひより。ほんとに良い子だ。 フィレステーキも含め、みんなでシェアした料理を堪能してお昼ご飯の時間は過ぎていった。「さて、いよいよ今日の本番だね!」「昼飯食ったばっかじゃねーか。もう食べ歩きすんのか?」「もちろん! 時間は有限、甘いものは別腹! 時間の許す限り食べつくすよ!」 すでに候補は三つほど見繕ってある。あとは観光がてらにあちこち探し回るのもいいだろう。 ということで最初に向かうはハービスプラザ四階にあるチョコレート専門店。 わたしはショコラパフェ、ひよりはチョコラータケーキ、あか姉はタルト・オ・ショコラ。 より姉とかの姉はハーブティーのみ。「せっかくスイーツを食べに来てるのにもったい
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-11
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第158話 昭和四年創業の老舗串カツ店

 スイーツ巡りを堪能した後、腹ごなしも兼ねてあちこちを散策して回った。 普段はあまり行かないゲーセンでリズムゲーをしたり、ボーリングやビリヤードで体を動かして消化を促す。 三時間もする頃にはお腹が空いてきた。「もう腹減ったのかよ。どんだけ胃腸が丈夫なんだ」「健康優良児と言ってくれるかな」「まぁいいけどよ。それで、何を食べたいか決めてあるのか?」 今日出かける前に、それぞれ何を食べたいかを決めておくようにと言われている。 わたしもいろいろ探してたんだけど、さすが大阪。食べたいものがいろいろありすぎて困っちゃう。「わたしはまだ決めきれてない……」「なんだ、いつも率先して決めるゆきにしては珍しいな」 だってどれも美味しそうなんだもの。「わたしはお好み焼きが食べたいです」「またかよ! 楓乃子は昼にも食べてただろうが。どんだけ粉もんが好きなんだ」 わたしも一口もらったし、お好み焼きはどっちかというとお昼ごはんにでも食べたいかな。「もつ鍋」「相変わらず選択が渋いな、茜。たしかに美味そうだな」 もつ鍋は候補に入ってなかったけど、確かに美味しそう! 悩みが増えてしまった。「わたしはね! 串カツが食べたいなー!」 それそれ! 大阪といえば串カツだよねー。でもてっちりとか、居酒屋で土手焼きなんかも美味しそうなんだよね。「ひよりはあたしと同じだな。それで、ゆきはどうする? 今のところ串カツに二票だが」「うーん、うーん」「どんだけ悩んでるんだ。ちなみに候補はいくつあるんだ?」「居酒屋てっちりもつ鍋串カツかすうどんイカ焼き中華肉吸いたこ焼き……」「待て待て待て。いくつ出てくんだよ。呪文みたいになってるじゃねーか」 体がいくつも欲しい。「ゆきの候補にもあったし、二票入ってるし、串カツにするか。ゆきも別に文句はねーだろ?」 あの呪文をちゃんと聞きとってたのか。より姉もやるな。「もちろん! ソースは二度漬け禁止だからね」「それくらい知ってるっての。全体をひたひたに漬けて食べるんだろ」 より姉のことだから何度もじゃぶじゃぶ漬けるんじゃないかと心配だったけど、それくらいは知っているようだ。「それじゃ、さっそく向かおうか! お店はあたしが探してあるからよ」 おぉ、より姉がリーダーシップを発揮している。 さすが長女、頼もしい。 わたし達は
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-12
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第159話 最後の夜

「ふわぁ~気持ちいい~」 フラフラのより姉。「あははは! よろこさん酔いすぎです~」 かの姉、あんたもだよ。誰だよろこって。呂律が回ってねー。 わたしがより姉に肩を貸し、かの姉にはあか姉が肩を貸している。ひよりにはお水と万が一に備えてのエチケット袋を用意させてある。「真っすぐ歩け酔っ払いども!」「あたしは真っすぐ歩いてるぞ~。道が曲がりくねってるのが悪いんだぁ」「そうですよねぇ。S字クランクが連続してます~。教習所ですかぁ?」 一般道だよ。道もこれ以上ないくらい真っすぐだよ。 酔っ払いどもをどうにか電車に押し込み、ホッと一息。Suicaくらい自分で出せっての。 電車内は人でごった返している。地元の球団のユニホームやメガホンを持った人が多いのは試合でもあったのかな? そういえば今年は成績が良くて、優勝も視野に入ってるんだっけ。野球はあんまり詳しくないから分かんないけど。「ちょっとより姉。ちゃんと立って。電車内で座り込んだらダメだって」 足に力が入っていないのか、放っておくとずりずりと沈み込んでいってしまう。「ゆき~だっこ~」 人がいっぱいの車内で何言ってんだ。「あれ、YUKIちゃんやん」「ほんまや。生で見たらめっちゃ可愛い」「やっぱり姉ちゃん達と仲ええんやなぁ」「YUKIちゃんって男の娘やろ? ハーレムやん」 ハ、ハーレム!? そ、そんな風に見えるのか? アラブの石油王じゃあるまいし……。「そうかな。どう見ても百合にしか見えやんよ」「確かに! 百合の園やわ」 ですよねぇ。知ってました。「そういやユニバのナイトショーに出てたんやろ? うちも見に行きたかったわぁ」「ほんまに? それは行きたかったな。またやってくれへんのかな」「急遽決まったみたいやし、無理ちゃうかな」 漏れ聞こえてくる情報からすると、先日のナイトショーは結構な評判になっているようだ。 またやって欲しいという声はありがたいけど……。「ゆきちゃんよかったね。好評だったみたいじゃん」「……そうだね。みんなが楽しんでくれたならよかったよ」「また、やりたいんじゃないの?」「ううん、そんなことないよ。あの日一日で十分だよ」 わたしは本当に嘘つきだ。本当はステージに立ってみんなに歌声を届けたい。 だけど、わたしにはその機会は永遠に訪れることはないんだ。「ゆきちゃ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-13
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第160話 心のタガ

 ホテルの部屋でお菓子パーティー。「それじゃ、女子会始めるぞ~」「「「いえーい!」」」 女子会じゃねー! ここに! 男の子が! いますから! 忘れんな!「まぁまぁゆきちゃん、見た目だけの話だから」 そうか、見た目だけならまぁ。 とでも言うと思ったか?「はい、ゆきちゃん」 かの姉にチョコレートを口に放り込まれた。うん、美味しい。「ゆき、餌付け」 違うわ。 まぁ甘いものを食べると大人しくはなるんだけど。これって餌付け? コンビニでかの姉の見つけたフルーツジュースが美味しそうだったので、いろんな味のものを買い込んできた。 わたしが最初に飲んだのはシャインマスカット。渋味のないブドウの味が爽やかで、あっという間に飲み干してしまった。おいちい。 ひよりもいよかんをすっかり飲んでしまっている。そんなに美味しかったのか。柑橘系好きだもんねぇ。 あか姉はパイナップル。普通のジュースなんだけどあか姉が飲むと独特だなぁと思ってしまうのはなんでだろう。 でも不思議なことにこのジュースを飲んでると、塩気の物がほしくなるんだよね。なんでだろ。 梨味のジュースを飲みながらより姉の買ってきたビーフジャーキーをガジガジ。普段はこういうものをあんまり食べないんだけど、体が塩分を欲しているような気がする。「ゆきちゃ~ん、なんだか気持ちよくなってきちゃった~」 そう言ってひよりがしな垂れかかってきた。なんか最近こういうシチュエーションになったことがあるような気もするけど、まぁいいか。楽しいし。 梨味のジュースもすぐに飲み終わり、次に手に取ったのは白桃。桃の味ってなんだか優しくて懐かしい気持ちになるよね。「こんなおいしいジュース初めてかも~。地元にも売ってるのかなぁ」 缶を眺めて商品名を確認。なるほど、日本のプレミアムということで産地の名前が記載されている。わたしが今飲んでる白桃は福島県産なのね。 震災から復興してる街を応援するためにもどんどん飲まないと。「わたしなんだか熱くなってきたかも。少し脱ごうっと」 女装して出かけていたのでインナーに来ていたのはキャミソール。「あははは。男の子なのにキャミソールって! おかしー!」 自分の姿が妙におかしくなってしまい大爆笑。なんだか気分もいいし、下も脱いじゃおう。「あははは! キャミにドロワーって! どこ
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-03-14
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