All Chapters of 悪魔祓い(デビルブレイカー): Chapter 21 - Chapter 30

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第13話 南の大国シルフ②

「月の民殲滅は確かにシルフの国王が提案し、様々な国の魔道士達を招集させて殲滅していく、というのが一般的に知られている事です。」 「はい、俺もそういう風に聞きました。」 「でも本当は違うの。シルフの国王は元々平和主義を心掛けていた心の優しい人で当時も月の民殲滅には反対していたのです。けど、あの男が来てからシルフの国王は変わりました。」 「それは、さっき言っていた思考を操る魔法か?」 フィナの口ぶりで何を言いたいのか察したグレンが口を挟んだ。 「はい。12年前に突然やって来たハイド・スペクターが原因だと思います。彼は何故なのか分かりませんが会った当初から国王に気に入られ、その日に王の特権で宰相になったのです。」 このシルフは民主主義ではなく、どちらかと言えば絶対王政が強い国で法律の改正や政治に関わる事以外なら大抵の事を決めれる事が許されていた。 「その日からです、国王が可笑しくなったのは。国民の取り立ての期日に遅れた者に罰を与えたり、自分の意見に少しでも反論すれば牢に入れ拷問、酷い時はその場で射殺とかもありました。」 「…まるで別の人格に乗っ取られたみたいに国王は豹変してしまいました。そして、ハイドが宰相になってから1ヶ月後に国王は月の民の殲滅を発表したのです。」 「さっき言ってた国王の特権か?それで誰も反論出来ずに殲滅が始まった訳か。」 「ええ、そうよ。反論した者もいましたが問答無用で殺されます。そして殲滅はまもなくして始まりました。私も当時その殲滅に参加させられていました…」 そこから話すのは余程辛い事なのか、テーブルに置いたフィナの握りこぶしはプルプルと震えていた。 「フィナさん…。」 「大丈夫よ。…殲滅は誰もが嫌だったはず。国を守る為に存在する魔道兵や騎士団、それぞれの魔道士達の誰もがその場から逃げ出したかった筈。1人を除いては…」 「その1人と言うのはハイドか?」 「いいえ、あの時ハイドは殲滅には参加していなかったけど代わりにある魔道士を派遣させたの。そいつの名は、ネル・ナイトフォース。殺す事に躊躇しない冷酷な性格に加え人にとって危険となる魔法を使う黒魔道士よ。」 ネル・ナイトフォース。 その男の名前を聞いた時、カイルは顔色を一瞬にして変えた。 その男は、この世の魔法界にいるものなら少なからず一
last updateLast Updated : 2025-12-25
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第14話 存在意義

この時の俺はどんな人だったのか、今でも鮮明に覚えている。しかし、どうしても思い出せない事が1つある。自分の本当の名前だ。名前は悪魔祓いになったと同時に捨てたからだ。今も過去の記憶は覚えてても、自分の名前に関する記憶だけはどうしても思い出せない。覚えているのは、楽しかった日常が一夜にして地獄に変わってしまった事。そして…あの時俺を逃してくれた俺の兄の最後を、俺は今でも覚えている。11年前ーキュアリーハート。それは(癒しの心)という意味を込められた平和の国。この国は東西南北にある四大国の中心に位置している。四大国に比べて経済力があるとか、規模が特別大きいなどそういった事はなくて、争いの無い平和な国造りを国民全員が願っている。その想いによってこの国では、今まで戦争や犯罪が全くない国とされていた。そう、あの事件が起きる一年前までは…ここは、キュアリーハートの中でも山の麓に近い場所にある町。フローアタウン。この町は国の中でも田舎の中の田舎で、主に狩りや農作業が主な仕事としている町だ。豊かな緑に面した場所に木造建築の家が数カ所に建てられ、その横には田や畑が沢山あるのどかで平和な町。俺は物心つく前からこの町に住んでいた。唯一の家族である兄と一緒に。「いつまで畑耕してんのよ、兄さん!」小さい頃の俺が家の前に座り込んで言った。すると、畑を耕している当時20代手前くらいの銀髪の青年が地面を耕すのをやめて小さい頃の俺の方へ視線を移した。「あともう少しで終わるから待っていなさい!」そう言って兄は再び地面を耕し始める。しかし、小さい頃の俺は駄々をこねていた。「えー!だって兄さんさっきから同じとこばっか耕してるじゃん!」よく見ると田んぼの大きさは大体50町歩あるのに対して耕しているのは大体1/3くらいだ。それを魔法も使わずに数時間もかけてやっている兄の行動をこの頃の俺は全く理解できない。しかし、兄は当時の俺にこう聞いてきた。「〇〇。俺たちがこうやって生きていけるのは?」「え、えっと…この畑から取れる食べ物のお陰…かな?」「そうだ。その畑から取れた食材で俺たちは明日への命を繋いでいる。この畑は俺たちの命だ。それともう1つ質問だ。仕事や勉強は早くやれば良いと思うか?」「え、そりゃ早い方が良いでしょ?なんで?」「そっか。…けど、俺はそう
last updateLast Updated : 2025-12-26
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第14話 存在意義②

時は少し遡り、場面はミーナとイフリークの国民達に変わる。現在、彼女らはティラーデザートとは別の場所で窮地に立たされていた。大量の悪魔達が周囲を取り囲み、エミルと騎士団の人達が応戦している。それを何もできないまま只々見ているだけのミーナとイフリークの国民達。国民の中には、騎士達が守らず心臓を取られてしまう者もいた。何故、この様な事になったのか。どうしてティラーデザートから離れた場所にいるのか。現在に至るまで更に30分程、時間を遡る。シルフを目指し、猛暑の中を歩き続けるイフリークの国民達は途中で大きなクレーターを発見した。「何だ、この大きなクレーターは。隕石でも落ちたのか?」「さあ?確かに人間にこんな事出来るわけないよな。」ここはちょうどグレンとカイルがレヴィアタンと戦っていた場所だった。ここまで来るのにかなりの時間はかかったが、あと少しでシルフに着くとこの段階では殆どの人がそう思っていた。すると1人の騎士が何かに気づいた。「おい、あのクレーターの真ん中に誰かいるぞ?」1人の騎士がそう言ってクレーターの中を覗き込むと、そこには灰色の薄汚れたターバンを全身に覆い被った人がいた。「こんなところに人?声かけてみるか?」「いや、迂闊に近寄るのは危険だ。俺が近くまで行ってみる。」そう言って1人の騎士がクレーターによって出来た砂の坂をお尻で滑りながら降りた。下まで降りても灰色のターバンの人はこちらを振り向かない。それどころか、こちらに気づいていない様だ。「あなたは何者だ?そこで何をされているんですか?」すると灰色のターバンを着た人は灰色のターバンから顔を出した。どうやら座り込んでいたらしく、その場で立ち上がったが軽く200cmは超えている。その大柄な体に髪は茶髪。旅人なのか大きなリュックに道具などがギッシリ詰め込まれている。鋭い目でこちらを睨んでいるのか分からないが、こちらをじっと見つめてくる。正直気味が悪かった。そしてある程度の間が空くと大柄な男が口を開き、何かくると思った騎士は少し身を引いた。「…スゥ…ハァー…。」口を開いた男は何か言うのかと思えばただ深呼吸しただけで何も言わない。何だ、この男は?目の前にいる大柄な男はただ見つめるだけで何も言おうとしない。顔もどちらかといえば爬虫類顔であり、正直気持ちが悪いと騎士の
last updateLast Updated : 2025-12-26
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第15話 月の民の少年達

今から400年ほど昔、一人の王がいた。その王は人々に知識、魔法、武術。その全てを国民に広めていき、その中でも魔法の知識量はこの世で一番だった。王には3人の弟子がいました。1人目は無口であるが根は優しく、王の次に強大な魔力を持っていた王国最強の魔導師。2人目は魔法では1人目に及ばないが剣の達人であり、その剣さばきは王をも超える強さを誇っていた。そして、3人目。この男は他の2人より魔法も剣も劣っていたが知識は国一番であり、これからの国の発展に期待を持たれるくらい頭が良かった。だが、この3人目の弟子は国民の平和など全く願っておらずこの世の全てを憎み、そして野望を抱いていた。そして、3人目の野望は叶い王の国は一夜で滅んだ。ー 古代旧約聖書 著者 不明場面は変わり、ティラーデザートから超高速魔法によって移動し続けるライクとニケル。2人はエミルと別れてからひたすら移動を続けた。「おい、今から行くところは俺達月の民殲滅に加担した奴がいる場所だよな?」「ああ、僕の情報だから間違いない。場所は丁度神の遺跡に近い田舎町だ。」神の遺跡とは、西のイフリーク国と北のウンディーネ国の丁度中継地点の所にあり、どういう所だったのか未だ不明であるが高度な文明の名残がある為、人が暮らしていた場所である以外何も解析されていない遺跡である。「神の遺跡か。そんな辺境の町に俺達の仲間を殺した奴がのうのうと生きてると思っただけで腹が立つ。」「そうだ、俺たちはそんな不平等な世界を許してはいけない。決して…」そう言ってライクとニケルは更に表情がキツくなり、移動するスピードが更に上がる。数分後、神の遺跡の近くにある田舎町(マーテルタウン)に着いた。周囲を見渡しても本当に何も無い田舎町。そう感じながらライクとニケルは目的の人物を探す為に町を歩いた。目的の人物の名前はガルシア・レンヴィ。元北の国ウンディーネの魔導師であり、軍事国家である北の国の軍人であったが今は隠居の為、この町に住んでいるという。2人はガルシアの顔が書かれた紙を見ながらしばらく歩いていると、それらしき人物を見つけた。その男は現在、子供達に基礎的な剣術を教えてる最中であった。「あいつか…今やるか?」「馬鹿か?大勢子供がいるだろ。俺達があの子供達に嫌なもの見せてどーするんだ。」「そうだったな、すまん。
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第16話 認めてもらう為に

大国シルフ。今この国には人と呼べるものは殆どいない。だが、王宮には王と魔導兵がいて何も変わらない生活を送っている。そんな不自然極まりないこの国に、シルフの騎士団はその原因であるハイドを倒すようにとグレンとカイルに依頼した。そして今、2人は黒魔道士ネル・ナイトフォースの魔法である黒い霧を食らったところだ。「ふふ、これは僕の持ってる魔法でもかなり危険な禁忌魔法。相手の体を残して魂だけを別空間に飛ばし、飛ばされた魂は永遠に苦しむのさ。」禁忌魔法。それは強大な魔法であると同時に術者や周りの人、大切な物を代償にしなければ発動しない一般的には禁止された魔法。今回の魔法は、相手の体と魂を別に分けられた後に魂だけは魔法で作った別空間に飛ばされる。そして飛ばされた空間で、その人が体験した辛い事と楽しい事が繰り返し続く。つまりそれは、辛い思い出を克服しても別の辛い思い出が現れてくる思い出の無限地獄。脱出する方法が無い恐ろしい魔法だ。そして「この残った体を殺せば、二度と魂の世界から出られなくなる。」ネルは現実世界に残ったグレンとカイルの残った体を杖で指した。「 さあ、永遠に思い出に浸りながら死ね。」ネルは杖先から魔法を放とうと魔力を溜めようとするが、すぐにそれをやめる。理由はすぐにわかった。「おや?この魔力は懐かしい。まさかあなたからここに来るとは…」ネルの背後から現れたのは、グレンとカイルをここへ来るようにと依頼したシルフの魔導兵フィナだった。「こうなる事は想定してた。その黒い霧はどんな人も対抗できない。」「ほう、だからこの人達を駒にしたってわけ?最低だねぇ~、堕ちたねぇ~!シルフ以外の人は物みたいに考えてるのかな?」キィィン!フィナの強烈な居合をネルは杖で防御する。「あなたを倒せるのは"陽"の魔力を使える私だけ!あの黒い霧を使って魔力を減らしたあんたを倒せるのは今しかない!」フィナはネルを弾き飛ばし、再びネルを斬りかかろうと接近した。「ふふ、黒い霧を使った後だと多少しんどいが面白くなってきた♪さあ、かかってきて!そして死になさい!」ネルはそう言いながらフィナの攻撃全てを杖で防御した。陰陽魔術。この世には森羅万象、全ての万物には互いに相対する存在があり、それは"陰"と"陽"の2つに分けられる。万物の生成消滅、時間と空間、人間の
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第16話 認めてもらう為に②

この世界には4つの大国がある。北の大国 ウンディーネ東の大国 ノーム西の大国 イフリーク南の大国 シルフ大国以外に中心に位置するキュアリーハート。それ以外では小規模の国々が大国付近にたくさんあるが基本的にはこの4つの大国の決めた政治によってこの世界は成り立っている。4つの大国はそれぞれ特徴があった。北は軍事に力を入れた軍事国家。東は魔力で動かす機械や医療の技術が発展した先進国。西は優秀な魔法騎士団によって四大国の中では比較的平和が保たれている国。南は昔から絶対王政が強く国王を守る魔導兵がいるなど、国王主体で考えられた国。南の大国シルフは絶対王政であり、昔は独裁的な政治を治めていたと言われていたが、現在の国王になってからは独裁的な政治は殆ど無くなり国民の生活はそれ程苦しいものでは無くなった。むしろ、現在の国王になってからは歴代で一番平和であり、平和主義な西のイフリークとは友好的な関係を結んでいた。しかし、だからといって常に平和が約束されているわけではない。昔から北と東の大国では約100年前から長年に渡り対立していた。何故2つの大国が対立し続けているのか詳しい経緯は不明だが、世間では100年前に北の大国が東の大国の技術を盗み、それを軍事転用していた事が対立するきっかけだと言われている。一応、四大国同士で不可侵条約を結んでいる為、大きな戦争には現状発展していないがそれでも北は何かと東の大国へ度々嫌がらせの様に見える攻撃を仕掛けている。それに対して東も警戒を高め、互いに戦争をする準備は整えていた。特に北の大国は軍事国家である為、不可侵条約を結んでいない小国などを制圧し自身の国の領土へと広げていく為、信用は低くいつ4大国のどこかへ攻めてきても不思議ではない現状であった。そんな不安定な世界の中、他国が北の大国に攻めてこられない様にするにはそれぞれの国に抑止力となる戦力を準備する必要があった。そして南の大国ではその抑止力の役割を果たしていたのは"陰"と"陽"の力を持つシドとフィナであった。あれからシルフの魔導兵になって1年。初めて自分の故郷を出て、大国シルフという大きな国に来た当初はとても萎縮していたが、今ではすっかり国に馴染んでいた。先程魔導兵と言ったが、11歳と若く子供であるという理由でまだ見習いの立場だけど、それでもみんな私
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第17話 戦争による代償

数日後、シルフ王が全ての魔導兵を緊急招集した。何やら大変重大な話があるらしい。魔導兵は全兵合わせて500名程度いた為、魔導兵達は王宮前の広場に固められて集まった。「一体何があったのかな?」そして、王宮からシルフ王が現れた。その後ろにはもう1人、黒髪で細身の中年が灰色のローブを纏ってシルフ王に付いていた。誰だろう、あの人は?そう思ってる中、シルフ王が隣の男性について説明を始めた。「皆の者に紹介する。この者は本日より私の宰相となる者だ。名はハイド・スペクター。」宰相とは、王に代わって宮廷で国政を担当する者の事であり、現代の日本などでは内閣総理大臣に相当する立ち位置である。しかし、宰相になる者といえば国で王の次に慕われている者が普通なのに、この人はシルフの者でもなければ今日初めて見た人だ。不気味な魔力の男。フィナがハイドに対し初めて抱いた感情はこれだった。するとシルフ王はそのまま話を続けた。「そして、早速であるがこのハイドから新たな法案を提示された。今、大国同士で不穏な空気が流れている。恐らく大国同士での戦争もあり得る。この大国シルフも遅れを取るわけにはいかない。」「よって、我々シルフ大国も隣国からの攻撃に備えて軍事力を強化する。その為に今後国民達からの納税を増やす事にする。」突然の事で頭が追いつかない。国民から取り立てる税金の増税。その理由が軍事力強化?他国との戦争を起こさない様に動いてたシルフ王の発言に疑問を抱いた者はフィナ以外にもいた。「シルフ王!それは戦争が始まるという事なのですか?北の大国は数日前の議会でこちらには矛先を向けないと…」1人の魔導兵がシルフ王に問い掛けてるとシルフ王はその魔導兵に指を向け、指から細長い白い光の筋が魔導兵の胸を貫いた。「ゴフッ…」魔導兵の男は胸を貫かれた事で口から大量の血を吹き出し、その場に倒れた。その場にいた他の魔導兵は一瞬時が止まったかの様に動かなかったが、すぐに倒れた者の近くに駆け寄った。しかしシルフ王は駆け寄る事を制止し、冷めた目で広場に集まってる魔導兵達を見下ろしていた。「…図が高いぞ。誰が喋る事を許可した?馬鹿者が。」その冷めた目と発言からフィナとシドは冷や汗をかいた。この人は誰だ?いつもの王とは違うぞ。そう喋ろうとしたが、目の前の魔導兵が殺された現実を見て、ここに居
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第17話 戦争による代償②

月の民殲滅戦から2年。私は16歳になった。ちょうど超日食(ノヴァ・エクリプス)によって悪魔が出現する数日前だった。相変わらずシルフは納税の取り立てにより、国民の生活は苦しくなっていた。そして超月食が起こる20日ほど前、王の側近である宰相のハイド・スペクターが外出していた時があった。理由は聞かされていないが、私はこの時に王と話をする為に王室の扉まで来ていた。全ては、あのハイドが来てからおかしくなった。だから、少しでも話をしてみたい。しかし、私は扉の前に立っていた魔導兵の人達に止められた。「王に会わせて下さい!話があるんです!」「ダメです。いくらフィナさんの命令でもここは通すなとハイド様から言われてます。」ハイドが王の側近になってから今まで誰かと対面して話をしていないのはあまりに不自然すぎる。必ず側にハイドが付いていて、あいつが居なくなった途端にここで閉じこもってるのも何か裏があっての事だと思う。それを知る為に私は強行的に王と話をしようとした。「そうですか。では、仕方ありませんね。」そう言って私は魔法で時間を遅くした状態で目の前の魔導兵の頚動脈を手で強く打ち付け気絶させた。そして、扉を開けて王室に入った私は玉座に座る王の所へ駆け寄った。しかし、側にいた魔導兵複数が王の目の前まで近づいたフィナを止めに入った。「シルフ王!…離せ!私は、貴方に話があります!どうか、私と話す時間を…」「ふざけるな、フィナ!お前、扉前にいた兵をどうした!?まさか、危害を加えたのでは?」「王よ!目を覚まして下さい!貴方は以前、この国の良さについて私とシドに教えて下さりましたよね?しかし、今のこの国の現状を見て頂きたい!この様な国民の疲弊した表情を見て良い国だと胸を張って言えますか!?これが、貴方が言って下さったこの国の良さなのですか!?」「いいえ!以前の貴方ならそれを良い国とは言わなかった筈です!貴方がこうなった原因は…」「それ以上口にするな!反逆罪になるぞ、フィナ!」そう言って取り押さえてた魔導兵はフィナの口を縛り、何も喋られない様にした。フィナはモガモガと口を動かそうとしながら暴れており、成長して大きくなり更に力を付けたフィナを数人掛かりで必死に押さえつけた。そして、目の前の玉座に座る王がようやく口を開いた。「…ふぁぁ〜。…パンが…食べたいなぁ
last updateLast Updated : 2025-12-30
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第18話 覚醒

そして時は戻り現在。「ー 時の断罪を受けよ。時の審判(クロノ・ジャッジメント)!」「まずい…夢幻…」完全に時間が止まった空間で、フィナは魔力の溜めた次元刀を振り切った。ネルが斬られたと同時に、止まった時間は元に戻りネルの体からはおびただしい量の血が吹き出た。「完全に…時を止めた…」「時の審判(クロノ・ジャッジメント)は、完全に時を止めてしまう反則的な力。もちろん術者の私にもそれ相応のリスクを伴うわ」フィナはそう言った直後、頭を手で押さえ少しよろめいた。時の審判(クロノ・ジャッジメント)。8年掛けて編み出した"陽"の魔力ならではの最大最強の魔法。自分以外の時間を完全に止める事が出来る変わりに止められる時間に応じて身体へのダメージと寿命が削られるといった副作用が出現する。5秒で目眩、30秒で吐血、1分で吐血に加えて10年の寿命が減っていく。フィナが止めた時間は6秒前後。中等度の眩暈がフィナを襲ったが2秒くらいで立ち直り、再び動作に移す。「ー 時の断罪を受けよ。時の審判(クロノ・ジャッジメント)!」フィナは再度時の審判の呪文を詠唱すると、おびただしい量の血を流したネルに一瞬で近づき斬りまくった。その間、ネルは自分の身体を治す為に"陰"の魔力を使えない。一方的に斬りかかるフィナが時の審判で止めた時間は30秒。30秒間時間を止められたネルは原型を留めない程フィナの斬撃をくらい続けた。そして、30秒の時間が経った。「グボっ…ガバァッ!…ハァ、ハァ。」30秒の時間を止めた反動によりフィナは膝を着きながら吐血した。時の審判を編み出した時の訓練でもここまでの時間を止めた事は無かった為、あまりの身体への負担が原因で立ち直すのに少し時間が掛かった。「これだけ切り刻んだら奴もただでは済まな…なっ!?」切り刻まれて人の形をしていないネルはグニャグニャと粘土の様に肉片が集まり、徐々にネルの形へと戻っていく。「ー 時の断罪を受けよ。時の…」しかし、膝を着いてる時間が長かった。フィナが再び時の審判を詠唱しようとするが、身体が思う様に動かない上に魔力が打ち消された。「なっ、魔力が消えた。」「僕は時間を止められる寸前にある魔法の力を増大させてたんだ。悪魔の魔法による闇の引力。これで君の時の魔力の発動時間と追加効果で身体の動きを遅くしてたのさ。」
last updateLast Updated : 2025-12-31
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第18話 覚醒②

そして場面は変わり、グレンと別れてハイドの所へ向かうカイルとフィナ。向かう先から魔導兵数名が2人を襲ってくるが、魔力の少なくなってるフィナに代わりカイルは自身の影を広げて応戦する。魔導兵達が広げた影に入った瞬間、カイルが長剣を1回振るう。振るうと長剣と身体が当たってないにも関わらず、魔導兵の身体から一瞬で血飛沫が噴き出した。そして魔導兵達はカイルの1振りにより斬られた後、その威力によって後方へと吹き飛ばされる。「(これが、噂に聞く影の神級魔導士の力。黒帝剣技。影に入った相手を触れず斬撃を当てる力。)」「この人達、フィナさんの仲間ですよね?峰打ちなので安心して下さい!」「仲間だけど、気にしないで。あなたが危ないと感じたら全力で戦って!」「了解です!」そう言って再び別の魔導兵が2人を襲うがカイルも再び影を広げ、再び1振りで全ての魔導兵達を退ける。「(また峰打ち!?…影を広げて相手だけを選別して斬りつけるだけでも相当な神経を擦り減らしてる筈なのに、この状況下で更に相手を気遣って戦えるなんて。いや、この子にとっては造作も無い事なんだわ。)」史上最年少でイフリークの騎士団団長になった所以(ゆえん)。それは、扱いが難しいとされる黒帝剣技を10代という若さで"ほぼ"完璧に使いこなせている為である。そして2人はその調子で進んでいき、遂にハイドがいると思われる王室の前まで来ていた。「ここに王を操るハイドという男がいるんですね。」「おそらく。けどここからは絶対に手を抜かないで。殺すつもりでいくのよ。」そう言ってフィナは手を扉にかざすと王室の扉を分解の魔力で粉々にしていく。扉が無くなり、王室の中が見える様になるとそこには100人以上の魔導兵達が待ち構えていた。「くっ!やはりハイドの近くは警備を固めてたか!これじゃ中に入れ…カイル君?」するとカイルは一瞬で自身の影を超拡大した。そして2本の長剣を持ちながら構え、体を回旋させる様にして大きく横に強く振るった。振るうと王室で待ち構えていた魔導兵達は一度に全員身体を斬られ次々と倒れていく。「俺の領域内で物量戦など無意味。」そしてカイルは王室の中へと入っていく。「(何なの、この子の力は!?一瞬であの人数を。)」カイルの領域を広げられる範囲は、本人の精神力に反映される。領域を広げるのに限度はあるも、領
last updateLast Updated : 2025-12-31
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