「お母さん、引き続きあの時の女の子の件も、ウォーカーヒルの件も、両方調べて」「問題はそこなの。ウォーカーヒルを調査するとなると、あのとき恩人の候補に入れていた少女のリストに、もう一人名前を加えなければいけなくなるわよ」直美が深刻な声で釘を刺した。絵美里はギリッと奥歯を噛み締めながら、その忌々しい名前を吐き出した。「西園寺茜」「そう。他の誰よりも、条件が合っているの。でもあの娘は、十四の頃から柏原家にずっといたんだから、諒助さんが知らないはずがないのよね」直美は根本的な疑問を口にした。だが、今の絵美里にはそんな細かい矛盾を気にしている余裕などなかった。今や茜の名前を聞くだけで、嫉妬と怒りで頭に血が上る。「どっちでもいいわ。あの子はもう、私にとって目障りな邪魔者なのよ。お母さん、一緒に動いて」「……わかったわ」電話を切ると、絵美里はスマホのアルバムを開いた。そこに収められたある写真を眺めながら、口の端に冷ややかな悪意に満ちた笑みを浮かべた。……翌日。茜は身支度を整え、いつも通りバス停に向かって仕事場のあるウォーカーヒル方面のバスに乗った。目を閉じて少しうとうとしようとした時、鞄の中でスマホがひっきりなしに震え始めた。疲れで重い目の端を押さえながら画面を開くと、星羅からのメッセージが大量に届いていた。【茜ちゃん、おじさんに何があったの!?おじさんの写真が、ネット中に広がってる!茜ちゃん、なんでおじさんにケーキを無理やり食べさせてるの?】「ケーキ」という文字を見た瞬間、茜の眠気が完全に吹き飛んだ。震える手でネットを開くと、「天罰」というセンセーショナルなタイトルのネットニュースがトレンドのトップに躍り出ていた。【天罰!殺人犯・西園寺雲海の獄中生活は道化そのもの!】記事には、連続で五枚の写真が並んでいた。口の周りをクリームだらけにした父の顔。頬や唇に盛られたクリームが、誰かの手によって面白おかしく渦巻き状に塗りたくられていた。滑稽なチョビ髭のような形に描かれているものもある。焦点の定まらない虚ろな目、苦しげにもがく表情――それは間違いなく、悪意を持ってもてあそばれる「道化」の顔だった。写真を見た瞬間、茜の耳の奥で鋭い耳鳴りが響いた。頭の中が真っ白になる。立ち上がろうとしたが、足
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