太陽が西の地平線へと沈み、空は深紅から群青へと移り変わっていった。冷え込む空気の中、城内の焚き火がぼんやりと周囲を照らし、ゆらめく炎の影が石壁に怪しく踊る。兵たちは緊張に包まれ、各自の武器を握りしめながら、遠くに蠢く敵の陣営を見つめていた。 漆黒の夜がエンピーナース城を包み込み、冷たい風が石造りの回廊を這うように吹き抜けていく。遠くで松明が点々と輝き、まるで地上に浮かぶ星のように戦場を照らしている。城内の広間には燭台の炎が揺れ、壁に映る影がゆらゆらと蠢いていた。戦の夜特有の緊張感が空気を支配し、静寂の中に微かな鎧の擦れる音が響く。 ジェームズ・スピネル公爵は重厚な木製の椅子に腰掛け、長机に広げられた戦地図を険しい表情で睨んでいた。その額には深い皺が刻まれ、光を反射する瞳は冷たい鋼のように鋭い。「思った以上に城壁の損傷が激しい……。このままでは、あとどれほど持ちこたえられるか分からんな」 低く響く声が広間に落ちた。どこか苛立ちを滲ませながらも、決して動揺を見せぬ威厳があった。「とはいえ、我々の兵はまだ士気を保っています」 アーロン・フレミング侯爵が冷静な口調で言い、椅子の背にもたれながら目を細める。その瞳は鋭く、獲物を狩る鷲のように状況を見極めていた。「城壁の一部は崩れかけていますが、明日も同じ箇所を狙うなら、囮部隊を配置して敵の攻撃を誘い、その隙に奇襲をかけることができます」「ふむ……悪くない策だ」 ジェームズは顎に手を当て、指先で短く撫でるように触れながら思案に沈んだ。 ビンセント・スプラス侯爵は杯を軽く揺らしながら、口元に薄い笑みを浮かべる。その優雅な仕草とは裏腹に、彼の目には冷徹な知略が宿っていた。「ですが、問題は敵の数。我々は籠城する者、敵は攻める者。いくら地の利があっても、長引けば兵の疲労は避けられません」「……確かにな」 ジェームズは重く頷いた。刻一刻と状況が悪化していることは、誰の目にも明らかだった。 そのとき、オーガスト・ドレット伯爵が静かに口を開いた。「敵の動きを読むことが重要だな。リチャ
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