All Chapters of 幸せ色の恋~想いよ、永遠に~: Chapter 91 - Chapter 100

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第91話

私が言うと、レオくんは大きな溜息をついて、首を傾げた。「あんたの頭の中がわかんねー。バカか、サル以下か」「バカだけど、サル以下じゃないよ」「そうだろ。あんた、壮吾の事も、ちゃんと信じれたわけ?」話題が急に壮吾の事に変わり、ちょっと驚いたけど、『うん、当たり前じゃん』と頷いた。レオくんの眉が、ピクリと動く。本当に微かな動きだったけれど、普段表情を変えないレオくんの動きは、どんなに微かでも大きく見える。「どうして……。どうして、そんなに簡単に人を信じれるわけ?」「壮吾が、今は私だけだって。そう言ったから」何のためらいもなく答えたあたしを、レオくんはジッと見ていた。「確かに前に彼女はいたけど、きっぱり別れたし、ちゃんと私の事が好きだって言ってくれた。それだけで、十分じゃん」「それが、嘘だとか思わないわけ?」「思わない」「どうして」「好きだから」私は、ただそれだけ答えた。好きだから。それ以外に、理由なんてない。好きだから辛くもなるし、好きだから泣きたくもなるけれど。だけど、好きだから、幸せになれるし、信じる事ができる。「それだけじゃ、ダメ?」私が聞くと、レオくんは『アホくさ』と、絨毯に視線を落とした。「レオくんの事にも言えるよ。レオくんは、私にとって大切な存在だから、放っておけない。1人にできないの。それは、壮吾や、コウ先輩や日和だって同じだと思う。大切な友達だから、レオくんの事が気になるの。他に理由がいる?」またレオくんに問いかけると、レオくんは、ゆっくりと視線を私に戻した。無表情のレオくんからは、今何を考えているかは感じ取ることができないけれど。気持ち、少しは伝わった?みんなが、どれだけレオくんの事を大切に思ってるかって。レオくんは、1人じゃないんだって...…。カシャ――。静かな図書室で、何かの音がした。あまりにも静かすぎて、確実に聞き取れた音。聞き間違いじゃない。レオくんも、その音に反応していたから。だけど、何の音かはわからない。プリントが落ちるような、軽い音。私はその音の正体を、翌日登校した直後、すぐに知ることになった。
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第92話

翌朝。正門をくぐり、昇降口まではいつもと変わらない朝だった。1人で廊下を歩いて、教室に向かう。すると、教室に近づくにつれて、周りからの視線を感じるようになった。他のクラスからの視線。廊下に出ている人たちのヒソヒソと話す声。それがどのような内容なのかは聞き取れないけれど、みんなのその冷たい視線は、私に向けられているようだった。不気味だ。一体、何――?教室について、私は自分の目を疑った。これは、どういうこと?誰が、こんな事を……。「あっ!! 美羽っ。 見ちゃダメ!!!」教室の後ろのドアで、佇んでいる私に気づいた日和。勢いよく私の目を塞いだ。遅いよ、日和……。全部、見えちゃったよ……。黒板に張られていた、たくさんの写真。図書室でレオくんと向き合っている写真と、橋の上で、壮吾とキスしている写真。黒板は、その2つの写真で埋め尽くされていた。そして、その周りには、『遊び人』・『二股女』・『調子に乗るな』そんな言葉が、大きく書かれている。一気に血の気が引いて行く。昨日、図書室で聞いた音は、カメラのシャッター音だったのか……『ねぇ、あれって、合成とかじゃないのかな』『えー、違うでしょ』『っていうか、柊先輩だけじゃなくて、レオくんにも手を出してたなんて』『ねー。自分の顔、鏡で見たことあるのかな』『図々しいにも程があるよねー』そんな声が、教室や廊下から聞こえてくる。目は日和に塞がれていても、声は丸聞こえ。二股? 遊び人? 図々しい?私がいつ、二股をかけた?私がいつ遊んだよ。
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第93話

「誰っ!?」私は、日和の手を振り払って大声をあげた。シンと静まり返る教室。「こんな事をしたのは誰?」沸々と湧き上がる怒り。「私がいつ遊んだって?いつ二股をかけたって?ふざけないで!!」激しく声を出したせいで、喉がジンジンと痛む。肩も上下に動いて、息が切れる。「誰よっ!!早く出てきて」ガタン――。私が拳を握った、その時だった。椅子のずれる音がしたかと思ったら、こちらに向かって歩いてくる人物がいる。ゆっくりと、無表情でこちらに向かってきているのは、レオくんだった。ポケットに両手を突っ込んでいるレオくん。私の前まで来ると、淡々とした声で、「だから、言っただろ。あまり、目立つことをするなって」それだけ言って、教室の周りに出来た人だかりを縫って、廊下に出て行った。「振られてるし」廊下から聞こえてきた声。その声の方を、ギロリと睨む。「こわー。ってか、ウケるんだけど。振られた怒りを私に向けてくんなってー」派手な女子生徒が、拳を握る私を見て、笑っている。振られた?誰が誰に。私がいつレオくんに告ったよ。どうして、何も知らないくせにそうやって声に出せるの?私の行動をずっと見てきた?見てきてたら、そんなこと言えないよね。誰がこんな事をしたのか知らないけど、どうして、レオくんと壮吾まで巻き込むの?どうして、こんな写真を張り付けたりするの?これ以上、レオくんや壮吾に迷惑をかけたくないのに……。「あっ!! 美羽っ!!」私は、レオくんの後を追って走った。『逃げたよ』教室を出るときにそんな言葉が聞こえてきたけど、もう勝手に、好きなだけ言えばいい。真実を何も知らないバカなヤツら。暇なヤツら。だけど――…。騒ぎを起こすのは勝手だけど、2人の顔は隠してほしかった。私だけに、目が向けられるようにしてほしかった。「レオくん!!」屋上のドアを勢いよく開けた私は、レオくんの姿を見つける前に名前を呼んだ。ここにいるって、自信があった。誰もいない屋上。レオくんは風に髪をなびかせながら、ベンチに腰かけていた。私の声が聞こえたのか、全く聞こえていないのか。微動だにしないレオくん。「レオくん。 ごめん」レオくんの背中に向かって、謝った。「あたしがそばにいると、結局はこうなっちゃうんだね。迷惑掛けてごめん」
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第94話

“俺に近づくな”素直に、その言葉の通りにしておけばよかった。最近の私は、何だか後悔ばかり。「レオくんは、何の心配もしないで。この問題は私が片付けるから。出来るだけ、早く」クルリと、レオくんが振り向いた。「どうして、そんなに一生懸命なんだよ」レオくんの静かな声が、風に運ばれて私の耳に入る。太陽の光に目を細め、私を見上げている。「自分に傷ばっかつけて、全然学習しないんだな。やっぱ、サル以下」「………」「早めに忠告したのに。あんまり目立つなって」「………」「あんた、アホだよ」「………」「1人で、どうにか出来るって思ってるの?」そんなこと思わないけど。どうにかしなきゃ。誰が、何の目的でこんな事をしたのかわからないけど、ターゲットは私。このままだと、レオくんや壮吾まで評判が落ちてしまう。そんなのは、絶対に嫌だ。「壮吾に頼ったりしないわけ?」私は、ううんと首を横に振った。「まぁ、壮吾が黙ってないと思うけどね。あいつ、キレたら、何するかわかんねーよ」レオくんの目が、まっすぐに私に向けられる。「今頃、大変なことになってんじゃない?」レオくんの言葉に、ぞくりと、鳥肌が立った。ツーっと、冷や汗が背筋を流れる。大変なこと――…。私は、レオくんをその場に残して、今走ってきた階段を、急いで駆け下りた。もう、誰にも迷惑はかけたくない――。「壮吾!!」コウ先輩と廊下を歩いている壮吾の背中を見つけた。私の大声に、みんなが振り向く。その目は、すごく冷たいものだった。壮吾とコウ先輩は、同時に振り向いた。「おっまえ、どこにいたんだよ。探したんだぞ」壮吾の眉間には、深くしわが寄っている。全力で廊下を走り抜けたせいで、肩が激しく上下した。膝に手をつき、息をのみこんでから、壮吾にしがみついた。「どうしたんだよ。写真以外にも何かされたのか」やっぱり……。写真の事、もう壮吾の耳に入ったんだ。「見たの?」壮吾の腕をギュッと掴む。「日和ちゃんが走って来たからな」日和が!?「それで……どうしたの?」
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第95話

「どうしたのって、すぐにおまえのクラスに行って写真はがしたに決まってんだろ」はがして……って。「それだけっ!?」「それだけって?」「暴れたりは?」私が壮吾の腕をブンブン揺らして大声をあげると、『暴れる?』と、壮吾が眉をひそめた。「何言ってんだよ。暴れるとか、そんなバカなことするわけねーだろ」その言葉を聞いて、一瞬で体の力が抜けた。恐怖で強張っていた筋肉が、一気に緩んでいく。壮吾の腕をつかんでいた手が、ぶらりと下に落ちた。「こんなふざけたことするヤツは許さねーけど、ここで暴れたら、犯人の思うつぼだろ?俺は、そんなバカな手には引っ掛からねーよ」もしかして、そんなことを心配してたのか? と、壮吾が優しくほほ笑んだ。「おまえを泣かせるような事はしねーよ。そもそも、俺は喧嘩は好きじゃねー」安心した瞬間、ドワっと大量の涙が溢れてきた。壮吾の優しさ。私は、どんどん壮吾にはまっていっちゃう。「泣くなー。犯人は、絶対に俺らで見つけるから」「そうだよ、美羽ちゃん。俺らに任せときな。すぐに見つけてやるからな」2人が、私の前で笑っている。「壮吾……。誤解したりしないの?」私がしゃくり上げながら聞くと、また壮吾の眉間にしわが寄り始めた。「レオくんと、二人っきりだった写真を見て」ダメだ。涙が止まらない。壮吾やコウ先輩の優しさに安心しての涙と。もしも誤解をされていたら、という、不安からの涙。2つの思いがない交ぜになり、私の頭は混乱状態。「誤解? んなもんするわけないだろ?」――え?「おまえが、レオの為に一生懸命行動してきたのを一番近くで見てきてんだぞ。何を誤解することがあるんだよ」壮吾が言うと、コウ先輩が笑いながら頷いた。笑顔の二人の視線が、私の背後へと移る。ぱっと振り返ると、そこにはレオくんの姿が。
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第96話

「あ、もしかして。まーた、おまえが変な事を美羽に言ったのか」壮吾は、レオくんの前まで行くと、ガシっとレオくんの首に腕を回した。レオくんの体が、少し前に倒れる。「人聞きの悪いことを」静かな声で返したレオくんは、壮吾の腕を振り払っていた。「美羽、こいつに何を言われたんだ?」「壮吾は、キレると何をするかわからないって」わたしが答えると、壮吾は目を細めてレオくんを睨んだ。「だってそうだろ。すぐに手ぇ出すくせに」「出さねーよ」レオくんの言葉に、壮吾はすぐに答えた。「美羽を、これ以上辛い目に合わせたくねーし」………。もう――…。どうして壮吾は、私の心をこんなに簡単に掴んでいくんだろう。そんなことを言われたら、気持ちがどんどん大きくなっていくよ。好きすぎて、呼吸ができなくて。好きすぎて、心臓が痛い。「うおっ!!」私は、壮吾の背中にギュッと抱きついた。突然の事に、壮吾がバランスを崩す。「おまっ、いきなり何す――」「大好き!!」「はっ?」「壮吾、大好き!! めっちゃ好き」こんなに私を大胆にさせる壮吾は、本当にすごい。大勢の生徒が見ている廊下のど真ん中だというのに、恥ずかしいという気持より、壮吾に今すぐ気持ちを伝えたいという思いの方が上回った。ギュッと背中に抱きついて。私の腕を、壮吾がぎゅっと握ってくれる。私との為に、手を出さないと言った壮吾。犯人をすぐに見つけてくれると言ったコウ先輩。相変わらず素っ気ないけど、少しずつ心を開いてきているレオくん。日和、私って、本当に幸せ者だよね。こんな素敵な仲間に囲まれて。入学式の日。もしも、日和が私に話しかけてくれていなかったら、こんな素敵な仲間たちと仲良くなれることはなかったんだよね。壮吾やコウ先輩。それに、レオくん。日和のおかげで、どんな困難にも負けない、強い心を得ることができた。「美羽ちゃん。次は俺の番」コウ先輩が、私に向かって、両手を広げている。「は・や・く」「てめぇ、殺されてーのか」「いっだ!!!」私に抱きつこうとしていたコウ先輩の頭を、壮吾が思い切り叩いた。私は、そんな二人を見て、涙を拭いながら笑った。レオくんに視線を向けると、無表情のままで、じゃれ合う壮吾達を見ている。レオくん――…。私ね、思うんだ。レオくんの心は、少しずつ変わってきて
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第97話

しばらく続いた、私への嫌がらせ。靴箱の中に押しピンは入っているし、上履きはびちょびちょに濡れているし。小学生のいじめかよって思うほどの嫌がらせだったけれど。犯人は、悔しいくらいに、全くわからないままだった。『美羽ちゃんが、レオや壮吾と一緒に映ってる写真を張り付けて、美羽ちゃんにだけこんな事するってことは、レオか壮吾を好きなヤツなんじゃねーの?』コウ先輩の言葉に頷いた私達だけど……。そんな人、この学校にはゴロゴロいるんだ。誰かひとりの犯行なのか、それとも、壮吾達ファンのグループでの犯行なのか。壮吾達に支えてもらって、何とか乗り越えられる問題だと思っていたけれど。続く嫌がらせに、心がボロボロだった。夏休みも目前。このまま、何も解決する事なく、夏休みを迎えることになってしまうのかな。そしてまた新学期が始まれば、冷たい視線に怯えて過ごす毎日。考えるだけで、憂鬱になる。みんなが遠い......。教室という一つの箱の中にいるのに、果てしなくみんなとの距離が遠く感じる。私の近くにいてくれるのは日和だけで。こんなしょうもない嫌がらせなのに、私の心は、もう限界寸前。終わりが見えない嫌がらせに、壮吾は『相手にするな』と言うけれど。この痛い視線から、目をそらせる器用さは、私にはなかった。早く終わってほしい。どうすれば、この嫌がらせは終わる?目的は何?壮吾と別れさせようとしているの?それとも、私からレオくんを遠ざけようとしている?「美羽。 気分とか悪くない?」机に突っ伏す私に、日和が優しく声をかけてくれる。顔を上げられない私は、突っ伏したまま『うん』と頷いた。HRの時間。クラスは、夏休み企画として一番人気のあった“学校で肝試し大会”の、係決めで賑わっていた。男女混合で5人ずつのグループに分かれる。学級委員は、どんな仕掛けでみんなを驚かせようかと楽しそうに企んでいた。R・E計画で決めた通り、レオくんを引っ張ってクラスの行事に参加したかった。レオくんとの距離が縮められるかもしれないチャンスだというのに……。だけど、今は、こんなクラス行事なんて参加できないに決まっている。クラスで完全に浮いている私。机に突っ伏していても、遠巻きに睨んでいるクラスメイトの視線だけは、なぜか感じ取ることができた。こんな所だけ、器用なんて。こ
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第98話

「日和。私、ちょっと脱走していい?」全く力の入らない喉。頼りなく教室の床に落ちていく私の声を、日和は拾い上げるように聞き取ってくれた。哀しげにほほ笑んで、コクンと頷いてくれる。日和を1人教室に残して向かったのは、図書室。この時間帯には、誰もいないはずだから。静かで、暖かくて、落ち着く場所。レオくんと知り合ってから、図書室って結構心が休まる場所なんだって事を知った。図書室のドアを開けると、やっぱり、誰もいなかった。太陽が燦々と照りつけるこの時期の密封された部屋は、暖かいを通り越して汗が噴き出るほど暑かった。自然と足が向かったのは、レオくんがいつも昼寝をしている本棚の間。窓を少しだけ開け、レオくんと同じように本棚に寄りかかり瞼を閉じた。開けた窓から流れ込んでくる、清々しい風。鳥の鳴き声に、車道を走る車の、タイヤの乾いた音。よかった――…。無音の世界じゃない。それだけが、救いだった。奈落の底に沈んでいきそうなこの重たい心を、何とか支えてくれている。1人って、すごく楽。周りの目を気にしなくていいし、相手の気持ちを考えなくてもいい。自分だけの世界で、自分の思い通りに物事進めていけばそれでいいし。この部屋の向こうには、もう、戻りたくない。いっそのこと、このまま、本棚と一体化してしまいたかった。ここは居心地が良くて、体がフワフワと浮く場所だった。ガラガラ――。突然、図書室のドアの開く音が。ハッと息をのんで、身を縮める。誰か来た!!一気に鼓動が暴れだし、息が荒くなる。静かな図書室には、私の荒い息遣いが大きく響いているように感じた。口を両手で押さえて、指の隙間から、少量の酸素を吸う。「ねぇ。 あれ、どう思った?」女子の声。「酷いと思わない?あれって、どっちも騙してるってことになるよね」――ドクン。これって……。もしかして、私のこと?
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第99話

あの写真の事を言っているの?何も悪いことはしていないのに、どうして、こんなに逃げ腰になってしまうんだろう。壮吾も、コウ先輩も、日和も、それにレオくんだって。あの写真に、何の意味もないってわかってくれている。周りが勝手に盛り上がっているだけだ。それなのに、どうして、ここに座り込んだまま息を潜めるだけで、出ていけないんだろう。「ねぇ、レオくん。絶対、如月さんに騙されてるよ」――レオくん?レオくんと一緒なの?本棚の間からこっそりと覗いてみたが、ここからでは2人の姿を確認することができなかった。「あれって、カッコよければ誰でもいいってことでしょ? 違う?」何、それ……?あんな写真を見ただけで、よくそこまで言えるね。壮吾とキスしている写真はともかく、ここでレオくんと映っていた写真は、ただ向き合っているだけ。あの写真を見て、一体何を感じたと言うの?浮気しているように見えた?見えるはずがないよね?沸々と湧き上がる怒り。頭にきて、ぐっと唇を噛みしめた。「あんたさ、あんなバカみたいな写真を見て、何を思ったの?」レオくんの声だ。冷たくて、感情が込められてなくて、淡々としていて。「何って……。如月さんの…二股?」一瞬、言葉を詰まらせたかのように思ったが、甘えた声を出す女子は、“あたしの二股”と、さらりと言ってのけた。「ふーん。あんな写真で、そう思えるんだ」「だってそうでしょ?柊先輩と付き合っておきながら、レオくんの周りにいつもいるじゃない」「………」「それって、どっちにも気があるからそうするって事だよね。つまり、カッコよければ、誰でもいいんじゃないの?自慢できるしさ」私の神経を怒りで震わせる甘ったるい声の女子は、『最低だよね。私には、そんな酷いことできない』と、さらに甘えた声を出していた。ダメ...…。ここで怒りのままに出て行っちゃダメ。今の私の状態じゃ、ただ怒鳴り散らして何の解決もしないまま、終わってしまいそうだから。私は、今にも走りだしそうな自分の体を抑えて、二人の姿が見える位置までそーっと移動した。物音をたてないように、慎重に...…。少しだけ場所を移動すると、本と本の隙間から、二人の姿を確認することができた。猫撫で声の女子の顔も、ここでならはっきりと見ることができる。
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第100話

……え下川、さん?以前、何度かレオくんの事を私に聞きにきて、机に突っ伏すレオくんを顔を赤らめて見ていた彼女。「レオくんは如月さんの事、どうも思ってないんでしょ?」彼女の上目づかいに、正直鳥肌が立った。レオくんは、目の前の女子を全く相手にしておらず、だるそうに机にお尻を乗せている。さらに彼女の甘い視線がレオくんに絡んだかと思ったら、レオくんの側まで近付いて、「私は、レオくんが好き。私なら、如月さんみたいに酷いことはしないよ? レオくん、一筋だから」と、突然告白をし始めた。レオくんのシャツをかわいく掴んで、付けまつ毛の黒い目をパチクリさせてレオくんを見上げている。「だから、レオくん。今、特別好きな人がいないんだったら、私と付き合って。」「………」「レオくんが私と付き合ってくれたら、今の噂も無くなるんじゃないかな。まぁ、如月さんの二股疑惑は消えないままだと思うけど」私の中で、プツリと、何かが音を立てて切れた。黙って聞いてたら勝手なことをペラペラと。何が二股疑惑だ。この噂をうまく利用して、レオくんに近づくなんて、最低だ。もう、この怒りも、この息遣いの荒さも、抑えることはできない。頭で考えるよりも先に体が動き、気がついたら、私は下川さんの前まで大股で歩いていた。「……!? き、如月さん!!」突然現れた私に目を丸める彼女。レオくんのシャツからパッと手を離し、一歩、後ろへ後ずさった。「言いたい放題言ってくれたね」肩が激しく上下する。「あの噂を利用してレオくんに近づくなんて、最低だよ。好きなら、どうして正面からぶつかっていかないの?こんな汚い噂を利用しなきゃ伝えられないものなの?そんな気持ちで、レオくんに近づかないでよ!!レオくんに失礼だ」怒りのあまり、一息に言ってしまった。こんなんじゃ、下川さんを怒らせるだけで終わってしまう。こんな言い方じゃダメだってわかっているのに。それなのに、体が、口が、勝手に動いてしまう。「それって、如月さんが言えること?」しばらく沈黙が続いたあと、彼女が静かに言った。それも、勝ち誇ったように、口元に笑みを浮かべて。「あんな写真を撮られて、うまく物事が進まなくなったからって、私にやつ当たり?柊先輩と付き合っておきながら、軽い気持ちでレオくんのそばにいる如月さんのほうが、レオくんに失礼だと思う
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