* * *深夜、ルファルは寝室の天蓋付きベッドに腰を下ろしていた。立てた片膝に掌を置き、流した長髪が月の光に透けて輝く。その眼差しは、どこか遠き地を見つめるように虚ろだった。あれからリリシアを蔵から救い出し、部屋のベッドに寝かせた後。彼女は「自分が余計なことをしたせいだ」と震える声で自責の念を口にした。髪結いが最初上手くいかず、ラズエラの顔に影を落としてしまったこと。己の分を弁えぬ振る舞いが、この閉じ込めを招いたのだと。だが、その後に書斎でソフィラから受けた報告は、リリシアの言葉とは異なる真実を告げていた。中庭の清掃は本来メイドの仕事。しかしその日に限り、ラズエラが「自ら行いたい」と志願したのだという。それゆえ、誰も手を貸さず落ち葉が積もっていたのだ。顔の翳りからラズエラはこうなることを最初から分かっていたのだろう。ソフィラの報告後に問い詰めた結果、ラズエラの専属メイドは、恐怖に震えながらも「すべてはラズエラ様の為を思ってしたことでございました」と深く頭を垂れた。今回は、幸運にもリリシアは大事に至らなかった。だが、次も同じ幸運が続く保証などどこにもない。窓から差し込む月光が、ルファルの横顔を切なく、そして美しく照らす。痛みを伴う覚悟を決めねばなるまい。それは、自らの心に刃を向けるに等しい決断だった。ルファルは独り、静かに瞳を閉じた。* * *それからの日々は、リリシアとルファルの間に通っていた温もりさえ、跡形もなく消え失せた空虚な時間となった。リリシアはただの一介の世話係として人形のごとく事務的な用件のみをこなす。ルファルもまた、冷酷無慈悲な神魔隊長としてリリシアを突き放し、代わってラズエラと過ごす時間が露骨に増えていった。そんな氷のような均衡が保たれたまま、無情に時だけが過ぎていく。そうして互いの心が離れていく予感に胸を締め付けられながら、2週間目を迎えた午後のこと。ソフィラに促され、リリシアは客間の扉の前に立っていた。「リリシアにございま
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