異世界に子供の姿で転生し初期設定でチートを手に入れて2 のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 30

48 チャプター

21話 勤勉なレナと、その背中を追う健気なフィオ

 賑やかな宴も終わり、食事の片付けを終える頃には、皆、剣術の稽古や日中の活動で疲労していたのだろう。周囲は急速に静けさを取り戻し、寝床に就く時間も普段より早くなった。静かに揺れる焚き火の炎だけが、疲れた仲間たちの眠りを優しく見守っていた。 ——翌朝、夜露に濡れた草木が微かな光を浴び始める頃、俺は静かに目を覚ました。 テントの外からは、ヒュッ、ヒュッと空気を切り裂く鋭い音が響いてくる。レナが朝早くから外で真面目に素振りをしている音だ。そういえば、冒険者登録の際、剣士にとって毎日の練習が何よりも大事だと熱弁されたことを思い出す。彼女はそれを体現している。 そのレナの隣では、フィオが小さな体で一生懸命に剣を真似て素振りをしていた。その姿は健気で、とても可愛らしい。 ステフも既に起きており、焚き火の煙が薄く立ち上る中で、朝食の準備を始めていた。その勤勉さには頭が下がる。 一方で、エルとアリア、そしてティナは、まだ深い眠りの中にいた。昨夜の食事の後の安堵感と、日中の活動による疲労が残っているのだろう。静かな寝息だけが、テントの中から微かに聞こえてくる。 俺はレナの真剣な姿を見て、彼女の持つ真の実力をこの目で確かめたいという衝動に駆られ、剣を手に声を掛けた。「朝の練習、付き合ってくれるかな」 レナは一瞬の迷いもなく、力強く頷いた。「もちろん良いっすよ」 彼女も持っていた剣を構える。その瞬間、彼女の目付きは昨日の快活な少女から、研ぎ澄まされた一振りの刃へと変わった。気合いと共に、レナは驚くほど素早く距離を詰め、一気に俺へと打ち込んできた。その速度は、並の剣士のそれではない。 俺は反射的に後ろへと大きく飛び退き、レナの剣の射程圏外、安全な間合いを取った。だが、そこで留まらない。飛び退いた勢いを殺さずに、即座に踏み込みへと変え、視線を逸らすフェイントを入れると同時に、一気に距離を縮めて打ち込んだ。一瞬の攻防。カキンッという金属音は鳴らず、代わりにザシュッという嫌な音が響いた。 レナの剣は、衝撃で折れたのではない。俺の剣筋によって、まるで紙のように正確に断
last update最終更新日 : 2026-01-06
続きを読む

22話 穏やかな少女を戦士に変えた、略奪への報復心

 まだ眠っているティナのそばに寄り、その柔らかな頬を人差し指でそっとぷにぷにと触れてみた。その感触の良さに、俺は思わず口元を緩めた。「きゃぁ……」 突然の刺激に、ティナは小さく悲鳴を上げ、体をビクッと震わせると、飛び起きるように上半身を起こした。まだ覚醒しきっていないのか、瞳は潤んでいる。「朝ですよー。罠の見回り行くけど一緒にくる?」「え、あっ……はい。行きます。行きます!ちょ、ちょっと待ってください!」 ティナは顔を赤くしながらも、俺からの誘いを断ろうとはしなかった。そして、信じられないことに、彼女は俺の目の前で、慌てた手つきでパジャマを脱ぎ捨て、着替え始めた。 ――あれ?良いモノを見られたけど……恥じらいを無くした?ティナさん。 俺は複雑な気持ちでその光景を見つめた。最近のティナは、以前のような魔道士然とした重厚な服装ではなく、動きやすさを重視したワンピース姿で、少しはお洒落を楽しむようになったように見えた。しかし、その服装に反して、彼女は常にそらからプレゼントをされた魔道士の杖を手放すことはなかった。新調された可愛らしい服と、いかにも魔導士という杖の組み合わせは、どこかちぐはぐな印象を与える。 着替えが終わるのを待ってから、俺はティナと共に森の奥へと足を踏み入れた。朝の湿った土の匂いが鼻腔をくすぐる。二人は、昨日仕掛けた罠の場所へと静かに向かった。 鳥が捕れていれば良いな、と俺は子供のように期待して胸を高鳴らせた。ワクワクしながら森の中を進む。 罠へと向かう途中で、地面は次第に湿って足場が悪くなったため、転倒しないようにと自然にティナと手を繋いだ。彼女の小さな手のひらの温もりが伝わってくる。 ティナは弾んだ声で言った。「今日も、いっぱい捕れていれば良いですねッ」「鳥が、いっぱい捕れてたら嬉しいなー」 期待を込めて罠へと辿り着いた瞬間、目の前の光景に二人は息を飲んだ。罠は無残にも荒らされていた。「え? なに」 ティナの表情
last update最終更新日 : 2026-01-07
続きを読む

23話 一瞬で機嫌を直した、ティナの純粋な乙女心

 俺は心の中で首を傾げた。ティナが好戦的になった理由が、ただ単に獲物を奪われたことへの怒りだけではなさそうな気がした。ゴブリン討伐を楽しみにしていた、などという訳は、もちろんないだろう。 気になった俺は、隣で腕をしっかりと掴んでいたティナに尋ねてみた。「ティナ、なんか……怒ってる?」 俺に直接聞かれたティナは、一瞬たじろぎ、恥ずかしそうに視線を地面に逸らして答えた。「……べつに、怒ってませんよ。もう、帰るんですよね……」 その声には、怒りよりもむしろ、期待を裏切られたような、寂しさのような感情が滲んでいた。彼女の表情から、俺は悟った。彼女はゴブリン討伐そのものに興味があったわけではなく、俺と二人きりで森の中を散策し、一緒に何かをする時間を求めていたのだ。その時間が、俺の能力で一瞬にして終わってしまったことへの不満が、怒りとして表れていたのだろう。 俺はその想いに応えるべく、新たな提案をしてみた。「鳥を捕りに行こっか?ティナはロックバレット使えるでしょ?」 俺の言葉の意図――つまり、魔法を使って二人で協力して獲物を捕るという提案を理解した瞬間、ティナの顔は一気に輝いた。彼女の表情は「にぱぁ」という擬音がぴったりなほどの満面の笑顔になり、弾けるような元気な声で答えた。「はい。大丈夫です!使えますよ」 さっそく、俺は探索魔法で近くにいる鳥を探し出し、ティナにその場所を教えた。「ティナ。あそこにいるよ」 ティナは言われた通りに集中し、ロックバレットを打ち込んだ。その命中は見事なもので、正確に鳥を捉えた。だが、その直後、鳥は激しい衝撃によって原型を留めず大破してしまった。 ――それじゃ食べられないよ……討伐じゃなくて狩りなんですけど。 俺は思わずため息を飲み込んだ。ティナもすぐに自分の失敗を悟ったようで、肩を落とした。「……難しいです……」「命中の精度は
last update最終更新日 : 2026-01-08
続きを読む

24話 徐々に重くなる空気と、本能が警告する圧倒的な威圧感

 獲れた獲物の鳥を持ってキャンプ場へと帰ると、その微かな血の匂いで察したのだろう、レナが素早く近寄ってきた。俺は、レナが喜びそうな獲物を見せるように鳥を掲げた。「わぁ……っ!? 鳥ですか! 食べるんですよね? 今日も肉っすかー!?」 レナは心底嬉しそうに目を輝かせた。どうやら、彼女は相当肉に飢えているらしく、喜びのあまりピョンピョンと跳ねてみせた。その姿は剣士らしからぬ無邪気さで、可愛らしい。この種類の鳥は、食用のニワトリとは違い、味が濃く美味しいのだが、いかんせん体が小さいため、肉を求める彼女にとっては食べ応えがないのが難点だろう。 少し遅れて、フィオがパタパタと可愛らしく小走りしながら駆け寄ってきた。「れんしゅう、おわりー?」 フィオの問いに、レナは笑顔で答えた。「少し休憩にするっす」「わかったぁ。きゅうけいするー」 フィオはそう言って、辺りを見回し、何かを探し始めた。 また、ウサギでも追い回して遊ぶのだろうか、と俺は呑気に考えていた。だが、しばらくすると、フィオは両手に一匹ずつ、合計二匹のウサギを捕まえ、誇らしげな顔で持って戻ってきた。その手つきは、まるで日常の遊びであるかのように自然だった。「ウサギとれた。いえに、つれてってー」 フィオは捕まえたウサギを差し出しながら、俺にそうお願いした。俺には、フィオの言うウサギと「家」との関連性がすぐに理解できなかった。「良いけど、家に用事あるの?」 俺が尋ねると、フィオは無邪気に頷いた。「うん。ぺっとに、えさあげるのー」 フィオの口から出た「ペット」という言葉に、俺の疑問はさらに深まった。フィオがいつの間にこっそりとペットを飼い始めたのだろうか。しかし、転移を使えばすぐに家に帰れるため、俺は了承することにした。それに、フィオは滅多に我儘やお願いをしてこない。なるべくフィオの願いは聞き入れてやりたいと思っていた。「そっか、分かった。レナも一緒に来てね」「分かったっす」 俺はティナ、フィオ、レナと共に家へと
last update最終更新日 : 2026-01-09
続きを読む

25話 古竜を相手に立ち回る、フィオの規格外な日常

 レナの頭の中は、次々と押し寄せる情報と恐怖で完全に機能停止寸前だった。(え? 何してるっすか? ドラゴンっすよ? ペットになるものなんすか? ウサギがエサって足りるの? ドラゴンに乗れるの? フィオはドラゴン使いなんすか? 自分はどうするべきっすか?) 彼女の思考は堂々巡りを続け、ただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった。「……」 レナが混乱している間に、フィオはまるで散歩でも終えたかのように、ドラゴンからひょいと降りて、レナの元へとトコトコと歩いてきた。「いじめないでね」 フィオは、心配そうにレナを見上げてそう言った。(へ? いや、イジメるどころか……わたしの命の危険なんですけど! 逆っすよ……!?) レナは内心で悲鳴を上げたが、口からは何も言葉が出てこなかった。フィオの後ろに控える巨大なドラゴンは、剣を構えて震えているレナのことなど気にも留めていない様子で、微動だにしなかった。「なんすか……あれ? ドラゴンっすよね? 危ないっすよ。早くもどるっす」 レナは恐怖と動揺で顔を青ざめさせながら、フィオの手を強く引いた。体から振り絞った力で、抵抗するフィオを無理やりそらの待つ家へと連れ戻した。 息を切らしながら、レナは先ほどの出来事をそらに報告した。だが、そらの反応は、レナの期待とはかけ離れていた。彼は一切慌てた素振りも見せず、あまりにも平然と答えた。「あぁ、ドラキンね。大丈夫だよ、ボクのペットだから」 レナは耳を疑った。「そらさんまで、ペットってドラゴンですよ? 暴れだしたら、どうするんですか!?」 彼女は思わず声を荒らげた。その巨大な存在が持つ脅威を、なぜ誰も理解してくれないのか。「暴れだしたら、ちゃんとしつけをするかな? だから大丈夫だよ」 そらはまるで躾のなっていない子犬の話でもするかのように、あっさりと答えた。その余裕綽々な態度に、レナはもはやそらへの訴えを諦め、隣にいるティ
last update最終更新日 : 2026-01-10
続きを読む

26話 上流への誘惑に負けた、エルの光速スケジュール変更

「まだ、ドラキンの配下のドラゴンが、いっぱい居るらしいけど大人しいから安心してね」「え!? まだドラゴンがいっぱい居るんっすか?! そんな危ない場所に連れてこないでほしいっす。どこなんすか、ここ……」 レナは、転移で家に戻ったにもかかわらず、まだ恐怖が抜けていないのか、半狂乱の声を上げた。彼女は周囲を警戒しながら、不安そうに尋ねた。「ここは、普段住んでる家で『竜の谷』って所の近くだよ」 俺が平然と答えると、レナはさらに驚愕した。「何で、そんな危険な場所に家を建てるんっすか。人が近付いて良い場所じゃないっすよ」 俺が家を建てたわけじゃないし……知らないけど、気が付いたらここに居たんだよね。そんな事情を説明するのも面倒だったため、俺は適当に返事をした。「だから良いんだよ。おかしな人間も近付いてこないからさ」 俺がそう言うと、レナはますます顔を引きつらせる。「ううぅぅ、早くキャンプしてる場所に戻るっすよ! 危険すぎるっすっ」 彼女の懇願に折れ、俺はフィオに確認を取ることにした。「分かったよ。戻るけど良い? フィオ」「うん。だいじょうぶ、えさあげおわったー」 フィオの用事が済んだことを確認し、レナがあまりにもうるさいので、俺たちはすぐにキャンプをしている場所へと戻ることにした。 転移で戻るなり、俺はさっき獲れたばかりの鳥をステフに渡すため、キッチンへと向かった。「まだ、練習するの? ボクは、テントに戻るけど」 俺が声をかけると、レナは疲労の色を隠せない様子で答えた。「……もう疲れたっす。練習は、午後からにするっす」 キャンプ場に戻ると、ちょうど森の奥からアリアとエルが姿を現した。二人の服には小さな葉っぱや泥がついており、ついさっきまで元気に駆け回っていたことが見て取れる。「そらさんたち、どこに行ってたのです?」 アリアが不思議そうに首を傾げて問いかけてきた。そらは、まだ状
last update最終更新日 : 2026-01-11
続きを読む

27話 滝の側面にそびえ立つ、巨大なクリスタル・スライダー

「キレイな場所ですね」 ティナが、その情景に魅入られたようにぽつりと呟いた。彼女の瞳には、美しく煌めく水面と、立ち上る清涼な霧が映し出されている。 アリアとエルも、その迫力に圧倒されたのか、珍しく声を上げるのも忘れてじっと滝を眺めていた。時折、風に乗って運ばれてくる冷ややかな飛沫が頬をなで、歩いて火照った身体に心地よい刺激を与えてくれる。 川のせせらぎと滝の轟音が混ざり合い、森の静寂をより深く際立たせていた。「遊んでいく?」 俺が皆の顔を見回して尋ねると、案の定、アリアとエルは弾かれたように目を輝かせた。「遊んでいくのです!」「泳ぐー!」 期待に満ちた二人の返声が、滝の轟音に負けないくらい元気に響き渡る。その様子を見て、ティナは少し呆れたような、それでいて苦笑いを隠しきれない表情で二人を窘めた。「また泳ぐのですか? もう、風邪を引いても知りませんよ」 しかし、ティナの心配など露ほども耳に入っていないようで、エルとアリアは顔を見合わせて楽しそうに笑い合った。それから、どちらが早いかを競うように、ためらいもなくその場で服を脱ぎ捨てていく。 真っ白な下着姿になった小さな二人の少女は、跳ねるようにして一目散に川へと走り出した。 バシャアアンッ! 勢いよく滝壺へと飛び込むと、周囲に大きな水しぶきが舞い上がった。冷たい水面に顔を出した二人は、冷たさに驚くこともなく、むしろ「気持ちいいー!」とはしゃぎながら、互いに水を掛け合って遊び始めた。 神秘的な静寂に包まれていた滝壺は、一瞬にして賑やかな笑い声に支配された。その光景を眺めながら、俺は「元気だな」と独りごちて、自分も少しだけ足でも浸してみようかと川辺へ歩み寄った。 滝壺の青は、近くで見ると驚くほど深い色をしていた。飛び込んだ二人は、予想以上の深さに一度身体を沈めた後、慌てて手足を動かして水面へと浮上してきた。 その際、激しい水流の悪戯か、はたまた不運な水圧のせいか。アリアの可愛らしい下着が、彼女の小さな身体からスルリと抜け落ちてしまった。小さな布切れは、白く泡立つ水流に
last update最終更新日 : 2026-01-12
続きを読む

28話 命を絞り尽くして倒れゆく、狂気なる召喚の代償

 最近のアリアは、以前に比べれば少しずつ、その幼い胸元にも年相応の膨らみが兆し始めていた。成長の証ではあるのだが、その無防備すぎる姿に、俺はどこに視線を置いていいのか分からず、滝の飛沫を眺めるふりをして目を泳がせた。 しかし、そんな俺の密かな葛藤を見透かしたかのように、隣にいたティナの視線が鋭く突き刺さる。ふと隣を見れば、彼女は半眼になり、氷のように冷ややかな「じと目」でこちらを凝視していた。「ああいうのが、お好みなんですね……」 ティナは、地吹雪のような低い声で、ぽつりと呟いた。その一言に、俺の背筋に冷たい戦慄が走った。 (違うんだ、ティナ! これは不可抗力というか、あの子が勝手に脱げただけで……!) 口に出せば出すほど言い訳がましく、余計に墓穴を掘りそうな予感がした。俺は即座に、この気まずい状況を打破するための最善手を打つことにした。 二人が再びスライダーの頂上へ向かおうと俺の方を見た瞬間、俺は転移魔法を発動させた。そして、ただ移動させるだけでなく、回収していたTシャツとパンツを魔力の流れに乗せ、移動の瞬間に強制的に着せ直してやったのだ。「ありがとうなのですー」 一瞬の転移を経て、頂上で再び服を纏った姿になったアリアは、特に不審がる様子もなく、天真爛漫な笑顔で手を振ってきた。彼女にとっては、魔法で服が戻るのも便利なサービス程度にしか思っていないのだろう。 そのまま、アリアは何の躊躇もなく、再び滑り降りるための準備を始めた。ひとまずの平和と、俺の潔白が守られたことに、俺は心から安堵の溜息を漏らした。 二人は時間が経つのも忘れて、いつまでもウォータースライダーの魔法に歓声を上げていた。しかし、周囲の木々の影が長く伸び、空が鮮やかなオレンジから淡い紫へと染まり始めると、ようやく川の上流調査を切り上げることにした。 俺は、後に残された者が不審に思わぬよう、創り出した水の道と氷の土台を完全に霧散させた。何事もなかったかのように元の静寂を取り戻した滝を見て、俺たちはキャンプ場への帰路につく。 転移でキャンプ地へ戻り、一息つい
last update最終更新日 : 2026-01-13
続きを読む

29話 日の出を待たず編成された、大規模討伐部隊の出陣

「何か確認は出来ませんでしたが、あちらの方角で怪しい光を目視を致しました!」 報告を受けた兵士長は、重厚な鎧の軋む音とともに立ち上がった。窓のない詰所の中で、彼は深刻な面持ちで部下の報告を聞き入れた。その光景が何を意味するか、兵士長は長年の経験から、ただ事ではないと察し始めていた。「分かった。偵察部隊を行かせよう」 兵士長の声は静かだが、その決断の重みが詰所の空気を振動させた。「御意! 引き続き見張りに戻ります」「分かった。戻ってくれ」 兵士長は報告を終えた兵士を下がらせると、すぐさま精鋭ぞろいの偵察部隊の隊長に招集をかけた。隊長に対して彼は、異変のあった地点へと急行し、何が起こっているのか、そしてどれほどの脅威が迫っているのかを、詳細に把握して戻るよう厳命を下した。城門が静かに、そして素早く開かれ、五人の兵士たちは、魔王召喚という想像を絶する事態が起こった場所へと、漆黒の森の中を突き進んでいった。 兵士長は偵察部隊の隊長に向かい、落ち着いた口調で指示を与えた。「廃墟の町の方向で怪しい光を確認をしたと報告があった。確認をしてきてくれ」「了解です」 隊長は手短に返事をし、五人の偵察部隊を引き連れて城を後にした。 数時間後、夜が明けきらぬうちに偵察部隊は王城へと戻り、兵士長に報告を行った。隊員たちの顔には、緊張と疲労の色が濃く浮かんでいた。「光が目視されたと思われる場所付近に、魔物を多数目撃致しました」 その報告を聞き、兵士長は静かに頷いた。「そうか……偵察ご苦労」 そこへ、王城騎士団の団長が現れ、険しい表情で口を開いた。「魔物が多数いるならば、すぐに冒険者ギルドへ緊急討伐の依頼を出すか……」「そうですね。こちら方面へ侵攻されても面倒ですし、私が責任をもって依頼を出しておきます」 兵士長はすぐさま行動に移ることを決めた。 夜のうちに、王都の冒険者ギルドには魔物討伐の緊急依頼が張り出された。高額の報酬と緊急性を鑑
last update最終更新日 : 2026-01-14
続きを読む

30話 魔王が突きつける、人間の身勝手さと開戦の宣告

 その混乱の中、全チームのリーダーを束ねる役割を担っていたガッシュが、冷静な判断でジフに指示を出した。「全滅しそうな事と、魔物が連携しているという重大な情報をギルドへ報告してくれ。お前が生き残って伝えるんだ!」 ガッシュの指示は、一部の仲間を見捨ててでも情報を持ち帰らせるという、苦渋の決断だった。幸いにもジフたちは早期に動き出したため、辛うじて戦場から離脱することができた。彼はガッシュの指示通り、冒険者ギルドへ駆け戻り、魔物たちが連携していること、そして討伐部隊がほとんど全滅したことを、血の滲むような思いで報告したのだった。 ジフが持ち帰った重大な報告は、ただちに冒険者ギルドから王城へと届けられた。夜も明けきらぬ王城の一室で、緊急の対策会議が開かれていた。 疲労を滲ませたギルド職員が、青ざめた顔で状況を伝えた。「多数のパーティが壊滅状態にあり、さらに魔物が連携していると報告がありました。只今ギルドでは、緊急に対策を考えている最中です」 その報告を聞いた兵士長は、眉間に深い皺を刻んだ。「魔物が連帯だと?……どういう事だ? これまでの魔物には見られなかった事態ではないか」 騎士団の団長は、事態の深刻さを瞬時に悟り、素早く指示を出した。「我々も明日の朝には出撃することになるぞ。各兵士長に、全隊に戦闘準備を整えておくようにと連絡を頼む」 その場に控えていた伝令の兵士は、背筋を伸ばして応じた。「了解しました」 王城全体が、未曾有の危機に対する準備のため、一気に慌ただしさを増していった。 翌朝―― 夜が明けきると同時に、準備を終えた王城軍の先発隊三千が、廃墟化した町へと向かって進軍した。 彼らが戦場に到着したとき、かろうじて生き残っていた少数のハンターたちが、血と泥に塗れながらも必死に魔物の猛攻に耐え、所々で抵抗戦闘を続けている状況だった。 先発隊の兵士たちは、疲れ切ったハンターたちと速やかに交代する形で前線に立ち、フレッシュな戦力で戦闘を継続した。 到着したばかり
last update最終更新日 : 2026-01-15
続きを読む
前へ
12345
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status