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校長先生

僕は転勤族で、父の仕事の都合で何回も引っ越しを繰り返していた。すぐに友達と離れ離れになるから嫌だったけど、1度だけ、転勤族でよかったと思う出来事があった。 僕が小学3年生の頃、父の転勤で転校した。クラスの皆は優しくて、フランクな子が多かった。Aくんは「俺のこと、Aって呼んでいいから」と呼び捨てにする許可をくれました。 他の皆も呼び捨てやあだ名で呼び合ったりして、僕はまーちん(まさとだから)と呼ばれてました。 学校に慣れた頃、6月だと思います。世間ではいじめで自殺した子供のニュースで騒ぎ立ててました。明らかに暴言と思われる言葉をあだ名にして、先生も「子供同士の呼び名だから気にしなかった」と言っていたと報道されてました。 その影響で全校集会が体育館で行われました。校長先生が壇上に立つと、いじめについてのお話をしました。・いじめは受けた側がいじめと判断したらいじめ・いじめとひらがな3文字で分かりにくいけど、いじめは犯罪(例えば、物を取ったら窃盗など、分かりやすいようにいくつか例をあげてた)・仲のいい相手でも言葉遣いは気をつけるように(「〜しろ」といった言葉を使わないように)・あだ名禁止・相手のことは○○さん、○○くんと呼ぶように 上記のことを分かりやすく言ってました。その後、小さなハンドベルを鳴らしてました。 前の学校でも似たような話を校長先生がしてたけど、皆「うちらにいじめはない。呼び方を大人に指示されたくない」と、反骨精神で無視して今まで通り、あだ名や呼び捨てで呼び合ってました。 どこでも同じようなものだろうと思い、いつもどおりAを呼び捨てで呼んだら、「まさとくん、校長先生の話聞いてなかった? 呼び捨てとかあだ名はいじめの原因なんだよ」と言いました。 他の生徒も同じようにあだ名や呼び捨てをやめて、相手を○○くん、○○さんと呼んでたのが気持ち悪く感じました。 2回目の全校集会は夏休み前。集会の前は子供だけで学区外に行って遊ぼうと話し合ってた生徒がいました。 でも全校集会で校長先生が「子供だけで学区外に行ってはいけません」と言ってハンドベルを鳴らすと、最初からなかったかのように、学区外へ遊びに行く話をしなくなりました。 僕は父の転勤で、夏休み中に引っ越すことが決まってて、全校集会の後にちょっとしたお別れ会を開いてもらいました。 その
last updateLast Updated : 2025-12-21
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くるくる

 子供の頃の話。私は生まれも育ちも東京で、放課後や休みの日は大きな公園で遊んでいました。 東京と言っても、渋谷や新宿みたいなところじゃなくて、住宅街でした。畑も少しあった気がします。 なので公園が3つくらいありました。 1番人気なのは大きな公園。そこは遊具もたくさんあって、広い芝生とベンチもあって、休日になると家族連れでいっぱいになりました。 放課後、友達と公園で遊んでると、妙なものがいました。一応人の形をしているのですが、色々と変なんです。 遠くにいたので細かい部分は分かりませんでしたが、つばの広い黒い帽子を被っていて、着ているものも、というか、全体が真っ黒でした。山田うどんのロゴっていうか、キャラクターいますよね? あれの頭身を普通の人間にした感じのシルエットでした。 大の字で立っていて、大の字のままくるくる回りながらこっちに向かって来てました。私と友達は怖くてすぐに逃げましたが、偶然一緒にいたクラスの男子は、近づいていきました。 大声で「やめなよー!」と叫んでも、「うっせービビリ!」と返ってくるだけ。 私達は公園から出て、これからどうするか話し合ってました。すると――。「ぎゃああああああああっ!!!!」 男子たちが悲鳴を上げながら、こちらに向かって走ってきたのです。「化け物、化け物!」「目、目が、手のひらに――!」 男子たちは化け物の特徴を叫びながら、走ってきます。「きひっ、きひひひひっ!」 不気味な笑い声が背後から聞こえてきて、私達も走って逃げました。 私達は普通に歩道を走って逃げましたが、男子たちは気が動転していたのか、道路に飛び出してしまって、車に轢かれてしまいました。 後ろで事故の音がして振り返ったら、1台の車と地面に仰向けになる男子がいました。 書き忘れてましたが、男子は3人いました。ひとりは地面に仰向けに、ひとりは奇声を上げながら飛び跳ねたり這いつくばったりしてました。 そしてもうひとりは、何かに公園に引きずり込まれていました。 怖くなった私達は急いで近くにある友達の家に逃げ込みました。パニック状態の私達を、友達のお母さんはなだめてくれて、話を聞いてくれました。 私達の話を聞いた友達のお母さんは学校と私達の親に電話してくれて、30分もすると、お母さんが迎えに来てくれました。 それから子供が公園で行方不明
last updateLast Updated : 2025-12-21
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異界に通ずる鳥居

 僕が住んでいた町には、異界に通ずると言われている鳥居があります。鳥居というと真っ赤なものを連想しがちですが、その鳥居は石造りで、塗装はされていません。その代わりといってはアレですが、御札やしめ縄、鎖がびっしり貼ったり巻いてあったりして、とても気味が悪いものです。 新月の丑三つ時、鳥居が異界の出入り口になると言われています。 僕はビビリなので、日中ですらそこに近づくのが怖くて、避けて通ってます。中学3年生の頃のクラスメイト、Aはやんちゃな性格で、「俺が実験して異界なんか存在しねーって証明してやるよ」と言い、クラスメイト全員に、来月の新月の夜、例の鳥居の前に集合するように言いました。 僕は行きたくなかったのですが、別のクラスメイトが迎えに来て、無理やり引っ張ってこられたのです。 当時は携帯電話を持ってるのは大人くらいで、子供で持ってる人なんていません。クラスメイトの誰かが、デジタル時計を持ってきて、カウントダウンをしました。 丑三つ時になると、「よく見てろよ、ビビリ共!」と、僕らを煽ってから、Aは鳥居をくぐりました。 Aは消えてしまいました。鳥居を過ぎた瞬間、その部分が目視できなくなったのです。「手品かなんかだろ? おい、A、出てこいよ!」 誰かが呼びかけても、Aは出てきません。皆でAを探しましたが、どこにもいません。探したと言っても、誰も鳥居に近づきませんでした。 その後騒ぎを聞きつけた大人が来て、皆の親が呼ばれ、こっぴどく叱られました。 明日になったらAは登校してくるだろうと、誰もが思っていましたが、Aは登校せず、彼が帰ってくることなく、僕達は中学を卒業しました。 10年後、僕は県外で仕事をしていました。同窓会の招待状が来たので、久しぶりに皆に会おうと、町に戻りました。 同窓会の会場は地元の飲食店でした。貸し切りだったし、中には本当に10年ぶりに会う友人もいたので、どんちゃん騒ぎでした。 お開きをして酔っ払ったBと肩を組んで、Bの指示に従って、彼の家を目指して歩いてました。「あ――」 僕は思わず立ち止まりました。異界の鳥居の前だったのです。Bも酔いが覚めたらしく、「A、マジでどうしてるんだろうな?」と言いました。「呼んだか?」 驚いて振り返ると、ひとりの男がいました。特徴的な目元のほくろを見間違うはずがない。Aでした。無精髭を生
last updateLast Updated : 2025-12-21
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宮地さん

 異動してとある町に行った時の話。異動先は栄えてるとも寂れてるとも言えない町で、徒歩圏内に最低限の店が揃っていました。 引っ越し当日、社宅のマンションに持ってきた荷物を置くと、どこに何があるのか把握しに、外を歩きました。 本当は荷解きをしたり休憩をしたりしたいところですが、最低でもスーパーと病院は今日のうちに把握したかったのです。 マンションから出ると、エントランスに中年女性がいました。女性は私を見つけるなり、人懐っこい笑顔でこちらに声をかけてきました。「あらあら、見ない顔ねぇ」「今日引っ越してきたばかりなんです」「そうなの。私は宮地の妻のアケミよ。よろしくねぇ」 アケミさんはおっとりした喋り方で自己紹介をした。この時の私は所属部署の上司数名の名前しか知らなかったし、その中に宮地なんて人はいなかった。「もしかしたら別部署の方かもしれませんね。よろしくお願いします」「ところでどこ行くの?」「病院とスーパーの場所を把握しておこうかと思ってて」「それならいい病院案内してあげる」「え? 悪いですよ」「いいのいいの、困った時はお互い様でしょ。それに、これからお散歩したかったから」 アケミさんの厚意に甘えて、病院まで案内してもらうことにした。 アケミさんはすごくおしゃべりな人で、道中ずっと喋りっぱなしだった。「あなた、見るからにエリートって感じよねぇ。仕事ができるんじゃない? うちの旦那、人柄はいいんだけど、仕事はイマイチできなくて、出世が遅いのよぉ」「今から行く病院はこの辺の人が皆お世話になってるところでねぇ。先生はちょっと年齢が高いんだけど、優しくていい人なのよぉ」 10分も歩いたところだろうか? アケミさんはようやく立ち止まった。「ここよ、ここ。すごくいい病院なの。診察券だけでも作ってきたら?」 建物を見ると、明らかに廃業している。元々真っ白だった外壁は黒ずんでてところどころひび割れてて、窓ガラスも何枚か割れている。「アケミさん、ここ潰れてるじゃないですか」 振り返ると誰もいなかった。狐につままれた気分だった。 スマホのない時代だったので、苦労しながらマンションまで帰り、最低限の荷解きをしてから休んだ。 翌日、隣の部屋の人に挨拶をしたり、荷解きをしてから、スーパーに行くことにした。 スーパーの場所は挨拶をした時に聞いたか
last updateLast Updated : 2025-12-21
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坊や

 これは俺が小学生の頃の話。親の都合で引っ越すことになったんだけど、中古の一軒家に引っ越したんだ。前に住んでた家は平屋で、自分の部屋がなかったけど、ここは2階建てだし、自分の部屋を持てたからすぐに気に入った。 前の家はボロっちくて、トイレも和式だったし、本当に嫌だった。でもこの家は洋風で今どきなデザインの家だし、トイレも洋式だった。しかも1階と2階の両方にある。 父ちゃんは仕事で返ってくるのは夜の7時過ぎで、母ちゃんはパートがある日は5時半過ぎ。だから俺は必然的に鍵っ子になった。 どこに引っ越してもこの流れは変わらなかった。 引っ越してきて半月くらい経った頃だと思う。俺は帰って宿題を終わらすと、テレビゲームをしてた。 部屋をノックする音が聞こえて、母ちゃんかと思ったけど、時間は5時10分。母ちゃんが帰って来るにはまだ少し早い。「坊や、開けとくれ。母さんだよ。坊や、ただいま」 ドアの向こうでそんな声が聞こえたけど、絶対に母ちゃんじゃない。声は母ちゃんの声なんだけど、母ちゃんは俺のことを坊やなんて呼ばないし、自分のことを母さんなんて言わない。無視が1番だと思って、無視した。「母さんだよ。坊や。開けとくれ。坊や、私の可愛い坊や」 無視。「坊や! 坊や、開けとくれ! 母さんに顔を見せとくれ! 坊や、そこにいるんだろう!?」 偽物母ちゃんはいきなりキンキン声で叫びながら、ドアを蹴ったり叩いたりした。時々獣のような唸り声も上げて怖かったけど、無視した。 偽物母ちゃんは、本物の母ちゃんが帰ってくるまでいた。本物の母ちゃんが玄関を開けながら「ただいまー」と言うまで。 それでも怖くて黙ってたら、本物の母ちゃんが「いるなら返事しなさいよ」と怒りながら俺の部屋に入ってきた。 安心しきった俺は、母ちゃんに抱きついてみっともなく泣いた。 俺がわんわん泣くなんて珍しいことなので、母ちゃんは何があったか聞いてきた。俺が素直にさっきあったことを答えると、「怖かったね」と言って抱きしめてくれた。 父ちゃんが帰るとこのことを相談してくれて、霊能力者を家に呼ぶことになった。それまで俺は母ちゃんと父ちゃんの寝室で寝てた。 それと、母ちゃんが帰る時間になるまで、外で遊ぶことになった。 霊能力者は家に入ると、しかめっ面で家の中を見回した。女性の霊がこの家に取り憑いているら
last updateLast Updated : 2025-12-21
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白いビデオテープ

 俺は古いモンが好きでねぇ。懐古厨ってほどじゃあないんだけどね、へへっ。 今はブルーレイだのDVDだのが主流だが、俺は令和の今でもビデオテープで色々見るのが好きなんだよ。でもよぉ、今の時代、ビデオテープを置いてる店なんてほとんどないのね。 小汚い個人経営の店に行けばあったりして、そういうところで掘り出し物探すのが趣味ってわけよ。 隣の県にビデオテープを売ってる店があるって聞いたんで、休日に早速行ってみたわけさ。そしたらお宝がわんさかあんの。昔のアニメとか映画のビデオテープはもちろん、なんだかよく分かんないのもあってねぇ。 ビデオテープってのは、大抵が真っ黒なのよ。んで、側面に作品タイトルのラベルが貼ってあってさ。 俺が今回見つけたのは真っ白なビデオテープ。最初はクリーニングテープかと思ったけど、そうでもないっぽいのよ。 気になってレジに持ってくと、レジのおっさんが「うちにこんなんあったっけ?」って首をかしげるわけ。 え? どうだ、面白いだろ? 店主の知らないブツってのは、そうそうないからな。 ビデオテープってのはプラスチックのケースに入ってるモンなんだけど、こういう店で売ってるモンには値札が貼ってあるわけ。って、それはどこでもそうか、失敬失敬。 白のビデオテープには値札なんてついてなくて、「10円でいいよ」って店主が言ってくれてさぁ。 いやぁ、得しちまったね。 さっそく帰って鑑賞タイムとしたわけさ。 お前、これ、何が映ってたと思う? 真っ黒な画面に白い文字でさ、「あなたの目障りな人は誰ですか? 思い浮かべてください」ってよぉ。 んで、俺は会社のクソ上司とお局さんを思い浮かべたわけさ。 やつら、仕事できねーくせに口ばっか動かしやがってよぉ。 そんなクソ共の方が給料がいいなんてよぉ、やってられっかってんだ。 この気持ち、お前も分かるだろ? え? ふたりを思い浮かべた数秒後、おじんとおばんの悲鳴が聞こえてきてさ、気がついたら部屋ん中が血なまぐせーの。 ビデオテーブが勝手に出てきたんだけど、血と一緒に飛び出してきて、ビデオデッキの下は血まみれよ。ビデオテープももちろん真っ赤。 気持ち悪くてビデオデッキごとゴミ袋に入れて、近くに落ちてたタオルで血を拭き取って、それもゴミ袋に入れて、曜日が違うのなんか気にせずゴミ捨て場に捨ててきた。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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遭難

 これは私と友人たちが雪山に遭難した時の話。 私、A、B、Cの4人は、中学から大学まで同じで、中学の時はそれぞれ違う部活でしたが、高校と大学は一緒に登山部に入ってました。 社会人になっても時々予定を合わせ、一緒に登山することもあります。 ある冬、雪山に登ろうということになりました。どこの山かは言えませんが、2日かけて登る予定で、途中、ロッジに泊まる予定でした。 山の天気は気まぐれ。途中で吹雪が吹きすさび、私達は遭難してしまいました。「あそこで休もう」 先頭にいたAは洞窟を見つけ、私達を誘導してくれました。中には先客がひとり。50代くらいの人の良さそうなおじさんがいて、私達を見ると笑顔で手招きしてくれました。「君等も遭難したのか。そっちじゃ寒いだろ。ほら、こっちおいで」 私達はおじさんの元に行きました。焚き火をしていて、とても暖かく、ほっとしました。焚き火を囲むように座ると、お互い軽く自己紹介をしました。おじさんは吉田と名乗り、数時間前からこの洞窟にいるそうです。「良かった、という言葉は不適切だが、良かったよ。ひとりじゃ心細くてね。君たちよく登山するのか?」「はい。俺達、高校と大学で登山部だったんですよ。社会人になった今も、時々こうやって登るんですけど、雪山で遭難したのは初めてですね」 Aはペラペラと私達の事情を話す。私は吉田さんに違和感を覚え、心を許す気になれなかった。「なぁ、なんかおかしくない? 吉田さん。こんなクソ寒いのに、あんな格好しててさ」 Cがこっそり耳打ちしてきて、ようやく気づきました。吉田さんの服装がおかしかったのだ。春や秋に登山するような格好なのです。「警戒しとこう」「だな」 私とCは吉田さんを警戒し、隙を見てAとBにも言いましたが、「考えすぎだろ」とか、「こういう時に助け合わないでどうする」とか言って、私達の話を聞いてくれませんでした。 焚き火で体が温まり、話が一段落したところで、私達はテントを広げました。そこそこの大きさで、4人で寝るには少し窮屈でしたが、寒いのである意味ちょうどよかったです。AかBが「吉田さんも入れよう」と言わないかヒヤヒヤしましたが、杞憂に終わりました。 暗くてよく見えませんでしたが、吉田さんの後ろに、テントがありました。 私達がテントを広げてる間、吉田さんは料理の支度をしていたみたいで
last updateLast Updated : 2025-12-21
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ドライブイン

 慣れない山道を友達を乗せて走ってた。友達のAは祭り好きで、地方の祭りにも赴くことがある。今回は俺もその地方に行きたかったこともあり、むさ苦しい男のふたり旅をしていたというわけ。 夜になっても俺達は山を降りることができなかった。途中でドライブインを見つけた俺達は、そこで休憩することにした。 駐車場に車を停めて近づいてみると、小さいながらも新しい建物だった。「おい、見ろよ! めっちゃ美味そう!」 自販機の前ではしゃぐAのところに行く。自販機はラーメンとかうどんとか、麺類を売っているようだ。他の自販機も、お菓子やサンドイッチなんかもあった。もちろん、普通のドリンクも。「ラーメンでも食うか」 俺達はラーメンを買うと、小綺麗な小屋の中に入った。中には誰もいない。大きな薄型テレビがあって、深夜番組が流れていた。「冷めないうちに食おうぜ」「そうだな。にしても運が良いな。こんな綺麗なドライブインに来れるなんて。なんならここで一泊してくか?」「それもいいかもな」 俺達は冗談を言いながら、ラーメンを啜った。 パンッ 外から乾いた音が聞こえる。瞬間、すべてが変わった。 小綺麗だった小屋はボロボロのあばら家に変わり、魚介の出汁が効いたスープはきったねぇドブみたいな水に、もっちりした麺は長くてボサボサの髪の毛に変わった。「おええええぇっ!」 俺達は髪の毛を吐き出し、我先にとあばら家から飛び出した。 急いで車に乗ると、ぬるくなっていた珈琲で口をゆすぎ、走り出した。1時間も走ると灯りが見えてきて、ホテル街に着く。時計を見ると日付が変わろうとしていた。 街に入れた安心感でどっと疲れが押し寄せた俺達はラブホテルに泊まることにした。部屋に入ると病的なほど丹念に歯磨きをしたり、口をゆすいだりした。食欲なんてなく、風呂に入って眠った。 俺達を助けたあの銃声はなんだったのか? なんであんなドライブインがあったのか? 気になりはするが、俺とAは今日のことを忘れることにした。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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人形の記憶

 子供の頃、アパートから一軒家に引っ越した私達は、中古ショップで買い物をした。ここならチェーン店だし、軽トラの貸出もしてるからと、父が言っていた気がする。 当時小学1年生だった私は、家具よりもオモチャやぬいぐるみに興味があって、おばあちゃんとそっちを見ていた。「あ、これ可愛い」 私の目に止まったのは、女の子のお人形。お人形といっても、リカちゃん人形みたいな感じじゃなくて、全体がワタと布でできているお人形だ。茶色のツインテールは毛糸のようなものでできていて、黒いボタンのクリクリおめめが可愛かった。「おばあちゃんが買ってあげる」「いいの?」「500円だしねぇ。大事にするんだよ」「うん!」 おばあちゃんが買ってくれたということもあって、私はそのぬいぐるみに「アンちゃん」と名付け、大事に大事に扱った。 ごっこ遊びをする時も、ご飯の時も、寝る時も一緒。落ち込んだ時も楽しい時も私の話をにこにこしながら聞いてくれる大事なお友達だった。 いつものようにアンちゃんと寝てると夢を見た。夢の中で私は動けなくて、見たことのない女の子とおままごとをしていた。 次の日も、夢を見た。昨日の夢の女の子に腕を引っ張られ、公園で振り回される夢。一緒に遊具に乗ったり、砂場で遊んだりしてたけど、女の子は私を雑に扱った。 飛び起きてアンちゃんを抱きしめると、ほっとする。「アンちゃん、私は大事にするからね」 アンちゃんを高い高いする時のように抱き上げ、目を合わせて声をかけた時、背筋が凍った。夢の中で女の子に腕を引っ張られてた時に見た自分の手と、アンちゃんの手が一緒なのだ。「もしかして、アンちゃんの?」 私の問に、アンちゃんは答えてくれません。 翌日、あの女の子の夢をまた見ました。場所はアンちゃんと出会った中古ショップです。無造作にカウンターの上に置かれ、店員達にあちこち触られたり引っ張られたりしました。 売り場に並べられたところで、私の体は動けるようになりました。といっても、思い通りには動きません。 私はおばあちゃんと一緒に中古ショップの中を歩いていました。あの日のように。 そしてアンちゃんを見つけて抱き上げました。「お前は私を捨てるなよ?」 糸を縫い付けられてできた口が動き、私にそう言ったのです。 私は飛び起き、アンちゃんを抱きしめました。「捨てない! ずっ
last updateLast Updated : 2025-12-21
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教室の鳥

 まず、オチというオチがないことを書いておきます。昔の話なので、肝心なところがうろ覚えになっているのです。 これは私が小学4年生の頃の話。私はバス通なのですが、この日はいつもより早く学校に着きました。もしかしたらなにか事情があって、母に乗せてってもらったのかもしれませんが、本筋にはあまり関係ないのでこれ以上考えるのはやめておきます。 この学校では1,2年生は1階、3,4年生は2階、5,6年生は3階に教室がありました。 その日、とにかく私ははやく学校に着いたのです。いつもならクラスメイトの半数以上が先に来ているのですが、その日は私の他に、数名しかいなかったのをよく覚えています。 ランドセルから教科書やノートを出し、机にしまっていると、どこからともなく鳥の鳴き声が聞こえてきました。 鳴き声を聴いたのは私だけではなかったようで、皆(といっても4,5人くらい)で教室の中を探し回ったのです。 小さな鳥とはいえ、教室で隠れられる場所なんてほとんどありません。すぐに見つかるだろうと思いましたが、なかなか見つかりませんでした。「後ろの方から聞こえない?」 誰かに言われて耳を澄ますと、確かに後ろの方から聞こえるのです。皆で耳を澄ましながら教室の後ろに行くと、窓際から聞こえてくることが分かりました。「この辺だよね?」「うん、この辺。どこだろ?」 範囲を絞って耳を澄ませながら探すと、妙な引き出しを見つけました。 学校はコンクリートでできていて、太い柱(?)が三本あります。窓際の前と後ろの角。そして真ん中に。 後ろの角の柱の下の方に、その引き出しがあったのです。サイズはとても小さく、チョーク入れより少し大きいくらいだと思います。 男子が引き出しを引っ張ると、中に小鳥の死骸があったのです。死んでからかなり経ってるらしく、ほとんど白骨化してました。 死骸の他には細かいゴミがあったような気がします。 鳥の鳴き声は、引き出しを引っ張ってからぴたりと止まりました。 そのあと小鳥の死骸をどうしたのかは覚えていません。休み時間に数人で校庭のどこかに埋めた気もしますし、そのままゴミ箱に捨てた気もします。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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