「六千万――、他にはいらっしゃいませんか!?」 拍賣人の声が震える。「七千万だッ!」 豪奢な装束を纏った中年の貴族が立ち上がった。「このバルフォード侯爵家が退くと思うか! この石は我が領の未来を左右するのだ!」 観客からざわめきが起こる。名門バルフォード侯爵――中央でも屈指の権勢を誇る貴族である。 だが黒衣の人物は微動だにせず。「八千万」 低く、ただ一言。 場が再び凍りつく。 侯爵の額に汗が滲み、唇を噛みしめた。「ふ、ふん……! 九千万!」「一億」 黒衣が告げた瞬間、歓声と悲鳴が同時に巻き起こった。「一億ゴールドだと……!? 正気か!」 バルフォード侯爵が立ち尽くす。これ以上は家の財力でも背伸びになる――誰もがそう悟ったその時。「一億五千万!」 重々しい声が会場を震わせた。 扉の方から、軍装の壮年の男が悠然と姿を現す。 会場にいた者たちが息を呑んだ。「まさか……王国軍総司令、ゼルディア将軍……!」 将軍は堂々と壇に歩み寄り、観客を一瞥した。「この媒介石は、個人ではなく王国のために必要だ。国家の名において入札する」 黒衣の人物と将軍の視線が交錯する。場内の緊張は最高潮に達した。 数秒の沈黙――そして黒衣は小さく舌打ちすると、椅子に深く腰掛けた。「……降りる」 拍賣人が高らかに槌を打ち鳴らした。「落札――一億五千万ゴールド! 落札者は王国軍総司令、ゼルディア将軍殿でございます!」 場内に万雷の拍手とどよめきが広がる。 セリウスたちは呆然としながらも、歴史的瞬間を目撃した興奮に胸を震わせていた。「すごい……俺たちの石が、国を動かしたんだ……」
Última atualização : 2026-02-10 Ler mais