「私……」真帆は一瞬言葉に詰まり、諦めたようにがっくりと額を押さえた。やはり、また自分で掘った穴に自分で飛び込む羽目になってしまった。彼女は一雄の瞳を、真剣な眼差しで見つめた。「一雄、私は本当に行かないわ。無理強いはしないで」「今回、一回だけだ」一雄もまた真剣な面持ちで、低く響く声で言った。「今日が終われば、明日からは真帆の好きなようにしていい。君の言うことを聞くよ。……いいだろう?」彼女はため息をついた。「一雄、強引な御曹司って、そういうやり方じゃないと思うけど。また詩織が何か変な入れ知恵でもしたの?」一雄が彼女の家に転がり込んだのが詩織の入れ知恵だったと知って以来、一雄が彼らしくないことをするたびに、真帆は詩織の仕業だと疑うようになっていた。「詩織?」一雄は眉をひそめた。「彼女がどう関係あるんだ?」真帆は唇を尖らせた。「あ、ううん。なんでもないの」考えてみれば、彼女はもうM国に帰ったのだ。なんで疑ってしまったのだろう。食欲があまりないまま朝食を済ませ、彼女は一雄の誘いを断るための理由を無数にひねり出したが、すべてを彼に跳ね返された。しまいには彼を部屋から追い出すようなことまで言ったのに、一雄はどうしても譲ろうとはしなかった。結局、あの手この手で脅されたり甘く誘われたりして、結局屈する形で、彼女は大人しく一雄の後について部屋を出る羽目になった。車の中で、真帆は元気がなさそうに背もたれに寄りかかり、窓の外を飛ぶように過ぎ去っていく星嶺市の景色を眺めていた。道沿いには、仲睦まじく、じゃれ合いながらクリスマスを祝う若い恋人たちの姿が多く見られた。サンタクロースの格好をしたイベントスタッフが、通りがかる子供たちにプレゼントを配っている光景もある。それにひきかえ彼女だけは、車で行きたくもない場所へ運ばれている。最高級の美しいドレスを纏い、隣には自分が想いを寄せる人が座っているというのに、彼女の心はどうしても晴れやかにはならなかった。「着いたぞ」一雄は静かにブレーキを踏み、シートベルトを外した。そして、優しい眼差しで真帆を見つめた。「降りよう」車のガラス越しに、真帆の目に飛び込んできたのは高級ホテルの重厚な佇まいだった。彼女は不満げに唇を尖らせ、なおも最後の悪あがきを試みる。「……本当に、行か
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