莉子の指が、掌の内側を押した。 征也は顔を伏せたまま、その感触が消えるのを待っていた。長く手を握っていれば、自分の指の動きを取り違えることもある。つい先ほども、開いたはずの瞳は再び閉じてしまった。 もう一度名前を呼べば、また期待してしまう。 額に触れている莉子の手は、涙で湿っていた。征也がそれを拭おうとした時、細い指が彼の親指に触れた。 今度は、動かずにいた。 指先が皮膚を擦る。爪の縁まで分かる、ごく弱い感触だった。 征也はゆっくり顔を上げた。 朝の光が、枕に落ちている。莉子の睫毛が震え、まぶたの下に細く光が入った。眩しいのか、一度閉じかけて、それでもまた開く。 「……莉子」 扉の取っ手が小さく鳴った。陽向が一歩入ってきたところで足を止め、結衣もその後ろに立っていた。 莉子の目は、まだどこも見ていないようだった。天井の明かりを避けるように動き、征也の顔のあたりで止まる。彼が少し身を寄せると、その瞳も動いた。 征也は、椅子から滑り落ちるように膝をついた。 「俺が、分かるか」 言った途端、答えを急がせたくなくなった。唇を結び、莉子の顔を見上げる。 十二年前と同じ色の瞳に、自分が映っていた。髪に白いものが交じり、頬も目元も濡れた、見慣れない男の顔だった。 莉子の唇が開いた。息が漏れただけで、声は聞き取れない。 征也は耳を近づけかけ、枕元の呼び出しボタンに気づいた。片手を伸ばすと、握っていた莉子の指がずれたので、慌てて持ち直す。 「ここにいる。看護師を呼ぶだけだ」 誰に言い聞かせているのか、自分でも分からなかった。ボタンを押す指が滑り、二度目でようやく押せた。 駆けつけた看護師が莉子の顔を覗き込み、すぐに廊下へ声をかけた。陽向が結衣の肩を引いて道を空ける。医師が入ってきて、征也は立つように促されたが、膝に力が入らなかった。 「親父、こっち」 陽向が肘を支えた。征也は息子の腕を借りて立ち、ベッドから半歩退いた。 医師が莉子の名前を呼んでいる。瞳に小さな明かりが当たり、看護師が手元の機器を確かめる。聞き慣れているはずの電子音が、ひどく大きかった。 手を離すように言われ、征也は莉子の指をシーツに置いた。 その手が、もう一度こちらへ動かないかと見てしまう。 陽向は征也の肘から手を離さずにい
최신 업데이트 : 2026-06-13 더 보기