Todos os capítulos de 『男装の令嬢は男になりたい』: Capítulo 21 - Capítulo 30

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第20話 夏の学園祭

   六月の暑さが徐々に増していく《ヴァルロワ学舎》。石造りの校舎の間を吹き抜ける風にも、夏の香りと、微かに焼けた草の匂いが混じる。 広場では、学舎の学園祭準備が始まっていた。生徒たちはテントを立て、装飾用の旗を風に揺らし、各クラスごとに出し物の準備に取り組んでいる。「この飾り、もう少し低い位置にしたほうが見栄えいいんじゃない?」  セリウスの落ち着いた声が、金槌の音や笑い声にまぎれて響く。彼は友人たちと一緒に、自分たちのクラスの展示ブースの飾り付けを調整していた。 アランは重い木箱を軽々と抱え、的確な指示を飛ばしながら周囲をまとめ上げていた。 「机の配置はこうだよ。通路は広く取って、訪問者が混乱しないようにね」 リディアは元気いっぱいに旗を持ち、柱に結びつける。 「ほら、こっちもピンで留めるんだ。夏っぽく、元気に見えるだろう!」  その鮮やかな赤と金色の旗は、青空に映えてまぶしかった。 オルフェは少し汗をかきながら、屋台用の道具を運ぶ。 「重いな……でも、これで焼き菓子やジュースを提供できるはずだ」  彼の手には、大剣に似た大きな木製の棚板が抱えられていたが、周囲の生徒が笑いながら手伝ってくれた。 レオンは手帳に数字を書き込みながら、光の角度や展示の配置を緻密に調整していた。 「光の加減で展示が見やすくなるはずです……この位置で、陰にならないように」 学舎の廊下や階段には、絵画や手作りの装飾が所狭しと並ぶ。 校庭の端では、音楽部や演劇部の生徒たちがリハーサルを行っており、明るく伸びやかな歌声や、台詞の練習の声が風に乗って響いてきた。「よし、午後には全体の確認を終わらせよう」  セリウスが皆に声をかける。 「暑いけど、夏の学園祭は一日だから、思い残すことないように楽しもう」 六月の柔らかい日差しの下、学舎の生徒たちは笑顔で作業に励む。教室の窓からは、風に揺れる旗や、彩り豊かな装飾がちらりと見え、夏の学園祭の期待感が校舎中に満ちていた。 《ヴァルロワ学舎》の夏の学園祭当日。  セリ
last updateÚltima atualização : 2026-01-04
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第21話 『ビギタリアダンジョン』1

   夏休みに入った《ヴァルロワ学舎》の寮は、昼間の喧騒を終えて少し静けさを取り戻していた。  外では虫の声が響き、窓から流れ込む夜風はむし暑い日中とは違って心地よい。 だが、セリウスたち五人が集まるアランの部屋には緊張した空気が漂っていた。  ――明日、初めての「ダンジョン探索」に挑むからだ。 アランは資料の束を広げ、慎重に説明を始める。 「明日挑むのは『ビギタリアダンジョン』通称『風穴洞窟(かざあなどうくつ)』だ。学舎の東、三時間ほど歩いた丘陵地帯に入口がある。外から見ると小さな岩穴だが、地下は複雑な迷路状になっていて、薄暗く湿気が常に漂っている」 セリウスは資料を覗き込み、眉をひそめる。 「迷路状……ですか。視界も悪く、足元も滑りやすいとなると、戦闘中に方向感覚を失いやすいですね」 アランは地図を指でなぞりながら続ける。 「入口付近は自然光が届くが、中に入れば暗闇。初級ダンジョンだから、敵は小型モンスターが中心だ。コウモリ型の群れ、スライム、小型ゴブリン……地下環境特有の敵もいる。戦闘経験だけでなく、地形を読む力も必要になる」 リディアが小さく息をのむ。 「戦闘だけじゃなく、探索の判断力も試されるんだね……」 オルフェは胸を叩き、笑みを浮かべる。 「面白そうじゃん! 迷路でモンスター退治……俺の腕も試されるってわけだ!」 セリウスは肩の荷を少し下ろすが、心の奥でわずかに緊張を抱えた。 (……風穴洞窟か。無理せず、全員で無事に戻ってこなくちゃ)「予備のポーションは三本。回復用は俺が持つけど、攻撃補助はリディアに任せる」  机の上に並べられた小瓶を指し示しながら、アランがきっぱりと言った。  彼は公爵家の家柄らしく几帳面で、こういうときも抜かりがない。「了解! 炎の粉末も持ったし、後は任せといて!」  リディアは元気よく笑い、小瓶を腰のポーチに収める。 レオンは黙々と紙に記録を書き込んでいた。 「道中の分岐の数、地形の推測……初級ダンジョンといって
last updateÚltima atualização : 2026-01-05
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第22話 『ビギタリアダンジョン』2

   洞窟に一歩踏み入れると、外の光はあっという間に遠ざかり、周囲は薄暗く湿った空気に包まれた。石の壁はじっとりと水気を帯び、そこから滴る水滴が「ぽたり」と一定のリズムで落ちては、小さな音を反響させる。足元に転がる小石を踏むたび、硬質な音がいやに響き、五人はそれぞれ無言で背筋を伸ばした。「……空気が冷たいな」  セリウスは荷物の肩紐を握り、耳を澄ましながら慎重に足を進める。洞窟内特有のひんやりとした風が頬をかすめ、そのたびに胸の奥で不安が小さく膨らんでいった。「初めてだから慎重にね。無理に先へ進まなくていい」  アランが前方を見据えたまま低く告げる。その横顔は冷静に見えるが、握った剣の柄にはわずかに力がこもっている。 やがて通路は左右に枝分かれし、迷路のように入り組んだ姿を現した。そのとき――遠くで、不規則な羽音がかすかに響く。最初は耳鳴りのように思えたが、やがてそれは確かな群れの気配へと変わっていく。「……あれは……?」  レオンが顔を上げ、暗がりを凝視する。目を凝らすと、揺れる影が岩壁に映り、ばさり、ばさりと羽ばたきが近づいてきた。「戦闘か? ……まずは様子見だな」  オルフェが大剣を肩に担ぎ、筋肉を軋ませながら腕を鳴らす。その瞳には戦意が灯っていた。 リディアは素早くポーチから小瓶を取り出す。中の粉末が光を受けてきらりと反射した。 「火の粉、準備オッケー! 狙いを外させてやる!」 次の瞬間、黒い影が一斉に襲いかかってきた。小型のコウモリの群れだ。鋭い牙を剥き、乱れ飛ぶ羽音で耳を狂わせながら、一行を混乱させようと舞い降りる。「くっ……!」  アランは長剣を構え、正面から切り払った。羽が舞い散るが、暗闇と耳障りな羽音に視界も感覚も乱される。斬っても斬っても影が押し寄せ、額に冷や汗がにじんだ。「アラン、大丈夫?」  セリウスが後方から声を投げる。「……少し手こずってる!」  アランは必死に応えるが、剣筋は次第に荒くなり、いつもの冷静さは影を潜めていた。焦りを隠そうとするその姿に、セリウスの胸がざわつく。
last updateÚltima atualização : 2026-01-06
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第23話 『ビギタリアダンジョン』3

   ゴブリンたちの咆哮が洞窟に反響した。  そのまま突っ込んでくる三体――後方に控える一体が、ギラついた目で状況を伺っている。「正面二体、俺とオルフェで受ける!」  アランが叫ぶと同時に、長剣を構えて前に出た。  オルフェも大剣を肩に担ぎ、豪快に踏み込む。「うおおっ、来やがれぇッ!」 火花が散る。錆びた棍棒と鋼鉄の剣がぶつかり合い、甲高い音が洞窟に響いた。  ゴブリンの短剣は古びていて切れそうにないが、異様な力で叩きつけられれば人間の骨など容易く砕かれるだろう。 アランは剣を横に構え、その一撃を受け流しつつ反撃に転じる。「はあっ!」  閃く刃。だがゴブリンは予想以上に素早く、身をひねって避け、逆に短剣を突き出してきた。 「くっ……!」  アランは紙一重で剣を戻し、火花を散らしながら受け止める。衝撃が腕を痺れさせた。 一方のオルフェは正面から力勝負を挑んでいた。  大剣を振り下ろせば、狭い通路の壁に当たりかねない――それでも彼は構わず豪快に横薙ぎに振るう。 「らあッ!」  轟音とともに、ゴブリンの棍棒ごと弾き飛ばす。  しかし相手も素早く立て直し、低い姿勢で飛びかかってきた。 「おっとっと……!」  オルフェは体勢を崩しながらも、肩で受け止めて弾き返す。「無茶すんな、オルフェ!」  アランが短く叫ぶ。だがオルフェは不敵に笑った。 「心配すんな! 正面は俺たちが押さえる!」 ゴブリンたちの目は血走り、執念深く二人を狙ってくる。  通路が狭いため、剣も棍棒も振り抜きにくい。体と体をぶつけ合い、息がかかる距離での消耗戦になっていった。 アランは相手の短剣を下からすくい上げるようにして受け流し、隙を突いて斬りつけた。だが、ゴブリンは皮膚を浅く裂かれながらも怯まず、牙をむき出し、噛みついてくる。 「ぐっ……!」  咄嗟に剣の柄で顎を押し返し、体を捻って距離を取る。 オルフェは反撃の隙を狙い、大剣を振り上げた。 「おら
last updateÚltima atualização : 2026-01-07
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第24話 『ビギタリアダンジョン』4

「魔石を回収して先に進もう」  アランが皆を見回す。「はい。オルフェ。魔石持ってて」  レオンが魔石を拾ってオルフェに渡す。「はい。オルフェ」  セリウスも魔石を拾ってオルフェに渡した。リディアも続く。  オルフェは、「俺は荷物持ちじゃないぞ」という言葉を飲み込み自分も一つ魔石を拾った。 アランが、オルフェに声をかける。 「オルフェが一番体力があるからな。頼りにしてるぞ」 オルフェがニヒルに微笑む。 「任せろ」 リディアは、もう先頭を歩き出している。ダンジョン内の罠をみつけるのはリディアの役割だ。レオンが地図を書き残しながら後に続く。オルフェも前方の壁役としてリディアの次を歩いている。最後尾はセリウスで後方担当。その前がアランで指揮官役である。 洞窟型のダンジョンには、足元が崩れやすい場所があり自然の落とし穴になっている。頭上からの石の崩落も要注意だ。リディアがいち早く見つけて皆に注意する。 5人はあたりに注意をしながら、慎重に奥へと進んでいく。「前方、何かいる。……ゴブリン5匹だ!」  リディアが叫んだ。「任せろ!」  オルフェとアランが最前列に飛び出す。レオンとリディアが槍を構えた。 洞窟の奥で、五つの影がギラつく目を光らせた。  ゴブリンたちが甲高い声で咆哮し、手にした錆びた短剣や棍棒を振りかざす。「正面、俺とオルフェで受ける! 後衛は援護!」  アランが剣を抜き放つと同時に、オルフェが大剣を肩に担ぎ、豪快に踏み込む。「ははっ! 今度はさっきより一匹多いじゃねえか! 上等だ!」  大剣が唸りを上げて振り下ろされ、突進してきた一体を真正面から弾き飛ばす。火花と衝撃音が洞窟に響き渡った。「リディア、右を牽制!」 「了解!」  リディアが素早く火の粉末を投げる。ぱちぱちと火花が弾け、右手のゴブリンが目を細めて怯んだ。  その瞬間を逃さず、レオンの長槍が閃く。 「はッ!」  穂先が正確に胸
last updateÚltima atualização : 2026-01-09
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第25話 『ビギタリアダンジョン』5

  五人は石造りの門をくぐり抜けた。 途端に、空気がさらに冷たくなる。湿り気に加え、何かの“気配”が漂っていた。「……空気が違う。さっきまでの洞窟とは別物だな」 アランが剣の柄に手をかけ、警戒を強める。「壁も床も、きっちり削られていますね。明らかに、自然の洞窟じゃない」 レオンが観察しながら地図に線を引く。「ふふん! こういうのを冒険って言うんだろ?」 リディアは赤毛を揺らして胸を張り、ずかずかと先に進もうとする。「リディア! 罠があるかもしれないよ!」 セリウスが慌てて声をかけると、リディアは振り返ってニッと笑った。「だから俺が先頭なんだよ。罠探しは俺の役目だろ?」「……頼もしいけど、もうちょっと慎重に頼む」 アランがため息をつく。 その時―― カチリ。「っ!」 リディアが踏んだ石畳が、わずかに沈んだ。「リディア、下がれッ!」 アランが叫ぶ。 直後、天井の石板が軋みを上げ、鋭い矢が横一線に放たれた。 ヒュンッ! ヒュンッ! 鋭い風切り音が耳を裂く。「うわっ!」 リディアはとっさに身を伏せて転がり、矢の雨をかわした。 矢は後方の壁に突き刺さり、乾いた音を立てる。「……あ、あぶねえ……」 床に伏せたまま息を荒げるリディア。 セリウスが青ざめて駆け寄った。「だから言ったのに! 大丈夫か!?」「かすりもしてねえ! ははっ、ちょっとドキドキしたけどな!」 リディアは赤毛を振り乱しながら笑ってみせた。「心臓に悪いんだよ……」 セリウスは呆れつつも安堵し、肩を落とした。「猿も木から落ちる。リディアも罠に引っかかるってか」 オルフェが腹を抱えて笑いだす。
last updateÚltima atualização : 2026-01-10
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第26話 『ビギタリアダンジョン』6

 通路をしばらく進むと、ちょうど広間のように開けた場所に出た。天井は高く、苔が淡く光を放っている。  ここならば野営もできそうだ、とアランが判断する。「今日はここで休もう。無理して進むより、体力を残した方がいい」  そう言うと、五人は頷き、それぞれ準備に取りかかった。 オルフェが背負っていた荷を下ろし、折り畳み式の簡易テントを広げる。 「よっ……と! こういう作業は俺の腕力が役立つだろ?」 「珍しく役に立ってるな」  リディアがからかうと、オルフェは眉を吊り上げる。 「珍しく、は余計だ!」 レオンは火打石で火を起こし、小さな焚き火を作った。ぱちぱちと音を立てて炎が燃え上がり、広間の薄暗さを和らげる。 「やっぱり火があると落ち着きますね」 「うん……あったかい」  セリウスは炎を見つめ、ほっと息をついた。「じゃあ、晩飯にしようぜ!」  リディアが嬉しそうに声を上げ、持ってきた干し肉や黒パンを取り出す。 「お前……そういう時だけは本当に元気だな」  アランが苦笑する。 五人は簡素な食事を囲み、思い思いに口を動かす。  戦闘の緊張がようやく緩み、笑い声が響いた。「それにしても、セリウス。最後の一撃、なかなか格好よかったぞ」  オルフェが大きく頷く。 「お、お世辞でも嬉しいよ……」  セリウスは赤面し、パンをかじって誤魔化した。 食事が終わると、アランが真顔に戻る。 「さて。夜なかは順番に見張りを立てよう。二人ずつ、交代制で行く」 「賛成です。全員で寝てしまったらゴブリンとかに、寝込みを襲われかないですからね」  レオンも同意する。「じゃあ最初は俺とアランな!」  リディアが勢いよく手を挙げる。 「……リディア、ちゃんと起きていられるのか?」 「大丈夫大丈夫! ほら、俺って元気だからさ!」  その言葉に全員が苦笑した。「次の番は私とセリウスでどうだ?」 「わ、わかった。頑張るよ。
last updateÚltima atualização : 2026-01-11
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第27話 『ビギタリアダンジョン』7

   ダンジョンの中に太陽の光は差し込まない。朝になったと思うのは唯の思い込みなのかもしれない。だが五人の体内時計は、今が朝だと告げていた。「よし、先に進むぞ!」  アランが皆を見回す。「おう!」  背中の大剣を確かめながら嬉しそうに口の端を上げる。「ふぁぁ……」  リディアが大きなあくびをして赤毛をかき乱す。 「ダンジョンの中じゃ朝日も浴びれねえし、寝ても寝ても眠い気がするな」「だからって気を抜くなよ」  アランが苦笑しながらも鋭い目を向ける。 「昨夜みたいに罠が仕掛けられてる可能性は高い。通路の石畳、壁の継ぎ目、全部よく見てくれよ。罠の看破はリディアが頼りなんだから」「はーいはーい、分かってるって」  リディアは軽口を叩きながらも、すぐに先頭に出て慎重に足を運び始める。 セリウスは肩に下げた剣を握り直し、少し緊張気味に呟いた。 「……一晩寝ても、やっぱり怖いものは怖いな」「恐怖は悪いもんじゃないですよ」  レオンが地図を広げながら、前を見据える。 「そのおかげで慎重になますからね。僕はむしろ、昨日より怖さは増してますが、それでも昨日より落ち着いてます」「昨日よりって……お前、ずっと冷静に見えたけどな」  オルフェがニヤリと笑い、大剣を肩に担いで歩き出した。 「よし、今日も暴れてやろうぜ。まだまだゴブリン共がウヨウヨしてるはずだ」「ははっ、頼もしいね」  アランが仲間たちを見回し、短く頷いた。 「全員、準備はいいな? ――行こう」 湿った石畳を踏みしめ、五人は再び闇の奥へと進んでいく。  苔むした壁は朝日など知らぬ顔で、冷たく光を反射していた。 しばらく進むと、通路の先から複数の足音が響いてきた。  ザッ、ザッ、ザッ……甲高い笑い声が反響し、闇の中から小さな影がぞろぞろと現れる。「……ゴブリン!」  アランが剣を抜く。 姿を現したのは、子供ほどの背丈しかない緑の皮膚を持つ小鬼た
last updateÚltima atualização : 2026-01-12
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第28話 『ビギタリアダンジョン』8

   ホブゴブリンの死骸が冷えた石畳の上に転がる。  血の匂いが重苦しく漂い、静寂が戻った。「……やったな」  アランが剣を下ろし、深く息を吐く。「やったぁ……! ホブゴブリンだぞ、上位種だ!」  魔石を回収したリディアが赤毛を振り乱して飛び跳ねるように喜んだ。「すごい……。あれほどの化け物を倒せるなんて」  セリウスが胸に手を当て、安堵の笑みを浮かべる。 オルフェは大剣を地面に突き立て、豪快に笑った。 「見たか! これが俺の一撃だ!」 レオンも口元を緩めながら頷く。 「確かに見事でした。……ただ」 彼は表情を引き締める。 「一体だけでこの手応えです。もし、これが群れで出てきたら……厄介どころじゃありません」 その言葉に、一同の笑みが少しずつ薄れていく。「……そうだな」  アランは真剣な眼差しで死骸を見下ろした。 「ゴブリンですら数が揃えば厄介だ。ホブゴブリンが指揮を執れば、戦いはもっと苛烈になる。今の勝利に浮かれてはいけない」「うぅ……現実的だな」  リディアは頭をかきながらも、少し背筋を伸ばした。 「でもよ、だからやり甲斐があるってもんだろ?」 オルフェは豪快に笑って答える。 「おう! 数が増えりゃ、振り回す剣も増やせるってもんだ!」「……本当に単純なんだから」  セリウスが苦笑した。 短い休息を終え、五人は再び隊列を組み直す。  苔むした通路を進むにつれ、また空気がざわつき始めた。 ――やがて。 先行していたリディアが足を止める。  その耳に、不気味なざわめきが届いた。「……来たぞ」 暗闇の奥から、複数の影が現れる。  緑の皮膚、ゴブリンの群れ――そして、その中央にまたしても濃緑の巨体。「ホブゴブリン……今度は群れを率いてるのか!」  アランが剣を構える。「ほらね、言った通りでしょう」
last updateÚltima atualização : 2026-01-14
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第29話 『ビギタリアダンジョン』9

「やれやれ、やっと終わったか」  アランが剣を下ろし、腕で額の汗をぬぐった。声は安堵と疲労が混じっている。 「なんだか私たち、強くなってるみたいだね」「うん。私たち、もうゴブリンなら苦にならないですね」  セリウスが胸を張って答える。その顔には、かつての怯えが薄らぎ、自信が芽生えつつあった。「まだ、ホブゴブリンには、苦しむけどな」  その横でリディアは短槍をくるりと回して肩に担ぎ、現実的な言葉を返す。「ふん。俺に任せとけば大丈夫。この大剣でいちげきだぜ!」  オルフェが大剣を地に突き立て、豪快に笑う。その姿はまさに頼りになる戦士そのものだった。 しかし、アランの表情は冷静だった。仲間たちの昂ぶりに流されることなく、視線を前方の暗闇へと向ける。 「オルフェは頼りになりけど、ここから先はホブゴブリンが多くなると思うんだ。私も含めて、誰もがホブゴブリンを倒せるようにならないと、この先に進むのは難しくなるだろう」 その言葉に、リディアが短槍をぎゅっと握り締める。 「そうだな。オルフェ二ばっかりいい顔はさせられねー。ホブゴブリンだって体格的には俺らと変わんねーわけだし、技で対抗すれば勝てるはずだ」   オルフェは満足そうに口の端を吊り上げ、仲間の闘志を認めるように頷いた。「僕も次はホブゴブリンを倒して見せますよ」  レオンも表情を引き締める。 ゴブリンとの戦いで、セリウスも、もうゴブリンなら楽に斬り伏せられる気がしている。自分もホブゴブリンを倒して見せる。『性転換の魔道具』は、もっと奥まで潜らなければ手に入らないんだ。改めて覚悟を固める。 「うん。私もホブゴブリンなんかに怯むもんか。リディア、レオン、負けないからね」   「皆、その意気だ。皆がホブゴブリンを倒せるようになるまで、しばらくこの辺りで戦闘経験を積んでレベルアップに努めよう。次は私がホブゴブリンを倒して見せる。その次はリディア、レオン、セリウスの順でホブゴブリンの相手をしてもらうぞ」「「「分かった」」」「じゃあここで、
last updateÚltima atualização : 2026-01-15
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