ホブゴブリンの咆哮が洞窟に響き渡る。 振るわれた棍棒は鉄槌のごとき破壊力を秘め、アランの頭上へ振り下ろされる。「――ッ!」 アランは長剣を両手で構え直し、刃を斜めに立てて受け止める。 火花が散り、骨が軋むような衝撃が腕を伝った。 重い。押し潰される――!「アラン!」 リディアが叫び、ナイフを投げつける。鋭い音を立ててホブゴブリンの肩に突き刺さり、その動きが一瞬止まった。「今だっ!」 レオンの詠唱が終わる。 「《火よ、弾けよ!》」 炸裂した火球がアランを狙うゴブリンを包み込み、燃え上がる。 オルフェが大剣を振り抜いた。二匹一度にゴブリンがはじけ飛ぶ。 「フ、軽いな!」 アランの背後から迫るゴブリンをセリウスが斬り伏せる。 「アラン、あとはホブゴブリンだけだよ!」 セリウスの声がアランの耳を打ち、全身を奮い立たせる。 息を吸い込み、全身の力を長剣に込める。 「こいつは、私一人でやっつける。誰も手を出さないでくれ!」 アランの決意に、仲間たちは一瞬だけ迷った。しかしその背中に宿る気迫を見て、言葉を飲み込む。 ホブゴブリンが怒声をあげ、棍棒を横薙ぎに振り払った。石壁が粉々に砕け、破片が飛び散る。 アランは長剣を引き、身をひねってかわす。巨体の懐へ滑り込み、渾身の斬撃を叩き込むが――。 刃は厚い筋肉をさききれず、浅い傷を残すのみ。「ちっ……浅いか!」 アランの額から汗が滴る。 ホブゴブリンの棍棒が再び振り下ろされる。衝撃波のような風圧にアランの金糸のような長髪が舞う。 両手剣で棍棒を受け止めるたびに、腕の筋肉が悲鳴をあげた。膝が石畳にめり込むほどの圧力。 それでも、歯を食いしばりながら押し返す。「アラン、負けるな!」 セリウスが声を張り上げる。手は剣の柄を握りしめていたが、一歩も動かない。――アランが託した覚悟を守るために。 リディアは槍を構えながら歯噛みした。
Última atualização : 2026-01-16 Ler mais