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All Chapters of 怖い話まとめ1: Chapter 41 - Chapter 50

99 Chapters

ここだよ

 私が生まれ育ったのは、少し寂れた都会って雰囲気の街。色んなお店があるから結構快適だけど、トラウマがあったため、私は高校を出ると県外に就職した。 親友のAがこの街のどこかで事故にあって亡くなった。ずっとここにいたら立ち直れないと思って、大学に行かず、就職を選んだ。 お盆や年末年始も実家に帰らずにいたけど、冬に父さんが入院したと連絡が来たから、仕方なく帰省した。 でも父さんが入院したのは嘘で、私に帰ってきてほしかったからだったみたい。腹は立ったけど、逃げてばかりもいられないと思って、3日間生まれ故郷に滞在することにした。 街を歩いてみると、あの頃とほとんど変わってない。懐かしみながら歩いていると、真冬だというのに、陽炎が見えた。しかも、陽炎の中に死んだ友人がいる。 友人はどこかを指さしていた。何故かその方向にいかなければならないと思い、友人が示す方向へ歩く。 その後何度か陽炎と共に友人が出没しては、どこかを指さしていた。 たどり着いたのは私の家や学校とは反対方向のコンビニ前にある横断歩道。「ここだよ」 声のする方を見ると、親友は道路のど真ん中に立っていた。信号が青になってることを確認してから駆け寄ると、彼女はにやりと笑う。「ここで死んだんだよね」 冷たい声に背筋が凍るのとほぼ同時に、全身に衝撃が走り、そのまま意識を手放した。 気がつくと私は病院のベッドの上にいた。 母さんと何故か隣の家のおばさんが、目覚めた私を見て喜んでる。 話を聞くと、隣のおばさんが救急車を呼んだり、母さんに私が事故にあったことを知らせてくれたらしい。 おばさんいわく、コンビニから出たら私が青信号の前で止まってて、赤になった途端、嬉しそうに笑いながら渡って、車に轢かれたらしい。幸い車ははやめにブレーキを踏んでくれたみたいで、骨折などはしてなかった。 念の為に数日入院して様子をみることになった。 もしおばさんの話が本当だったら、彼女は私を恨んでたのだろうか? それとも、ひとりが寂しくて私を――?
last updateLast Updated : 2025-12-21
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霊安室

これは私が子供の頃に入院してた頃の話。子供の頃からオカルトというか、怖い話が大好きで、入院することになった時は、内心大喜びでした。 だって、夜の病院を探検できるから。 一応これでも病気で入院はしてたんですよ? 病名は伏せますが、発作さえ起きなければ、日常生活は送れるので、発作が落ち着いてからは退屈でした。大部屋にいるけど、一緒にいるのはおばあちゃんばっかりだったし。 日中は無断で院内を歩き回って下見をしたり、売店でお菓子やジュースを買ったりしてて、看護師さんたちを困らせてました。 何日か下見をして、ようやく見つけました。霊安室は裏口の近くで、関係者以外立ち入り禁止のスペースにあったのです。 その日の夜、私は身を屈めながら、霊安室に向かいます。途中で巡回してる看護師さんに見つかるんじゃないかとヒヤヒヤしましたが、なんとかたどり着きました。 立入禁止スペースに入ると、薬品のにおいが強くなった気がします。理科室のにおいに似てるかもしれません。 霊安室に入ろうとしたけど、鍵がかかってて入れません。でもせっかくここまで来たんですし、このまま帰るのも悔しいじゃないですか。 だから、ドアに耳を押し当てたんです。 ドンドンドンッ! 向こう側から力強くドアを叩く音がして、悲鳴を上げながら尻もちを着いてしまいました。「出せ、出せ! ここから出せ!」 男とも女ともとれない不思議な声に、ぞっとして後退りをしてると、足音が聞こえてきました。 怖くて怖くてたまらない。もう何も聞きたくない。私はここにいない。 すべてを拒絶して耳を塞ぎました。「あれ、オカル子ちゃん、何してるの?」 眠そうな女の人の声に顔を上げると、私の担当をしてくれてる看護師のAさんでした。Aさんは若くて可愛くて、おっとりしてて、とっても優しいので大好きでした。「ダメじゃない、こんなところにいちゃ」「え、Aちゃん、あそこ、誰かいる!」 私が震えながら霊安室のドアを指差すと、Aさんは小首を傾げてこう言いました。「え? ご遺体は2,3ヶ月も安置されてないけど?」 Aさんはしまったというような顔をしたあと、人差し指を自分の口元に持ってきて、「内緒ね」と言って、私の手を引いて、ナースステーションにつれてってくれました。 気づけば声も音も止んでいます。 そこでお菓子とココアをごちそうにな
last updateLast Updated : 2025-12-21
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10円

 突然だが、こっくりさんのルールに、「使った10円玉は3日以内に処分しないといけない」というものがある。どこかの店で使えっていうのが1番有名だろうか。 皆、考えたことはないか? その10円玉を使って、10円玉に込められた霊は消えるのか? 俺の高校ではこっくりさんが流行ってて、男女関係なくやってたよ。なんなら先生が、「こっくりさんか、懐かしいな。先生も混ぜてよ」と言って、一緒にやるくらいだ。 でも皆、10円玉の扱いに困ってた。大半の生徒はキャッシュレス派だし、10円玉を使う買い物をするって、地味にめんどくさかった。 値上がりしてるから、うまい棒も買えないし。 俺のクラスに、金にガメついヤツがいた。ガメってことにしとくか。ガメは金にガメついけど、盗んだり、ズルをして得しようとしたりはしなかった。むしろ、そういうのを嫌ってた。 高校生になると、自分で稼いで大人に近づいた気分になるよな。それで金の貸し借りをしてトラブったり、給料日に遅刻してまで金をおろしてきて、「今月7万稼いだ」とか自慢するヤツがいたり。 んで、それを聞いた他のヤツがそれを盗んだり。 ガメは金銭トラブルで困ってる生徒たちの相談役を引き受け、解決してきた。 ガメはこっくりさんの10円玉を積極的に回収したりもしてて、こっくりさんに使われてない10円をたくさん持ってた。 コンビニとか飲食店のレジやったことあるヤツなら分かると思うけど、銀行で500円を十円玉に両替すると、棒状になってるんだよな。それを持ってる時もあったし、レジの金を数える時のトレーみたいなのも持ってた。 ガメはこっくりさんの10円玉(長いからこく10って書く)を黒くて小さな巾着に入れてた。「それどうすんの?」って聞いたら、「セルフレジで使う」って言ってた。確かにセルフレジなら、店員に白い目で見られることないしな。 こっくりさんブームが去り始めた頃、3年生のAが死んだ。ベランダから落ちた。放課後、日直で窓を閉めてる時、落ちてるところ見ちまった。思わずベランダから出て見下ろすと、Aが頭から血を流して倒れてた。手足は変な方向に曲がってるし、頭は少し割れてなんか見えてるしで気持ち悪かったけど、目が離せなかった。 Aのまわりには大量の10円玉がばらまかれていたんだ。「やっとくたばったか、あの野郎」 いつの間にか隣に来てたガ
last updateLast Updated : 2025-12-21
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憑依体質

 この話は怖いかどうかは分からん。俺自身も恐怖より驚きの方が強かったし。 俺のダチにはAっていう中学から付き合いのあるヤツがいる。Aは昔から小説を書くのが好きで、これが結構面白くてさ。学校で皆で回し読みしてたよ。 子供の頃はガラケーしかなかったけど、大人になるとスマホもあるし、パソコンも自分で買って自由に使える。 Aは小説投稿サイトで投稿したり、依頼を受けて小説を書いたりしてた。すげぇと思ったけど、A本人は「小説は趣味だし、依頼もたくさんもらえてるわけじゃないから」と言ってた。 Aには悩みがあって、俺にだけ打ち明けてくれた。 憑依体質だって言ってた。説明聞くまではよく分からなかったけど、これが結構大変そうで同情した。 当たり前だけど、小説には何人もの登場人物がいるだろ? で、書き手はそれを全部考えるわけだ。登場人物をBとするか。 Bの思考や性格はAが作り出したものだけど、Aとはまったくの別物だ。うまく説明できないけど、喋り方とか、性格とか、好きなものとかさ。 BがAを乗っ取ることがあるらしい。頭の中に声が響いて、書ききるまで止まらなかったり、意識を乗っ取られて、勝手になにか買われたりするって言ってた。半信半疑ではあるけど、Aはそんな嘘つくやつじゃないので、一応信じた。 理解もあんまできてないけど。 夜、久しぶりにAと遊ぶことになった。Aの運転で移動して、飯食ったりカラオケ行ったりするんだ。 飯食って、カラオケ行こうとした時、Aが小さく唸りだして、「やばいやばい」と言って、路肩に停めた。 数秒うつむいて、起き上がると、嫌そうな顔で俺を見た。「先生はお忙しいんです。あなたのような方と遊んでいる暇はありません」 喋り方がAとは違った。いつものAはゆったりした喋り方するんだけど、こいつは理屈っぽいっていうか、嫌味っぽいっていうか。 よくアニメに性格の悪い優等生っているじゃん? あんな喋り方。「時間が惜しい。降りてください。先生は私の人生を書くのに忙しいんですから。ねぇ、先生」 気圧されて降りると、車はUターンして帰ってった。 ただの芝居だろって思うかもしれないが、Aは芝居なんてできないのはよく知ってる。学生の頃、演劇をすることになってさ。俺もAも裏方だったんだけど、なんせクラスメイトの人数が少ない。 だからモブを裏方何人かがやってて、
last updateLast Updated : 2025-12-21
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深夜の観光バス

当時私はブラック企業で働いてた。特に私は徒歩10分で出勤してるから、こき使われてた。 日付が変わりそうな時間、22連勤を終えてひとりで夜道を歩いてると、隣に観光バスが停まって、バスガイドさんが降りてきた。ガイドさんは40過ぎの厚化粧おばさんで、私の前で立ち止まる。「あの、どいてくれませんか?」「あなたもどうですか?」 ガイドさんは私の話なんて聞いちゃいない。「母なる海へ、共に帰りませんか?」 ガイドさんがあまりにも不気味で、後ずさる。笑ってるんだけど、なんて言えばいいんだろう? 宗教の信者みたいに、何かにすべてを委ねたような笑顔だった。それだけでも薄気味悪いのに、ガイドさんの口の動きが不自然で、くるみ割り人形みたいだった。「母なる海へ帰りましょう。そして私達の魂は洗練され、真珠になるのです。さぁ、あなたも真珠になりましょう。美しい真珠に、母なる海へ」 怖くて走って引き返すと、タクシーが来るのが見えた。私が慌ててタクシーを呼び止めて乗り込むと、運転手さんは不思議そうな顔をしてた。「3つ先の信号を曲がったところにあるコンビニまで」「はぁ――」 運転手は生返事をすると、車を走らせた。「お客さん、ひどく慌ててたようですけど、大丈夫ですか?」「さっき、観光バスがあったじゃないですか。そこから変なバスガイドさんから出てきて――」「観光バスなんてありませんでしたよ?」 嘘だ、そんなはずない。このタクシーは確かに観光バスを抜かしたんだから。 コンビニに着くと、私は夕飯を買ってから走って家に帰った。 翌日、集団自殺のニュースが流れた。14人の男女が、海に飛び込んでそのまま亡くなったらしい。 海というワードに、昨夜の観光バスを思い出す。この事件と関係があるのか分からないけど、あのバスに乗ってたら、私もこの人達と一緒に死んでたかもしれない。直感的にそう思った。 数週間後、またあのバスが私のところに来て、なんとなく会社を辞めて、引っ越した。何十連勤もさせられててお金使う暇もなくて貯金があったから、2ヶ月ほどゆっくりしてから再就職して、今は幸せに暮らしてる。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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占い狂いの末路

 学年にひとりは占い狂いの女子っていなかった? 中学生の頃、占い狂いの女子がいて、その子はすごく異常だった。占い狂いって言葉でも足りないくらいだったの。 色んな時代や地域、国の占いを片っ端から試してた。あと、恋愛ジンクスっていうか、迷信も。 タロット占いとかホロスコープみたいな有名な占いも、花占いみたいななんの根拠もない占いも、ことあるごとに活用してた。 ドン引きエピソードはいっぱいあるけど、印象的だったのが髪の毛事件。昭和に好きな人の髪の毛を持ってると両想いになれるっていう迷信があったんだって。髪の毛は生きた髪の毛じゃないとダメ。 生きた髪の毛って何って思うでしょ? 初めて聞いた時、私もそう思った。 自然と抜け落ちた髪の毛は死んだ髪の毛で、生えてる髪の毛が生きた髪の毛。じゃあ抜いた瞬間死んでるじゃんって思ったけど、抜いた髪の毛は生きてる髪の毛なんだって。意味分かんないよね。  占い狂いだからウララにしようかな。ウララは好きな男子ができると、この迷信を実行した。「頭にゴミついてるよ♡」なんて言って、ぶちっと1本抜いていく。 被害にあった男子は何人かいるけど、全員ウララと付き合うことはなかった。それどころか、避けてたしね。 うまく言葉にできないけど、ウララからは近寄っちゃいけないオーラが出てるっていうか。同じ日本語を喋ってるのに通じない人だった。 私はそこまで占いに興味がないから、ウララの話もあまり聞いてなかったけど、あみだくじも占いの一種なんだって。他にもコインを使った占いとか、色々ある。 ウララは納得の結果が出るまで、色んな占いをしていて、彼女のカバンの中には教科書じゃなくて占いに使うものが入っていた。 風水も占いの一種らしくって、ことあるごとに「これは風水的にダメ」と言って、人のものを取ったり捨てたりする奇行をするようになってきた。 机の向きって皆一緒じゃない? なのに風水がどうこう言って、自分の机を横向きにしてた。 その時ウララの隣は彼女が好きだった男子だから、男子の顔を見たかっただけなんだろうけど。 もちろん先生に怒られたけど、ウララは譲らなかった。 こんなこともあるから先生はウララはいない者として扱うようになったし、ウララは好き放題してた。 こんなクラスに疲れてた私は、隣のクラスにいる友人のR子に愚痴っていた。「その
last updateLast Updated : 2025-12-21
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パーカーの男達

 類は友を呼ぶってよく言うだろ? 俺は大学生だけどファッションに興味がなくて、いつもパーカーにジーンズか黒いズボン。ちなみにパーカーはビビットカラー以外で、無地がほとんど。無地じゃないやつは、控えめに刺繍やプリントがあるくらい。 いつも一緒にいるダチふたりも同じような格好でさ。他の奴らにはパーカーズとか、パーカートリオとか呼ばれてた。 肝試ししようっていう連中がいてさ。7,8人くらいの陽キャグループなんだけど。そいつらとは特に接点はないけど、偶然リーダー格の視界に俺達3人が入ったらしい。「おい、パーカーズ。お前らも来いよ」「来いって何に?」「肝試し。こういうのは多いほうがいいだろ」 俺達は暇だったし、陽キャといっても、DQNグループみたいな感じじゃなかったから、了承した。今週の金曜夜に、大学から車で1時間のところにあるトンネルが、出ると噂されてるらしい。 トンネルなんてまたベタなところだと思ったけど、バイトの休憩や空き時間に怪談の動画を見てる俺はわくわくした。 当日、俺達は大学前で待ち合わせして、陽キャグループの車で行くことに。合計11人なので、車は3台出た。俺達は3台の車に分散された。同じ車に乗りたかったが、2分化するのが嫌だと言われたので仕方ない。 こいつらはすげぇいい奴でさ、車に乗ったらまずジュースくれて、一緒にお菓子食べながら移動した。俺にもよく話を振ってくれるから話しやすいし、俺が見てきた怪談動画の話をすると、真面目に聞いて怖がってくれた。 トンネルに着くと、3,4,4でわかれて肝試しをすることになった。「俺等の都合で別の車に乗らせちゃってごめんね。今度は3人で行動していいから」 リーダー格がそう言ってくれたので、陽キャ1、陽キャ2、俺達パーカーズの順番で行くことに。 トンネルはそこそこ長さがあると思う。途中でカーブしてて、奥が見えない。 ただトンネルを往復するだけじゃつまらないから、どこかで写真を撮り、トンネルを出た先にある植物か石を持って帰ってくることになった。持ち帰れそうなものがなかったら写真を2枚、違う場所で撮ること。 陽キャ1,陽キャ2は「マジで怖かったー」「でもなんもいなかったね」と言いながら、猫じゃらしを持ち帰ってきた。 一緒に写真を見たけど、幽霊らしきものは映ってない。 いよいよ俺達の番。「ちゃんと待っ
last updateLast Updated : 2025-12-21
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路地裏の神社

 生まれも育ちも田舎だが、幸い東京が近くて、電車1本で行ける。22,3歳あたりまで、時間があれば東京に行って目的もなくふらふら歩き、都会に染まろうとしていた。 いつからか、時々、変なものを見かけるようになった。路地裏に神社があるんだよ。 神社って言っても、賽銭箱もなければ人が入れるほど大きくもない。というか、神社なのか分からない。 田舎にいる人なら分かると思うんだけど、時々小さい神社っぽいやつがある。かろうじて人がひとりふたり入れそうなものから、大人の腕の中にすっぽり収まりそうなほど小さいものまで。 前者の人が入れそうなサイズのやつが実家の近所にあるんだけど、鳥居に「◯◯神社」って書いてあったから、一応神社って書く。 んで、路地裏でよく見るのは、後者の小さいやつね。やけに豪奢な鳥居の奥に、こじんまりとあんの。 鳥居は場所が場所だからそんなに大きくはないけど、鮮やかな朱色で、中央に金縁の看板(?)があって、そこに読めない字が書かれてた。漢字だと認識できるけど、読めないっていうか。 その文字を知らないっていうより、シンプルに読めない。 神社はその時によって違って、金閣寺みたいに眩い金色の時もあれば、古びた木製の時もある。白と朱色の綺麗なやつもあったっけ。 俺はビビリだし、おばあちゃん子だから、近づかなかった。ばあちゃん、迷信深い人でさ、ヤバいと思ったものには絶対近づくなって口を酸っぱくして言い聞かせてくれてたんだ。 それと、出現場所なんだけど、これもバラバラでさ。昨日あったところに行くと今日はない。その代わり、別のところに違う神社がある。更に次の日、また神社の位置が変わってる。 神社を見たからなにか悪いことが起こるとか、いいことが起こるとかはない。 あーでも、金閣寺みたいなヤツまた見かけたら、宝くじ買ってみようかな。 今俺は27で、嫁さんもらって2歳のチビもいるから、自由に出歩けないけど、チビがでかくなって時間ができた時、忘れなかったら行こうと思ってる。 結局神社の正体は知らん。でもまぁ、悪い感じはしないから、もしかしたらご利益あるかも。しらんけど。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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占い師

 私の友人はひとりの占い師に出会い、人生がガラッと変わった。 出会いは高校1年の秋頃。私と友人のAはいつも通り、一緒に下校した。途中に川があって、歩道橋っていっていいのかな? 歩行者と自転車しか通れない小さい橋があるの。 占い師は橋の上にいた。アニメとか漫画にいる胡散臭い占い師みたいな格好してた。紫色のベールだかなんか被って、ひとり用の小さいテーブルに、紫色のテーブルクロスを敷いて、水晶とかラーメン屋の箸入れみたいなのが置いてあった。「もし、そこのお嬢さん。ショートカットのお嬢さん」 Aのことだ。私はポニーテールで、Aはショートカット。「なんですか?」「お嬢さんは大物になるよ。私の言うことを聞いてればね」 占い師のおばあさんはヒヒッと不気味に笑う。「行こうよ」 なんか気味悪いし、できるだけ離れたくてAの腕を引っ張るけど、Aは占い師の前に行ってしまった。「私が大物に?」 Aは半信半疑といったふうに聞いた。「えぇ、そうです。信じられないでしょう? 明日、カラオケに行ってきなさい。ひとりでも、友達と一緒でもいい。お嬢さんにチャンスが転がってくるよ。ついでに、5番に通される」「分かりました、行ってみます。あの、お金は――」「お代は結構」 Aは占い師に頭を下げると、ようやく動き出した。「ね、明日一緒にカラオケ行こ」「え? 信じるの?」「分からないから行くの。面白そうだし」 カラオケで特別なことなんて起きるわけがないと思った私は、付き合うことにした。 翌日の放課後、Aとカラオケに行くと、占い師の言う通り5番に通された。「やっぱあの人本物だよ!」「偶然じゃない? それか店員さんがグルって可能性もある」 否定したけど、Aははやくも占い師を信じているような気がする。 一緒に歌って30分くらいだったかな。誰かが私達の部屋をノックした。何も頼んでないのに。 ふたりで顔を見合わせてからドアを開けると、スーツ姿の爽やかなお兄さんが立っていた。「すいません、私こういう者でして」 お兄さんは私達に名刺をくれた。大手プロダクションのスカウトマンらしい。前にカラオケ店にスカウトマンが来ることがあるって聞いたけど、まさか本当だったとは。「さっき✕✕を歌ってたのってどっちですか?」「私です」「あなたでしたか! 素晴らしい歌声ですね! うちで歌
last updateLast Updated : 2025-12-21
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言葉の蠱毒

 当時の俺は彼女に理不尽に振られるし、同僚に手柄を横取りされて昇進する機会を奪われるしで散々だった。これだけでも充分不愉快なのに、親から「結婚はまだ? この前言ってた彼女どうなの?」と連絡が来るし、友達から結婚報告が次々と来て、怒りに呑み込まれてた。 毎日酒呑んでたし、ちょっとしたことでキレ散らかしてトラブルが増えてまたイライラして――。 負のスパイラルにいた。 その夜もひとりで居酒屋で呑んでたら絡まれて、喧嘩していた。冷たい夜風で酔いが覚めて理性が戻ってくると、自己嫌悪が押し寄せる。「兄ちゃん、つらそうだね」 男が声をかけてきた。ニット帽、コート、ズボンなど、黒で統一されたコーディネート。それらを引き立たせる色白の肌に少し長い金髪。 30代くらいだろうか?「なんすか? 冷やかしなら間に合ってるんで」「違う違う。なんであんたを冷やかさなきゃなんないのさ。苦しそうだから楽にしてあげたくて」「宗教?」「違うって。これ、あげるから使ってみてよ」 男が手渡してきたのは小さな壺。片手で持てるくらい小さくて、男の服のように真っ黒だ。分厚い和紙と紐で蓋をしてある。「何十万のこの壺買って幸せになりましょうってか。くだらねぇ」「もう、勝手に勘違いして決めつけないでよ。タダであげるからさ」「なんなんだ、この壺」「壺に名前はないけど、すごい力があるのさ。紐を解いて厚紙をめくったら、不満を壺にぶちまける。するとさっきまでイライラモヤモヤしてたのが嘘みたいになくなるんだよ。試しにやってみなよ。ただし、言い終わったらすぐに蓋をするんだよ」 言葉にすれば軽くなるという点では一理あると思い、紐を解いて厚紙をずらした。「ひとりが好きでひとりで居酒屋来てんだよ、文句あっかクソ野郎!」 厚紙を戻して紐を結び直すと、胸がすーっと軽くなった。「え? マジだ――」「でしょ? それあげる。ただし、さっき言ったルールは守ってね。絶対に開けっ放しにしないこと」「もし開けっ放しにしたら?」「死んだほうがマシって思うことになる」 男はにやっと笑って言うと、どこかに言った。「なんだ、アイツ。まぁいいや」 俺は家に帰ると、今まで溜め込んでいた不平不満を壺に吐き出した。全て言い終わると、今まで経験したことないほど気持ちが軽くなり、爽やかな気分になった。 翌日、会社で俺の手
last updateLast Updated : 2025-12-21
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