Todos os capítulos de 『男装の令嬢は男になりたい』: Capítulo 41 - Capítulo 50

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第40話 二度目のダンジョン探索 6

「……空気が違うな。長いこと閉ざされてた場所かもしれん」  アランが低くつぶやく。「こりゃますます怪しいな。罠とかねぇだろうな」  オルフェが冗談めかして言うが、その声には緊張が混じっていた。「罠はおれにお任せだぜ」  リディアが仲間を見渡し、先頭に立つ。 狭い通路は人一人がやっと通れる幅で、天井は低く、湿った石が滴りを落としていた。靴底が水を踏み、ぴしゃりと音を立てる。  奥へ進むにつれて、入り口からの光も見えなくなり、ランタンの光が唯一の頼りとなった。 しばらく歩くと、リディアが再び足を止める。 「……見ろ。壁に刻まれてる」 ランタンの明かりに照らされ、苔むした石壁に古い文字のような彫り込みが浮かび上がった。擦れて判読は難しいが、円形の紋章と、骸骨のような図形が描かれている。「こりゃ……不吉な感じだな」  オルフェが眉をひそめる。「魔術的な封印かもしれない」  アランが険しい表情を見せた。 レオンはおそるおそる近づき、指先で石の表面をなぞった。 「……何かの封印結界の痕跡ですね。でも……完全に消えてます。だいぶ昔に解除されたものかと」「それでスケルトンがたくさんいるのか? 何とか封印結界を復活できないのかな」  セリウスが呟き、仲間の顔を見渡す。 レオンの指先が石壁をなぞり続ける。古い線刻の奥には、まだかすかに魔力の残滓が漂っていた。 「……やっぱりだ。この魔法陣、スケルトンを呼び出す源を封じたものみたいです」「つまり、この壁の向こうに何かがいるってことか?」  アランが声を潜める。「はい。正確には、居るというより有るですね。スケルトンを呼び出す魔力源……。ここを崩して取り出してみましょう」  レオンの声はかすかに震えていた。 アランは即座に判断を下す。 「壊せるのか? 岩じゃないのか」「一見、岩のように見えますが、固まった土と言ってよいでしょう。きっと掘れるはずですよ。たぶん大きな魔石のようなも
last updateÚltima atualização : 2026-01-28
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第41話 二度目のダンジョン探索 7

   五人がさっきの通路へ戻るとそこにスケルトンはいなかったが、今来た道の背後から、湿った空気を切り裂くように、がしゃり、がしゃりと乾いた音が押し寄せてきた。  どうやら前の道は通れないとみて、こっちの道から追いかけてきたようだ。  狭い通路の奥、ランタンの灯りの端に白い影が揺れ、やがてスケルトンの列がずらりと現れる。「……数、けっこういるな」  アランが低く呟いた。  視界の限りでも十体以上、さらに奥から続々と現れている。「けど、まとめて来られるわけじゃねぇぜ。この通路なら出口で袋叩きにできる」  オルフェが大剣を振りかぶり、足を踏ん張る。 「よし、俺が正面で壁になる!」「じゃあ、俺はその右側から援護だな」  セリウスが長剣を抜き、オルフェの右を守る位置に立つ。「俺は通路の右端、セリウスの横だ。骨どもを短槍で狙ってやるさ」  リディアが短槍を構え、素早く位置を取った。「僕は……左の端」  レオンが息を整え、長槍を構える。レオンの右にはアランが陣取った。 やがて最前列のスケルトンが金属音を立てて剣を振りかざし、狭い通路から飛び出してきた。「来やがったなァ!」  オルフェの大剣が唸りを上げ、骨の戦士を粉砕する。  砕け散る音を皮切りに、次々とスケルトンが雪崩れ込む。 アランが鋭く叫んだ。 「崩れるな! 囲みこんで迎え撃て!」 その号令に合わせて、五人は扇のように陣を組む。  刃と骨の衝突音が広間に響き渡り、火花が散った。 オルフェの大剣が横なぎに走り、二体目のスケルトンの胴を粉砕する。砕けた骨が飛び散り、湿った石床に転がった。  だが、後ろから次々と押し出されるように、骸骨の軍勢は途切れなく現れる。「数が多い……!」  セリウスの剣が白刃を閃かせ、迫る槍を弾き飛ばす。間髪入れず逆袈裟に振り下ろし、骸骨の頭蓋を砕いた。「通路が狭いのが幸いだな……!」  リディアは短槍で素早く突き、骨の膝を狙ってへし折る。倒れ
last updateÚltima atualização : 2026-01-29
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第42話 二度目のダンジョン探索 8

  「まだ来てるよ! ……油断しないで!」  セリウスが振り返り、血走った目で奥を睨んだ。 ランタンの光に照らされ、数え切れぬほどの白い影が続々と押し寄せてくる。  召喚の源・大きな魔石は取り出した。だが、これまでに呼び出されたスケルトンたちがすべて消えるわけではない。  すべてを打ち倒すまで、この戦いは終わらないのだ。「……ったく、どんだけ呼び出されてやがったんだよ!」  オルフェが毒づき、大剣を振り上げた。「でも、もう増えはしません。片っ端からスケルトンを砕いていけば、必ず終わりは来ます!」  レオンが叫び、長槍を構える。「やり切るしかないな!」  アランが再び前に出て剣を振りかざす。 「全員、気を抜くな! ここで踏ん張れば勝ちだ! この出口の防衛線を守り切れば、数の有利を保ちながら戦える」 五人は再び肩を並べ、一匹づつ出てくるスケルトンたちを迎え撃った。  がしゃり、と骨の列が一斉に金属音を響かせ、狭い通路の出口が再び戦場と化した。「こいつで十体目だッ!」  オルフェの大剣が振り下ろされ、骸骨兵の頭蓋が砕け散る。  飛び散った骨片を踏み越え、次の影がすぐに現れる。「息をつく暇もないね……!」  セリウスが汗を飛ばしながら剣を振るう。鋭い突きが骸骨の首を貫き、骨の体が崩れ落ちた。「でも、確実に減ってきてるぜ!」  リディアが短槍で脚を狙い、骨を折って体勢を崩す。倒れたスケルトンをアランが斬り伏せた。 レオンは後方で長槍を構え、正確な突きを放つ。  長槍は骨の隙間を抜けて胸郭の魔石を貫き、骸骨兵を一撃で崩壊させる。「よし、いいぞ! このままここを守り切れ!」  アランが檄を飛ばし、陣形を整える。 戦いは果てしなく続いているように思えた。  だが、確かに骸骨の群れは薄くなり始めていた。  散らばる骨の山が通路を塞ぎ、足場は悪くなるが、それが逆に敵の動きを鈍らせてもいた。「……数が減ってきたな」
last updateÚltima atualização : 2026-02-01
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第43話 三百万ゴールドの使い道

   報酬の受け取りを終えた五人は、酒と喧騒の広間を抜け、外の涼しい夜風に身を晒した。  ひと息ついたところで、オルフェが大剣を背から外し、ぎしりと刃を見せた。「……見ろよ。刃こぼれだらけだ」  月明かりに照らされた大剣は、何度も骨を叩き割ったせいで細かな欠けが無数に走っていた。 セリウスも腰の剣を抜き、苦い顔をする。 「私のもだ。切れ味が鈍ってる……下手すりゃ次の戦いで折れるな」「俺の短槍も穂先が歪んでる。刺し込みが甘くなってたのはこれのせいだな」  リディアが柄を見せると、金具の接合部が緩みかけていた。「僕の長槍も、柄にひびが入ってます」  レオンが静かに言葉を添える。戦いの激しさを思えば当然だった。 アランが皆を見渡し、頷いた。 「まずは武器を整えよう。装備が揃わなければ、どんな依頼もこなせない。三百万で足りるかわからないけど、武器はちゃんと整えておかないとね」「賛成だ! 武器は騎士の命。こんな刃こぼれだらかじゃ、恥ずかしくてしょうがないぜ」  オルフェが力強く答え、リディアも「俺も、すぐにでも直したいぜ」と同意する。「よし、じゃあ鍛冶屋に行こう。夜も遅いが、冒険者相手の工房ならまだ開いてるはずだ」  アランの言葉に、五人は鍛冶屋を目指し再び歩き出した。  街路の灯りが石畳を淡く照らし、昼間の喧騒を失った通りはひんやりと静まり返っている。だが遠くからは、かすかに金属を打つ重たい音が響いてきた。それはまるで、夜を拒む炎と鉄槌の鼓動がこの街を守っているかのようだった。「ここの鍛冶屋は腕が良いって噂だぜ」 「流石はオルフェ。そういうことはよく知っていますね」 「まあな」 得意げなオルフェが、慣れた様子で工房の扉を押し開ける。  油と鉄と煤の匂いが鼻を突き、奥の炉からは赤々とした光が漏れていた。 「親方! 俺だ! オルフェだ」 「おう! 若旦那! いつもお世話になっておりやす」 「遅くて悪いんだが、ちょっと武器をみてくれないか」 「じゃあ、まずは奥にどう
last updateÚltima atualização : 2026-02-02
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第44話 帰還

 鍛冶屋からの帰り道、夕暮れの赤が石畳を染めていた。手にはそれぞれ新しく買った武器が収まっている。磨かれた刃はまだ油の匂いを残しており、どこか誇らしげに輝いていた。「ふぅ……ようやく一息つけるな」 アランが伸びをしながら、正門をくぐる。目の前にそびえるのは《ヴァルロワ学舎》の学生寮だ。重厚な石造りの建物で、塔の先まで窓が等間隔に並び、夕闇に灯りがともり始めていた。「まさか、鍛冶屋で武器を新調するだけでこんなに疲れるとはね」 リディアは短槍を抱えたまま、淡い笑みを漏らす。「でも、どれもいい出来だ。前より強くなった気がするのは、気のせいかな」「気のせい。気のせい。……いやぁ、俺の大剣なんて光りすぎて、もったいなくて振れねぇよ」 オルフェが肩に担いだ大剣を見せびらかす。寮の門番が思わず目を見張ったほどだった。「オルフェのことだから、ガンガンに振り回して、すぐに傷だらけになるさ。安心しろ」 セリウスが肩をすくめると、オルフェは「うるせぇ」と笑って返した。 寮の扉を開けると、暖かな食事の匂いが廊下を満たしていた。夏休みで帰郷しているものが多いと言えども、居残った学生たちのざわめき、椅子を引く音、笑い声。それらが一斉に押し寄せる。「とりあえず荷物を置いてから夕食に行きましょう」 レオンが皆を促し、五人は二階の自室へ向かう。 部屋に入ると、それぞれベッドに腰を下ろし、ほっと息を吐いた。「こうして全員で帰ってこれるのも、当たり前じゃないんだよな」 アランが長剣の柄を見つめながら呟く。「だからこそ、武器も心もちゃんと整えておかないとな」 リディアが静かに答えると、みんな自然とうなずいていた。 外では夜の鐘が鳴り始める。戦いの日々の合間に訪れる、束の間の安らぎの時間。この石造りの学舎こそ、彼らの帰るべき場所なのだと、誰もが胸の奥で確かめていた。 食堂に入ると、長机に並ぶ皿の上から、肉の焼ける香ばしい匂いが漂ってきた。 五人は空
last updateÚltima atualização : 2026-02-03
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第45話 休日

  「せっかくだし、街まで出てみるか」  アランが先導し、五人は新調した武器を背負って《ヴァルロワ学舎》の門をくぐった。 街は真昼の太陽の光に包まれ、石畳の上を人々の足音と馬車の軋む音が交じり合う。屋台の香ばしい串焼きの匂い、薬草店から漂う独特の香り、鐘楼の音色――活気が胸を弾ませる。「俺、今日は武器以外にも何か買ってみようかな」  オルフェは大剣を背負ったまま、露店の装飾品屋の前で立ち止まった。「似合わないことを言うなよ」  私がからかうと、オルフェは「うるせぇ。セリウス」と笑いながら首飾りを手に取る。だが値段を聞いて「高っ!」と叫び、店主に追い払われる。周囲の人々がくすくす笑った。「僕は魔法道具の材料が欲しいな」  レオンは薬草屋に入り、小瓶を光にかざして吟味している。 リディアは果物屋に目を奪われ、さっそく赤い果実を選んで袋いっぱいに買い込んだ。 「後でみんなで食べようぜ」  彼の表情は、戦場の冷静さとは違ってどこか柔らかかった。 セリウスは、仲間の後ろを歩きながら文具屋の窓に並ぶ品々を眺める。羽根ペンや羊皮紙に混じって、小さなリボン飾りが視界に入った。指が伸びそうになり――慌てて引っ込める。 (……私は“セリウス”だ。セリーナじゃない)  そう自分に言い聞かせながら、足を速めた。 広場では大道芸が始まっており、人垣の間から炎の輪が舞い上がる。俊敏な少年が投げられた刃物を軽々と受け止めると、観客は一斉に拍手を送った。五人も思わず足を止め、声をあげて手を叩く。 そのとき、行商の男が通りすがりに声を張った。 「火蜥蜴の革だよ! 耐熱に優れた逸品! 洞穴帰りじゃなきゃ手に入らない!」  赤黒いマントが掲げられ、人々がざわつく。「火蜥蜴……」  私が呟くと、隣のアランが笑った。 「次の探索ダンジョンの収穫物候補だな」「火蜥蜴の革。素材として持ち帰る第一候補だね」「できればたくさん持ち帰りたい。マジックバッグと皮剥ぎ用のナイフを買っておい
last updateÚltima atualização : 2026-02-04
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第46話  深紅の洞穴 1

 今日は、火蜥蜴を狩りに《深紅の洞穴》に潜っている。火蜥蜴を狩りにと言っても本当の目的は戦闘訓練の一環である。ダンジョン深層に眠るという『性転換の魔道具』をみつけるための実力を養うこと。それが私個人の目的ではある。 火蜥蜴の皮は、耐火性能に優れ素材として割と良い価格で引き取ってもらえるため、今回倒した火蜥蜴の皮は、剥いで持ち帰る予定だ。武器や防具は使えば痛むため、整備するための資金が必要になることを、この前実感した。倒しっぱなしにするのは、もったいない。「いた! 右斜め前方に一匹! 結構大きいぞ!」  斥候役のリディアの声。「よっしゃあ! おれさまの出番だぜ!」  オルフェが左足を踏み出し、大剣を八相に構える。「突っ込むな、待て!」  アランが慌てて制止するが、オルフェはすでに走り出していた。 火蜥蜴が気配に気づき、口の端から赤々とした炎を漏らす。空気が一瞬で熱を帯び、岩肌が焼け焦げた。「直火は危険だ、正面は避けろ!」  私は叫びながら長剣を抜き、オルフェの横へ並ぶように駆ける。「大丈夫だって! 正面から斬り伏せてやらぁ!」 「そういう無茶が命取りなんだ!」 火蜥蜴の顎が開いた瞬間、レオンの詠唱が響く。 「《氷槍》!」  放たれた氷の槍が炎を吐く直前の喉をかすめ、熱気とぶつかり合って白い蒸気を巻き起こす。「ナイス牽制! 今だ!」  オルフェが踏み込み、大剣を振り下ろす。しかし火蜥蜴は尾をしならせ、大剣の軌道を弾いた。「ちっ、硬ぇな!」 「アラン!」 「わかってる!」 アランが前に飛び込み、長剣で火蜥蜴の前足の爪を受け止めた。甲高い金属音と火花。押し込まれながらも必死に支える。「ぐっ……! 今のうちにやれ!」 私は、横へ回り込み、炎に備えて低く姿勢を落とす。火蜥蜴がアランを押さえ込みながら頭を振った瞬間、剣先を突き上げるようにして胴の下へ斬り込んだ。「ぐぉおおお!」  火蜥蜴がのたうち、尾を暴れさせる。「下
last updateÚltima atualização : 2026-02-05
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第47話 深紅の洞穴 2

   ズシン、と岩を踏み砕く音。三匹の火蜥蜴が姿を現した。  赤銅色の鱗が炎に照らされ、三対の瞳がぎらついている。「散開!」  アランの号令で、私たちは一斉に左右に広がった。 一匹が牙を剥き、オルフェへ突進する。 「上等だッ!」  オルフェは大剣を振り上げ、正面からぶつかり合った。火花と炎が迸り、洞穴に轟音が響く。 もう一匹は私に向かって炎を吐きかけた。 「来るか!」  剣を斜めに構え、岩陰に飛び込む。熱風が頬を掠め、髪の先を焦がした。 残る一匹はアランを狙い、前足の爪を振り下ろす。 「うぉおおッ!」  アランが長剣で受け止め、火花と衝撃に膝を沈める。 「ぐっ……! 早く援護を!」「わかってる!」  レオンが詠唱を開始する。掌に魔法陣が輝き、冷気がほとばしった。 「《氷槍・連弾》!」  幾本もの氷の槍が飛び、アランを押し潰そうとした火蜥蜴の胴を貫いた。「よし、効いてるぞ!」  リディアも負けじと鎖製の投網を放つ。 「いっけー!」  オルフェの相手をしている火蜥蜴の四肢を絡め取った。「ナイス、リディア! 今だ!」  オルフェが投網に絡まった火蜥蜴の首筋めがけて大剣を叩き込む。 「斬り伏せろぉっ!」  鱗が裂け、血しぶきが熱気に混ざる。 私は自分の相手と刃を交えていた。火蜥蜴が尾を叩きつけ、岩が砕ける。 「くっ……!」  紙一重でかわし、踏み込みざまに剣を突き上げる。  刃が鱗の隙間を裂き、炎の息が止まった。「踏ん張れ、セリウス!」  アランが叫ぶ。長剣で押し返した火蜥蜴を蹴り飛ばし、渾身の突きを胸に叩き込んだ。 「これでどうだ!」 火蜥蜴が苦しげに咆哮し、洞穴に轟音が木霊した。炎の柱が立ち上がり、視界が真紅に染まる。 オルフェの前で、火蜥蜴が顎を開き炎を吐いた。灼熱の炎が奔流のようにオルフェにむかう。 「燃やされてたまるかよッ!」  
last updateÚltima atualização : 2026-02-06
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第48話 探索の結果

   冒険者ギルドに戻った五人は、火蜥蜴の皮を買い取りに出している。「ほーう。火蜥蜴の皮五枚か! なかなかの稼ぎじゃないか」  ギルドの買取所のカウンターには、年季の入った木の机と擦り切れた帳簿が広げられていた。おっさんは片眼鏡を光らせ、火蜥蜴の皮を指先でなぞりながら話し出した。 「《深紅の洞穴》に行ってきたのか? 五人パーティで、一日でこの成果。良いね、良いね。君たち、なかなかやるじゃないか」「ありがとうございます」「剥ぎ取りもなかなか丁寧だ。剥ぎ取りの良し悪しも、じみに買い取り価格に響くんだよ」「そうなんですね」  アレンが応対するのを、私たちはカウンターの後ろで肩を並べ、緊張と期待の入り混じった顔つきで耳を澄ませていた。「火蜥蜴の皮五枚、一枚二十万ゴールドで、五枚で百万ゴールドだな。現金でいいか?」 横のカウンターで依頼を受けていた新米冒険者が、思わず息を呑んでこちらを振り返った。オルフェが「うひょー!」と声を上げ、リディアが「これで家に金を送れる……」と内心で安堵する。「はい。お願いします」 革袋に詰められた金貨を受け取ったアランは、重みで手が少し沈むのを確かめ、静かに会釈して踵を返した。  酒場スペースのテーブルを囲み飲み物を注文する。「けっこう、良い金になったじゃねーか」  オルフェは椅子の背にもたれかかり、ニヤリと口角を吊り上げながら仲間を見回した。 「肉もあったら、もっといい金になったのになあ」「マジックバッグの容量的に限界があるんです。僕のバッグは一番小さいのですから皮の代わりに肉を入れたら二匹分で限界ですよ。だから手取りは減ると思います」  レオンは胸元のストラップに掛けた革の小さなマジックバッグを軽く叩きながら、淡々と説明した。「オルフェ。レオンのマジックバッグに不満があるなら、お前が担ぐんだな」  赤髪のリディアは腕を組み、鋭い視線でオルフェを射抜くように睨みつけた。「悪い、悪い。別にレオンのマジックバッグに不満はねーよ。とってもありがたいと思
last updateÚltima atualização : 2026-02-07
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第49話 オークション

 夏休みの間、五人はあの後《深紅の洞穴》に五度潜り、汗と血と共に鍛錬を積んだ。剣筋は磨かれ、判断力も鍛えられ、息を合わせた戦いぶりは最初の頃とは比べものにならないほどに洗練されていた。 そして、一ヶ月が過ぎ、オークションの日がやって来た。  セリウスたちは、『ビギタリアダンジョン』で手に入れた、ギルドの専門家の鑑定で二千万ゴールドは下らないと言われた、儀式の核として用いられるに足る、強大な魔力を宿した媒介石を、そのオークションに出品している。  その出品者として、五人にはオークション会場への特別入場資格が与えられていた。「二千万……数字にすると実感が湧かねーな」  オルフェが腕を組んで唸ると、レオンが涼しい顔で笑う。 「普通の冒険者が十年かけても稼げない額かもしれませんね」 話し合いの結果、せっかくの機会だと全員で会場の雰囲気を味わうことにした。 会場は王都の中心、貴族街に隣接する《金星の館》の大広間。白大理石の柱が立ち並び、金糸のカーテンが天井から垂れ下がる豪奢な建物だ。入口には黒服の従者たちが並び、出席者を一人一人品定めするような目で迎えている。 中に足を踏み入れると、煌々と輝くシャンデリアが視界を覆った。磨き抜かれた大理石の床は、歩くたびに靴音を響かせる。香水の甘い匂いが漂い、会場の空気はすでに熱を帯びていた。 ホール中央には円形の舞台、その上に厚布で覆われた展示台が並んでいる。舞台の周囲には三層の観覧席が設けられ、すでに貴族や豪商、軍の高官らしき人物たちが談笑を交わしながら席につき始めていた。  煌びやかな衣装の貴婦人たちが扇を手に笑い、指には宝石が光っている。対照的に、粗野な雰囲気の豪商は太い指で金杯を握り、じろりと周囲を値踏みしている。「……うわ。場違い感がすごい」  リディアが赤髪をいじりながら、落ち着かない様子で囁く。「でも、ちょっと胸が高鳴るね」  セリウスは舞台を見つめながら答えた。「ふっ。俺たちが出す石が、どんな争奪戦になるのか……楽しみじゃねーか」  オルフェはにやりと笑うが、その目にはわずかな緊張が宿っ
last updateÚltima atualização : 2026-02-08
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