Todos os capítulos de 『男装の令嬢は男になりたい』: Capítulo 31 - Capítulo 40

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第30話 『ビギタリアダンジョン』10

   ホブゴブリンの咆哮が洞窟に響き渡る。  振るわれた棍棒は鉄槌のごとき破壊力を秘め、アランの頭上へ振り下ろされる。「――ッ!」  アランは長剣を両手で構え直し、刃を斜めに立てて受け止める。  火花が散り、骨が軋むような衝撃が腕を伝った。  重い。押し潰される――!「アラン!」  リディアが叫び、ナイフを投げつける。鋭い音を立ててホブゴブリンの肩に突き刺さり、その動きが一瞬止まった。「今だっ!」  レオンの詠唱が終わる。 「《火よ、弾けよ!》」  炸裂した火球がアランを狙うゴブリンを包み込み、燃え上がる。 オルフェが大剣を振り抜いた。二匹一度にゴブリンがはじけ飛ぶ。 「フ、軽いな!」 アランの背後から迫るゴブリンをセリウスが斬り伏せる。 「アラン、あとはホブゴブリンだけだよ!」 セリウスの声がアランの耳を打ち、全身を奮い立たせる。  息を吸い込み、全身の力を長剣に込める。 「こいつは、私一人でやっつける。誰も手を出さないでくれ!」 アランの決意に、仲間たちは一瞬だけ迷った。しかしその背中に宿る気迫を見て、言葉を飲み込む。 ホブゴブリンが怒声をあげ、棍棒を横薙ぎに振り払った。石壁が粉々に砕け、破片が飛び散る。  アランは長剣を引き、身をひねってかわす。巨体の懐へ滑り込み、渾身の斬撃を叩き込むが――。  刃は厚い筋肉をさききれず、浅い傷を残すのみ。「ちっ……浅いか!」  アランの額から汗が滴る。 ホブゴブリンの棍棒が再び振り下ろされる。衝撃波のような風圧にアランの金糸のような長髪が舞う。  両手剣で棍棒を受け止めるたびに、腕の筋肉が悲鳴をあげた。膝が石畳にめり込むほどの圧力。  それでも、歯を食いしばりながら押し返す。「アラン、負けるな!」  セリウスが声を張り上げる。手は剣の柄を握りしめていたが、一歩も動かない。――アランが託した覚悟を守るために。 リディアは槍を構えながら歯噛みした。
last updateÚltima atualização : 2026-01-16
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第31話 オルフェとフィオナ 1

   三日の間セリウス達はダンジョン内で野営をし、全員がホブゴブリンの単独撃破を経験、余裕をもって一対一でホブゴブリンを倒せるようになっていた。  そして無事、1回目のダンジョン探索を切り上げ、騎士養成学校《ヴァルロワ学舎》の寮に帰還した。「寮の飯が、こんなにうまいと思ったのは、初めてだぜ……」  オルフェは肉の煮込みを大口でかっこみながら、心底幸せそうに笑った。「ほんと……。三日間ずっと干し肉と冷たい携帯食ばかりだったもんね」  リディアは湯気の立つスープを一口飲み、頬を緩ませる。舌に広がる塩気と温かさが、胃の底までじんわり染みわたっていった。 セリウスはパンを両手でちぎりながら、感慨深げに呟いた。 「こうして全員で揃って帰ってこられて、本当に良かった……」  その言葉に、全員の表情が一瞬引き締まる。ダンジョンでの死闘の記憶はまだ鮮明で、誰もがその危うさを知っていた。 だが次の瞬間、アランが豪快に笑って肩を叩いた。 「おいおい、暗い顔するなって! 全員がホブゴブリンを一対一で仕留められるようになったんだ。もっと胸を張っていいんだぜ!」「そうそう。僕らはみんな、一回りも二回りも強くなって帰ってきたんですよ」  レオンが柔らかな笑みを浮かべる。眼差しには、以前にはなかった自信の光が宿っていた。 「二回目のダンジョン探索は、今より奥に進むんですよね」「……次は、もっと強い敵が待ってるんだろうな」  リディアがぽつりと呟く。 セリウスは小さく笑い、パンをかじりながら答えた。 「うん。たぶんホブゴブリンが一度に五匹とか。……全く違う魔獣が現れたりするかもしれないしね」「ふふふ! 腕がなるぜ!」  オルフェが自身満々に笑う。 そのとき、華やかな声が食堂に響いた。 「あらあら皆さん、お久しぶりね。実家にお戻りになられているかと思っていたわ。三日もダンジョンに潜っていたの?」  現れたのは、フィオナ・ド・ヴェルメール。美貌と仕草は完璧に女性そのものだが、実は男である。学舎では男物の制服を着ている
last updateÚltima atualização : 2026-01-17
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第32話 オルフェとフィオナ 2

 夏の太陽に照らされた校庭に、フィオナの声が高らかに響いた。「いくわよ、オルフェ!」 しなやかな脚が芝を蹴り、軽やかに駆け出す。  その動きは戦いというより舞踏に近い。ひらりとスカートが揺れ、白い足が弧を描いたかと思うと、鋭い突きがオルフェの胸を狙う。「チッ、速ぇ!」  オルフェは反射的に大剣を横薙ぎに振る。だがフィオナは身体をひねり、刃を紙一重で避けると、再び細剣の切っ先を伸ばした。 チリリ、と金属音が夜に弾ける。  フィオナの突きが、オルフェの肩鎧をかすめたのだ。「ほら、言ったでしょう? 折られる前に刺すって」  フィオナは挑発的に笑みを浮かべる。「小癪な……!」  オルフェは唸り声をあげ、踏み込んだ。大地が震え、長大な剣がうねりをあげて振り下ろされる。 だがフィオナはその軌道を読んでいた。  舞うように身を翻し、髪とスカートをふわりと揺らすと、オルフェの死角へ滑り込む。「そこっ!」  閃光のような突きが、オルフェの脇腹を狙った。「ぐっ……!」  鋭い痛みにオルフェが顔をしかめる。観衆の生徒たちが「おお!」と歓声をあげた。「なあ、セリウス。フィオナって……本当に速いな」  リディアが感嘆の声を漏らす。「うん……。力はオルフェに及ばないけど、一撃を当てる技術は確かに上だよ」  セリウスは真剣な顔で見つめていた。「まだまだこれからさ」  アランがにやりと笑う。 「オルフェは、やられっぱなしの男じゃないからね。ここからが本番だよ」 戦場では、フィオナがひらりひらりと舞い、オルフェの猛攻をいなし続けていた。  その姿はまるで白鳥の舞のよう。観衆の誰もが目を奪われ、次の一手を息を呑んで見守っていた。 だが、ここでオルフェが黙って押され続けるはずもなかった。  大剣を振り下ろした姿勢から、彼はぐっと腰を落とし、重心を低く構え直す。「……なるほどな。速ぇ突きは厄介だが、同じ調子で何度も
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第33話 《王家紋章の剣》事件 1

 模擬戦を終えた翌日。校庭での騒ぎを知った教師グランツにこっぴどく叱られたセリウスたちと、オルフェ、フィオナ。  罰として命じられたのは、学舎の誇りとされる展示室の清掃だった。「……ったく、雑巾がけだぁ? 戦ったばかりの俺に休みもねぇのかよ」  オルフェはぶつぶつ言いながらも、渋々バケツを抱えてついていく。 広間の奥にある展示室は、ひんやりとした空気に包まれていた。  高い天井からは淡い魔導灯が下がり、壁一面には古代の甲冑や名工の武具が並ぶ。  その中で、ひときわ人目を引くものがあった。 金の装飾を帯びた鞘に収められた、一本の長剣。  柄には深紅の宝石が嵌め込まれ、鍔の中央には、王家の紋章――双頭の獅子が刻まれていた。  透明な魔導ガラスのケースに収められ、周囲には淡い結界の光が漂っている。「……これが、《王家紋章の剣》」  セリウスは思わず息を呑む。「綺麗……」  リディアが目を奪われ、思わずケースに手を伸ばしかけて引っ込める。 「ねえ、あれってただの飾りじゃないよね?」 レオンが静かに頷いた。 「うん。由緒ある王家の儀礼剣だよ。戦で使われた記録はないけれど……王国そのものの象徴として、代々大切に守られてきたものだ」「お宝ってやつだな。売ったら一体いくらになるんだろうな」  オルフェがニヤニヤ笑うと、フィオナが扇子を開く仕草で口元を隠した。 「まあ下品な。あなたみたいな野蛮人に触られたら、一瞬で錆びてしまいそうですわ」「なんだと!?」 「ふふふ、冗談よ」 そんなやりとりをよそに、セリウスは剣から目を離せなかった。  ただの儀礼剣にしては、妙な迫力がある。  まるでガラス越しに視線を感じるような……王家の威光そのものが、そこに凝縮されているようだった。「……不思議だな。この剣、ただ飾ってあるだけなのに、見てると背筋が伸びる」 アランも真顔で頷いた。 「わかる。これはただの宝じゃない。王家の歴史そのものだ」
last updateÚltima atualização : 2026-01-19
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第34話 《王家紋章の剣》事件 2

   疑いの影を振り払うべく、セリウスたち五人はフィオナを加え、六人で学園内を動き出した。  寮の廊下は、夏休み中ということもあり普段より静かだった。だが、帰省していない学生たちの視線が氷のように突き刺さる。誰もが盗難事件の噂を耳にしており、六人の動きに注目していた。「まず、展示室の状況をもう一度確認しよう」  セリウスが声をひそめ、慎重に歩を進める。 展示室の扉は厳重に閉ざされていたが、内部を覗くと、剣があった場所の台座だけがぽっかり空いていた。  アランが指先で台座の縁を撫でる。 「触った痕跡は残ってるな……誰か、手袋なしで扱ったんじゃないか?」 リディアは床や壁に目を凝らし、光の反射や微細な擦り傷を探す。 「ほら、この辺り……床が少し削れてる。台座の横を何か引きずった跡かも」「なるほど……」  セリウスは考え込む。 「犯人は素早く動いたんだろうな。私たちより小柄で、長剣を使える力はない感じかな?」 フィオナは棚の影から目を光らせ、独自の推測を口にする。 「この痕跡だと、重さのある剣を持ち上げるのは大変そうね。軽くして運べる方法を考えてたんじゃないかしら」 レオンは魔法の知識を活かし、結界や魔法の痕跡の有無を調べる。 「結界には異常なし……でも魔法の痕跡は微かに残っている。誰かが隠しの魔法を使ったのかもしれない」 セリウスは地面に跪き、指でわずかな土埃の位置を確認する。 「ここから外に持ち出された……痕跡は外に向かっている。学園内を通って運んだ可能性が高いよ」 六人は互いにうなずき、分担して捜査を進めることにした。  リディアとフィオナが周囲の窓や扉を調べ、オルフェとアランが床の傷や重さの痕跡を追う。  セリウスとレオンは結界や魔法の跡を分析しつつ、可能な逃走ルートを探った。「くっ……手がかりはあるけど、まだ犯人まではたどり着けないか」  アランが唇を噛む。「焦らなくても大丈夫。時間をかけて見つければ必ず……」  セリウス
last updateÚltima atualização : 2026-01-21
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第35話 二度目のダンジョン探索 1

   セリウスたち五人は、二度目のダンジョン探索に挑んでいた。各自五日分の水食糧を担ぎ、前回探索したところより、さらに深い層まで潜る予定である。  前回より荷は重く、肩や腰にずしりと食い込む。しかし誰も弱音を吐かなかった。むしろ、その痛みさえも力の証として誇らしく感じていた。「……よし。前回は三日で戻ったが、今回は最低でも四日は潜ることになる」  アランが地図を広げ、松明の光にかざす。 「ホブゴブリンより強い相手と遭遇する可能性が高い。気を引き締めよう」「へっ、望むところだぜ」  オルフェが笑みを浮かべ、大剣を軽く肩に担ぐ。筋肉は以前より締まり、目にも力が宿っていた。「僕らの動きなら、多少の強敵でも切り抜けられるはずです」  レオンが穏やかに言う。その口調は落ち着いているが、握る長槍の先はわずかに震えていた。緊張もまた、成長の証だった。「油断は禁物だよ。深層に進むほど、足場だって怪しくなる。魔物以外にも危険は多い」  リディアが鋭い目で通路の先を見据える。背には短槍を負い、投げナイフも十分準備されている。 アランは長剣を鞘からわずかに引き抜き、刃を確かめてから、ゆっくり納める。 「……楽しみだな」  その呟きは静かだが、確かな自信を含んでいた。 前回と違うのは、全員が一対一でホブゴブリンを倒せるという確固たる経験を積んでいること。誰もがその実力を胸に秘め、次の階層への一歩を踏み出した。 しばらく進むと、通路がふいに開け、広間へと繋がった。天井は高く、岩壁の裂け目から滴る水が床に溜まり、ぬめった苔で覆われている。 セリウスが息を止めた。 「……いる」 広間へと踏み込んだ瞬間、低い唸り声が響いた。 闇の奥から姿を現したのは――三匹のホブゴブリン。  濃い緑の皮膚に、鈍く光る棍棒。以前、命がけで一体を倒したあの魔物が、群れを成して迫ってくる。「三体……!」  リディアが声を上げる。「怯むな、私たちならやれる!」  アランが号令を飛ばした。
last updateÚltima atualização : 2026-01-22
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第36話 二度目のダンジョン探索 2

   四体のホブゴブリンを退けたあとも、五人は足を止めなかった。  通路は次第に狭くなり、やがて下り階段が姿を現す。苔むした石段を降りるにつれて、空気は一層冷たくなり、吐く息が白く濁るほどだった。「……寒い。ここ、さっきまでと全然違う」  リディアが両腕をさすりながら周囲を見渡す。「空気が淀んでるな。湿気じゃなく……死んだものの匂いだ」  アランが険しい目で言った瞬間――。 カラン……カラン……。 通路の奥から、不気味な金属音が響いた。  それは規則的で、まるで兵士の行進のようだった。「おい……聞こえるか?」  オルフェが大剣を構え直し、低く唸る。 やがて闇の中から現れたのは、骨と錆びた甲冑。  生者の肉を持たず、眼窩に青白い光を宿した骸骨の兵士――スケルトンだった。「なっ……骨が、動いてる……?」  レオンが目を見開く。震えが声に混じっていた。 スケルトンは剣と盾を構え、ぎこちなくも迷いのない足取りで迫ってくる。  その姿はまさしく、死してなお戦場に立つ兵士。 ――そして、その空洞の眼窩がギラリと光り、通路の奥からこちらをまっすぐに捉えた。 「……見つかった!」  セリウスが息を呑む。青白い光が、彼らの存在を敵と認識した証だった。 骨の擦れる不気味な音を立てながら、スケルトンは一斉に顔を上げ、盾を鳴らして前進を始める。  その光景に、背筋を凍らせるほどの殺意がはっきりと伝わってきた。「くるぞ!」  アランの叫びと共に、最前列のスケルトンが斬りかかってきた。 ガキィィンッ――!  鋼と鋼が打ち合う甲高い音が、冷たい石壁に反響する。  セリウスが長剣で受け止めたが、衝撃は生者の武人と変わらぬ重みを持っていた。「うっ……重い!? ただの骨じゃない……!」  刃を押し返そうとするが、骸骨の兵士は眼窩の光を揺らめかせ、無感情のまま押し込んでくる。 その隙を突くように、後方から別のスケルトンが
last updateÚltima atualização : 2026-01-23
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第37話 二度目のダンジョン探索 3

   祭壇から噴き出す瘴気がさらに濃くなった。  その中で、ひときわ大きな影がゆっくりと立ち上がる。 ――ガシャリ。 全身を黒ずんだ甲冑で覆い、両手には大剣を握った巨躯。  眼窩には紅蓮の光が燃え、普通のスケルトンとは明らかに異なる威圧感を放っていた。「っ……でかい……!」  オルフェが思わず息を呑む。 「こいつ、他の骨とは違うぞ!」 黒鉄のスケルトン――その剣がゆっくりと持ち上がると、周囲の骸骨たちが一斉にひれ伏した。  まるで王を讃える兵のように。「……隊長格か、それとも守護者か」  アランが歯を食いしばる。 「どちらにせよ、あれを倒さなきゃ祭壇は壊せない!」 黒騎士スケルトンが低く唸るように顎を震わせ、大剣を地に叩きつけた。  ドン、と震動が走り、周囲の骨がバラバラと組み上がり、新たな兵が立ち上がる。「また呼び出した!?」  リディアが舌打ちする。「雑魚はレオンとリディアで抑えてくれ! 私とセリウス、オルフェは正面の黒騎士スケルトンだ!」  アランが即座に指示を飛ばした。 「援護は任せた!」「行くぞッ!」  セリウスが咆哮し、仲間たちが一斉に突撃した。 黒騎士の大剣が横薙ぎに振るわれる。  セリウスとアランが同時に剣を交差させて受け止めるが―― ガギィィィィンッ! 凄まじい衝撃に、二人の足が床を滑り、石畳に亀裂が走った。「おっ……重すぎる!」 「根性で……押し返す!」 オルフェが背後から渾身の一撃を叩き込む。  しかし黒騎士の甲冑は厚く、火花を散らすだけで傷一つつかない。「ちっ……ただの骨じゃねぇな!」 その隙に、リディアの投げナイフが飛び、黒騎士の眼窩を正確に撃ち抜く。  だが、紅蓮の光は一瞬揺らめいただけで、すぐに燃え盛るように戻った。「効かない……!?」「核があるは
last updateÚltima atualização : 2026-01-25
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第38話 二度目のダンジョン探索 4

 倒れた黒騎士の残骸を踏み越え、セリウスたちは祭壇の周囲を調べ始めた。  瓦礫に埋もれた一角で、オルフェが金属を叩くような音を響かせる。「おい、こっちに来てみろ!」  瓦礫をどけると、黒ずんだ鉄の宝箱が現れた。  鎖で厳重に縛られ、表面には古代文字のような刻印が施されている。「罠かもしれん。慎重にな」  アランが剣を構えて警戒し、リディアが屈み込んで鍵穴を覗き込む。「……ふむ、魔力の封印付きだな。けど、そう強力な仕掛けじゃない」  器用に工具を差し込み、かちりと音を鳴らす。  鎖が解け、箱の蓋が重々しく開いた。 ――ぱあっ。 中から光が溢れ出し、洞窟の壁を黄金色に照らす。  中に収められていたのは、煌びやかな装飾を施された指輪と、青白く輝く魔石だった。「こ、これは……!」  レオンが思わず手を伸ばす。 「きっと古代の魔導具ですよ。外に出たら鑑定士に見てもらいましよう!」「本物の古代の魔導具か!? こんなところに、そんなお宝が眠ってるのかよ……!」  オルフェが目を丸くする。 セリウスは宝を手に取ると、仲間たちに視線を向けた。 (もしかしたら、『性転換の魔道具』かもしれない。いや、そんな簡単に出会えるはずはないか……) 「分け前は帰ってから相談しよう。今は、無事に生還するのが先決だ」 五人は互いに笑みを浮かべ、束の間の達成感に浸る。  しかし、その背後で――祭壇の割れ目から、墨のように濃く黒い液体がじわりと滲み出していた。 じわり、と祭壇の割れ目から滲み出した黒い液体は、やがて土に吸い込まれることなく、地表を這うように広がっていった。「……なんだ、これ」  オルフェが剣先で突こうとした瞬間、液体はしゅうっと煙のように揮発し、消え去った。「魔力の残滓……?」  リディアが険しい顔で呟く。 アランが胸で腕を組み眉根を寄せる。 「黒騎士を倒したことで、別の何かが目覚めた可能性があるかもな」
last updateÚltima atualização : 2026-01-26
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第39話 二度目のダンジョン探索 5

 轟音が地下空洞に木霊した。  スケルトンの群れが、一斉に突撃を開始したのだ。  甲冑の擦れ合う音、骨のぶつかる音、剣を振るう金属音……それらが渦を巻き、押し寄せる怒涛の波のように迫ってくる。「走れ!」  アランが剣を振り抜き、追いすがる一体の首を斬り飛ばす。  乾いた骨の山を蹴散らしながら、仲間たちは必死に階段を目指した。「《ライトニング・ボルト》!」  レオンの詠唱と共に、魔導書が眩い閃光を放つ。  雷撃が直線状に走り、十体近くのスケルトンをまとめて薙ぎ払った。  骨が黒焦げになり、甲冑が爆ぜる音が響き渡る。「いいぞ、レオン!」  オルフェが大剣を振り回し、崩れかけたスケルトンを叩き潰した。  だが、数は減ったようには見えない。むしろ波のように押し寄せてくる。「くっ……振り返るな! ひたすら走け!」  セリウスが仲間を鼓舞する。 背後では、リディアが必死にランタンを掲げ、暗闇を照らし続けていた。「この数……本当に終わりがあるのか!?」  オルフェが歯を食いしばる。 アランが冷静に叫ぶ。 「時間を稼ぐしかない! レオン、もう一発撃てるか!」「やってみます!」  レオンは震える指先で魔導書のページをめくり、再び詠唱に入った。 「――雷よ、奔れ! 《チェイン・サンダー》!」 雷光が連鎖し、骨の軍勢を次々と貫いた。  火花が散り、暗黒の広間が一瞬だけ昼のように照らし出される。  しかし、焼き切った骸骨の後ろから、さらに無数の亡者が這い出してくる。「まだだ、止まらない……っ!」  レオンが額から汗を滴らせ、よろめく。 アランが彼を支え、声を張り上げた。 「今のうちに階段を登れ! 俺とオルフェで食い止める!」「馬鹿言うな、全員で逃げるんだ!」  セリウスが反論するが、もう選択の余地はなかった。  スケルトンの軍勢はす
last updateÚltima atualização : 2026-01-27
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