その冷酷な理屈を、他の幹部たちも同時に悟っていた。自分たちは結局、ただの社員に過ぎない。絵美里にどれほど取り入っても絵美里にはなれないし、諒助を超えることもできない。次に茜と同じ運命を辿るのは、自分たちかもしれないのだ。空気の変化を察知した栞が、すかさず意見を述べた。「柏原社長。私の方からも、警察の捜査には全面協力するよう各部門に通達いたしました。すでにお客様の目に触れている以上、もはや情報を抑え込むことは困難です。ここはむしろ、逆の手を打つべきかと存じます」「続けてくれ」和久が静かに促す。栞は周囲を見渡した。「この場には、茜の成長を見てきた人間も少なくありません。お父様の件はひとまず置くとして――茜がどのような人間か、皆様もご存知のはずです。もし誰かが意図的に西園寺雲海の件を暴き立てなければ、あの子が父親と同じだなどと言えましたか?」何人かの幹部が、気まずそうに視線を落とした。栞は熱を込めて続けた。「私は、茜が斎藤美香様を害したなどとは信じていません。だからこそウォーカーヒルとして彼女を守る立場に立てる。評価を捏造してトカゲの尻尾切りをするよりも、社員を守り抜くウォーカーヒルという評判の方が、企業としてずっとましです」「ずいぶんと立派な綺麗事ですが、もし本当だったら誰が責任を取るんですか?斎藤家のご親族が言っていたことが嘘だとでも言うつもりですか?」自分に不利な流れになりつつあるのを感じ取った絵美里が、噛み付いた。再び会議室に沈黙が落ちた。和久は客室部の担当者へと目を向けた。「西園寺茜と斎藤美香様に個人的な取引があったと証言したのは、君か?」「は……はい」「斎藤家のどなたから聞いた?俺が直接確認へ赴いてもいいが、警察に伝えれば向こうが事情聴取に行くことになるぞ」和久の漆黒の瞳が、静かに相手を射抜く。すべてを見透かすような冷たい目だった。担当者の額に冷や汗がにじみ出た。数秒も堪えきれず、白状した。「……申し訳ありません、柏原社長。ただの噂を、耳にしただけでして……」「では、ウォーカーヒルの評判も、君にとっては耳にしただけの噂と同程度の重さしかないということか」和久はそのまま視線を外さなかった。担当者は顔面を真っ青にした。和久は静かに締めくくった。「主任の提案通りに進めなさい。茜やウォ
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