All Chapters of 雪の精霊~命のきらめき~: Chapter 31 - Chapter 40

110 Chapters

第31話 リミッター解除

 翌日朝。「あれ?声が出る」 別に特段低い声が出るというわけでもない。 のどの違和感もすっかり消えてしまっている。 一番わかりやすい変化のはずの喉仏は出てくる気配もなく相変わらず握れば折れてしまいそうな華奢な首のまま。 あれぇ?恥ずかしがり屋さんなのかな? ????の状態のまま、いつものように朝食の用意をしていると両親が起きてきた。「おはよう!ねぇねぇ、最近喉の調子が悪かったから昨日病院に行ったでしょ?そしたら声変わりって言われたんだけどわたしの声ってどう変わった?自分ではよくわからなくて」 2人とも黙って聞いていたが、わたしがそう尋ねても顔を見合せ首をかしげるだけ。「どこが変わったのかわからないんだが……」 やがてお父さんがポツリ。「本当に声変わりだったの?喉仏も出てないじゃない」 お母さんも。 2人に声を揃えてそう言われるとますます自分ではわからなくなる。「でもお医者さんには声変わりですねってはっきり言われたんだけどなぁ」「まぁ様子を見てれば?そのうち本当に声が低くなっていくかもしれないし」 呑気だな。それにしてもそんなあいまいなものなの?声変わりって。 やがて仕事に出かける両親を見送って、そろそろ姉妹たちを起こしに行く時間。いつも通りより姉の部屋をノックするけど当然朝から返事をしてくるはずもない。 部屋に入りより姉が寝ているそばに寄って声をかける。 それはいいけど、いい加減弟に寝姿を見られることを恥ずかしいと思ったりしないんだろうか、この人たちは。「より姉~朝だよ。起きなさ~い」「ん~ゆき~。いつもかわいい声だぁ」 いつもときたか。 寝ぼけた状態で変わらないって思うなら本当に同じと思っているんだろうな。 そしていつも通り布団に引きずり込まれそうになるのを阻止してさっさと目を覚ましてもらい、質問する。「わたしの声、本当にいつ
last updateLast Updated : 2025-12-21
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第32話 はじめての体育祭

 長かった夏休みも終わり、2学期が始まる。 厳しい残暑がしばらく続くが、ジリジリと照り付ける太陽も日陰にいればその攻勢をしのげるくらいの強さにまで落ち着いたころに我が校の体育祭は行われる。 この運動会や体育祭と言う行事も日本ならではのものだということをアメリカに行って初めて知った。何事も外側からでないと分からないものというのはある。 足の速さには結構自信があったので、クラス対抗リレーの選手に選ばれた。 生徒はそういった他薦で決まる競技の他に自分で好きな競技を選んで参加する権利がある。 最初は飴食い競争を選んだのだけど、わたしが顔を突っ込んだ箱が争奪戦になって血を見るという意見が出て却下されてしまった。 楽しそうだから参加したかったのに。 そして妥協して選んだのがパン食い競争。 なんか食べ物関連の競技ばかりで食いしん坊みたいだけど、楽しそうって思ってしまったんだから仕方がない。「ゆきちゃんがパンに飛びついてる姿を想像したらかわいい~」 文香がそんなことを言ってるけど、かわいいか?どうもイメージに齟齬があるような気もするけどまぁいいか。 どうせ参加するんだから楽しませてもらおう。 もうひとつクラスメート全員から懇願されて引き受けた役割がある。 応援団長だ。 なかなか男らしくていいじゃないかと快く承諾した。 それが罠ともしらずに……。 運動することは大好きだけれど、体育祭の練習と言うのは正直言ってつまらない。 プログラムの順番とか待機する時間とか行進の練習なんて一度やれば十分じゃない? 他の生徒を見ると不満をこぼすこともなく黙々と指示に従っている。こういった日本の非合理性への理解に苦しむのはアメリカに染まってしまっている証拠だろうか? 授業の合間に挟まれる煩わしい予行演習もようやく終わって体育祭本番を迎えた。 中学の体育祭は初めての経験なのでワクワクしている。 それはあか姉やひよりも同じのようで、
last updateLast Updated : 2025-12-22
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第33話 秋の夜長

 わたしはまたバルコニーに出て空を眺めている。 体育祭も終わり少し経つと朝晩はすっかり冷え込むようになってきた。 24節気でいうとまもなく『霜降』で、文字通り霜が降りてくるようになる時期だそうだ。 地球温暖化の影響かさすがにこの時期に霜が降りることはないものの、夜になればさすがに肌寒い。 体育祭以降はこれといって大きな学校行事もないので、わたしにとってはVtuberとしてしっかり活動ができる貴重な時期。 配信活動の方も順調そのもので、先週登録者120万人突破記念の配信をやったばかり。 年内には150万人くらいはいきそうな勢いだ。 数字だけで見るとたった4文字の無機質な記号だけど、実際120万人というのはものすごい数の人たちがわたしを応援してくれているということだ。 同時接続も常に最低50万人以上をキープしていて、わたしの動体視力をもってしてもコメ欄の流れを追うのが難しいときもあるくらい。 たくさんの応援をいただくことには感謝しかない。 どうやったらこの感謝を伝えられるだろうか、恩返しができるだろうかと思い悩んでしまう。 思えば贅沢な悩みだ。最初はひとりでも多くの人にわたしの歌声を届けられたらそれでいいと思ってやってきたのに、今ではたくさんの人の支持に対して恩返しをしたいなんて言うことで悩んでいるのだから。 秋の夜長は人を感傷的にしてしまうのかもしれない。 いつものように夜空の何もない真っ暗な部分を凝視しながら思いを馳せる。 毎回想像することは同じ。 そこにはどんな恒星が存在しているんだろう。 その大きさは?色は?光の強さは? 色はその星の温度で決まる。低い方から赤、オレンジ、黄色、白、青。 寒色の青が一番高い温度と言うのも面白い。 情熱的な人ほどその思いを心に秘めているかのよう。 大きさはその時の星の状態によって変わるので単純比較はできない。 中くらいの星であっても寿命を間近に迎えた星は大きく膨らんでいく。 赤色超
last updateLast Updated : 2025-12-22
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第34話 『YUKIの応援ありがとう恩返し企画!』抽選

 直接募集するのは次のライブ配信の時でいいとして、まずはSNSで募集をかけないと。「えっとなんて書けばいいんだろ?タイトルはコラボ相手募集中でいいか」 ワクワクした気持ちを抑えながらSNSに投稿する文の内容を考える。 きらりさんがわたしにしてくれたように、誰かとコラボすることでその人の飛躍のきっかけにでもなれればそんなに嬉しいことはない。 それこそみんなを幸せにする雪の精霊にとっては面目躍如ってもの。 まずは最初は当然のことだが歌ってみたでもオリジナルでもいいので、歌をメインとしたコンテンツであることが最低条件だな。 ハードルを上げてダイヤの原石を見逃してしまっては意味がないので、チャンネル登録者数は問わないことでいいだろう。 ひとりで活動している人でもグループ活動していてもオッケーと。性別も問わず。 ただあんまり遠くに遠征してしまうとまたより姉が怒るし、みんなのお世話もできないので近辺に住んでいるかもしくは遠征してきてもいいよという人に限る。 あと配信のスケジュールはこちらに合わせてもらって土曜日の21時配信。 この時間の配信だと遠方の人の場合お泊りになってしまうので、わたしのように中学生にとっては難しい条件になってしまう。だけどこればっかりは仕方がない。 コラボ企画もこれ1回こっきりにするつもりはないので何年後かにはわたしの方から遠征できるようにもなるだろう。 申し訳ないけどそれまで待ってもらおう。 そして応募が複数きた場合は抽選で選ぶ。今回は3人まで選ばせてもらって順番にコラボさせてもらおうかな。 条件面はこんなもんかな?事前打ち合わせは電話で済ましてしまって大丈夫だろう。 これぞ題して『YUKIの応援ありがとう恩返し企画!』 わかりやすく短文にまとめ、文面の最終チェックをしたら投稿ボタンをぽちっとな。 どれくらいの応募が来るかな。 10人くらい?抽選だから外れてしまった人は可哀そうだけど、残念ながらわたしの体はひとつしかないからなぁ。
last updateLast Updated : 2025-12-23
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第35話 『YUKIの応援ありがとう恩返し企画!』打ち合わせ

 3人の当選者とDMで連絡先を交換して、その後打ち合わせも兼ねていろんなおしゃべりをしたいなと思ってスマホを手に取る。 Vtuberをはじめてからの出来事やこれからどうしていくかの展望、今回の『YUKIの応援ありがとう恩返し企画!』を思いついたきっかけなど。 話したいこと、聞きたいことはたくさんある。 最初に連絡した水音紡さんは23歳と10コも年上だけどとっても明るくて人懐こい感じがして、なんだかひよりを連想してしまう。 年上の人に妹を重ね合わせるのは失礼かな。 朗らかな笑い声と快活な声を聞いていると太陽みたいな人だなって思ってしまい、いつも笑顔で元気なひよりとかぶってしまうのだからしょうがない。うん。 わたしとのコラボをとても望んでくれていたみたいで、当選したことが余程嬉しいらしく終始大興奮。 とにかく熱量がすごい人だ。 興奮しながらわたしの魅力について語ってくれるもんだから、それを聞かされている本人としては恥ずかしいやら照れくさいやらで顔が熱くてたまらん! でもわたしのことを応援してくれているのがすごく伝わってきて、純粋に嬉しい。 いろいろと話したいことはまだあったけど、もう遅い時間になってしまったのでお互い後ろ髪を引かれながらも通話終了。 その後、紡さんが運営するチャンネルを教えてもらってしばらく聞いていた。 こうやって画面上で歌っている姿を見ると、この人も同じVtuberなのに大切なリスナーさんのひとりなんだなーと思ってなんだか不思議な感じ。 チャンネル登録者数は22万人。 けっこうな人気なのにコラボに応募してくれたんだ。 歌声は本人の性格を反映したかのように元気で声量もすごくて、表現として正しいのかわからないけどとにかく圧がすごい。なんというかロックだ。 歌唱力の方も文句なしに上手くて特にロングトーンのピッチコントロールと伸びには鳥肌が立った。 わたしとは全く違うタイプながらとても勉強になる。 全く毛色の異なる2人での掛け合いはどんなものになるのか今から楽しみだ。
last updateLast Updated : 2025-12-23
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第36話 『YUKIの応援ありがとう恩返し企画!』開幕!

「はじめまして、YUKIです。紡さんですよね」「ゆ、ゆきさん!?…………はぁ~~~~」 もう何度目だろう、このやりとり。「驚かせてしまってごめんね。そりゃ男の子だって言ってるのにこんなナリじゃ驚くのも無理ないよね」「いえいえ、とんでもない!いやぁ、かわいい男の子なんだろうなとある程度は思っていたけど、それにしてもここまで予想の斜め上をいかれるとは……」 斜め上ってどういうことだろう。わたしってなんかおかしな方向に行ってる?「今日1日よろしくね!今からもう楽しみ」 考えても仕方ないのでスルーして今日の抱負を語り合う。 お互いの持つものを全てぶつけ合って、わたしも紡さんも双方がレベルアップできるような、そんな配信にしたい。 それがわたしなりに考えた恩返し。 全員にしてあげられるわけじゃないから微々たるものだけど。 だけど見ている人の中に同じ歌をメインに活動している人がわかったし、その人たちにとってもいい刺激になればなと思う。 ちなみに紡さんはわたしよりもけっこう年上なので最初敬語で話していたんだけど、「そんなのいつものゆきさんらしくなくてイヤだ!」と駄々をこねられてしまったのでフランクに話すようにしている。 自分は「ゆきさん」って言うくせに。 紡さんとのコラボは予想していた以上に盛り上がった。 紡さんが歌うわたしの曲は彼女の持つ圧倒的な熱量がそのまま反映されるのか、全く別の歌かのように力強い曲にアレンジされていた。「すごい、ここまで変わるなんて!」「んふふ~伊達にゆきさんのファンやってないからねぇ。ゆきさんの曲は全曲歌いこんでるよ~」 紡さんは「自分で作詞作曲する才能なんてないから」とのことで歌ってみたを中心に活動してるんだけど、その熱量はしっかりリスナーさんにも届いているようでオリジナル曲はないにも関わらず登録者22万人。 全部見せてもらったけど本当にわたしの曲は全曲あ
last updateLast Updated : 2025-12-24
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第37話 『YUKIの応援ありがとう恩返し企画!』敵意

 雪乃さんとのコラボも神回認定で終わり、この企画のお相手はレイラさんを残すのみとなった。 紡さんの時と同じく雪乃さんとのお別れにも寂しさはあるけど、いつまでもそれに浸っているわけにもいかない。 せっかく応募してくれて、その中から選ばれた3人だ。 その全員に同じ熱量で向き合うのが当たり前だし、誰に対しても平等に接するのがわたしの矜持でもある。 そう思い自室のベッドに腰掛け、レイラさんのチャンネルを開き内容を確認する。 歌の内容はわたしと同じスタイルでオリジナルと歌ってみた、そして生配信といったコンテンツが並んでいる。 登録者数は66万人。新人Vtuberとしては十分な数字だ。 コラボを望む理由がよくわからない。 わたしを好きだから?自分自身に刺激を与えるため?それとも登録者数のさらなる増加を狙っての事か。 それにしては打ち合わせ時、電話越しの対応にそこまでの熱量は感じられなかった。 まぁそれでもわたしとのコラボを望んで応募してくれた人だ。 疑問はいったん横に置いておく。 先の2人の時にもやっていたことだけど、コラボに対して全力を尽くすためには相手の事を知る必要がある。 歌い方や声の質、声量、歌う時の癖などを知っておかないと息の合ったコラボは実現しない。そう思い最初の曲を再生した。「最初の2人よりも上手い……」 それ以上ゆきは何も言わず、黙って全ての曲に耳を傾けた。  コラボ当日、約束の時間より早めに来ていたわたしは待ち合わせ場所でひとり考えを巡らせていた。 今までは2人ともほぼわたしと同じくらいかそれよりも早く来てたんだよね。 紡と雪乃、2人の熱心さを思い出しくすっと笑みをこぼす。 別に約束の時間まではもう少し間があるし、遅刻をしているわけではないので怒っているわけでもないしその道理もない。 考えていたのはそのようなことではなく、ただその差について。 歌唱のテクニックに関しては抜
last updateLast Updated : 2025-12-24
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第38話 『YUKIの応援ありがとう恩返し企画!』フィナーレ

 ステージに立つ。そして軽く深呼吸。 やがてレイラさんの曲が始まる。 それに合わせて自分なりのアレンジを効かせて歌い上げていく。 最初は余裕の表情を見せていたレイラさんだが、徐々にその表情が驚愕に変わっていく。 当然だ。プライドを傷つけるだろうけど仕方ない。 今の彼女には荒療治が必要だ。 わたしに才能があるという言葉は否定しない。わたしはそれを神様が与えてくれたギフトだと思っているから。 だけど才能があるからといって努力をしないというのは大間違いだ。 わたしが今まで聞いてきた曲の量、声をどのように出すかを研究し練習してきた時間、あらゆるダンスをマスターするべく費やしてきた時間まで否定されるのは我慢ができない。 それを証明するため、今回はテクニックだけに注力して歌い上げた。 勉強して身につけたものを発表する論文のようなものだ。 曲が終わり、マイクのスイッチを切るころにはレイラさんの表情は完全に驚きに変化していた。 わたしが隣に戻っても反応すらしない。言葉を発することもない。「ふぅ。リスナーさん達、今回のゆきの歌声どうだった?」【すごいとしか言いようがない】【こんなにテクニックがあったなんて】【レイラより圧倒的】【こんなのまだ隠し持ってたんだ】【ほんと底なしだね】レイラさんの時以上の賞賛の声が並ぶ。レイラさんはそれを見て唇を噛む。「ありがとね、みんな。でもね、いつものわたしと比べたらどうだったかな?」 わたしが一番聞きたかったこと。 そしてレイラさんに伝えたかったこと。【なんか物足りない】【いつもの震える感覚なかった】【ゆきちゃんの歌声はいつも心に響いてたのに、それがなかった】この意見がある意味歌というものの本質であり、レイラさんに欠けているもの。「それじゃ、連続になっちゃうけどもう一曲わたしがいっちゃうね」 茫然自失といってもいい状態のレイラさんを置いてわたしはそのまま配信を続けていく。 今度は小手先のテクニックなんかに頼らない、い
last updateLast Updated : 2025-12-24
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第39話 クリスマスラバーズ①

 大盛況だった『YUKIの応援ありがとう恩返し企画!』が終わったころには世間はすっかりクリスマスモード。 あちらこちらに煌びやかなイルミネーションが施され、見慣れたはずの街にはどこか幻想的な雰囲気が漂ってる。「さみー!」 寒さに弱いあたしと違って、ゆきは元気だ。「日が沈むのもすっかり早くなったね」 そう言って振り返り、あたしに微笑みかける。 キレイだ……。 白のファーコートに身を包み、スキニージーンズでその脚線美を惜しげもなく披露しているゆきの姿には通行人皆の視線が釘づけだ。 当の本人はもう慣れたもんで気にする素振りすらない。 クリスマス仕様に彩られた街とゆきの組み合わせは見ているものをうっとりさせるほどにマッチしている。 さすが雪の精霊ってところか。 これで本当に雪でも降ってたら背中に羽根が生えている幻覚でも見てしまいそうだ。「寒いの苦手なの知ってるだろ~。早く買い物すまして帰ろうぜ~」 明日はクリスマスイブ。 そしてあたしはゆきと2人で買出し係としてこの寒い中商店街を歩いている。 ゆきと2人きりというのは思いがけないラッキーチャンスだけどとにかくさみー!「より姉ってほんと寒がりだよね。ほらマフラー貸してあげるからもうちょっと付き合って」 その細い首に巻いていた赤いカシミアのマフラーがわたしにかけられ、ゆきが丁寧に巻いてくれる。 顔が近い……。 相変わらずキレイな顔してるよなぁ……。キスしたい……。 って何考えてんだ、あたし! ボーっとゆきの顔を眺めていたらそんなことを考えてしまって顔が熱くなる。 巻かれたマフラーからゆきの香りがして余計に顔の熱が上がってしまう。最近のあたしは変だ。 ゆきとただ一緒にいるだけでドキドキしてしまうし、今みたいな近距離にゆきがいると逃げ出してしまいそうになる
last updateLast Updated : 2025-12-25
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第40話 クリスマスラバーズ②

 最初に見た時、とてつもない衝撃を受けました。 お人形さんみたいにかわいいという表現がありますけど、そんなの生ぬるいです。 同じ人類とは思えないほどに整ったその美貌はまさに芸術作品のようで見たものの心を瞬時に奪ってしまいます。 まさに一目惚れというやつでした。 小さいころにお母さんを病気で亡くし、家族と言えばお父さんと妹の茜だけでした。 ある日突然、お父さんから家族が増えると告げられた時は驚きました。しかも一気に4人も増えるというじゃありませんか。 新しいお母さんに、私より年上のお姉ちゃんが1人、そして弟と妹ができると聞いて最初に思ったのは賑やかになるだろうなということ。 一気に倍以上に増えるんですから。 そしてやってきたのが可憐を絵に描いたような男の子だったんですから、心を奪われて当然というものです。 おまけにお姉ちゃんも一番下になる妹もかわいいときたら歓迎しないはずがありませんね。 そして始まった両親と5人姉弟での共同生活。 ゆきちゃんはその見た目どおり心の中まで美しく、最初の方こそわたし達に気遣って他人行儀な所もありましたがすぐに打ち解けてとても仲良しに。 心を開いたわたしのかわいい弟はとても感情が豊かで気配り上手。 それでいて自分には厳しくストイックな面もあり柔道に合気道、時には空手にも打ち込みアメリカに渡ってからはマーシャルアーツも習得し、そして何よりも大切にしている歌とダンス。 全てにおいて決して手を抜くことなく努力を重ねる姿はその可憐な容姿に反してかっこいい姿として目に映りましたとも。 人は彼の事を安易に天才などと呼びますが、確かに多様な才能にあふれており運動神経も人並外れていますが、その実力はただそれだけのものではありません。 天才は天才でも努力の天才と言っていいでしょう。 そして成績も優秀でまさに文武両道を体現した存在。 そのうえ料理の腕も抜群でわたし達姉妹全員が舌を巻くほどの腕前。 ハッキリ言って完璧超人です。 しかし我が愛し
last updateLast Updated : 2025-12-25
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