All Chapters of 白い恋の結晶~キミへと続く足跡: Chapter 51 - Chapter 60

132 Chapters

第51話

それがハルらしくて、あたしはふたりをテントから送りだし思わず笑ってしまった。ハルと柊はお互いなかなか足のタイミングが合わなくて、途中で転んで何度かやり直していた。結果は5位。ゴールでふたりが何かを言い合いながらじゃれていたけど、何を言っているかはわからなかった。一体、紙にはなんて書いてあったんだろう。『友達』とか……?あたしを選ばなかったのは、あたしが足が遅いのを知ってるからだろうね。次のスタートは、マキだ。「マキ~!! 頑張れ~!!」あたしは声の出る限り応援する。マキは真剣な表情で、ピストル音を待っていた。スタートを切ると、ドッと周りの声援が大きくなる。音楽も不安をかき立てるようなテンポの早い曲で、緊張感が増す。マキも、紙を見た瞬間、あたしを真っ直ぐに見てきた。まるで、獲物を見つけたハイエナような眼差しだ。「ユキ!!」やっぱり、あたしなの……?「ユキ!! はい!! 背中に乗って!!」あたしのいるテントまで全力で走ってきて、突然、あたしに背中を向けてしゃがみ込んだ。「え!? 何!? もしかしておんぶ!?」「そう!! いいから早く乗って!!」「いや、でもあたし重いし!!」「何言ってんの!! いいから早く!!」マキも勝負に負けるのは嫌いな性格だから、あたしが拒むと物凄い形相で睨んできた。あたしは恥ずかしい気持ちを抑えながら、そっとマキの背中に乗る。すると、マキがあまりにも勢いよく立ち上がったので、あたしは前のめりに頭から落ちそうになった。「マキ!! 大丈夫!?」「うるさい!! 黙って!!」まるで人が変わったかのように、ゴール目指して走る。あたしはマキにおんぶされながら、恥ずかしくてマキの背中に顔を埋めた。見事1位でゴールしたマキは、誇らしげにあたしを下ろし、見たかと言わんばかりに、順位順に座るハルの横を通っていた。
last updateLast Updated : 2026-01-04
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第52話

「ドンマイ、篠原」風で乱れた髪を直しながらハルの横を通ったら、ウシシと笑いながらハルが茶化してきた。あたしはフンとわざとそっぽを向いたあと、またハルを見た。「あ! ねぇねぇ、ハルの引いた紙には何て書いてあったの? マキのは親友だったけどさ」あたしが聞くと、ハルと柊は目を見合わせ「あ~……」と言葉を濁した。「別に? 篠原には関係のないこと」「なっ!! なんで教えてくれないのよ!!」ハルがあたしに向かってベーっと舌を出してくる。「ムカつく!! もうハルなんてこの後の競技全部負けちまえ!!」子供の喧嘩のようなことを言うと、ハルと柊は一緒になってお腹を抱えて笑いだした。「子供かよ」柊が、目に溜まった涙を拭いながらあたしを見上げる。ドクンッ!!一瞬にして、心臓を持って行かれた。柊の上目づかい、好きすぎる……。気楽に見ていられた午前中も終了してしまい、午後のスタート。空に浮かぶふんわりの雲はゆっくり流れているのに、校内に響いている音楽はテンポがとても早い。あたしの鼓動に合わせて、音楽がどんどんテンポアップしていく。あたしの心臓は、まるでメトロノームみたいだ。いつもはがっつり食べるお弁当も、リレーを走る為に少なめに食べた。落ちつこうと思って深呼吸をしても、スピーカーから流れる音楽のせいでちっとも落ちつけない。午後の競技がスタートしてから大人しく椅子に座っていられなくなったあたしは、クラスのテントの後ろでソワソワ体を動かしていた。「篠原!!」あたしがグルリと首を回したところで後ろからハルに呼ばれ、顔を斜め上に向けたままハルの方を振り向いた。口も半開きで、かなり酷い顔だと思う。それなのに……。「……柊!!」
last updateLast Updated : 2026-01-04
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第53話

ハルと一緒に柊の姿もあって、あたしは慌てて体勢を整え唇を噛んで顔を歪めて俯いた。まさか、このふたりが一緒にいるなんて。それに、ハルは柊の肩に腕を回しているし……。このふたり、いつの間にこんなに仲良しになったの?「なに? 篠原、準備運動してたの?」ハルが笑いながら聞いてくる。あたしは不細工な顔を柊に見られてしまい少し焦りながら、ハルに曖昧に頷いてみせた。「ちゃんと準備運動しとけよ? じゃないと、またケガするぞ?」「……うん」控えめに小声で答えたあたしを、ハルが不思議そうに覗き込んでくる。「なに? 篠原、体調悪いの?」珍しく、本気で心配している表情。「え? あ、いや、違うよ。ただの緊張……」あたしはそう答えて、アハハと苦笑する。「それより、こんなに仲良かったっけ?」あたしが柊とハルを指差して首を傾げると、ふたりはお互いに目を見合い、肩をすくめた。「ああ、これはまぁ、男の事情ってヤツかな? な? 古賀」「ああ、うん、まぁ」ハルが柊に言うと、柊は眉を上げながら軽く頷いた。男の事情?なに、それ……。あたしが理解できずに眉を寄せていると、ふたりはあたしを置いてテントの中に入って行った。あたしはまたひとり、ソワソワと体を動かす。右足首に少し痛みを感じるけど、半周走るだけだもん。耐えられるよね……?とうとう、2年生に召集がかかった。どうしてこんなにも緊張するんだろう。黒板の前に出てひとりで発表するわけでもないのに……。ただ、半周走ればいいだけ……。はぁ……。「雪羽」あたしが緊張でぎこちなく集合場所に歩いていると、小さな声で柊に声を掛けられた。あまりの小ささに空耳かと思いながら振り返ると、柊があたしに拳を向けていた。「気合」そう言って、柊が微笑む。
last updateLast Updated : 2026-01-05
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第54話

“ほら! 雪羽!! こうやって拳を合わせたら、気合、入る気しない?“一瞬、今の柊にあの頃の姿が重なった。だいぶ大人の顔立ちになった柊と、まだまだあどけなさの残る可愛い柊。一気に緊張感が抜け、あたしも微笑んで柊に拳を合わせた。第一走者がスタートラインに並ぶ。あたし達のクラスのバトンは緑色。あたしの順番は、15番だ。あたしの2つ前にはマキが並んでいて、気合十分といったふうにしっかり前だけを見ていた。あたしは……。柊のおかげで少しは楽になったけど、グラウンドに並ぶとまた鼓動が早くなる。パァァァン!!ピストル音が鳴り、一瞬ビクッと肩が上がる。あたしは首をキリンのように長くのばし、クラスメイトを見守る。声援が湧き、みんな手を叩いたり口に手を当て大声を出したりと必死に応援していた。あたしは、ゴクリとつばを飲み込むだけで声が出せない。あたしのクラスの第1走者は男子。グングン、他のクラスを追い越して行き2位で次にバトンが渡った。第2走者は、バレー部に所属する運動神経抜群の女子だ。その女子がまた追い越し、5組は1位に。順調に1位でバトンが渡り、益々プレッシャーが大きくなる。ハルが立ち上がり、バトンを待つ。後ろに手を伸ばし、タイミングを見計らって走りだし、しっかりとバトンを受け取った。ハルは足が早い。軽快に走り、グングン差をつけていく。ハルの茶髪が風に揺れ、程良くついた足の筋肉の筋が浮かび上がり数名の女子が黄色い声を上げていた。意外にもモテるんだよね、ハルは。だけど、今までに彼女がいるところを見たことがない。なんでだろう……。そう言えば、一度もそう言うこと聞いたことなかったよな……。
last updateLast Updated : 2026-01-06
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第55話

ずっと1位をキープして、柊の番だ。柊は、クラスメイトに「こっちこっち」と言うように手を上げ、近づいてきたら体を前にして手を後ろに伸ばす。タイミング良く走り出してバトンを受け取ると、まるで風になったかのように軽く走り出した。足が長い柊。少しの回転でも人より多く進んでいるような気がする。キレイな走りのフォーム。無駄がない……。完全に、風と一体化している。カッコイイ。あの頃よりも体格がよくなっているから、余計にカッコイイ。バトンは次々に渡り、もうマキまで回って来た。マキもハルと柊同様、あまり緊張もせずにカッコよくバトンを受け取って走り出した。この3人は本当に何でもできるから羨ましい。あたしなんて、何をやってもうまくいかないのに……。何かひとつでもうまく出来る才能が欲しい……。とうとう、あたしの番だ。ド、ド、ド、ド、ド、ド、ド。心臓が大きく暴れるので、膝が笑い立つことさえ困難。喉もカラカラ。極度の緊張で水分が蒸発した気がする。足のケガのせいであまり練習に参加できなかったけど、やれるだけのことはやろう。1位なのに、あたしで抜かされるわけにはいかない。「ユキ~!! はいっ!!」あたしの名前を呼びながら全力で走って来た女子に手を上げて答え、右手を後ろに伸ばした。バトンをしっかり受け取り、強く握って走る。あたしも、さっきの柊のように風になるんだ。風になって、一気に駆け抜けて見せる。前から受ける風に前髪が上がる。応援団の力強い応援の声と、ハイテンポの音楽があたしの気分を上げてくれる。今どのくらいの差が付いているのか、後ろを振り返って確認したいけど、運動音痴のあたしにはそんな余裕はない。追い抜かされるんじゃないかって不安だけど、今は、やれるだけ全力で走るしかな……。ズキンッ……!!「……ッ!!」突然、右足首に電気が走ったような痛みを感じ、一瞬ガクンと体が傾いた。右足が地面に付く度に激痛が走る。しまった……。あと少しなのに……。あまりの痛さに走るスピードが落ちてくる。だけど、今までみんなが1位をキープしてきたんだ。あたしで順位を落とすわけにはいかない。
last updateLast Updated : 2026-01-06
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第56話

お願い!!あたしの足、あと少しだけ頑張って!!あたしは、奥歯を噛みしめながら必死に走った。痛みに冷や汗が出て、周りの声も遠くなっていく。走らなきゃ。クラスのみんなには、もう治ったって言ってあるんだ。ここであたしが走れなくなって棄権なんてことになったら、クラスのみんなに迷惑がかかってしまう。みんな必死に頑張ってる体育祭だ。あたしのせいで、台無しにはできない。あたし、頑張れ……。その後、どうやってバトンパスをしたのか覚えていない。きちんと1位を守ることが出来たのかも……。何とか走り切りフラフラとクラスの列に戻ろうとした、その時。力の入らなくなった膝がガクガク震えだし、その場に崩れ落ちそうになった。「……っと」あたしの体を支えてくれたのは、真剣な表情をした柊だった。「おい! 大丈夫か!?」すぐに、ハルとマキも駆け寄ってきた。「ちょっと、ユキ!! 足、また腫れてきてない!?」マキがあたしの足を見下ろして目を丸くする。「大丈夫、大丈夫。ちょっと痛むだけ」力なくハハハと笑うと、柊がギュッとあたしの肩を抱いてきた。「俺、雪羽を先生んとこに連れてくわ。歩けるか?」「え!? あ、うん」さっきまで足の痛みのせいで意識が飛びそうだったのに、柊があたしの体に触れると一気に細胞が活性化して目が覚めてくる。心配そうなハルとマキに見送られ、ふたりで救護のテントへ。自分でもよく走りきったなっていうくらいの激痛だ。普段運動をしていないせいか、先生からはもう完治したと言われていたのに、また腫らしてしまうなんて……。あたし、本当に高校生かな……。体育祭の間、特別に本部席横に作られた救護のテント。そこに柊が連れて行ってくれて、先生にあたしを預けた。「あ~、また腫れてるね」保健の女性の先生があたしの足首を見て、顔を歪める。「今は湿布を貼って包帯で固く固定するから、また病院に行ってみなさいね」「はい……。ありがとうございます」保健の先生に応急処置をしてもらい、柊と一緒にテントを出る。
last updateLast Updated : 2026-01-06
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第57話

「……柊、ごめんね。ありがとう」足を引きずりながら歩きながら、隣の柊に言う。柊は心配そうに微笑み、細かく頷いた。「ところで、ウチのクラス何位だった?」「え? なに? まさか覚えてないの?」「うん……。走りきるのに必死で、実は覚えてない」あたしが苦笑すると、柊はしょうがないなというようにフっと笑った。「俺ら、1位だったよ」「本当に!?」「うん。雪羽が頑張ったおかげで」そう言って、柊の大きな手が、あたしの頭に伸びてくる。ポンと優しく手を当てて、柊は目を細めて微笑んだ。よかった。あたし、抜かれされてなかったんだ。本当によかった。「足」柊のボソリと呟いた声が、グラウンドからの賑やかな声と明るい音楽に溶け込んで、あたしは柊に耳を傾けた。「足が治るまで、一緒に帰ろう」「……え?」「まぁ、あいつらも一緒にいるだろうけど、人数多い方が、雪羽を助けてやれるし」柊が少し空を見上げながら言った。あたしと目を合わさないで話すのは、柊が照れてる証拠。少し赤らむ柊の横顔を見て、どんどんあたしの鼓動が加速していく。柊への好きの気持ちが、どんどん大きくなっていく。止められない。日に日に好きなっていくんだ。柊の魅力が多すぎて、もう、柊から抜け出せない。ハマっていく。好きだよ、柊……。いつか、言える日が来たらいいな……。
last updateLast Updated : 2026-01-07
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第58話

「あっつ~」体育祭も終わり、1学期には楽しい行事もなく夏休みを待つだけになった。7月。何の楽しみもなくなったクラスで、朝からハルがあたしの机の上にお尻を乗せ下敷きで顔を扇いでいる。「ちょっと! 人の机の上で仰がないでよ!! 汗臭い!!」あたしは朝からハルに怒鳴り、わざと鼻をつまむ。教室の窓は全て開けているのに、風という風は全く入って来ない。あたしもハルと一緒になって、夏服の白いシャツの胸元をパタパタと仰いで体の中に風を入れ込む。ふたりで仰いでいると、あたしの2つ隣に座るマキが苦笑した。「あんたら、何同じ行動してんの? 双子みたい」「「双子じゃない!!」」マキの言葉に、あたしとハルの言葉が重なる。あたしはハルと目を見合わし、お互いチッと舌打ちした。別にお互い本気でキレてるわけじゃないのに、舌打ちまでも同時でふたりしてハハハと笑った。それをあたし達の後ろで見ていた柊も、クスクス笑っていた。「あ~、今日もバイトかぁ。暑いけど、頑張らなきゃな~」ハルが、まだあたしの机にお尻を乗せたままため息交じりに言った。そう言えば、この前コンビニのバイトを始めたって言ってたような……。「ねぇ、なんで急にバイトなんて始めたの?」あたしがハルに聞くと、ハルは首を傾げ、「欲しいものがあるから?」と言った。「やりたいこともあるし、ヒマだし?」バイトかぁ……。あたしもやってみたいけどな……。でも、全く経験ないから不安だし……。バイトをして、柊の1月の誕生日までにお小遣い溜めたいし……。約2年ぶりくらいだもん。柊に、誕生日プレゼントあげられるの。もう高校生だし、少しはいいものをプレゼントしたい。あの頃は、手編みのマフラーだったし。いつも寒そうに首を縮めてるくせに、マフラーをしてなかったから。下手くそなマフラーをあげたんだっけ。それでも、喜んでくれてたよね……。今年は……。
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第59話

チラリと斜め後ろの席に座る柊を振り返った。「……ッ!?」だけど、すぐに目が合ってしまい、慌てて前を向く。どうしよう……。あからさまに逸らしてしまった……。あたしってどうして、自然と出来ないんだろう……。「ねぇ、ハル」あたしはおでこをポリポリかきながら、ハルに言う。「あたしもバイトしたいんだけどさ、ハルのバイト先、もう募集してない?」「え? なに? 篠原もバイト探してたの?」ハルが、下敷きで扇ぐ手をピタリと止めた。「うん……。バイトしてみたいんだけど、経験ないから、ちょっと不安で……」「俺が店長に話してみようか? 誰も知り合いいないよりいた方がいいだろ?」「うん……。その方が安心かな?」あたしが言うと、ハルはニッコリ笑ってあたしの机からようやくお尻を下ろした。「今日バイトの時、言っといてやるよ!!」何故か急に機嫌のよくなったハルが、颯爽と自分の席に戻って行った。ああ……。バイト、やりたいって言ったのはいいけど、やっぱりちょっと不安だな……。でも、勇気出してやってみよう。柊の誕生日プレゼントの為!!****1月7日。冬休み最終日。柊の、誕生日。あたしは、柊と約束もせず、突然彼の家を訪ねた。突然誕生日プレゼントを渡して、ビックリさせたかったから。たくさんの雪が降り積もって寒かったけれど、その日はおしゃれ重視でお気に入りの白のニットワンピにベージュのダッフルコートを羽織った。いつもはもう少し厚着をするんだけど、今から彼氏に会うんだ。少しは可愛くしなきゃ。あたしが柊の家のインターフォンを鳴らすと、運よく柊がドアを開けてくれた。あたしは親が出てきたらどうしようと緊張して焦っていたので、柊の姿が見えた瞬間大きく息を吐いて胸をなでおろした。だけど彼は、ひどく目を丸くしている。
last updateLast Updated : 2026-01-08
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第60話

「よかったぁ、柊が出て来てくれて。お家の人が出てきたらどうしようかと思った~」あたしが大袈裟に胸を押さえて言うと、柊はキョトンとした表情から徐々に頬を緩めていった。「急にどうしたの? 連絡くれればよかったのに」そう言って、柊はあたしの頭から足元まで全身を見る。「今日、かわいい」ボソリと聞こえた柊の声に、あたしの細胞が暴れ出す。「あ、いつも可愛いけど、今日は、何て言うか、特別かわいい」ニッコリ笑った柊は、言った後にハッとして後ろを振り返り、お家の人に聞かれてないか焦っていた。「ちょっと待ってて。コート取ってくる」ドアがパタリと閉まり、あたしはブーツのつま先でトントンと、玄関先に積もる雪に足跡をつけた。「お待たせ!! どこ行く? あ! 何か用事があった?」着替えを済ませて出てきた柊に、ドキンと心臓が跳ねる。黒のデニムにグレーの大きめのセーター。その上に、黒のコートを羽織っていた。あまり見ない彼の私服姿がとても新鮮で、心が躍る。風が吹くと顔が凍ってしまいそうなくらい寒いのに、やっぱり柊はマフラーをつけていない。それなのに、寒そうにいつも首を縮めているんだ。あたしは柊に誕生日プレゼントを渡したかったので、桜の木の近くのバス停に行こうと言った。寒いからどこか喫茶店にでも入りたかったけど、そんなお金はないし……。屋根のついたバス停だと、雪もしのげるしお金はかからないし、一番いい場所だった。物凄く、寒いけど……。あたし達はバス停のベンチに座り込んで、背中を丸くした。朝は雪が降っていたけど、昼過ぎの今はやんでいる。バス停の前は人通りも少なく、まだ誰にも踏まれていないフワフワの雪がたくさん残っていた。「ごめんね、急に家まで行って」「ビックリしたよ」「でしょ? 本当はもっとビックリさせたくて」あたしはそう言って、準備しておいた小さな紙袋を柊に手渡す。「今日、誕生日でしょ? それで、これ」柊が紙袋の中を見て、パァっと表情を明るくした。「え? まさか、作ったの!? 雪羽が!? すっげぇ!!」「ちょっと、変だけど……誕生日、おめでとう」「変じゃないよ!! すごいよ!! サンキュー!! 明日、学校ででもよかったのに。わざわざ寒い中出てこなくても」「ダメだよ!! 誕生日プレゼントはちゃんと当日渡さないと!!」
last updateLast Updated : 2026-01-09
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