All Chapters of 雪の精霊~命のきらめき~: Chapter 11 - Chapter 20

110 Chapters

第11話 新星誕生

 昨日の夜、みんなから少し回りくどくてかつそれ以上に温かい励ましをもらったおかげで配信当日の昼間は何も気負うことなく過ごすことができた。 気合を入れて作った晩御飯も会心の出来で幸先も良好。万全の状態で配信時間を迎えることができた。 モーションキャプチャーとヘッドセットを装着してカメラの前で待機、あと数分で生配信が始まる。 子役もやっていたしカメラの前に立つことには慣れているとはいえ、今回は素性を隠してのデビュー。 星の数ほど生まれては注目されず消えていく人も多いVtuberという世界で、ダンスパフォーマンスメインとジャンルまで自分で絞ってしまってハードルはさらに上がっている。 努力を重ねてきたという自信はあるけど、結局音楽の世界は感性の世界。 わたしの感性が今の日本の人々に好印象で受け止めてもらえるのか、不安がないといえば噓になる。 だけどわたしは自分の大好きな歌とダンスを通して人々に元気と幸せを届けるという道を自分で選んだ。そのための努力は惜しんでいない。 勉強に勉強を重ねて知識だけは誰にも負けないほど持っていると思うけど、その知識のかけらを組み立てて世間に認めてもらえるような楽曲を作るのはわたしのセンスだ。 特に気合を入れて作りこんだデビュー曲はまだ姉たちにも聞かせたことはないけど、自分で納得がいくだけのものは作り上げることができた。あとは聞いてもらって評価をもらうだけ。 いよいよ配信の時間がやってきた。軽く深呼吸して配信を開始する。「みんなこんばんわ!雪の精霊がみんなに歌声をお届けするよ!二日ぶりのYUKIですが待っていてくれたかな?今日デビュー曲を披露するってことでYUKIは少し緊張しております」 声震えてないかな、大丈夫か。【がんばって】【楽しみに待ってた】など多数の応援コメントが並ぶのを見て安心すると同時にこの期待を裏切りたくないと気が引き締まる。「登録者千人超えてるのも多いなと思ったけど、同時接続も400人って多くない?半分近くの人がリアルタイムで見てくれてるんだよね?でも初配信が千人記念にもなるなんて、みんなありがとね!」 最初の配信からたくさんの人に聴いてもらえるのは素直に嬉しい。【声もかわいいし期待値高い】といろんな人から期待されているのを見るとさらに気合が入るというものだ。 そのうえ【キリさんがあちこちで宣伝し
last updateLast Updated : 2025-12-16
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第12話 未来への望み

 そのころリビングでは今日もちゃっかりわたしたちが集結してライブ配信をテレビの大画面で鑑賞していた。「まぁゆきの場合あれで普通ってのは相当無理があるわな」「ゆきちゃんが普通ならこの世に美人なんていなくなるってもんだよね」「万人が認める美貌」「ゆきちゃんを眺めているだけでなんだか心が豊かになるような気がします。あの類稀なる容姿を今お見せしないのはもったいないなと思っちゃうくらいですね」 ブラコン四姉妹のいつものゆきちゃん自慢。今日は久しぶりの歌と踊りを堪能したのだから礼賛は留まることを知らない。「にしてもアメリカで一旦芸能活動を休止してやたらと歌と踊りの勉強ばっかしてたのは知ってたけど、さすがはゆきというかわずか数年でここまでレベルアップしてるとはね」「歌声聞いてるだけで鳥肌やばかったもん!」「こころにしっかり響いてきた」「元々感受性の豊かな子ですから、楽曲に感情を乗せる方法を覚えたら人の心を震わせるようになるのも納得ですね」「トランス状態っていうの?だいぶ入り込んで歌ってたよね」「あいつの才能は底なしなのかね。どこまでいくのか楽しみだ」 お姉ちゃんたちが一様にうなずく。「ところでさ、ひよりからみんなに提案なんだけど次からはこうやってリビングで見るんじゃなくてそれぞれの部屋で見た方がいいんじゃないかと思うんだけど」「確かに。」「そだな。その方が落ち着いて見られる」「アリバイ工作もしなくてすみますしね」 なんだかんだと理由付けをしてはいるけど要するにみんなゆきちゃんの声を独り占めして自分の世界に浸りたいのはバレバレだよ。 あと、感極まったときのリアクションを見られるのが恥ずかしいので平静を装っているから消化不良気味だというのもあるよね。 特に何も発言はしなかったけど、ゆきちゃんの配信を見て内心一番はしゃいでいたのは実はかの姉だと思う。いつものようにニコニコしてはいるが相当なフラストレーション状態に違いない。 その証拠により姉やあか姉より若干そわそわしてる。1人で見ていたら思い切り悶えていたんだろうな。かくいうわたしも何度叫びそうになったことか。 結局それぞれが思うままにゆきちゃんの歌声に熱狂したいということで来週からは各部屋で鑑賞することに。 ちなみに姉妹の部屋は年頃の女の子はプライバシーも大事だとゆきちゃんが両親と施工業者
last updateLast Updated : 2025-12-16
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第13話 男友達獲得作戦

 休み明け、今日もあか姉とひよりの3人で登校。学校が近づくにつれ同じように登校してくる生徒も増えてきて、転校したばかりの頃のように騒ぎになるようなことはなくなったけれど相変わらずいろんな人から声をかけられる。 先日会話したことのある上級生の館山先輩や下級生のしのぶちゃんなどなど上級生下級生問わずあちこちから挨拶が飛んでくる。 言葉を交わしたことのある人なら名前は憶えてるけど、一度も口をきいたことのない人に挨拶をされてもさすがに名前までは憶えていない。 てゆーか年上か年下なのかもわかんない。 あと広沢さんって呼ばれるとわたし達の誰に挨拶してるのかわからない。「あか姉たちも広沢なんだからちゃんと挨拶はしないとだめだよ」「みんなゆきが目当て。わたしは顔見知りにはちゃんとあいさつを返してる」 ひよりも同じらしく、たしかに2人とも相手によってはきちんと挨拶を返してる。クラスメートか何かなのだろう。ひよりいわく「わたしたちはゆきちゃんのおまけ」みたいなものだというのだけど。「ナニソレ。アイドルじゃないんだから」「すでに十分アイドル的存在なんだけど。わかってないなぁ……。自己評価がちゃんとできてない人はこれだから、ねぇ」「ゆきの天然はいつものこと。そこがかわいい」 わたしは天然じゃないと反論したら天然の人は自分を天然と認めないとあか姉にバッサリやられた。いつもみんなに気配りして行動してるから気づかい上手って言われてるくらいなのに!「気づかい上手と天然は両立する。特にゆきの場合は自分に向けられる好意に対して壊滅的に鈍いから。こんなんでいつか恋愛なんてできるのか姉は心配」「れ、恋愛って!そんなの……わ、わたしにはまだ早いよ……」 わたしの好きな人……。恋する人。考えるとなぜか少し胸がチクっとする。人を好きになるって事に興味がないというわけじゃないけど、きっとわたしは生涯恋愛なんてしないだろう。 今は歌とダンスに気持ちが向いていて色恋沙汰に興味がいく暇もないってのもあるけど、年頃になってもわたしが好きになるような人は現れない。というよりも自分が家族以外の誰かを好きになるということを考えられない。「なんかごびょごにょ言って誤魔化してる。ゆきちゃんが好きになる人ってどんな人なんだろうな」「……ほら、もうすぐチャイムも鳴るし教室に行くよ」 あか姉が話を切
last updateLast Updated : 2025-12-17
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第14話 Go ahead

 その後はなにもなく家に帰り、自分の部屋用に購入したノートパソコンを開いて昨日撮っておいた動画を投稿するついでに今の登録者数を確認。 14586人。 なんだ、数百人増えただけか……って違うがな!桁が増えてるんだよ!とノリ突っ込みを入れながらちゃんと数字を確認する。わたしが見ている間にも数人増えた。これも気合を入れてかわいい分身を作ってくれたキリママのおかげだね。まずはキリママに1万人突破と感謝のメッセージ。 1万人突破記念の曲は用意してあったけどこんなに早く使うことになろうとは……とにかくさっそく記念配信の予約を入れて、SNSにも感謝のメッセージと配信のお知らせを投稿。 メッセージもたくさん来ていて、キャラがかわいいって投稿もやっぱり多かった。 再度キリママに感謝。 他にも地声もかわいいとかいろんな誉め言葉が並んでいたけどその中でもわたしの歌とダンスがとても心に響いたという感想が一番多くて、それがなによりも嬉しかった。 わたしの伝えたい思いが少しでも聴く人に伝わるならこれからも頑張っていける!感謝の言葉をSNSに投稿しようかとも思ったけど、それは自分の言葉で直接伝えたくて記念配信をぜひ見に来てくださいとだけ投稿しておいた。 その日の晩御飯は少しだけ豪華にして、登録者が1万人を突破したことを伝えたらみんなで祝福してくれた。 リスナーの反響も嬉しいけど、わたしのことを一番理解してくれている家族からの祝福と応援が一番心を温かくしてくれる。 家事を全部終わらせていよいよ配信の時間。 最初の配信の時の緊張と違って、今回はリスナーのみんなに感謝の言葉を伝えたいという思いと喜びを分かち合いたいという思いが合わさり始まりの時間が待ち遠しくて仕方ない。 配信が始まるなり、前置きのあいさつもなく喜びを爆発させてしまった。「みんなのおかげでいきなり登録者1万人突破しましたー!ほんとうにみんなありがとうね!」【いきなりだなw】【よっぽど嬉しかったんだなw】【1万人突破おめー!】というコメントが並び、名乗りもせずにいきなり本題から切り出してしまった事を思い出して軌道修正。「嬉しすぎて最初の挨拶忘れてた!ごめんなさい!雪の精霊YUKIが今日もみんなに歌声を届けるよー!」 ほとんどがおめでとうのコメントであふれていたけど、その中に【今日は報告だけかと思ったのにちゃ
last updateLast Updated : 2025-12-17
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第15話 成長期?

 1万人記念配信を無事終えてお風呂もすませたゆきは今とてつもなく悩んでいる。 今日は記念ということもあって激しめのダンスを披露したのだが、その時から少し違和感を感じていたことがお風呂で確信に変わってしまったのだ。 さすがにこれは自分の素顔のように隠したまま活動することはできない。なにしろ日常生活に支障が出てきてしまうくらいになってしまっているのだ。 「こういうのを相談できるのって……やっぱりまずはより姉だよなぁ……」 今日は幸い配信が終わってリビングに上がってきた時点で姉妹は全員部屋に戻ってしまっていたので誰にもバレずに相談することができる。 どのみち近いうちにバレることにはなるんだけどいきなり全員に知られるのは羞恥心が勝ってしまう。 いつまでもグダグダ悩んでいてもより姉が眠ってしまうだけなので意を決して立ち上がり、より姉の部屋の前に立つ。スッと深呼吸をしてからノック。「より姉、まだ起きてる?」「んー?起きてるよ、どした?」 ちょうどゆきの配信も終わって他に何かいいものがないか漁っていた最中だったので、見てたのがバレたのかと思いドキッとしたが、何食わぬ声で返事をする。「うん、ちょっとね、相談したいことがあって……部屋に入っても大丈夫?」 配信を見てたのがバレないように少しだけ待ってと言い、一応アプリを別のものに替えて偽装工作だけはしておいた。「どうぞ」と声をかけるといつも元気に入ってくるゆきがどこか恥ずかしそうに小さくなって入ってきた。 本当に何か悩んでいるみたいだ。それにしても珍しい。 基本的に完璧人間と言っていいゆきは何か困りごとがあっても人に相談することなど滅多にない。 その天才ぶりと持ち前の努力と根性で大抵の事は一人でどうにか解決してしまうのがいつものことだ。一流の人間は問題解決能力も一流なのかと思ったりする。 そのゆきがこんなに小さくなって相談してくるのだからよっぽどの事なのかもしれないと少し身構えて続きを促した。「うん、ちょっとね……見てほしいことがあるんだ……」 常に快活に話すゆきがすごく話しづらそうにしている。長女としてこういう時くらいは頼りになるお姉さんとしてズバッと問題解決してやりだいもんだ。 そう思って横になっていた体を起こして聞く体制になるとおもむろに服を脱ぎだした。「な……なにしてんだ!?相談って言
last updateLast Updated : 2025-12-17
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第16話 男の尊厳

「あのね、みんなに報告があるんだ」 朝食の席。みんなが揃ってるときに昨日の夜により姉に相談したことを打ち明けることにしたわたしは緊張しつつも一気に告白した。「じつはね、女性ホルモンが多く分泌されるとまれにあることらしいんだけど、わたし、胸が出てきてブラをしないといけなくなりました……」 気持ち悪いとか思われたらショックだなーと思いながら俯いていると一番最初に口を開いたのはひよりだった。「知ってるよ」 へ?「ゆきちゃんに抱き着くたびだんだん柔らかいものがあたるようになってきてたからね!やぁらかくて気持ちいいんだ」 その測定のされ方は恥ずかしい!でもだからってひよりにハグ禁止なんて言ったら泣いちゃうだろうしな。せっかくかわいい妹がなついてくれてるんだからそれくらいは我慢するか、お兄ちゃんだしね。 予想外の答えに錯乱。「わたしも知ってた」 あか姉も!?「ゆきの服を選んであげる時、最近大きくなってきてたことに気づいてたよ」 あーそれは納得。「わたしも当然知ってましたよ!わたしのゆきちゃんセンサーに狂いなどありません。今は78のBといったところですね」 昨日より姉と測った数値に完全に一致してる!その見抜き方はちょっと怖いよ、かの姉!あとさらりとサイズを公表しないで!「なんだよ、気づいてなかったのわたしだけかよ」 まぁより姉は細かいことを気にしない大雑把な性格だからわたしの体の些細な変化にまで気が付かないだろうと思う。 というよりもそんなに目立って大きくなってるわけでもないのに他の姉妹が知ってたことの方が驚きだよ……。太ったりしたらすぐにバレそうだ。「男なのにブラジャーするとか気持ち悪いって思ったりしない?」 引かれたりしないか心配だったので率直に聞いてみた。「そんなこと思ったりしないよ!逆にゆきちゃんの美貌にさらに隙がなくなっていくなってうらやましいくらい」「いよいよ完全体に近づく」 変身していくみたいに言わないで。わたし第3形態とかないよ?「さすが神が与えてくれた最高傑作です!」 それはいくらなんでも大げさ。 みんな肯定的にとらえてくれてるのでそこは一安心したけど、むしろ私の体がどんどん女体化していくのを歓迎すらしているようでちょっと複雑な気分。自分がだんだん得体のしれない生物になっていくみたいだ。「ブラはいつ買いに行く
last updateLast Updated : 2025-12-18
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第17話 カミングアウト

 翌日、学校に着くなりわたしは職員室に向かっていた。 胸が出てきてしまった以上、体育や水泳の着替えはもちろん身体測定などでも便宜を図ってもらう必要がある。 いくら中身は男だとはいえ、この胸を堂々とさらして平然と着替えられるほど神経は太くない。 担任の瑞穂先生に報告すると「ゆきちゃんも大変ねぇ」と理解を示してくれたので少し気が楽になった。 さすが大人、余計な事を言わない心遣いが行き届いているなと感心していると「でもこれでどこから見てももう女の子ね」とカウンターを食らってしまった。 うぅ、これでも気にしてるのに……。更衣についてはわたし専用の場所を用意しますと言ってくれたので、とりあえずの問題は片付いたと思いホッとして教室に向かった。 教室に到着するとクラス委員の杏奈が声をかけてきた。「なんか先生と難しい話をしていたみたいだけど、何かあったの?」 クラス委員なのでプリントや日誌を取りに職員室へ来て、そこでわたしと瑞穂先生がなにやら真剣な話をしているのを目撃したので気になったらしい。 まだわずかな期間しかたっていないけど、もうすっかり友人として気にしてくれているのを嬉しく思いながら、なんと説明したらいいものやらと考え込んでしまう。「いや、そんなに大したことじゃない……こともないかもしれないんだけどちょっと先生に相談があってね」 これからクラスメートにもカミングアウトすることになるんだけど、いざ説明するとなるや恥ずかしくなってしまい日本語が怪しくなってしまう。 姉たちに報告したときはなんだかんだいって家族だし、先生も生徒を保護する立場の大人だからそこまで気負わず相談できたけど、同年代の他人、クラスメートとなると気分的なハードルがぐんと上がる。 「どうしたの?」「ゆきちゃん何か悩み事?わたしらでよかったら聞くよ?」と文香や穂香、そのほかの子たちも次々に集まってきて心配げに話しかけてきてくれた。 確かに胸の事だから男子よりは女子の方が相談しやすい。 変な目で見られることもないだろうしみんなも同じ過程をたどってきたんだから理解もしてくれるだろう。わたしが男だという点だけをのぞけば。 「何かいいにくいこと?内緒にしておいてほしいことならわたしら絶対に誰にも言いふらしたりしないよ」 わたしがもじもじしていると文香がそう言ってくれたことが嬉しかったの
last updateLast Updated : 2025-12-18
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第18話 規格外

 そしてタイミングのよいことに今日さっそく体育の時間がある。 急遽瑞穂先生が用意してくれていた教室を使用してひとりぼっちで着替えをすることになった。 3階の隅の普段物置になっている使われていない空き教室。 着替えが終わるとなぜかクラスメートの男子が迎えに来てくれていた。2階にある2年生の教室を使って着替えているクラスメートが本来ここにいるはずはないのだけど。 さすがに鈍いわたしでもここまで露骨に周囲をうろつかれるとなんとなく真意を察してしまう。 たかだか体操服だっていうのに男っていう生き物はまったく。……まさか覗こうとしてないよね……?いくらわたしの容姿がこんなんでもさすがにそこまで血迷わないでほしい。 気を確かに持ってくれよ、男子生徒諸君。 今日の授業内容は体育館でバレーボールらしい。 野球やバスケはアメリカでもやっていたけど、バレーボールはアメリカの授業ではやらなかったので人生初体験。 ルールも良く分かってないけど相手がサーブしてきたボールを3タッチ以内に相手コートへ打ち返さないといけないということだけは知っている。「わたしバレーボールやるのはじめて!上手くできるかわかんないけど楽しみだなぁ」 わたしがそう言うとバレー部の田村君がはりきって基礎から教えてくれた。サーブのやり方からレシーブ、トス、アタックまで基本的なことをコーチしてくれたので後は授業の中で覚えていけるだろう。 やけに熱心で文字通り手取り足取り教えてくれた。 のはいいんだけど、その後他の男子から殴る蹴るの暴行を受けていたのは大丈夫なのかな?本人はそれでも満足げな顔をしてるから平気か。 まずは基礎的な練習を少しやった後、いくつかのチームに分かれて対抗戦をやることになった。 わたしが初心者だからという理由で田村君がわたしと同じチームに入ってくれることになったけど、また他の生徒から蹴られてる。いじめじゃないよね? いよいよわたしたちのチームが試合をする番に。最初は勝手がわからないので他の人たちのプレーを見て学んでいたんだけど、すぐにわたしがサーブをする番が回ってきてしまった。サーブをするのも順番なんだね。 位置についてボールを上に放り投げる。 力加減を間違えて高く上げすぎてしまったので落ちてくるまで時間がかかってしまう。 待つのめんどくさいな。 そういえばサーブは
last updateLast Updated : 2025-12-18
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第19話 姉妹たちの収録見学

 話は戻ってゆきが初めて体育の時間に注目を浴びた、その日の夜。 約束していた動画投稿見学のときに今日のわたしの体育の話になってそれを唯一見ていたあか姉が他の姉妹から羨ましがられていた。 特により姉は年齢的に同じ学校に通うことは小学校の時の1年間しかなかったので余計にうらやましいみたいで、部活の助っ人に参加することとなったことを知るとあか姉に録画してくれるように依頼をしていた。 普段見る機会がないとはいえ学校での姿を見たいというより姉の気持ちが嬉しいような恥ずかしいような。 わたしのかっこいいところを見たいってことなのかな……。 そう思うとなんかこそばゆくなって照れくさくて、顔が熱くなってしまう。それはまだわかるんだけど、この胸の高鳴りはなんだろう。 ドキドキしてしまってより姉の顔をまともにみることができない。「それじゃ、まずは歌の収録からやっていくね」 動揺を隠すためにも今日の本来の目的である投稿動画の収録を始めることにした。 生配信の時は口パクを絶対しないのがわたしのプライドでありポリシーなんだけど、投稿動画に関しては歌とダンスを別撮りにしてある。 ヘッドセットが邪魔にならず思い切り踊れるというのもあるけど、複数のカメラで同時撮影した動画を編集してMVみたいなスタイリッシュでかっこいい動画にしたくて楽曲は別で流している。 まだ勉強中なのでカメラは3台しかないし編集もまだまだだけどそのうちプロが作ったようなものにしたいと思って猛勉強中。 別撮りと言っても完全に口パクなわけじゃなくてマイクをつけていないだけで毎回ちゃんと歌いながら踊ってる。 わたしにとっては歌とダンスは切っても切り離せないもので、歌いながらの方がリズムやステップが合わせやすいから。 ただあくまでも別撮りだから曲だけに興味がある人や、編集で少しは見栄えも良くなったダンス動画を見たい人は投稿動画をメインに見るし、あくまで口パクなしのダンスパフォーマンスに関心がある人は生配信の方で楽しんでもらえる。 加えてやっぱりリアルタイムでリスナーとのコミュニケーションを取れるのが生配信の醍醐味であり大事な要素。 投稿頻度って大切だから動画、生配信ともに手抜きしたりせずに真心こめて制作しているんだけど、歌って踊るだけの動画投稿よりはリスナーと直接対面する生配信の方がその日どんなことを
last updateLast Updated : 2025-12-18
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第20話 急展開

 一度わたしの収録を見学した我が姉妹たちはすっかりはまってしまったのか、以降暇があれば必ず見に来るのが当たり前になった。 わたしも配信を始めてから家族と過ごす時間が減ってしまっていたのを気にしていたので、ずっとそばにいてくれてその後感想なんかも言ってくれるし、みんなとのコミュニケーションが取れるようになって大歓迎だ。 ただ、見学の条件として宿題や課題を必ず済ませることという条件を付けたので、高校や中学の宿題と違ってより分量のある専門学校の課題をこなさないといけないより姉は時間のかかる課題の時は泣く泣く部屋にこもっている。 そんな中で一番熱心に見学に参加しているのがかの姉。 映像編集に興味があるみたいで、わたしが編集しているのを見ているだけでなく独学でいろいろ勉強していたようで最初はいろいろとアドバイスをしてくれたりしていたが、そのうち編集を肩代わりしてくれるようになっていった。 それがまたわたしの編集するものよりも出来栄えが良かったりするもんだから、そのへんのセンスがわたしではかの姉にはおよばないんだろう。 ま、なんでもかんでも自分で完璧にできるわけでもないから、得意な人が手伝ってくれるならその好意には喜んで甘えておくことにしよう。 視聴者からも【最近編集がうまくなったけど誰かに手伝ってもらうようになった?】って聞かれるんだけど、わたしの技能が向上したとは思ってくれないのね。 今までのわたしの編集ってそんなにひどかったのかな……。やっぱり物事を美しく見せることに関しては女性の方が優れているのかもしれない。普段からの美意識の違いとでも言うべきか。 そうやってわたしの動画の質も上がっていき、生配信のやり方にも慣れてきたせいかチャンネルを創設して2か月もたち、梅雨の季節に入るころには登録者が10万人を超えた。 当面の目標は100万人だからその10分の1とは言え、短期間でここまで増えたのは十分に快挙と言えるし嬉しい。 10万人が一カ所に集まったらどれくらいの規模になるかなんてなかなか想像も難しいくらいの数字だ。  Vtuberの個人勢でここまで勢いよく登録者が増えていくのは珍しいようで、10万人突破記念の生配信のときにキリママを始めいろんな人からお祝いと感嘆の言葉をいただくことができた。 人気が出るということはわたしの歌とダンスが認められている
last updateLast Updated : 2025-12-18
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