「月の民殲滅は確かにシルフの国王が提案し、様々な国の魔道士達を招集させて殲滅していく、というのが一般的に知られている事です。」 「はい、俺もそういう風に聞きました。」 「でも本当は違うの。シルフの国王は元々平和主義を心掛けていた心の優しい人で当時も月の民殲滅には反対していたのです。けど、あの男が来てからシルフの国王は変わりました。」 「それは、さっき言っていた思考を操る魔法か?」 フィナの口ぶりで何を言いたいのか察したグレンが口を挟んだ。 「はい。12年前に突然やって来たハイド・スペクターが原因だと思います。彼は何故なのか分かりませんが会った当初から国王に気に入られ、その日に王の特権で宰相になったのです。」 このシルフは民主主義ではなく、どちらかと言えば絶対王政が強い国で法律の改正や政治に関わる事以外なら大抵の事を決めれる事が許されていた。 「その日からです、国王が可笑しくなったのは。国民の取り立ての期日に遅れた者に罰を与えたり、自分の意見に少しでも反論すれば牢に入れ拷問、酷い時はその場で射殺とかもありました。」 「…まるで別の人格に乗っ取られたみたいに国王は豹変してしまいました。そして、ハイドが宰相になってから1ヶ月後に国王は月の民の殲滅を発表したのです。」 「さっき言ってた国王の特権か?それで誰も反論出来ずに殲滅が始まった訳か。」 「ええ、そうよ。反論した者もいましたが問答無用で殺されます。そして殲滅はまもなくして始まりました。私も当時その殲滅に参加させられていました…」 そこから話すのは余程辛い事なのか、テーブルに置いたフィナの握りこぶしはプルプルと震えていた。 「フィナさん…。」 「大丈夫よ。…殲滅は誰もが嫌だったはず。国を守る為に存在する魔道兵や騎士団、それぞれの魔道士達の誰もがその場から逃げ出したかった筈。1人を除いては…」 「その1人と言うのはハイドか?」 「いいえ、あの時ハイドは殲滅には参加していなかったけど代わりにある魔道士を派遣させたの。そいつの名は、ネル・ナイトフォース。殺す事に躊躇しない冷酷な性格に加え人にとって危険となる魔法を使う黒魔道士よ。」 ネル・ナイトフォース。 その男の名前を聞いた時、カイルは顔色を一瞬にして変えた。 その男は、この世の魔法界にいるものなら少なからず一
Last Updated : 2025-12-25 Read more