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でいどう

 夏休み前日、担任の先生が「絶対に忘れ物するなよ? しても取りに来るのは日中にしなさい。夜はでいどうっていうこわーいおばけがいるからな」と言った。 俺を含め、皆がでいどうがなにか聞いたけど、先生は「こわいおばけ」とか、「お前らなんか食べちゃうぞ」とか言って、具体的なことは教えてもらえなかった。 学校が終わって重たい荷物を家に持ち帰ったあと、いつものメンバーで公園の土管の中に集合した。ここはちょっとだけ涼しいんだ。「なぁ、行ってみようぜ、夜の学校」 Aがニヤニヤしながら言う。俺、A、Bの3人がいつものメンバーなんだけど、全員賛成した。だって、夜の学校って面白そうだし。 俺達はでいどうと出会った時に戦えるよう、武器を用意したり、作戦を立てたりした。 駄菓子屋で煙玉を買ったり、割り箸を鉛筆削りで尖らせたり、レモン汁やらこしょうやらをいれた水風船をいくつか作ったりした。 でいどうと出くわしたら、水風船で目潰しをして、尖った割り箸で戦うつもりだった。ヤバくなったら煙玉で逃げる。 小学生男子特有のアホな作戦だと、今振り返って思う。 俺達は夏休み3日目の夜に、学校に忍び込むことにした。そのために、日中にAが忘れ物を取りに行くフリをして男子トイレの窓の鍵を開けてくることになってる。 親にはAの家で星座を見る宿題をすると言って出かけた。今の時代は難しいだろうが、俺らが子供の頃は、夜に出歩いても親はそこまでうるさく言わなかったんだ。 夜9時、全員揃ったのを確認すると、皆が持ってきた武器と作戦の再確認をした。「んじゃ、行くぞ」「おー!」 俺達は男子トイレから校内に侵入した。すぐ近くに1年と2年の教室や水飲み場がある。「まずはやべぇ時のために逃げ道作っとかないとな」 俺達は腰をかがめて、体重を前にかけて、すり足で移動した。当時やってた忍者アニメの走り方だ。 昇降口の鍵を開けて、少しだけ開けてから、1,2年生の教室を見て回ったが、なにもない。 1階には保健室と職員室があるから、そっちにも行ったけど、こっちも何も無い。「先生のでまかせだったんじゃねーの?」「かもなー。怪談とか妖怪の本色々見てきたけど、でいどうなんて聞いたことねーし」 怪談好きのBがつまらなそうに言った。せっかくだから普段行けない3階も行こうということになって、3階に行った。 パソコ
last updateLast Updated : 2025-12-21
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ツマビキ

 私は結婚する前から義実家で義両親と同居をしていました。というのも、義実家は少し特殊な家系で、神様を祀っているのです。といっても、神社ではありません。 詳しいことは籍を入れてからも教えてもらえなかったので詳しいこと分かりませんが、村人達は姑、舅、主人を頼って、うちに来るのです。そして彼らの悩みを聞くと、家の裏にある小屋の中にしばらく籠もるのです。 この小屋に入らせてもらったことも、見せてもらったこともありませんが、主人は「村の守り神がいて、俺達の一族は代々守り神のお世話をしてきた」と言ってました。 義家族とは仲が良いのですが、守り神関連は一切私に関わらせようとしないので、仲間はずれにされてる気がしてあまり面白くありませんが、私は神様仏様などを信じていないので、すぐに気にならなくなりました。 入籍して二ヶ月経った頃でしょうか。 庭には立派な松の木が何本もあって、舅が時々手入れをしています。その日も舅は脚立に登って大きな枝切りバサミで手入れをしていました。私は近くの花壇で水やりをしていました。「危ない!」 いきなり舅が叫んだと思ったら、肩に鋭い痛みが――。 舅が落としてしまった枝切りバサミが肩に当たって切れたのです。「本当にすまない! 今すぐ救急車を呼ぶから!」 舅は血相を変えて家に入っていきます。義両親はスマホを持ってないので、固定電話で救急車を呼んだんだと思います。 舅はすぐに何枚ものタオルを持ってきて、私の傷口に強く押し当ててくれました。「あら、あなたも怪我をしたの?」 サイレンの音が聞こえ始めた頃、姑が涙をこらえながら左手を抱えてきたのです。よく見ると赤く染まったタオルを握ってました。「お義母さん、どうしたんですか?」「爪が剥がれちゃってねぇ――」 聞くだけでゾッとしましたし、同情しました。 救急車は私と姑を乗せて、大きな総合病院に搬送してくれました。 舅は後から村人の話を聞いていた主人を連れて来てくれました。  その後の私は階段から落ちたり、車に轢かれたり、大きな怪我を何度もしました。不思議なことに、私が大きな怪我をする時は、必ず姑の爪が剥がれ、一緒に搬送されることも数回ありました。 昼食を作ろうと料理をしている最中、フライパンからいきなり火柱があがり、腕をやけどして入院しました。その日も姑の爪が剥がれ、一緒に搬送され
last updateLast Updated : 2025-12-21
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ミサキとリョウタ

 大学生の頃、親友のAと一緒に海に行くことになった。数日泊まって、夏の恋を楽しもうって魂胆だ。海沿いのホテルは高い上にどこも満室だったから、個人経営の民宿に1週間泊まることにした。 民宿は2階建てのこじんまりした建物で、家族経営をしているらしかった。女将と娘が出迎えてくれた。娘は俺等より2,3上って感じ。肩にギリギリつかないくらいの髪を真っ赤に染めて、淡い黄色のTシャツに、太ももが見えるジーパン(ファッション用語わからん)をはいていた。 ちょっと強気そうな顔で、アニメ映画のパプリカみたいな女だった。「ふたりの名前を書いてね」 パプリカに帳簿を出されて、先にAが書いて、次に俺が書いた。パプリカは俺の名前を見て目を見開く。別に珍しい名前でも漢字でもないのに。「あんた、リョウタっていうの」「えぇ、まぁ、そうだけど」「はやくお部屋に案内してあげなさい」「はーい」 女将に急かされ、パプリカは俺達を2階の部屋に案内した。「あの、俺の名前がなにか?」「すぐ近くに洞窟があるの。そこで『ミサキ、リョウタだ。帰ってきたぞ』って言ってごらん。面白いものが見れるから」 パプリカは質問をする間も与えず、部屋から出ていってしまった。「なんだ、あれ?」「さぁ? でも面白そうじゃん。行ってみろよ」 Aはニヤニヤしながら肘で小突いてくる。一緒に行こうと誘ったが、「男女の邪魔しちゃ悪いから」と言って、部屋のど真ん中に寝転んだ。「男女の仲もなにも、ミサキなんて知らないし、あの女のイタズラじゃねーの?」「お前鈍いなぁ。あの子がミサキちゃんで、お前とふたりきりになりたくてそう言ったんだよ」 絶対違うと思いながら、気になったので洞窟に行くことにした。 洞窟の中は薄暗く、35度超えのクソ暑い夏だっていうのに、身震いするほど寒かった。「ミサキ、リョウタだ。帰ってきたぞ」 叫んでみると、ぴた、ぴた――と、水滴が落ちるような、濡れた足音がどこからともなく聞こえてきた。奥からなにか来る。「りょ、たぁ? りょぉ、たぁ?」 暗闇に慣れ始めた目に映るものに絶句した。ボロボロの薄緑のワンピースを着て目隠しをした女がよたよた歩いてこちらに向かってくる。 逃げたくても金縛りにあったのか、体が動かない。「りょおたぁ。どこぉ?」 化け物は更に近寄ってくる。腕はありえない方向に曲がり
last updateLast Updated : 2025-12-21
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穴掘りのバイト

 俺は馬鹿なんでね、眼の前に人参ぶら下げられりゃ、どこまでも走んのよ。だから大金目当てに危ない仕事を何度もしてきた。 ヤのつく自由業の下で、色々してきたさ。運転だったり、荷物を運んだり。半日働くだけで、そのへんのリーマンの1ヶ月分もらえてたんじゃねぇかな。 その中で1番儲かったのが穴掘りのバイト。朝6時~12時の間に(その日によって違う)呼び出されて、途中でコンビニで好きなだけ食いもんとかビールとか買ってもらえる。 んで、誰も寄り付かないようなところにスコップ2本と、コンビニで買ってもらったモンと一緒におろされて、穴を掘る。そうそう、五メートルのメジャーも渡される。 そんで俺は日が暮れるまでに3~5メートルの穴を掘るわけ。 夏は氷水を張ったクーラーボックスも渡されて、中にはビールの他にでかいペットボトルのポカリや水、タオルなんかもあったし、パラソルも置いてってくれるから、そこそこ快適だった。 俺は金さえもらえれば他人の命なんてどうでもいい。といっても、自分で殺すのは絶対嫌だけど。だって、気持ち悪いじゃん。 ヤーさんはそんな俺のぶっ壊れた倫理観と適度なビビリ具合を気に入ってくれてて、金になる仕事をたくさんくれんのよ。 あ、悪い。話があっちこっち行っちまった。なんせ馬鹿なんでな。ははっ。 なんの穴かってーと、死体の穴だよな。生き埋めすることもあるんだけど。そんなのは分かってたけど、埋められるようなことしたそいつが悪いんだし、気にしなかった。 確か秋頃だったかなぁ。いつも通り、穴掘り頼まれたわけよ。んで、穴掘って待ってたわけ。 いつもは黒い袋に入ってるんだけど、そいつは顔に麻袋を被されてるだけだった。今までは皆気絶してたけど、こいつは普通に意識あんのな。「やめろ、やめてくれぇ!」って叫ぶわけ。そいつ見て俺、ブルっちまった。 今更怖くなったとかじゃなくて、そいつ、俺の飲み友だったのよ。つっても、名前は知らない。居酒屋で隣同士になることが多くて、よく話してたんだ。 そいつはリーマンだからリーマンって呼んでたし、俺は若造って呼ばれてた。 体型とかスーツとかで似てるって思ったけど、声を聞いて確信しちゃったわけよ。 んで、リーマンの麻袋の紐が結構緩んでて、リーマンが無理やり降ろされる時に外れて、目が合っちゃってさぁ。「若造、助けてくれよぉ! 俺と
last updateLast Updated : 2025-12-21
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悪石

 私と友達のAは、神社やお寺巡りが趣味で、予定さえ合えば一緒に色んなところに行った。運転はかわりばんこで、ガソリン代問題を回避してたから、結構平和だった。 2月の土曜日。その年初めての神社・お寺参りをしていた。この日はAの運転でお出かけしてた。 前日に雪が降っていて、どこに行っても美しい雪景色が見られた。2軒目に行った神社も同様に雪が積もっていて、参道は除雪されているものの、他はほとんど真っ白だった。 参道の横のスペースで、小学3,4年生くらいの子供達が雪合戦をしていたのが印象的。彼らを横目に見ながらお参りをして、来た道を戻る最中、Aが小学生達を叱りつけたのです。「そんなことしちゃダメでしょ!」「うっせーババア!」 子供のひとりがAに向かって雪玉を投げつける。子供とAが言い合いをしてましたが、社務所から来た人が仲裁をしてくれて、子供達はAに謝って、どこかに走り去ってしまった。 私は問題が起きる直前、椿に見とれていて気づきませんでしたが、子供達は「雪玉に石を入れて投げようぜ」とか言ってたらしい。それでAが注意して、あの騒ぎに――。 私達は次の神社を目指して車に乗った。途中、初心者マークをつけた車が無理やり割り込んできて、少し危なかった。Aがブレーキをかけなかったら、ぶつかってたかもしれない。「なんだこの野郎! お礼もしないの!?」 Aは叫びながらクラクションを何度も鳴らした。いつも温厚なAがこんなに荒れるのは初めて見たから、私は少し怖かった。「あの車、ハザードたかなかった!」「初心者だし、余裕なかったんじゃない?」 私なりになだめたけど、Aはずっと前の車を睨みながら、ブツブツ文句を言ってた。 その日のAは別人のように荒れてて、私は生きた心地がしなかった。何故か「石には悪いものが宿りやすいから持っていっちゃいけない」と昔おばあちゃんに言われたことと、小学生が雪玉に石を入れてたことを思い出した。「ねぇ、A。ちょっと鞄の中見てみない?」「なんで?」「あの子達に雪玉投げられたじゃない? もしかしたら、鞄の中に石が入っちゃったのかも」 一緒に寺や神社を巡ってるだけあって、私の言いたいことが分かったAは、鞄の中身を確認した。中には案の定真っ黒な石が入っていた。 私達は急いでその神社に戻って社務所の人に石を見せながら説明すると、すぐに神主さん
last updateLast Updated : 2025-12-21
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掘り炬燵

 母方のばあちゃんちには掘り炬燵がある。蓋はあるけど、ばあちゃんが高齢で危ないからと、夏でも掘り炬燵はそのままぽっかりあいてる。 布団がないテーブルの下にぽっかりあいた穴は、子供にとって最高の秘密基地だった。 だから俺は夏休みにばあちゃんの家に行くと、掘り炬燵にお菓子やおもちゃを持ち込んで、ある時は秘密のお店やさんごっこ、ある時は防空壕ごっこなんかしてた。 俺が小学3年生の冬、母ちゃんに「今回の冬休みはいつばあちゃんのところに行くの?」と聞いたら、母ちゃんは怖い顔して、「行かない」って言った。 いつもなら、大好きなばあちゃんに会えないのも、掘り炬燵に入れないのも嫌で、駄々をこねてたと思うけど、この時の母ちゃんがマジで怖くて、それ以上は何も言えなかった。 次にばあちゃんの家に行けたのは、小学4年生の夏休み。母ちゃんと一緒に家に入ると、奥から赤ちゃんの声がして、「赤ちゃんいるの?」って聞いたら、母ちゃんとばあちゃんは顔を見合わせて、それからおっかない顔で、「いるわけないでしょ」って言った。 ばあちゃんの家に来て何日か経って、俺はお菓子とゲーム機を持って、前みたいに掘り炬燵に入って遊ぶことにした。 本当はすぐにここで遊びたかったけど、ふたりに色んなところに連れ回されて、それどころじゃなかった。 ゲームをしてると、足に濡れた何かがぶつかった。ジュースは床に置いてたけど、少し前に飲み干してる。 なんだろうと思って見ると、血まみれの赤ちゃんが俺の足をペチペチ叩いていた。「うぎゃあああああっ!!!」 俺の声に驚いたのか、赤ちゃんはすぐに消えた。「どうした!?」 母ちゃんとばあちゃんが血相を変えて駆けつけてくれた。俺は掘り炬燵から出たかったけど、腰を抜かして動けない。泣きながらふたりに「出して、出して」って言って、出してもらった。 パニックに陥った俺はすぐに話せなくて、しばらくふたりに抱きしめてもらったり、背中をさすってもらったりしてた。 俺が落ち着いてくると、ばあちゃんは氷がたくさん入った麦茶を俺に渡しながら、「ゆっくりでいいから話してごらん」と言った。 血まみれの赤ちゃんの話をすると、ふたりは真っ青な顔で、「触られた足を見せろ」って言ってくるから、足を伸ばしてみせた。 自分の足を見て、俺はまた叫んだ。 小さくて赤黒い手形が足にあったからだ。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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首を吊らないといけない日

 私はとある集落で生まれ育ちました。これはその集落での変わった風習のお話。 私の集落では、年に一度、首を吊らないといけない日がありました。といっても、本当に首を吊るわけではありません。 死に装束を来て、首に縄で作った輪をかけて過ごさないといけないのです。この日は声を発することも禁止されていて、できるだけ静かに、あまり動かずに過ごさなければなりませんでした。 というのも、遠い昔、集落があった場所は処刑場だったらしいのです。罪人の首を吊って、しばらくは見せしめとして放置されていたとか。 何日か明記できませんが、その日は死人が戻る日と言われていました。 この日に蘇った罪人が生者を見つけてあの世に連れて行くと言われていて、あの世に連れて行かれないために死に装束を着て、首に縄をかけるそうです。 私はこの風習があまり好きではありませんでした。だって、すべてが気味悪いじゃないですか。 だから私は大学へ行き、寮生活をしていました。 夏に皆で怪談会をすることになりました。さすがに百話も用意できないし、時間がかかるからということで、ひとり2話話すというルールです。 メンバーは私含め5人の男女。 怖い話をあまり知らない私は、ネットで拾ってきた話と、首吊りの風習について話しました。「それって実話!? 行きたいんだけど!」 A先輩が目を輝かせてます。A先輩は、私の友達のBの恋人で、オカルトサークルの設立者です。 私は「おすすめしない」と言ったのですが、A先輩は行くと言って聞かないし、他の人達も「連れてってやれよ」って空気でした。 渋々、「親が許してくれたらね」と言い、その場で母に電話しました。「よそ者を連れてくるなんて」と言ってくれることを期待しましたが、「いいじゃない、連れてきなさいよ」と言ったので、その日にA先輩とBを連れて行くことになりました。 その日はだいぶ先なので、ふたりが忘れてることを祈りましたが、残念ながらふたりは覚えていたし、その日は日曜だったので、土曜日にふたりを連れて家に帰りました。 私の家族はふたりを歓迎してごちそうをふるまうと、ふたりに風習について説明し、注意事項を伝えました。・絶対に声を出さないこと・縄を首から外さないこと・死に装束は脱がないこと「このみっつさえ守れば、ここから生きて帰れるからね。ひとつでも破ったら、命の保証
last updateLast Updated : 2025-12-21
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廃車

 子供の頃、僕は田舎に住んでました。今は何もありませんが、歩いて3,4分のところに、廃車がたくさん並んでるところがありました。 管理人などがいないから、僕達はよくそこで遊んでいて、お気に入りの車を自分の家みたいにしてました。 数えたことはないですけど、そこそこ広い土地にびっしりあったので、数百台あったんじゃないですかね? どの車にも鍵なんてなかったけど、僕らにはそれで十分で、運転する振りとかしてましたね。あと、かくれんぼとか、お宝さがしとか。 大半の車には何もないのですが、(あっても使いかけのティッシュボックス)時々財布やカバン。カードゲームなどが入ってることもありました。 財布を見つけたのは2,3回で、最大額は2千円くらいでしょうか。それでも子供の僕達からすれば大金で、電卓持って皆平等になるように買い物して、おつりはじゃんけんで勝った人のものにしてました。 よく一緒に遊んでたのは、同じ学年のA、ひとつ下のBと、Bの弟で幼稚園生のC。僕含め、4人です。 夏休みで時間があるということもあって、僕達は車の数などを把握しようということになりました。 横1列をノート1ページにまとめていきます。車種なんて分からないので、色、中になにかあるか、居心地はいいかなどを書いていき、最後に上の余白に◯列目、◯台といった具合に書いていきました。 車はほとんど車体のどこかがへこんだり、潰れたりしてますが、中は綺麗なままのものが多く、ガラスが割れて入れない車は少なかったです。 そうそう、役割について書いてなかった。僕かAが書記で、Bがロックの確認係。全員が乗り心地の確認係でした。 基本的全員揃うのですが、家の事情や宿題の関係で時々誰かがいないことがあります。なので書記は基本的に僕だけど、僕が行けない日は前日にAにノートを渡して、代わりに書いてもらってました。 1列20~26台くらいあるし、暑いから1日中そこにいれないというのもあって、調査ペースは1日1列でした。 6日目、全員揃って6列目を調べます。途中まではいつもどおりだったのですが、12台目を調べようとした時に、Cが嫌がりだしました。「これは僕の車! 皆のことは乗せないから!」 黒くて大きな車は、Cのお気に入りでした。BC兄弟の家は一軒家だけど小さな平屋で、自分の部屋というものがありません。だから、1台の車
last updateLast Updated : 2025-12-21
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小さな桐箱

 俺の親父は伊達男で、昔からよくモテる。授業参観とか、運動会とかで、女子が「◯くんのパパってカッコいいね」と毎回言ってくる。 お袋は一重な上に垂れ目で、鼻も団子鼻。ぽっちゃりしてて、カバみたい。親父の遺伝子が濃ければよかったけど、残念なことに俺はお袋に似てしまった。「なんでお袋と結婚したの?」って聞いたら、「あいつは俺の顔じゃなくて心に惚れたいい女だからな」なんて言ってた。 うちの家族を簡単に紹介すると、カバの親子と伊達男の飼育員。 さて、うちの家族の話はこのくらいにして、本題に入ろうか。うちには神棚がある。あと、親父の変な習慣も。 親父は朝起きて朝食と身支度を終えると、神棚にある小さな桐箱を持っていく。この桐箱は長方形で、手のひらサイズ。ついでに言うと、結構年季が入ってる。 んで、親父が仕事から帰ってくると、神棚に桐箱を戻す。そんで翌朝身支度を終えると神棚から持っていって――。 これの繰り返し。親父は外に出る時は必ず古くて小さな桐箱を持っていく。 子供の頃、「それ何?」って聞いたら、「大人になった時に教えてやる」って言った。俺はボロい箱としか思ってなかったので、この後は特に気にせず、日常を送っていた。 小学5年生の頃だったか、友達のAを家に招いて遊んでいた。その日、親父は有給で家にいて、部屋にいたっけ。 神棚はリビングの隣の部屋にあって、ここは客間みたいに使われたり、友達と遊んだりするなんでも部屋みたいな感じ。この部屋は和室で、ふすまには俺のおもちゃもあったし。 2階には俺の部屋もあるんだけど、家族が俺の友達を2階にあげるのを嫌がってた。なんか、2階は家族のスペースで、客をいれるもんじゃない、みたいなこと言ってた気がする。 んで、遊んでたらAが神棚にある桐箱に気づいて、「あれ何?」って聞いてきたんだ。知らないし、説明しようもないから、「親父に聞いたことあるけど、わかんない」って答えた。 Aは「ふーん」って言って、その話は終わった。 Aが家に帰って1時間もしないうちに、親父が血相を変えて俺のところにきた。「おい、桐箱どうした?」「え? 知らない。触ってない」「なくなってる」 俺はAが興味を示していたのを思い出し、Aのことを話した。親父は俺を連れて、Aの家に行った。 インターホンを押すと、Aのお母さん(以下Aママ)が出てきたんだ
last updateLast Updated : 2025-12-21
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4,8,9

 病院って不吉な数字を避けるところがあるだろ? 例えば、大きめの総合病院で、診察室が5つあるのに、1.2.3.5.6てな具合に番号振り分けられてたり。 俺のじいちゃんが入院してる病院もそういう数字を避けてたけど、少し異常に感じてた。4.8.9を全く使わないんだ。 割と新しめの大きな病院で、10階建て。だけどさっきの数字を避けてるから、エレベーターとか階段の数字は、13階と勘違いするような書き方してる。 例えば、階段の踊り場には3/4階みたいな書かれ方するだろ? 3/5階って書かれるし、病室の部屋番号もその数字を避けてるから、2003号室の隣は2005号室。 2037号室の次は2050号室といった具合で、かなり徹底して、4.8.9を避けてる。おかげで1階に何部屋あるのか分からない。まぁ働いてる人達は把握してるんだろうけどさ。 面会時間は平日は夜7時まで、土日は午後3時まで。 俺はその日、バイト前にじいちゃんの顔を見ようと思って、学校が終わってから病院に向かった。学校が終わるのは4時前で、バイトは5時からだった。学校とバイト先の間に病院があるから、寄りやすかったんだ。 じいちゃんがいるのは本来なら4階の5階。うん、マジでややこしいな。 エレベーターふたつあるんだけど、今何階にあるのか見たら、結構上の方だったんで、階段で行くことにした。高校は帰宅部だけど、中学生の頃はそこそこ強いサッカー部にいたから、体力に自信があったし、短気だからエレベーターを待てなかった。 もし待ててたら、あんな思いしなくてすんだかもしれないのに。 階段をのぼって、踊り場に着くたびに何階にいるのか確認してた。俺バカだから、そうでもしないと2、3階上に行っちゃうんだ。実際にふたつ上まで階段でのぼっちまったことがあって、それをじいちゃんに話したら、大笑いされた。 んで、3階と4階の間についたんだけど、変だった。前に書いたように、4って数字は避けてるから、本来なら3/5ってなってるはずなのに、3/4ってなってるんだ。 気にせず本来4階の5階に出たら、廊下が薄暗かった。いつもは看護師さんや先生が歩いてるのに、誰もいない。それにこの時間なら、俺のように見舞いに来た人もいるはずだ。 不思議に思いながらじいちゃんの病室を探すために、プレートを見ながら歩くことにした。でも、プレートもおかし
last updateLast Updated : 2025-12-21
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