All Chapters of 悪魔祓い(デビルブレイカー): Chapter 51 - Chapter 60

69 Chapters

第27話 愛を禁じられた男

一方、レミールを離れたカイル達。東の大国へ向かっていたが道が薄暗くなり、道中の野原でテントを張りながら野営の準備をしていた。テントを張ってから食事の準備をする為、先ほど道端で遭遇して狩った鹿の魔物と木に生えていた木の実などを使って料理しようとしていた。料理するのはエミルである。カイルとミーナは皿やコップなどの配膳をしていた。「出来たわよ。」エミルが作った料理を運んできた。大きな鍋には食べやすい大きさに切った鹿の肉と豆を、取ってきたぶどうやクランベリーの果汁(ワインの代用)を入れて煮込ませていた。ワインは入っていないのにぶどうとクランベリーによってワイン煮込みの様な香りがしており、とても食欲がそそられる。そしてレミールから持ってきた香辛料などがテーブルに置いてあり、味を好みに変更出来るように準備されていた。「え、良いのエミル?旅でこんな良い物食べて?」ヨダレを垂らしながら鍋を見つめるミーナ。「良いわよ。てか汚いからヨダレ何とかしなさい!」「いっただっきまーす!」そう言って3人は鍋の中から料理を取って食べていく。「う、美味い…」「美味しー!!てか、エミル凄くない?野営でこんな味出せるって天才だよ!」ミーナはグレンと旅をしていた時の野営ではパンとか木の実など本当に必要最低限のものしか食べれていない為、エミルの手の込んだ料理が最高の料理に感じていた。「確かに、限られた材料でこれだけの味が出せるなんて…鹿の独特の臭みも全然出てないしすげー食べやすい!」カイルも同じように料理の味に驚いていたが、それよりも好きな人の手料理を初めて食べられた事が一番嬉しかった。「そんな大袈裟よ!まだ沢山あるからどんどん食べて!」褒められて恥ずかしがるも、満更でもないエミルは嬉しそうな顔をしていた。後ろには使いきれていない鹿肉があった。「その余った肉はどうするの?」「今のお替わり分と明日のお弁当用、それから簡単だけど保存を効かせる為に塩漬けにするわ。それから、切り身にして風通しの良いところで乾燥させたら干し肉にも出来るわ。」「凄い!私、こんなにもエミルが料理得意だったなんて知らなかったわ。」「ずっと砂漠で過ごしてきたからね。こうやって食糧を確保しないと生きていけなかったから。」「じゃあ、あいつらはいつもエミルの料理を?」あいつらとはライクとニ
last updateLast Updated : 2026-01-09
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第27話 愛を禁じられた男②

アガレフは家の前で見送ってくれるリーナと、彼女に抱き抱えられているミーナの方を見た。 あの赤ん坊の頃に比べると少し大きくなったミーナ。金髪で青い瞳に綺麗な顔立ちが、どことなく母親であるリーナに似てきた気がした。 「じゃあ、行ってくる。」 「…うん。ずっと、待ってるからね。」 そう言ってアガレフとリーナは最後の口付けをした。 そして最後にミーナの方を見た。 「おとー。おとー。」 手を伸ばしながらお父さんと呼ぼうとしてるミーナ。その純粋無垢な瞳には、今日を最後に会えなくなるなんて微塵も思っていないのが分かる。 アガレフはミーナの額に手を当て、撫でながら言った。 「ミーナ。これからの人生、沢山の経験をするだろう。楽しい事や時には辛い事、上手くいかなくて何もかも嫌になる事だってある筈だ。」 「けど、例えどんな不幸に見舞われようと決して負けないで欲しい。自分が正しいと思った道を、素直に真っ直ぐ生きて欲しい。俺みたいな捻くれ者にはなるなよ、絶対にな。」 「ふぎゃー!!」 あまりのアガレフの圧が怖かったのかミーナは泣いてしまった。 「もう、アガレフ!圧が強すぎ!」 「す、すまない…つい、熱が入った。」 ミーナを泣かせてしまった事に怒られ反省するアガレフ。 全く!っと言いながらリーナはミーナを泣き止ます為にあやしていた。 「けど、今のうちに言っておきたかったから。俺の事を少しでも覚えて貰いたくて。」 「そうね。でも、流石にさっきのは難しい話だったよねきっと。」 「構わない。今のは我が子に対する俺の思いを伝えただけだ。」 心の中に少しでも残ってくれてたら嬉しいが、流石に1歳半。無理な話だ。 けど、真っ直ぐ正しく生きて欲しいは俺の正直な気持ちだ。リーナの様な優しい人になって欲しい。 そう願ったアガレフはミーナを抱えたリーナを抱きしめ。 「2人共、愛してる。必ず戻ってくる!」 そう言ってアガレフは家を出発した。 歩きながらアガレフは。 「絶対にお前を見つけ出し、呪いを解いてもらうからな。ベリエル!」 ベリエル。それはハイドの本名なのか、呪いを掛けた本人の名前を口にした。 残ったリーナとミーナ。 ミーナは3歳になってから会話が成立するくらいまで言葉が発達しており、よく父親の事を聞いてきた。 「おかーさん。おとーさんは?」 お父
last updateLast Updated : 2026-01-09
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第28話 太陽と月の邂逅

淡い桃色の髪の女性が南東に向かって歩いていた。この女性の名前はフィナ・プロミネンス。以前、グレンとカイルが南の大国シルフに到着した際に案内してくれたシルフの魔導兵の女性だ。南の大国シルフは12年間、王の独裁的な政治によって国民達は苦しめられていた。8年前、ネル・ナイトフォースの魔法により国民達の思考が無くなったが、ハイドに新たな思考を与えられた事により独裁政治に反対出来ない奴隷の様に仕向けられたのだ。しかし、その暗黒の時代はとある悪魔祓いの男とイフリークの騎士団団長によって終わりを迎え、シルフは多大なダメージを負うも再び平和への道へと進んでいた。現在、シルフは国の復興の真っ最中であるがフィナは1人シルフを出ていた。その理由は、故郷である太陽の遺跡に帰郷する為である。それはグレンとカイルがシルフを去りレミールに行ってから10日後の事だった。シルフ王から[王の証]を受け継いだフィナは新たな王として国の復興に尽力を注いでいたが、その日シルフの騎士団団長であるバグーラから話があった。「フィナ様。あなたは一度、故郷へ戻られてはどうですか?」故郷。それは太陽の遺跡と呼ばれる南の大国と東の大国の中間地点に位置する場所であり、フィナの生まれ故郷であった。フィナは魔導兵になってから国の為に毎日働き詰めだった為、一度も太陽の遺跡には戻っていなかった。更にハイドが居た頃は国から勝手に出る事すら許されていなかったのだ。「でも、私は新しい王としてこの国を1日でも早く復興させないと。」しかし、真面目なフィナは自分の都合で仕事を放棄しようとは考えていなかった。すると2人で話をしてる所に資材を運んでいたアイス屋の店長が声を掛けてきた。「まーた1人で抱え込んでんのかフィナ?」資材を片手で担ぐ店長の姿は本当にアイス屋で働いていたのか?と思えるくらい力仕事がしっくり合っていた。「お前は今まで意識の無い俺達を必死で守ってくれたんだ。お互い様だろ?それに、皆んなの国は皆んなで復興させていくから!」相変わらず肩の力を抜いてくれる様な事を言ってくれる店長。「まずは親父にお前の顔見せに行ってこい!それくらい、自分に我儘になっても良いじゃねえか!」「その通りです。しばらくの間は私が貴方の代理として働きます。」「バグーラ団長、店長。ありがとうございます。」フィナは涙を
last updateLast Updated : 2026-01-10
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第28話 太陽と月の邂逅②

フィナの謝罪に対して2人は口を開かず黙ったまま見ていた。月の民を沢山殺した仇が目の前にいるが、月の民殲滅戦を経験した魔導士で自分達にこれ程謝罪した人間をライクとニケルは見た事が無かった。それに、先程太陽の民達が2人を悪いイメージのまま野蛮だと言い放っていたのを見て庇ってくれた。このフィナという人が悪い人ではないという事は2人も理解していた。理解はしていた。「分かってるよ…分かってる…。この人が悪い人じゃない事くらい、分かってんだよ。」「頭ん中では分かってる…あんたも国に逆らえなかった奴だって。殺したくもないのに、俺達月の民を殺すしかなかった。あんたも国の被害者だって事くらい分かってんだよ…。」「でも…それでも俺は許せねえ。あんたら大国の人間を許す事は絶対出来ねえ!」震えながらライクは怒りを抑えようとするも、自然と涙が出てきた。月の民を殺された恨み、復讐心は決して消えない。でも、ライクは北の大国で出会った物乞いをしていた兄弟を思い出した。あの2人は生まれた時から最悪な運命であり、国に逆らって生きる事すら出来ない身分だった。そしてフィナも同様に国に逆らえない立場の人間だったのだと。ライクの心の中ではその許す許さないかの葛藤によって、心がグチャグチャになりどうして良いか分からなくなっていたのだ。「私があなた達にしてきた事は、到底謝っても許される事じゃないです。だから、どうか許さないで下さい。」無理に許されたい訳じゃないフィナはライクにそう言った。するとずっと黙って聞いていたグロードが口を開いた。「ハイド…隠れて暗躍する者…か。」と独り言を言いながら何か思いついた様な顔をしており、それに気づいたニケルが声を掛ける。「グロードさん?」「ん?ああ、すまん…それとフィナさん。ここからが本題なのですが宜しいですか?」グロードは再び話を切り出した。「この数年で世界は大きく動きます。勿論、それは悪い方向にです。更にもしかするとこの近い将来で東と北の大国同士で戦争が起こる可能性があります。」戦争。その言葉を聞いてフィナは固まった。北と東の関係が悪い事は世界中で知れ渡っている事だが、戦争と聞くと嫌な記憶によって心が締め付けられる。殲滅戦で経験した事が再び始まるかもしれないと想像したフィナは恐ろしくなった。しかし、今度の戦争は大国間同士の
last updateLast Updated : 2026-01-10
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第29話 愛情の欠落

これは愛を知らずに育ってきた男の話。彼はこれまでの人生の中で物心ついた頃から愛という物に触れる事なく生きてきた。ネル・ナイトフォース。彼は5歳まで北の大国の中心都市部にある貴族の家で奴隷として過ごしてきた。物心付く前から奴隷として仕えていたが、そこでは人権というものが存在しなかった。「おい、ゴミ!さっさとこの食器片付けろよ!」その屋敷の主である中年男は仕える奴隷に向けて済んだ食器を片付ける様に命令した。「…はい。」命令を受けて出てきたのは当時4歳のネル・ナイトフォースだった。彼は肌着同然の薄い半袖の服にヨレヨレのズボンを履いていた見窄(みすぼ)らしい少年だった。身体を洗わせてもらえない為、紫色の髪には洗い流せてない皮脂によって埃やフケがベタ付いていた。"ゴミ"。彼はこの屋敷でそう呼ばれており、呼ばれ過ぎてたせいで昔は自分の名前が本当にゴミなのだと思っていた程だった。更に身体を洗えない事によりネルの体臭は異様な臭いを放っていた。「うっ…くせーんだよ!ゴミが!」ネルより少し上の貴族の子供はネルの体臭に鼻を抑えながら蹴りを入れた。蹴られた事で食器を運んでたネルは転けてしまい、食器を全て割ってしまった。「何してんだよゴミが!その皿1枚どれだけ高いか分かってるのか?」「…すみません。」ネルは怒られても一切表情を変えることなく割れた皿の破片を素手で集めた。素手で触った手から血が出てもネルは痛みを訴える事なく全ての破片を回収する。「こいつは本当にゴミ掃除が似合うな!」「やれやれ。子供の頃から奴隷として飼い慣らせばそれなりに手際が良くなると思ったのに、得意な事はゴミ掃除だけか。全く…皿の片付けもまともに出来ないのかこのゴミは。」貴族の者達は皿の破片を集めるネルの姿を見ながら暴言を吐き散らした。また、ある時ではネルが掃除をしてる時も。「おい、ゴミ!お前本当にゴミ掃除する姿が似合ってるな!」貴族の兄弟である兄の方が玄関の床掃除をしてるネルを見つけてそう言った。そして兄の方はせっかくネルが掃除して集めたゴミを蹴って撒き散らした。「そんなにゴミ掃除が好きなら俺が手伝ってやるよ。だってゴミ掃除しか取り柄がないもんな。」「ついでにこれもやるぜ!」そして弟の方は何故持ってるのか分からないがポケットから生卵を取り出してネルの頭の上に割って乗
last updateLast Updated : 2026-01-12
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第29話 愛情の欠落②

そして次の日、月の民殲滅戦にてネルは新たに手にした"陰"の力を存分に使用した。"陰"の力は普通の空間魔法と違い、別次元の空間を新しく作り出す事が可能であった。更に"陰"の力に関連する力を全て使用出来るといった性能があり、その中でも[空間付与]という力は凄かった。その力は"陰"の力で作り出した空間の中に一定の条件を付け加える事が可能。例えば炎であれば閉じ込めた逃げ場のない空間の中で相手を焼き殺す事も可能。ネルは空間の中に他属性の力を付与する事で空間に相手を閉じ込め、回避不可能な条件を設定して月の民達を殺していった。そして命令通り月の民の中でも魔力が高そうな人達を片っ端からひっ捕えた。中には子供も居たが魔力が高そうだし良いだろうと思って馬車も乗せたが、しかし。「馬鹿はどっちだろーな?ライク!ニケル!外に向かって走って逃げろ!」「!?しまっ…」ひっ捕えた月の民達が馬車の中で反乱を起こした時だ。ローグと呼ばれる月の民の先導者と交戦していたネル。その際にローグは2人の月の民の子供2人を逃す為、ネルの首根っこを思い切り締めて動かない様に拘束した。ライクとニケルは己の全ての魔力を纏い、超高速で外へ脱出した。そして、2人は振り返らないままローグに向かって同時に言った。「「どうか、ご無事で!!」二人はそれだけを言い残し、全速力で外へ脱出した。「クソガキ…待つんだ!」「くそっ…僕が、僕が任務を遂行出来ないなんて…くそっ、くそっ、クッソォーーー!!!!」既にライクとニケルはそのまま馬車から見えない場所まで移動しており、ネルは拘束されたまま2人に逃げられてしまった。その後、月輪の目を開放したローグと交戦していたネルは最初こそ苦戦を強いられていたが、死神の魔力を使用した事によりローグの全身を一捻りにして潰した。「全く、あんましこの力使いたくないんだよなぁ。血塗れになっちゃうと、掃除も大変だからさ。」捻り潰した影響で戦ってた馬車の中がローグの血で血塗れになっていた。「ま、生きて返すのは無理だったなぁ。ハイドに謝っとくか!」ネルは今回の事を深く考えず、短絡的に考えていた。そしてシルフに着いた後ネルはハイドに呼ばれた。勿論、月の民を生捕りに出来なかった件だ。「ネル。月の民の何人かひっ捕えろと言った筈だが?」「申し訳ないと思ってるけど、馬車で暴
last updateLast Updated : 2026-01-12
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第29話 愛情の欠落③

彼は強さを手にするだけで心が満たされていた。 自分さえ良ければそれで良い。 世の中自己中心的に生きなければ生きていけない。 自分を守る為に、自分以外の人間はどうなったって良い。関係ない。 他人は裏切る、でも強さは裏切らない。 だから僕は強くなるんだ。誰にも邪魔されない為に。 ネルは23年間生きてきて、その生き方が正しいと信じていた。 しかし、その生き方をグレンに否定された。 「お前は今まで愛情を与えられず、お前自身にも愛情が存在しない。だからお前は簡単に人の部分を捨てて悪魔祓いになる事が出来た。」 「愛情を知らず欲望のまま目先の力を得ようと執着するその姿。それは愛情の代わりを必死に何かで埋めようとしてるだけだろ?お前は人を捨てる事が悪魔祓いの強さと言うがそうやって代わりのもので誤魔化そうとしてるのは、結局お前も人を捨てられないって事だ。」 強さを求める気持ちが、これまで受けた事のない愛情の代わりを求めている? 愛情? は?意味が分からない。 そんなもので人は強くなれない。強さを求めるのは、僕が強くなりたいからだ。 強くなれば周りから認められる。賞賛される。そして、どんな相手も僕にビビって怖気付く! その優越感に浸りたいが故に僕は力を求めるんだ! だから、絶対に僕を否定させない! しかし、最大火力の擬似・ブラックホールを使っても僕はグレンという男には勝てなかった。 (どうしてだ?何故…僕が。負けたのか?) (くそ、身体が動かない。) (この僕が負けるなんて…ありえない。人を超える為に必要なものを捨ててまで力を手にした僕が、こんな…こんな奴に…。) 強さを手にする為に何度も人間の部分を捨てて戦った。 何故だ?奴の言う愛情と言うものに負けたのか? ありえない、認めたくない。 もしそれが本当なら、僕が信じてたものは一体何だったんだ? そして時はハイドから逃げた時に戻る。 ネルはハイドと自身の左腕で顕現したルシファーから逃げており、既に連続で6回空間移動した為、走って逃げていた。 …見つかったら殺される。 ネルは心と感情を繋ぐ糸を断ち切った事で心の底から恐怖に感じる事が無かったが、ハイドの一件があってから死への恐怖が増大していた。 その恐怖に苛まれながらネルは走
last updateLast Updated : 2026-01-12
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第30話 東の大国ノーム

レミールから出発して数日後。カイル、エミル、ミーナはようやく東の大国ノームに到着した。東の大国ノーム。魔力で動かす機械や医療など他国よりも繊細な技術面が発展している先進国であり、その技術によって人々の生活面にも近代的な機械が導入されている。勿論その技術は魔法にも関わりがあり、魔法と組み合わせた武器なども生産されている。以前レミールに居たバッカスがグレンに向けて使っていた銃も東の大国で作られた物だった。(第23話参照)「うわぁ、ここがノームかぁ!」ノームの街並みを見て驚くも見た事もない街の風景に心躍るミーナ。流石は先進国という事なのだろう。高い建物がずらっと並んでおり、建物と建物の間には大きな道路があった。その道路には人では無く、何やら大きめの車輪が付いた乗り物が何人かの人を乗せて走っていた。「ねえねえ!あの乗り物何?」初めて見る乗り物を見てミーナはエミルに聞いた。「あれは魔力式四輪駆動車よ。」「魔力式…四輪駆動車?」あまり馴染みのない言葉を聞いてピンときていないミーナ。「そう。魔力を乗り物の中に貯蔵して、それを原動力に走ってるみたい。私もあまり詳しくはないけど。」「へぇー!馬車みたいに馬は要らないんだ!」魔力式四輪駆動車は東の大国が発案した車の様なものであり、名前の通り魔力を燃料にして走っている。魔力を貯蔵出来る量は限られているが、東の大国が発案した魔力消費を抑える装置を施した事によって少ない魔力でかなりの距離を走行してくれる。「凄いなぁ。見た事もない建物もいっぱいあるね!あの建物も、何mあるんだろう?」ミーナが住むクレーアタウンは基本的に木造建築や良くて石造りの2階建の建物が殆どであり、ノームの何十階もあるビルの様な建物の高さとその多さに圧感されていた。西のイフリークや南のシルフに比べても東のノームの技術はかなり発展しており、4大国の中で随一の大都会と言っても過言では無かった。「カイルは何回かノームに来た事があるの?」「ああ。俺の家族は今ノームに住んでるんだ。だから時々顔を出しに行ってた。」「え、そうだったの!?だからあなたの家族はどこを探しても居なかったのね。」カイルの親は仕事の都合でイフリークからノームに転勤していたのだが、その頃にはもうカイルはイフリークの騎士団団長になっていた為、カイルだけイフリークに残っ
last updateLast Updated : 2026-01-12
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第30話 東の大国ノーム②

母親は更にエミルとミーナにも顔を向けた。「貴方達もよく来てくれましたね!私はカイルの母親です。…エミルちゃんはお久しぶりね!」「は、はい!…お久しぶりです!」緊張してるエミルは表情がガチガチの状態でカイルの母親に挨拶した。「そんな畏まらなくて良いのよ!ごめんね、あの時は私達親の事情でカイルと貴方に迷惑掛けちゃって。今日はゆっくりしていってね!」カイルの母親はミーナが思ってた通り、自分達親の事情を子供に当たる事は無く、寧ろエミルの事を歓迎してくれた。「(やっぱりカイル君の親だなぁ。彼に似て2人とも優しそう。それに妹ちゃん可愛過ぎ。)」ミーナはカイルの母親の優しさを見て感心していた。更に一人っ子のミーナはカイルの妹であるレイアがとても可愛く見えた。「えっと、貴方は確かミーナさんだよね?貴方も今日は来てくれてありがとう!」「はい!ミーナ・ヴァミリオンと言います!」「あらまぁ、なんだかレイアがそのまま大きくなったみたいな子ね!」それは遠回しに子供っぽいって言ってる様に聞こえたが、ミーナは褒め言葉として受け取っていたのか嬉しそうな顔をする。「さあ、みんな!ご飯の準備が出来てるからみんな準備して!どうせカイルの事だから滅茶苦茶食べるんでしょ?沢山用意してるから遠慮なく食べなさい。」「ありがとう、母上。」3人は手を洗い、食事を食べられる準備をした。大きなテーブルの上には沢山の料理が並べられ、カイル、エミル、ミーナの並びで椅子に座った。びっくりしたのがカイルのご飯の量だった。炊飯器3合分くらいある様な米の量の器がテーブルの上にあった。「え、カイル…あんたそれ、1人で食べるの?」「うん。食べるよ。」普通に答えるカイルにエミルとミーナは驚愕した。「(…そういえば、カイルのせいでせっかく作った非常食が1日で無くなったよね…。)」ここまでの旅の道中を思い返していたエミル。思い返してると横からカイルが。「おかわり。」既に3合分もある米の器を母親に差し出していた。「「…は!?」」食べるのがあまりの驚異的なスピードにエミルとミーナは2人とも驚愕した。「いや、幾ら何でも早すぎるでしょ!?ちゃんと噛んでるの!?」「噛んでるよ!でもこれを後2杯くらいはしてるから。」そう言ってカイルは新しく盛られた3合分のご飯を片手に他のおかずも食べていく
last updateLast Updated : 2026-01-13
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第31話 母の想い

それから3人は魔力操作"極"を習得する為、次の日からも修行に励んだ。次の段階は目隠しをしながら打ち込み稽古をするという物であり、これを成り立たせるには魔力の流れを読む力がかなり必要であったが。「ハァッ!!」「おっと!フンッ!!」エミルとカイルは目隠しをしながらでもまともな打ち込み稽古が出来るレベルまで魔力の流れを読む事が出来ていた。一方、ミーナは。「ハァァァア!!!」目隠しは勿論したまま、光の魔力を纏って高速で移動出来るようになっている。バンジョウはミーナと同じ様に目隠しをしたまま、お互い光のスピードで打ち込みをしていた。「(カイル殿とエミル殿も凄いが、ミーナ殿は別格だ。まるで我の攻撃を予知してるみたいだ。我の攻撃が全て対応されてしまう…)」魔力の流れを読む力は感覚的に覚えていけるミーナにとって天性とも言える才能だった。実際、結構本気で戦ってるバンジョウもミーナに竹刀を入れようとしても全て対応され弾かれてしまうのだ。ミーナの後方に回り込んで竹刀を入れようとするも、後方へ振り返りバンジョウの竹刀を弾き返す。弾き返してすぐにミーナはバンジョウが気付けないスピードで左足に強烈な竹刀の一撃を入れた。「グッ!!またしても…!?」左足に一撃を入れられたバンジョウはそのまま戦うのを止めてその場に座り込んだ。座り込んだのが分かったミーナも目隠しを外してバンジョウに駆け寄った。「大丈夫ですか!?」「ああ、心配ご無用。ミーナ殿は凄いなぁ。」左足を押さえながらミーナを褒めた。「ミーナ殿は魔力の流れを読む力というより、人よりも感覚が鋭いみたいだな。何か他に感じたりするのか?」同じ様に魔力の流れを読むバンジョウも、動きのキレが全然違うミーナに対して疑問に思った。「んー、何だろう。最初は魔力の流れを読もうとしてたんだけど、それより先に別のものが頭に流れてくるんです。」「別のもの?」「はい。何だろう?…どう説明したら良いんだろう?魔力の流れを読む前に、相手がどの手でどんな風に動かすのかが頭に流れてくるんです。」「相手の攻撃の意思を感覚で捉えられるって事か!?」「んー、多分。私もあんま自覚してないんですけど…。」魔力の流れは動作の意思を持ってから動き始める間際に、空気中の魔力の微妙な流れが変化する。例※攻撃の意思→動作開始→魔力の流れが変化
last updateLast Updated : 2026-01-14
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