西の森は街道沿いに広がる穏やかな林だった。 昼下がりの木漏れ日の下、鳥の声と小川のせせらぎが響く。「……おおっ!」 リディアが早速しゃがみ込み、地面の草をがばっとつかみ上げた。 「見ろよ! 薬草ゲットォ!」「それは、ただの雑草ですよ」 レオンが即答で切り捨てた。 「依頼書に記されているのは《癒し草》です。葉の縁が赤く染まっているのが特徴。君が掴んでいるのは……ただのタンポポですね」「ぬぅ……見た目似てんじゃねぇか! だいたい、草の区別なんて分かるかよ!」「それを見分けるのが冒険者でしょう」 レオンは淡々と薬草図鑑を広げ、指で挿絵を示す。「……あ、これじゃないかな?」 セリウスがそっと足元の草を摘み取った。葉の先端がほんのり赤く、独特の香りが漂う。「おおっ、当たり!」 アランが目を細めて頷く。 「セリウス、よく見つけたね」「な、なにぃ!? お前らずるいぞ!」 リディアが慌てて周囲を探し始めた。「ふん。採集など暇人の仕事だ」 オルフェは木の根にどっかり腰を下ろし、腕を組んで空を見上げている。「じゃあオルフェは休憩担当だね」 アランが微笑むと、リディアが吹き出した。 「休憩担当ってなんだよ! 仕事サボってんじゃねぇ!」「俺は……狩りのほうが得意だ」 「じゃあ魔獣が出るまで見張りしてて」 「当然だ。決してサボりはしていない」 わいわいと騒ぎながら草を摘んでいく五人。 やがてセリウスが袋いっぱいに癒し草を詰め込んでいると――。「ぶひぃぃっ!」 突然、茂みの奥から奇妙な鳴き声がした。 現れたのは、小さな丸っこい獣。体長は犬ほどだが、背中に針のような毛がぴんと立っている。「うわっ、なにあれ!?」 リディアが飛び退く。「針ねずみ獣ですね。牙猪の子供版みたいなものです」 レオンが眉をひそめる。
Última atualização : 2025-12-25 Ler mais