All Chapters of 異世界に子供の姿で転生し初期設定でチートを手に入れて2: Chapter 31 - Chapter 40

90 Chapters

31話 三つの鼓動の終焉と、静寂の魔石回収

「貴様は何者だ? まだガキじゃないか……」「ボクは、人間でハンターをやっている、そらだけど」 そらは両手を軽く上げ、敵意がないことを示すように振る舞ったが、その瞳は真剣だった。しかし、魔王は聞く耳を持たない。「止めてもムダだ。我は、すでに決定を下した。我の決定は覆らんぞ!」「いや、だから友達を殺されるのはイヤなんですけど」 そらの言葉に、魔王は苛立ちを覚えたかのように声を荒げた。「だったら貴様から殺してやる」 魔王は再び片手を振り抜き、先ほど兵士たちを半壊させたのと同じ、強大な光の弾を放った。 そらは、迫りくる光の弾に対し、動じることなく即座にバリアを展開した。彼はその場から一歩も動かず、バリア越しに魔王の体をスキャンし始めた。 ――魔王の体内の詳細な情報が頭の中に流れ込んでくる。 (え!? 心臓が三つってキモいんですけど) その解析が終わるか終わらないかのうちに、光の弾はバリアに直撃した。凄まじい閃光と爆音、そして衝撃波が周囲を襲う。 魔王は、爆炎の向こうに立つそらを見て、呆れたように呟いた。「人間とは、手応えがないやつらだな」「今度は、こっちからの嫌がらせね。んしょっと……」 そらは、何事もなかったかのように立ち上がり、先ほど魔王が見せたように静かに宙に浮いた。彼は魔王と同じ高さで対峙し、涼しい顔で話しかけた。 そして次の瞬間、何の前触れもなく、そらは魔王の心臓を一つ、転移魔法で魔王の体内から自身の手に移動させた。 取り出された心臓を、そらは何の感情も見せずに空中で手を離した。それは重力に従って地上を目掛けて落下し、岩場に着地した瞬間に『ぐしゃ』と嫌な音を立てて飛び散った。 それと同時に、魔王の顔が激しい苦痛に歪んだ。「ぐはっ。あの攻撃をくらって何故お前は生きている? だが残念だったな。我は心臓は一つではないのだ。その様な高度の魔法、何回も連続で使えまい……」
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32話 「気のせい」の限界

 ふいに背後からティナが近寄ってきて、彼の手にある異様な輝きを放つ物体を覗き込んだ。「なんですか、それは?」 急な声に、そらは軽く振り返ったものの、特に動じる様子もなく、まるで低級の魔物を討伐した後のような平易な口調で答えた。「魔王の魔石だけど……」 その言葉を聞いたティナは、一瞬で顔色を変えた。「は!? またですか! またなのですか! 無茶はしないでくださいって言っているのに! もおー!」 ティナの甲高い叱責が響き渡った。 (やっぱり怒られるのね。一応、隣国の王国を救ったと思うんだけどなぁ……) そらは心の中でぼやきつつ、形ばかりの謝罪の言葉を口にした。「スミマセン」 ティナの叱責を聞きつけたのか、今度はレナやフィオの練習を見ていたエルとアリアも、興味津々といった様子で近寄ってきた。二人は、そらの手の中で鈍い光を放つ巨大な魔石を、目を輝かせて見つめた。 まずアリアが、無邪気な声で感想を口にした。「キレイな石なのです」 続いてエルも、興奮した様子で魔石を指さした。「キレイだねー。それに、大きいねー♪」 二人は、それが世界を危機に陥れた存在の核であることなど、微塵も気にしていないようだった。 (今度は、何に使おうかな……) そらは、手の中にある、規格外の魔力を秘めた魔王の魔石を眺めながら、その活用法を考え始めた。大量の魔力を持つこの素材は、彼にとって何よりも魅力的な資源だった。♢魔剣の生成 魔王を倒してその魔石を手に入れたところで、使い道は限られている。売るか、武器や工芸品、魔術具に使うくらいだ。しかし、魔王の魔石のような規格外の物を売れば、間違いなく大きな問題を引き起こすことになるため、売却はすぐに選択肢から除外した。 (それならば、武器でも作って研究してみるか) そらはそう結論づけた。 彼はまず実験として、ミスリル製の
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33話 「混ぜてみた」の衝撃

 そらは、何食わぬ顔で答えた。「ん? そうだけど」「何か変わっているんですけど? 魔石の色とか……」 ティナは、以前の魔石とは明らかに違う、黒っぽい紫色の美しい宝石のような魔石を指さした。「そう? 魔王の魔石を混ぜてみたんだけど」 そらは、まるで「道端の石を拾ってきてみた」程度の気軽さで、事実を口にした。 ティナは絶句し、すぐに怒りを露わにした。「え? 何してくれてるんですかッ!」「え? ダメだった?」 そらがきょとんとした顔で尋ねると、ティナは怒りを引っ込め、杖の魔力的な変化を感知したのか、逆に期待に満ちた表情になった。「い、いえ、いいですけど。では、その効果を試すのに付き合ってくださいよ!」 ティナは、自らの意思とは関係なく強化された杖を握りしめ、その性能を試すべく、そらを実験に誘った。♢ヘルフレイムの威力「ヘルフレイムってのが出せるらしいよ」 そらは、自分の魔剣に付与された効果をそのまま伝えた。 ティナは目を丸くする。「そうなんですか。……そのような魔法は分かりませんけど」 彼女の知識にはない魔法名だったが、そらの言うことならと半信半疑のまま、すぐに外に出て試すことにした。 キャンプ地から離れた場所に人形の的を設置し、ティナが杖を構えた。彼女が意識を集中させると、杖の先端に光が集まり始めた。 ティナは、教えられた呪文の代わりに、ただ「ヘルフレイム」と強く念じ、対象に向かって杖を振り抜いた。 次の瞬間、杖の魔石から圧縮された魔力が噴出され、どす黒い球体となって一直線に的へと飛んでいった。それはただの炎ではなく、空間の熱を奪い尽くすかのような、邪悪な迫力を伴っていた。 その黒い球体が的の中心に直撃すると、爆発的なエネルギーと共に人形は黒い猛火に包まれた。炎は凄まじい勢いで燃え上がり、一般的な魔法の比ではない圧倒的な威力をもって、的を一瞬で灰燼に帰した。
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34話 「灰」すら残さぬ初戦

 そらは、エルとアリアに、以前ティナに渡したものよりわずかに小さいバージョンの杖を手渡した。二人分の掌に収まるサイズでありながら、魔石の放つ鋭い輝きは変わらない。 続いてフィオには、同じ魔石が嵌め込まれた一対の双剣を渡す。鋼の冷たさが、彼女の手に馴染んでいく。 そして、レナへと向き合い、同じ魔石をあしらった長剣を差し出した。「取り扱いに気を付けて。最悪、焼け死ぬよ。普段は、使わない方がいいかもな。」 レナは目を見張ったまま、渡された剣を見つめた。「え!? 私にもっすか? 本当に良いんですか?」「当然だろ。お前も仲間なんだから。まあ……さっき言った通り、普段は使わない方が良いと思うよ。」 レナは剣を両手でしっかりと抱え、感謝を口にした。「ありがとっす。」 そらはその場で小さく手を振る仕草を見せると、訓練場の空間に、全員分の木製の的を素早く設置した。 魔法用の的を距離を取り配置し終えると、そらは今度は剣術用に、それらとは明確に離れた近い位置に、より頑丈な的を据え付けた。 エル、アリア、フィオ、レナの四人は、新しい武器を手に、早速嬉々として魔力を込めていた。魔石の力を解放した攻撃は、派手な光と轟音を伴い、的を次々と吹き飛ばしていく。(的を出すのが大変なんですけどね、まったく。) その中でも、そらの目を特に引いたのはフィオの動きだった。 小柄な体躯を最大限に活かし、彼女はまるで影のようにちょこまかと動き回って的を撹乱する。そして一瞬の隙を見逃さずスッと間合いを詰めると、双剣で的を数回切り付け、即座に魔石の力で焼き尽くす。その一連の流れは淀みがなく、驚くほど洗練されていた。 (フィオって、こんなに動けるんだ。凄いな!) 彼女の戦闘スタイルと、魔石の「一撃でも入れば燃え尽きる」という特性は、驚くほど相性が良いようだった。高速で接近し、確実に一撃を入れることに特化した動きは、この強力すぎる武器を最も効率的に活かしていた。 皆が熱心に訓練に励んでいるのを確認し、そらはふと周囲を見回
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35話 正式な絆と、宿なし卒業のギルド登録

「えっ!?」と、アリアは驚きに声を上げた。 ティナが優しくフォローを入れた。「3人とも凄かったですよ」 レナも頷く。「うん。凄かったっす。フィオさんの動きは、いつも見惚れるっす。」 アリアはまだ納得がいかない様子だった。「なんか納得出来ないのです。」 そらはアリアの頭を軽く撫でた。「2匹も倒せたんだから凄いと思うよ。それに、勝負じゃないんだから気にすんなって。」 ティナが困ったように微笑んだ。「私なんか何も出来なかったんですよ?」 (大人な対応、有り難う。ティナさん。) そらが心の中で感謝していると、レナが今後の予定を尋ねた。「これから、どうするんっすか?」 そらは空を見上げて答えた。「そろそろお昼じゃない?」 そらの言葉を聞いた、お肉大好きなレナは、瞳をキラキラと輝かせた。「肉すね?肉っすよ!」 そらは、肉と聞いて嬉しそうなレナを見て微笑んで言った。「あぁ。肉もあると思うよ。」 アリアも目を輝かせて、レナに続いて言った。「肉なのです。」 すっかり戦闘熱も収まり、皆で談笑しながらキャンプ地へと歩いて戻った。 キャンプ地に戻る途中、再び数匹の獣と遭遇した。しかし、今回は皆が遠慮し、戦闘をアリアに任せた。フィオに勝利数で負けたことを気にしているアリアへの、仲間たちなりの配慮だった。 その期待に応えるように、アリアは的確に魔法を命中させ、獣たちを撃破した。「わたしスゴイのです。」 アリアは顔いっぱいに喜びを浮かべ、ご機嫌になっていた。 (ご機嫌になって良かったよ。)と、そらは安堵した。 昼食を終え、一行がくつろいでいると、そらはふと行動を思いついた。 (午後から久し振りにギルドに行ってみるかな。) ついでに、レナの正式なパーティ登録も済ませてしまいたい。そらはレナに視線を向けた。
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36話 「根こそぎ潰す」

 二人はキャンプ地に戻ろうと、町の外に向かって歩き始めた。 しかし、町中で大きな人だかりができているのが目に入ったので、そらは気になって近寄ってみた。 人だかりの中心では、小さな女の子の腕が、五人の盗賊風の男たちに強く掴まれていた。男たちは、その女の子を無理やり連れて行こうとしているようだった。 その光景を見たレナが、すぐに声を上げた。「何をしてるっすか!?小さな女の子に乱暴するのは良くないっすよ!」 盗賊のリーダー格らしき男が、レナを睨みつけて言った。「貸した金を返さねぇから、コイツを奴隷として売るんだよ。文句あるのか?これも仕事なんだよ!」 女の子の母親らしき女性が、悲痛な叫びを上げた。「ちゃんと、返したじゃないですか!」 盗賊は鼻で笑う。「何を言ってるんだ? 利子が、まだ残ってて返してねぇだろうが!」 母親は必死に反論した。「お金を返しに行った時に、完済したと言いましたよね!?」 盗賊は更に言い募る。「貸した金は完済したが、利子の方が、まだ残ってるんだよ。」 レナが憤慨したように、そらに訴えかけた。「ひどいっす。そらさん、女の子を助けてあげたいっす。」 そらは周囲の状況を考えながら答える。「良いけどさ、ココじゃ不味くない?女の子を奴隷にするつもりでお金貸してるし。」 レナは必死にそらに指示を仰いだ。「では、どうするんっすか?」 そらは、あごに手を当てて提案をした。「後を、こっそりと付けて助けるとか?」 そらがそう提案し、二人で話しているその一瞬の間に、事態は急変した。 女の子の母親が、我慢できずに盗賊たちに飛びかかり、掴まれた娘を引っ張って助け出そうとしたのだ。 盗賊のリーダー格の男は、一瞬にして表情を獰猛に変え、懐から光るナイフを抜き放った。「うるせぇな。お前は、邪魔だ!」 男は容赦なく、助けようとした母親の腹部を深く突き刺した
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37話 無邪気な殺戮者

 念のため、この件を正式な「盗賊討伐と殺人事件」として処理するために、町の兵士を証人として一人連れて行くことにした。(町中に盗賊が居るので、剣術が出来ず、遠距離攻撃主体の魔法使いで負けず嫌いのアリアは、今回の出番は無さそうなので心配だった。) そらはそう思いながらも、レナ、アリア、フィオを率いて、探索魔法で見つけ出した盗賊の拠点へと踏み込んだ。古びた建物の中には、武装した盗賊たちが十数人集まっていた。 逃げ帰っていたリーダー格の盗賊が、救援を求めて叫んだ。「こいつらです!俺の手下を殺したのは!」 そらは一歩前に出て、冷静に告げた。「借金の回収と借金の形の回収をしに行って、邪魔されたからって母親を殺しちゃダメでしょ。ただの盗賊だよそれじゃ。」 横に控えていたレナは、剣の柄に手をかけ、臨戦態勢に入っていた。「だから、盗賊行為をした犯罪者の討伐をするっす。」(アリアは強力な攻撃魔法を使うが、ここは狭い室内だ。ここで魔法を放てば、周りにも被害が大きくなる。) そらはアリアに目線で待機を促した。アリアは不満そうな顔をしつつも、そらの意図を理解し、魔法の発動を控えた。 盗賊たちはそらたちを子供と見て侮り、大笑いした。「子供だけで来て、どうにかなると思っているのか?」「捕えて奴隷として売るから殺すなよ。」「こっちには元冒険者を護衛として雇っているんだ。」 リーダー格の盗賊が自慢げにそう言い放つと、そらはすぐに言葉を返した。「元冒険者って事は、今は盗賊なんだよね?」 そらの皮肉めいた言葉に、盗賊たちはさらに怒り、嘲笑する。「何の心配をしてるんだよ!倒せるとでも思ってるのかよ!」そらの言葉を合図に、レナとフィオが同時に動き、盗賊の討伐を開始した。 レナは狭い室内であるため、愛用の長剣ではなく、取り回しの良い双剣を選んでいた。長剣では天井に当たってしまい、力を込めて振り下ろすことができないからだ。 「行くっすよ!フィオ、そっちの二体お願いっす!」
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38話 レナ先生になる1 ショートストーリー

 「他に仲間はいるか?」 そらは剣を突きつけられている盗賊に尋ねた。恐怖で顔面蒼白になった盗賊は、震える声で「もういない」と答えた。 「――分かった。」 その言葉を聞くと、そらはすぐに討伐を終わらせた。 (アリアが新しい武器――《ヘルフレイム》を使ったおかげで、遺体は残っていないので、後片付けをしなくて済むのは楽だね。) そらは、殲滅魔法の便利さを再認識した。 盗賊の根城には、金目のものが多数隠されていた。盗賊の宝は、討伐者に権利があるため、そらは遠慮なくそれらを全て回収していった。これほどの額なら、リサが今後の生活に困ることはないだろう。 もちろん、同行していた兵士の許可も得ている。「今回の件は、金貸しが盗賊行為をしたと自白もあり、かつ殺人を目撃した者も多数いる。よって、この一味を正式に盗賊とし、諸君らの行動をその盗賊の討伐と認める。」「後の現場の処理は我々に任せてくれ。ギルドへの報告も、そちらで済ませておくので、後日、報酬が出るから忘れず受けとれよ。」 そらは兵士に一礼し、後の処理は任せることにした。 「よし、戻ろう。」 そらはアリアたちに声をかけ、すぐに転移魔法でキャンプ地へと戻った。キャンプでは、エルとティナがリサの面倒を見て、静かにそらの帰りを待っていた。 ここ最近、パーティに誘ってくれる冒険者がめっきりと減ってしまった。稼ぎがなければ、当然のように今夜の宿代も、腹を満たすための食糧代も底をつく。空っぽになった財布を振ってみても、虚しい金属音が微かに響くだけだった。 「……このままじゃ、野宿っす……」 藁にもすがる思いでギルドマスターに相談し、何でもいいから良い仕事を紹介してほしいと頭を下げたのだが、返ってきたのは渋い顔ばかり。どうやら、今の自分に回せるような手頃な依頼はなさそうだった。 諦めきれないまま、レナはギルドに併設された食堂の端っこのテーブルに陣取った。新しい依頼が掲示板に張り出されるのを、ただじっと待つしかない。
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39話 レナ先生になる2 ショートストーリー

 この生活は最高っす。それは間違いないっす。でも、良いことばかりじゃないというか……正直、心臓がいくつあっても足りないくらい恐ろしいこともあるんっす。 それは、伝説に謳われる本物のドラゴンに、日常的に出くわすこと。 (……しかも、フィオのペットって。ドラゴンっすよ? 世界を滅ぼすとか言われてる、あのドラゴンっすよ?) 視界の端に巨大な影が差すたびに、レナの体は本能的に強張り、指先までガタガタと震えだす。あの黄金色の瞳に見つめられただけで、自分が小さな羽虫になったような、圧倒的な捕食者の圧力を感じるっす。あれに比べれば、森の魔物なんて可愛いものっす。「いっしょにあそぼー!」 そんなレナの恐怖をよそに、フィオは屈託のない笑顔で巨大な竜の鼻先に駆け寄っていく。あんなに鋭い牙のすぐ近くで、怖くないんっすかね。もし機嫌を損ねて「ガブッ」とされたら……そう想像するだけで、レナは目眩がしてくるっす。 フィオがドラゴンの首にしがみついて無邪気に笑っている光景は、もはや神話のワンシーンなのか、それとも悪い夢なのか。レナは腰が抜けないように必死で自分の足を叩きながら、今日も遠巻きにその様子を眺めるしかなかった。「あんなのが……ペットなんて、このキャンプ地の人たちは、一体……何者なんっすか……」 美味しいお肉と引き換えにするには、あまりに刺激が強すぎる日常。レナは震える手で剣を握り直し、自分ももっと強くならないと、いつか恐怖で心臓が止まってしまうと本気で危機感を覚えるのだった。「よし、フィオ! これから練習試合をするっすよ!」 レナは木剣を構えながら、目の前の小さな教え子を観察した。これまでの練習を通じて気づいたことがある。フィオには、力で押し切る大剣や一本の剣よりも、手数を活かした双刀の方が合っているのではないか。小柄な体躯を活かした瞬発力、力強い脚力、そしてしなやかな跳躍力。それら全てを最大限に引き出すには、両手に武器を持つスタイルが最適に思え
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40話 レナ先生になる3 ショートストーリー

 だが、驚きはそれで終わりではなかった。新しい的に取り替えられた瞬間、そらさんの纏う空気が、一変した。肺がひりつくような、圧倒的で威圧的なオーラ。(……え? 何が起きてるんすか……? 雰囲気が、さっきまでと全然違うっす……) 次の瞬間、そらさんの姿が視界から消えた。もはや目が追いつかない、認識することすら困難な超高速の移動。先ほどのような「ちょこまか」とした動きでありながら、放たれる一撃一撃が岩をも砕くような轟音を伴い、強力な重圧となって周囲にまで伝わってくる。 人型の的は、斬られたことすら気づかないような速度で、一瞬のうちに細かな塵へと変えられた。(……これは、ヤバイっす。次元が、住んでる世界が違う感じっすッ!) レナは冷や汗が止まらず、ただその圧倒的な武の奔流を、震えながら見守ることしかできなかった。 嵐のような演武を終えたそらさんが、何事もなかったかのような涼しい顔でこちらへ歩み寄ってきた。その瞳には、まるで「食後の散歩でもどう?」と誘うような気軽な色が浮かんでいる。「レナ、双剣の練習試合しよ?」 その誘いに、レナは食い気味に、そして全力で首を横に振った。「……うん。ムリっすっ!!」 (あんな異次元の動きを見せつけられて、試合なんて出来るわけないっすよ! 死ぬっすよ、わたし。一瞬でバラバラにされる未来しか見えないっす!) 心臓がまだバクバクと早鐘を打っている。本能が全力で「逃げろ」と警鐘を鳴らしていた。「そっか、残念」 そらさんは少しだけ肩を落とすと、あっさりと引き下がり、また自分の作業場の方へと戻っていった。その背中を見送りながら、レナは「ふぅ……」と大きな溜息を吐き出して、ようやく強張っていた体の力を抜く。 いつまでも呆けているわけにはいかない。レナは頬を両手で叩いて気合を入れ直すと、目を丸くしてそらさんの去った方向を見つめていたフィオに声をかけた。
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