「目を離したら……この小さな塊が、ふっと消えてなくなってしまうんじゃないかって。……そう思ったら、瞬きすら惜しい」 かつて、何百億という金を動かし、他人の人生を容赦なく切り捨ててきた冷酷な男の口から出たとは到底思えない、ひどく怯えた、脆い言葉。 私はゆっくりと身体を起こし、ベッドの背もたれに寄りかかった。 腹部の痛みに小さく顔をしかめると、彼がすかさず腰の後ろにクッションを滑り込ませてくれる。「消えたりしないわ。ちゃんと、ここで息をしてる」 コットの中を覗き込む。 真っ白なおくるみに包まれた、赤黒くてシワシワの小さな顔。 まぶたは固く閉じられ、微かに開いた口から、スースーと規則的な寝息が漏れている。 握り締められた小さな拳は、私の親指の第一関節ほどの大きさしかない。 けれど、その薄い皮膚の下には青い血管が透けて見え、確かな血液が脈打って、全身に熱を運んでいるのがわかる。「……触ってみたら?」 横に立つ征也を見上げて、そっと提案する。 彼はハッとして、後退るように一歩身を引いた。 その大きな手が、迷うように宙を彷徨う。「いや……俺の手は、大きすぎる。それに、力加減が……」 自分の分厚い掌を裏返し、じっと見つめながら、彼は喉の奥で苦しそうに息を吐き出した。「俺は今まで、この手で何かを壊すことしかしてこなかった。他人を踏み躙り、力で押さえつけ、奪うことしか知らない。……こんな、ガラス細工よりも脆そうなものに触れたら、俺の無神経な力が、こいつを……」「征也くん」 自己嫌悪に沈み込みそうになる彼の言葉を、私は強い語気で遮った。 ベッドの端から手を伸ばし、空中で迷子になっていた彼の右手首をきゅっと握る。「あなたはこの手で、私を地獄から引き上げてくれた。あの狭いアパートで、冷たい床から私の腰をさすり続けてくれた。……私
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