All Chapters of 雪の精霊~命のきらめき~: Chapter 61 - Chapter 70

161 Chapters

第61話 生徒会長ゆきの初仕事

 本番まで日がないので、翌日さっそく昼休みに校内放送で各部活の代表に視聴覚室まで集まってもらうようお願いした。 部活勧誘会の件なので不参加を決め込む部活はないだろうと思う。 どこも新入生獲得に必死だもんね。  そして放課後。想定通りに全部活の代表者が一堂に会した。こうやって集まると部活の数がどれくらい多いのか実感できてなかなかに壮観だ。 でもこの数の部活が限られた数の新入生を取り合うのだから、白熱してしまうのもわかる。 ひとまず生徒会は会議の進行役に徹することにして、ホワイトボードに今日の議題を書き出していく。『部活勧誘会における屋外使用権の公平な分配について』 わたしご自慢のキレイな字でそう書き出すと主に運動部の方からざわめきが起きた。 既得権益として屋外を占有してきた立場からすれば権利侵害に映ってしまうのだから当然と言えば当然のことだろう。「まずこの議題の発起人でもある華道部の錦山灯先輩から詳しい内容説明、お願いできますか?」 呼びかけに応えて錦山先輩がキレイな所作で立ち上がる。何をしても絵になる人だな。「ご紹介にあずかりました、錦山灯と申します。以後お見知りおきを。 さて、議題の趣旨でございますが、昨今文化部に所属する部員の減少により中には存続すら危ぶまれる部活が多数存在することを鑑みまして、新入生の部活勧誘会において文化部にも校門、校庭などの屋外での宣伝活動を認めていただきたく今回発起人として議題を提案させていただいた次第であります」 相変わらず時代がかった話し方をする人だ。扇子で口元を覆いながら話してくれたら貴族っぽくて完璧なのに。 いけない、バカなことを考えていたら吹き出してしまいそうだ。 吹き出しそうになるのを肩を震わせながら必死に耐えていると、予想通り運動部の方から反対意見が出てきた。「文化部が屋外使うってことは屋内に回される運動部がでてくるってことだろ?運動部が学校の廊下で勧誘とか何しろって言うんだよ」 発言したのはサッカー部の
last updateLast Updated : 2026-01-05
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第62話 ゆきのストライクゾーン

 生徒会のSNSが開設されて、いろんな問題が持ち込まれるようになった。 たいていは階段の手すりのネジがゆるんでぐらぐらするとか、トイレットペーパーが切れていることが多いとかの些細な問題だったからひとつずつ確実に解決していったんだけどね。 本当に何ひとつ漏らさず対応していたら生徒間で評判になったらしく、捨て猫の里親を探してほしいとか、近所の飼い犬がリードにつながれていないので何とかしてほしいとか学外の事まで相談されるようになった。 さすがにこれはマズイことになりそうだったので、SNSに学内で解決できることに限るって注意書きをしたところ、どうにかその類の問題が持ち込まれるのを防ぐことはできた。 それは良かったんだけど、次に持ち込まれた相談にわたしは頭を抱える羽目になってしまう。 恋愛相談。しかも生徒会長直々の回答をご指名。 恋……愛……相談? なにそれおいしいの? いやいやいやいやいやいやいやいや。おいおいおいおいおい。 この恋愛偏差値全国最下位のわたしに何を相談しようというのか。 何かの間違い?誤送信?このまま闇に葬る? 待て待て。 とりあえず落ち着けわたし。 まがりなりにも15年以上生きてきたんだ。恋だの愛だのについて何も知らなくてどうする。 分からなければ勉強すりゃいいんだ! こうして混乱したわたしは本屋さんで恋愛ハウツー本を買いあさっている姿をひよりに目撃されることになってしまった。 いやぁぁぁぁ! 「まだ笑ってるの!?」 家についてもまだ笑ってるひより。「だって~!ゆきちゃんが、ゆきちゃんがれん、れん『恋愛学校』って!ぶふぅ!」 女の子がそんな笑い方しちゃダメ!ってかそろそろ死ぬよ? より姉たちまでニヤニヤしちゃって……。 事情はちゃんと説明したのに。「生徒会長が生徒の相談に『経験ない
last updateLast Updated : 2026-01-05
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第63話 ゆき先生の恋愛相談。そしてヤツの再来!

「おはよう、みんな」 今日も姉妹たちを起こして回ったんだけど、なんだかいつもより甘えかたがエスカレートしていたような気もする。 そして全員揃っておりてきたのだけど、なんだかみんなそわそわしてる。「どうしたの?朝ごはん出来てるけど、あんまりお腹空いてない?」「いや、そうじゃねーんだ、そうじゃ。ただちょっとな、ハハ」 より姉、顔が赤いよ?「本当に?なんか顔が赤いけど体調悪いんじゃないの?」 より姉の顔を覗き込むと「ひゃん」というかわいらしい声を出して飛びのかれた。 わたし、なんかした? よく見ると他のみんなも様子がおかしい。 かの姉はずっと髪の毛を指でくるくるしてるし、あか姉は一点をじっと見つめたまま動かない。 ひよりはやたら上機嫌でそわそわして……ってこれはいつものことか。「みんな本当にちゃんと食欲はあるんだね?無理して食べたら吐いちゃうからね」「ゆきのご飯たべないなんて選択しはない」 あか姉が最初に席についた。続いてみんなも席につくけど、全員なんだか顔が紅潮してるようなきがするんだよなぁ。 風邪が流行ってるとかじゃなければいいんだけど……。 でもご飯の食べっぷりを見ているといつもと同じだったので安心かな。「ごちそうさまでした」 全員揃って食べ終わり、食器の片づけ。わたしが進学したことで朝登校する時間が姉たちと一緒になった。 ひよりはもっとゆっくりできるんだけど、とちゅうまでゆきちゃんと一緒がいい!というので結局みんな同じ時間に家を出ることになっている、 ひより、こんな早くに登校して時間を持て余してないのかな。 本人がご機嫌なのであまり突っ込まずに、みんな揃って「いってきます」 心配な面はあるけど、朝こうやってみんなで出発できるのもいいよね。 より姉は午前の授業がない時はお見送りしてくれる時もあるけど。いいなぁ専門学生。 途中でひよりと分かれて、より姉も駅の方へ向かったので学校へ向かうのはかの姉とあか姉とわたしの3人。
last updateLast Updated : 2026-01-06
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第64話 風紀委員参上!

 春の陽気な空気が爽やかな早朝。 校門前に立つわたしと、眠そうな谷村副会長。 そして威風堂々と仁王立ちしている2年生の風紀委員長の御手洗薫(みたらいかおる)先輩と風紀委員たち。「おはようございます!生徒会長の広沢悠樹です!気軽にゆきと呼んでくださいね!今日はよろしくお願いします」 こちらは1年生ということもあり、先輩の顔を立ててこちらから元気に挨拶をした。 しかし、御手洗先輩はこちらを一瞥したものの、返事はない。 おやおや? なんだか敵視されている感じ? はじめてレイラさんと会った時のあの視線を思い出した。「御手洗委員長!まだまだ若輩者ですのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますね!」 ダメ押しでさらに下手に出てみた。 するとようやくこちらに向き直り、わたしの顔を正面から見据えてきた。 ちゃんとわたしの顔を見たのは初めてなのか、一瞬目を瞠っていたけどすぐに表情を引き締めてきっぱりと言い切った。「あなたが噂の1年生で会長になった広沢さんですね。 先に行っておきますが我が校では伝統的に生徒会と風紀委員は犬猿の仲なんです。私どもも慣れあうつもりはありませんのであしからず」 慣れあうつもりがないのはいいとして、その理由が「伝統的」ねぇ……。 ま、今日は顔合わせみたいなものだしことを荒立てる必要もない。 そんな「伝統」なんて気にもしないけど。「そうですか!それではこれから仲良くやっていきましょう! さっそく生徒が登校してきたようなので業務に映りましょうか。 よろしくお願いします」 あえて仲良くしましょうとわたしが言ったことに面食らったような顔をしていたけど、今は無視無視。 とりあえず目の前の仕事に集中する。  登校時間なんてそんなに長いものではないのですぐに予鈴が鳴り、遅刻者の処理は生活指導の先生に任せてわたし達は撤収。「今日はどうもあ
last updateLast Updated : 2026-01-06
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第65話 対立と和解

「それでは、須藤、石口、村山の3名を1週間の停学処分として職員会議に提出しようと思います。誰か反対の意見がある人はいますか」 淡々と事務的に、ゆるぎない決定事項を告げるかのように処分内容を読み上げる御手洗委員長。 そこに一切の感情はなく、停学を受けた生徒が今後どうなるかなどについての配慮も感じられない。 しかも停学なんかに値しないくだらない理由で、だ。「生徒会は全員一致で反対です」 予定調和で決められた判決に気を遣う必要もないので遠慮なく反対を申し出た。 予想通り敵意がたっぷり込められた反論が返ってくる。「いじめは今全国的にも問題になっている由々しき事態です。停学処分は妥当どころか穏当ですらあると思いますが、生徒会はどういった根拠で反対をされるのですか?」「根拠は根拠がないからです」 禅問答のような返しをしてしまった。でもその通りなんだから仕方がない。「風紀委員が調べた内容に根拠がないというのですか?」 また敵意むき出しの目で見てくる。そんなに睨まなくても。 わたしあなたの大事なプリン取って食べたりとかしてないですよ?「風紀委員は加害者とされる生徒の方々からどういった証言を得て停学という判断に至ったのですか?」 質問に質問で返すのは申し訳ないが、そこをハッキリさせないと話が進まない。「3名はハッキリ言いましたよ。3人がかりで暴力を振るったと」 勝ち誇った顔しちゃって。 思い込みの正義で突っ走る人って怖いな。冤罪でもここまで自信を持てるんだから。「それは事実であって真実ではないですね」 またもや哲学的な答え。 別に好きで難解な言い回しをしてるわけじゃないからね。 無駄なやりとりをしていても時間がもったいないので生徒会が調べた事実を一気に述べることにした。 元々4人は仲のいい友人関係で、同じ道場に通う仲間でもあった。 その中で鬼嶋先輩が唯一初段の昇格試験に合格し、黒帯を取得。 それで得意
last updateLast Updated : 2026-01-07
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第66話 高校体育祭デビュー

 入学してしばらくしたらいきなり体育祭。 中学の体育祭は秋にあったが、高校では春に済ませてしまうらしい。 秋には文化祭があるのと、受験準備に入る生徒への配慮からだろう。 高校初の体育祭ということでわたしはたくさんの競技へ参加することに。 面白そうな競技には片っ端から手を挙げてエントリーしていった。 高校に入っても飴食い競争があったので中学で参加できなかったリベンジと思って立候補したけど、中学時代と全く同じ理由で却下された。 なんでわたしが顔を突っ込んだ粉くらいで血を見るんだか……。 そして依頼されましたよ、応援合戦の団長役。中学の時にチアガールの格好をさせられたアレだ。 結局3年生の時もあの格好をさせられて2年連続で恥ずかしい思いをした。 さすがにわたしも学習したので先にどんな格好でやるのかを確認した。 白と黒のだんだら模様の法被に中は黒のTシャツに黒の武道袴。ナニソレかっこいい!即断で引き受けた。 武道袴とは馬乗袴と同じくズボンタイプで足が左右に分かれている袴のことだ。女子学生が卒業式で着るようなスカート式のやつは行灯袴という。 武道袴なら合気道の稽古で着慣れているので動きやすい。 もうひとつ頼まれたのが仮装リレー。衣装はコスプレみたいなもんだというので、ハロウィンを連想したわたしは快諾。 そして後悔することになる。 中学での予行練習と違って高校の体育祭の練習は楽しかった。 応援合戦は紅白に分かれて3学年からの選抜メンバーで行うので、同じ組になんと先のいじめ事件の当事者4人が含まれていた。 彼らにはあの後何度か稽古をつけてあげて、武道の精神的な部分を叩きこんだので以前のようなくだらない諍いも無くなり今では元のような仲のいい友人関係に戻っている。 空手をやっている彼らと同じ組に選抜されたことでわたしの発案で応援合戦では5人で簡単な空手の演武を見せようということになった。 その練習を繰り返したのだけど、参加者全員元々基礎ができているので
last updateLast Updated : 2026-01-07
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第67話 コスプレとダンスパフォーマンス

 昼一番で開催されるのは、ハッキリ言ってネタ枠の仮装リレー。 コスプレをして走るだけということなので快諾したのだけど、どんな衣装を着るかについては当日のお楽しみと言われた。 少しの不安を抱えてはいるけど、手芸部が作ってくれるということなのであんまり無茶はしないだろう。 そんな甘い認識は儚くも打ち砕かれることになった。「マジで!?これ着るの?」 衣装を前にそれだけ言うのが精いっぱいで絶句。 うちの手芸部レベル高いな! あと、小耳にはさんだ話ではこの仮装リレーには風紀委員も絡んでいるらしい。 あんまり過激な衣装を着させてはダメだからという理由で風紀委員が絡むのはわかるが、どうも嫌な予感がしてならない。 最近の薫先輩の行動を見ていても不安しかない。 わたしの予感は嫌な方向で大当たりすることになってしまった。 他の生徒たちはナース服やチャイナドレスなど妥当な仮装ばかりだったのに。 わたしの出番が来た途端に音楽が変わった。体育委員もグルか! およそ学校のスピーカーから流れるには全く似つかわしくない『結婚行進曲』 そして風紀委員のメンバー総がかりで引いて行かれるレッドカーペット。 そこに登場するわたし。 着ている服は……もちろんウェディングドレス! さすがに髪型まで整えている時間はなかったけど、ヴィクトリアンスタイルのドレスにはふんだんにフリルが使われていて豪華の一言。 ティアラの上から透明のヴェールをかぶり、手にはブーケ。 どこからどう見ても花嫁だ。新郎はいないけど。 曲に合わせてゆっくり歩きだすと会場中から洩れる嘆息とどよめき。 あちこちでカメラのフラッシュがたかれ、まるで政治家の記者会見みたいな様相。 ふと父兄のほうに目をやるとより姉が鬼気迫る表情でカメラのシャッターを押しまくっていた。トランス状態だ。「キレイ……」「嫁に来て
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第68話 突撃!ゆきちゃん家の晩御飯!

 まさかこんなに早く来るとは思ってなかった。 仕事の調整だとか、今持っている仕事の目途がついてからとか普通そう考えるよね? どこの誰が次の日に来るとか予想する? 月曜が祝日なので3連休の中日、日曜日に2人はわざわざ電車を乗り継いでやってきた。 彩坂きらりさんと日向キリさん。 現在人気爆発中のVtuberと、わたしの絵を担当してくれたことによって人気急上昇中の神絵師さん。「配信終わってすぐに電話があった時はたまげたよ。『明日行く~』って、2人連続で」 さすがに急すぎたので何の準備もできていない。 もっと時間があったらちゃんとおもてなしできたのに。「ゆきちゃんひさしぶり~!」「会いたかったです~!」 2人して飛びついてきた。うわわ。 まったく聞いちゃいねー。 もう、2人とも子供みたいだよ?「それにしても早かったね?特にキリママは遠いから夕方くらいかなって思ってたのに。」 たぶんここまで来るのに新幹線から快速に乗り継いでも3時間以上はかかるはず。 なのに午前中に着くなんて一体何時の電車に乗ったんだ?「朝イチの電車に飛び乗ってやってきたのよ」 ウィンクしながらそんなこと言われても。夕べけっこう遅くまで話し込んじゃったよね?「大丈夫ですか?寝不足とかだったら仮眠してくれてもいいですからね」「絵師をなめたらダメダメ。3徹とか普通にやるんだから。今日は4時間も寝てから来たんだしピンピンしてるわよ!」 テンション高いなぁ。本当に徹夜明けとかじゃないよね?「きらりさんだって近いとは言えないんだから。大丈夫?」「ゆきさんに会えるだけで眠気なんて吹き飛んじゃうから大丈夫!」 そう言って2人ともスリスリしてくる。猫か。 そんなやりとりをしていたら背筋がぞくりとした。 背後から殺気! 振り返ると、より姉が腕組みをして玄関に立っている。
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第69話 風邪ひいちゃった

 きらりさんたちの来訪から数日たって金曜日。 朝起きて自分の体の異変に気が付いた。 なんだか体が重い。 おまけに寒気がする。 やばい、これは風邪を引いたかも。 でも動けないほどじゃないし、学校を休むのもイヤだ。 それに明日は配信もあるし、風邪なんて引いてる場合じゃない。 そこまでしんどいわけでもないし、いつも通り生活をしていればそのうち治るだろ。  パパっと朝食を作って両親を送り出し、それから日課となっている姉妹たちを起こして回るお仕事。 いつも最初はより姉から。「より姉~起きて。朝ですよ~」 もぞもぞと動くより姉。いつもの展開だとこの後……。「ゆき~」 やっぱり腕が伸びてきた。風邪をうつすわけにはいかないのでひらりとかわす。「ふぎゃん!」 空ぶったより姉はそのままベッドから落ちた。しかも顔から。痛そう。「ごめん、より姉!ついよけちゃって。大丈夫?」「今日は冷たいな~。いつもならもっと優しいのに……」 ごめんってば。でもとりあえず起きてくれたのでヨシとしよう。 次はかの姉。 かの姉の日課はおでこにちゅー。でも風邪がうつったらダメなので今日は封印。 めっちゃ駄々こねられたけど。 心を鬼にして無視を決め込み、あか姉の部屋に。 あか姉はちょっと強めにゆさぶらないと起きないんだけど、少しでも距離を開けようと腕を伸ばしてゆさぶったらいつもよりやりすぎたみたい。「ゆき、おはよウプッ」 吐きそうになってる。ごめん。 少し背中をさすってあげたら落ち着いたようなので最後はひより。 いつものごとくお姫様抱っこをせがんでくるけど、あの体勢だと顔が近いからダメ。 今日は趣向を変えてってことでおんぶしてあげたんだけど、それはそれで喜んでいた。&nbs
last updateLast Updated : 2026-01-09
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第70話 無理したらこうなった

 その日も次の日もわたしの熱は一向に下がらず、ずっと寝て過ごした。 姉妹たちも順番に看病してくれて、おかゆを作ってくれたり着替えを手伝ってくれたり。 とてもありがたい。 こういう時、ひとりじゃなくてよかったと思う。 ただひとつ、問題がある。 今日は生配信の日。 ずっと寝ていたので今日は病欠という告知も出来ていない。 突然のサボりはリスナーさんへの信用にかかわる。 どうにかしないと……。 夜はひよりが作ってくれたおかゆを食べた。一緒に用意してもらっていた薬を口に含んで水を飲む。「ありがとう、ひより。薬も飲んだし後はきっと明日の朝まで眠るからもう大丈夫だよ」「え、でもまだ熱高いし放っておけないよ」 もう優しいんだから。かわいいなぁ。そんなにそばにいたいのね。 でも今はそんなことも言ってられない。「ひよりも一晩中付きっ切りってわけにもいかないでしょ。それにもう電灯を消して真っ暗にして眠りたいからひより退屈しちゃうだけだよ」「そっかゆきちゃん暗くないと熟睡できないんだっけ。わかった。でもすぐ前の部屋なんだから何かあったら呼んでね」 ありがとう。ひより。お兄ちゃんは嘘つきです。ごめんね。「うん、それじゃおやすみ」「おやすみ、ゆきちゃん」 電気を消してゆっくりとドアを閉めてくれる。そして向かいの部屋に入っていく音。 あとは時間が来るまで待機。さっき飲むふりをして口に含んでおいた薬を吐き出す。 これ飲むと本当に眠くなっちゃうからね。 時間が来た。地下まで下りれば音は上にまで聞こえないから、そこに行くまでが勝負だ。 そ~っと。そ~っと。 抜き足差し足でゆっくりと階段を下りていく。家の中は静かなものだ。 姉妹たちがわたしの動向に目を光らせてるんじゃないかと警戒していたけど、すんなりとスタジオにたどり着いた。 重い体を引きずってステージ衣装に着
last updateLast Updated : 2026-01-09
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