「そんなわけにいかないでしょ!大事な場で地味な格好をしてたら、軽く見られるだけよ。それに、絵美里が絶対なんか言ってくるに決まってるわ」星羅の言葉はもっともだった。美香直々の招待状なのだ、軽く扱うわけにはいかない。宴会での人脈作りを考えても、見た目は大切になる。絵美里への対策も必要だ。「分かった。じゃあ、どこかで借りてみる」「ばっちり決めてきてよね」星羅が言った。電話を切ってソファに横になり、スマホでレンタルドレスのサイトを眺めていると、諒助からメッセージが届いた。【今どこにいる?仕事の件で話したい】こんな夜遅く、たとえ仕事の話でも返信する気になれない。【じゃあ茜、俺からも斎藤美香と少し話をしたいと思って】話をすると言っているが、実質的には牽制するつもりなのだ。美香を通じて母の過去を知る手がかりを得たい茜には、無視し続けるわけにもいかなかった。【分かりました。場所を送ってください】……指定されたレストランに着いた。深夜の店内は客もまばらで、諒助はテーブルに座り、赤ワインのグラスを手持ち無沙汰に揺らしていた。茜が来たのを見ると、わずかに眉を寄せた。ポニーテールにスポーツウェア。あの顔でなければ、周囲の洗練された空間に完全に溶け込んでしまいそうなラフな格好だった。茜はそんな視線も意に介さず、堂々と歩み寄って席に着いた。「諒助さん、今夜の仕事の件とは何でしょうか」「そんなに棘のある言い方をしなくてもいいだろう。子どもの頃、うちの母さんのそばにいた時は、もっと違う話し方をしていたじゃないか」諒助はワインをひと口あおり、さりげなく周囲を見渡した。その瞳の奥に、牽制の色があった。茜は内心苦笑した。連れ歩くのが恥ずかしいと思いながら、わざわざ呼び出すなんて。「諒助お兄様」茜はわざとそう呼んだ。「お互いもう大人になったのですから、妹なら妹らしく、分をわきまえるものでしょう?」諒助はワイングラスを持つ手に力を込めた。茜の言葉を、嫉妬から来る意地だと解釈したらしい。「分かったよ。最近はお前に辛い思いをさせたな。謝りたくて呼んだんだ」その口調には、どこか甘やかすような特有の響きがあった。しかし、茜はとうに割り切っていた。冷ややかな言葉を返そうとした時、聡史が大きな化粧箱を抱えて歩み寄
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