レナが手本を見せる間もなく、フィオはそっと双刀の柄を握りしめた。するとどうだろう。小さな手から溢れた魔力が、吸い込まれるように刀身へと伝わっていく。フィオの持つ双刀は、瞬く間にうっすらと幻想的な青白い光を纏い始めた。「え? もう出来るっすか?!」 レナは思わず素っ頓狂な声を上げた。普通なら、魔力の感覚を掴むだけでも数日はかかるはずだ。それをこうもあっさりと、しかもこれほど安定した魔力密度でやってのけるなんて。 (早すぎるっすよ、まったく……。教えることがどんどん無くなってきたっすよ……ヤバい……。このままじゃ、そろそろ家庭教師の職がなくなるっすーッ!) 内心で冷や汗を流しながら、レナは威厳を保つために精一杯の平然を装った。「そ、その調子っす。それで的を切ってみるっす」 フィオが地を蹴った。青白い光の軌跡を残しながら、フィオは踊るように的の周囲を駆け抜ける。『シュパパパンッ!』と小気味よい音が連続して響き、厚みのある木製の的は、まるで柔らかい果実のようにスパスパと切り刻まれていく。 あらゆる死角から放たれる、容赦のない斬撃の嵐。みるみるうちにボロボロの木屑へと変わっていく的を見つめながら、レナは遠い目をした。 (さすがフィオだ、完璧に使いこなしてるっす。……でも、私の存在価値が、目に見えてなくなっていく……) 教え子の驚異的な成長は嬉しい。嬉しいはずなのだが、自分の立場が危ういという現実が、レナの心に重くのしかかる。これ以上見せつけられたら、心が折れてしまいそうだ。「練習終了!! もうお休みにするっす。いいっすか、今日はもうおしまいっすよ! お・し・ま・い・っす!」 逃げるように宣言すると、レナはフィオを寝支度へと促した。(このままじゃ、本当にすぐに抜かれてしまうっす。……明日からは、わたしも……こっそり個人練習をしないとっすぅぅぅ!) 満天の星空の下、寝袋に入っ
最終更新日 : 2026-02-01 続きを読む