翌日、楓の勤める大学病院では、緊急のコンプライアンス委員会が開かれていた。「今回は、外部SNSで職員に関する不適切な噂が拡散しているとの報告を受けまして……」 委員長が淡々と議事を読み上げる。その隣には、桜が静かに座り、正面では慎一が緊張気味に資料を整えていた。場の空気は妙に重い。 委員の数人は“噂は本当なのか?”という目をしており、楓を疑う者もいる。桜は一つ深く息を吸い、毅然と言い放った。 「まず最初に申し上げます。この噂は“完全なるデマ”です。 そして現在、拡散元と偽造写真の作成者に対し、警察およびサイバー犯罪対策課と連携し、法的措置を進めております」委員会の空気が変わった。「偽造……写真?」 「はい。まだ出回っていませんが、制作のログが確認されています。 娘――楓を貶める目的の“悪質な攻撃”と捉えています」 数名の委員がざわつき始めた。そこへ、慎一も続けた。 「私としても、職員の名誉と安全を守るために、病院側にはぜひ迅速な対応をお願いしたいです。噂に踊らされるのではなく、事実関係を確認していただきたい」委員長が腕を組み、ゆっくりとうなずいた。 「確かに、現時点で職員に対する処分や調査は必要ないように思われます。 こちらとしても、風評被害を防ぐ姿勢を示さなければなりません」「ありがとうございます」 桜が深く頭を下げた。慎一は胸の奥の緊張が少しほどけるのを感じた。 楓の職場での立場は、とりあえず守られた。 委員会が解散し、重かった空気がようやく解けはじめたころだった。 慎一は胸を撫で下ろしながら、桜とともに病院の会議室を後にした。「なんとか……通じたみたいだね」 「ええ。でも問題は、ここからよ」 桜が静かに言った、その時だった。――――ピリリリ。 慎一のスマホが震えた。 画面に表示された名前を見て、慎一は顔をしかめる。「……父からだ」 桜も気づき、歩みを止めた。「出た方がいいわよ。病院に何か言った可能性があるわ」 慎一は覚悟を決め、通話ボタンを押した。「もしもし、父さん?」『慎一……今、病院から聞いた。 “楓さんが不適切な噂の対象になっている”と』「だからそれはデマだって――」 だが、一成は遮るように声を荒げた。『問題は事実かどうかじゃない!! 噂をまともに信じて職員を疑
最終更新日 : 2026-02-01 続きを読む