「ちっ」と若彰は小さく舌打ちした。「だったら、あの連中より先に調べ上げてみせますよ」「そんな調べ方では、誰の手がかりも掴めないさ」和久は、最初から結末を見透かしていたかのように言った。「では、どう動けば?」「つまり……」「了解です。ところで、西園寺さんが新しいアパートに越したそうですね。今日は諒助様も顔を出したとか。ボスは行かないんですか?」若彰が尋ねた。「急かすことはない。彼女には、少し時間が必要だろう」新居の片付けにも、自分の気持ちの整理にも。……新しいアパートで初めて迎えた夜、茜はぐっすりと眠った。翌朝は星羅と連れ立ってバス停へ向かった。引っ越したおかげで、通勤は格段に楽になった。バスに乗り込むと、二人はおにぎりを頬張った。ふと、背後から同僚たちのひそひそ話が耳に届く。「ねえ、見た?朝イチで人事通知が出たんだけど。千代さん、クビになったんだって」「人って本当に見かけによらないわよね。普段から自慢が多いなとは思ってたけど、まさか陰で同僚を陥れるような真似をしてたなんて」茜は口の中のものをろくに飲み込まないまま、慌ててスマホを開いた。ウォーカーヒルのグループチャットに、お知らせがピン留めされている。千代の解雇理由は「職務怠慢、同僚との不和」と、いかにも建前の言葉で濁されていた。けれど昨日、諒助が名指しで彼女の責任を追及した経緯があるため、誰もが腹の中では本当の事情を察している。「強力な後ろ盾を得たって得意げにしてたのに、まさか自分が身代わりに切り捨てられるとは思ってもみなかったんでしょうね」星羅が呆れたように呟いた。茜は小さくため息をついた。ウォーカーヒルに着き、オフィスへ足を踏み入れた瞬間、肌を刺すような重苦しい空気を感じた。ガシャンと物を叩きつけるような荒々しい音が響いている。視線を向けると、千代がデスクの上の私物を、一つひとつ乱暴に段ボール箱へ放り込んでいた。茜の姿に気づいた千代は、憎々しげな一瞥を寄こし、そのまま荷物を抱えてつかつかと歩み寄ってくる。「何をじろじろ見てるのよ。手切れ金をもらって辞めることになったんだから、むしろせいせいしてるくらいだわ。こんな雑用係みたいな仕事、もう真っ平御免よ」千代はわざわざ茜の前で立ち止まり、声を潜めて冷たく笑った。「諒助さんがいくら
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