Semua Bab 幸せ色の恋~想いよ、永遠に~: Bab 81 - Bab 90

109 Bab

第81話

突然かかった声に振り向くと、バイトを終えたレオくんがポケットに両手を突っ込んで私達を睨んでいた。「場所考えろよ」相変わらず、冷たい声だ。辺りを見渡せば、ネオンがきらめく時刻になっていた。各店のライトが、涙で余計眩しく見える。レオくんを前に、体が震えた。会いに来たのは自分なのに、結局は体が固まって、何もすることができない。「あんた、こんなとこまで来たの? ストーカーかよ。ってか、俺が言ったこと忘れた?俺、近づくなって言ったよね」何も解決しないまま。レオくんがどんどん遠ざかって行く。「おまっ……。美羽にそんな事言ったのか」レオくんの肩をつかみ、壮吾が振り向かせようとする。「それは言い過ぎだろ。美羽は、おまえの為を思って...」「俺のせいだけじゃないと思うよ」壮吾の言葉を遮って、クルリと振り向きながらレオくんが言った。「泣いてんの、他にも理由があると思うけど?」ズキンっ…。心臓が痛い。言わないで、レオくん。お願いだから、それ以上の事は言わないで。「そうだろ?」レオくんの声が、私に降りかかる。体の震えが止まらない。怖い、怖い。「どういうことだ?」「聞いてみたらわかるんじゃない?」ダメ……。本当に、言わないで。これ以上、問題を増やしたくないの。「おい、美羽。 どういうこと?」壮吾の手が、私の肩に触れる。体が震えているのも、きっとバレたに違いない。「どうしたんだよ」何も聞かないで。私も、何も聞かないから。お願いだから、これ以上、私を狂わせないで。「あっ!! おいっ、美羽っ」
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第82話

走った。走って走って走って。レオくんの言葉や、壮吾への不安感を取り除くように、輝かしいネオンの街を走り抜けた。何度か人の肩にぶつかったが、頭を下げることもせずに走った。酸素の回らなくなった体が、悲鳴をあげる。涙も止まらず、視界が悪い。震える膝は、制御不能だ。絡まる足を必死に解いても。解いても解いても、また絡まる。『俺のせいだけじゃないと思うよ』レオくんの口振りから、この前の事は本当の事だったんだってわかった。“壮吾に、他に女がいる”本当の事だってわかっても、聞けるわけがない。確かめる勇気、そんなものあるわけないじゃない。ズザッ――!!とうとう足がもつれて、私は豪快にアスファルトの上に転んだ。街は抜けたものの、多くの車が行き交う大きな橋の上。信号で止まっている車の中から、豪快に転んだ私を笑いながら見ている人たちがいる。笑えばいい。おかしいでしょ?この歳にもなって、こんな大通りでこけるなんて。本当、バカだよ、私。もう...…、嫌だ。どうしてこんなに痛いの?膝も、心も、体も、どうしてこんなに疼くの?うまくいかないことばかり。辛すぎるよ、壮吾。私は、誰に助けを求めたらいいの?「また転んだのか」アスファルトに膝をつく私の背後で、壮吾の声。ずっと私を追って走ってきたのか、息が上がっている。振り向くことができず、ただ、真っ黒なアスファルトに視線を落とす。こぼれる雫が膝に落ちて、擦りむいた部分を刺激した。「おまえ、最近転び過ぎ」私の腕を引き上げ、立ち上がらせようとしてくれる壮吾。だけど、「やめてっ!!」それを、拒んでしまった。今は、壮吾と正面から向き合えない。
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第83話

目を丸める壮吾。壮吾の手が触れた腕の一部を、ゆっくりとさすった。「おまえ、マジでどうした?レオの事で悩んでんじゃなかったのかよ」初めはそうだったよ。レオくんの事だけだった。それだけだったんだよ。「おい、美羽。黙ってないで、何か言えよ。わかんねーじゃん」本当にわからないの?自分の事でしょ?私を騙して付き合って、まだとぼけようって言うの?それは、あまりにもひど過ぎるよ。私の壮吾への、この“好き”は、どうしたらいいの?今更、消すことなんてできない……。ずっと俯いて腕をさすっていると、壮吾がしゃがみ込んで私を見上げてきた。顔をそらしても、その方向に壮吾が移動する。そらしても、そらしても、私を追いかけてきた。「逃げても無駄だ。答えるまで離さねーから」そう言って、私の両手を包み込んだ。私に優しくする理由がわからない。まだ、私を弄ぶ気?壮吾、知ってる?壮吾の優しさに弱いって。壮吾の温もりに包まれると、涙を止められなくなるって。どんどん、壮吾にはまっていっちゃうって――…。「...…ッ!!」涙を、堪えきれなかった。私の手を包み込む壮吾の手の上に、ポタポタと雫が落ちていく。壮吾の大きな手が私の目に伸びてきて、優しくぬぐってくれた。「泣くだけじゃわかんないだろ〜」壮吾が困っている。私は完全に、お父さんにあやされている子供状態で。忙しく行き交う車のヘッドライトが、私達を照らしていく。車の乾いた車輪の音がなければ、私は、また逃げ出していたかもしれない。だけど、この音があるから、騒音にまぎれて、壮吾に真実を聞くことができた。
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第84話

「……壮吾」私がしゃくり上げながら声を出すと、壮吾は、『うん?』と眉をあげた。その表情はやっぱり優しくて、余計に涙が出てきた。「正直に答えてね。絶対に、嘘はつかないで」深く、強く、頷く壮吾。私の次の言葉を、静かに待っている。心臓が壊れそうだ。走ってもいないのに、呼吸も乱れて、肺が悲鳴をあげている。「壮吾、他に付き合ってる人がいる?」私が言った瞬間、橋の上で、クラクションが響き渡った。パァーンというその音が、私の耳でこだましている。壮吾には聞こえたのだろうか。表情を確認したいけれど、勇気が出ない。今まで私を見上げていた壮吾は、すくっと静かに立ち上がり、無言になった。そっか……。それが、答えなんだ。レオくんの言っていたことは、本当だったんだ……。私の事、騙してたんだ……。「レオから、聞いたの?」すぐに否定しない壮吾。私は、ただ、頷いた。真実を確かめた途端、何だか、急に体が軽くなっていった。さっきまで流れていた涙もピタッと止まって。体の震えも、忙しく動いていた心臓も、全ておさまって、冷静に壮吾を見上げる事ができた。何かが、自分の中から引いて行った。「俺に、女がいるとだけ聞いたの?」「うん」「違うよ」「言い訳はいいよ」「言い訳なんかじゃねーよ。確かに、前は、いた。もう別れた。っていうか、振られた。もう何年も前の話。別れてから一度も会ってねーし。もう、関係ねーよ」壮吾の眉間には、悲しげにしわが寄っている。「初めての、彼女じゃなかったんだ」別に自惚れているわけじゃないけれど、私は、壮吾の初めての彼女だと思っていた。他の女の子とは扱いが違うんだって、素直に嬉しかった。それなのに……。
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第85話

「誰にも言ってねーから」「………」「コウにも。 日和ちゃんにも。だから、あいつらは、初めてだと思ってる」初めてだと思ってる?つまり、バレたくなくて隠していたって事?小さい頃から一緒にいるコウ先輩にバレなかったって事は、それだけ慎重に付き合ってたって事?それだけ、大切な存在だったの?「もしかして、そんな事で泣いてたのか?」そんなこと?これを、“そんなこと”だなんて言うの?「もう、あいつとは終わったの。今はもちろんおまえだけ。わかるだろ? 俺がおまえをどれだけ好きかって」ドクン――…。ダメ……。こんな言葉でときめいちゃダメ。今は、壮吾を求めちゃダメなんだ。ダメなんだよ……。「こんなに好きなのに、どうして不安になるんだ」ダメなんだってば。壮吾にグイッと腕を引かれて、大きな腕に抱かれた。厚い胸板にギュッと押しつけられる。「他の男の言うことに惑わされるなよ。ただでさえ、最近おまえがレオに付きっきりモヤモヤしてたのに」「……え?」「え? じゃねーよ。知ってる? 俺、男なの。レオだからっつっても、ヤキモチやくだろ」さらに、胸に顔を押し付けられる。「どんだけ想えば気が済むんだよ」……壮吾。信じていいの?私、単純だから、今の言葉、全部そのまま信じちゃうよ。それでいいんだね?「ごめんなさい……」「わかればいいんだよ」私は、壮吾の背中に腕を回し、ギュッときつく抱きついた。思ったよりも壮吾の体は大きくて、私の腕は壮吾の体に回りきらなかった。そんな事にでさえ、高鳴る鼓動。やっぱり、私は壮吾が死ぬほど好きなんだ。「泣きやんだ?」コクンと頷く。「んじゃ、仲直り」そう言った壮吾は、わから体を離し、代わりに唇を近付けてきた。たくさんの車が行き交っている、橋の上。何のためらいもなく、唇を合わせた。誰に見られていようが関係ない。観覧車の中のキスよりも、長く、そして、意味のあるものだった。壮吾から離れたくないし、壮吾を、手放したくない。だって、こんなに好きなんだから...…。“恋”って、大変――。幸せだったり、苦しかったり、泣きたくなったり、イライラしたり、モヤモヤしたり。秒刻みで、気持ちがコロコロ変わるの。しかも、嬉しい事よりも、辛い事の方が多い。だけど...。どんなに苦しくても、辛くても、この恋をやめ
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第86話

「そーうーちゃーん」「みーうーちゃーん」キュッ――。自転車に急ブレーキをかけて、声がした方を振り向く。その瞬間。道路の反対側から、ピカッと光ってパシャリ。壮吾の背中にくっついている私と、片足で自転車を支えている壮吾。こんな不意打ちの私達の姿をカメラに収めたのは、皆川兄妹。こちらに向かって大きく手を振って、車が途切れたのを確認すると、素早くこちらに走ってきた。「2人とも、もっと近づいて」デジカメを覗き込む日和は、私達が返事をする前に、勝手にシャッターを押していた。「ちょ、日和。どうして朝から写真?」私は壮吾の背中にくっついたまま、小首を傾げた。「ふふふ。 お兄ちゃんから聞いたよ」カメラを片手に、不気味にニヤける日和が怖い。「な、何を?」顔を引きつらせながら日和に聞くと、今度はコウ先輩が日和と同じ顔でニヤけだした。「壮吾。 おまえは、男の中の男だ。俺、思わずキュンときたぜ」そう言って、壮吾に肘打ちしている。「気持ち悪いな。何だよ。触んな」壮吾が、コウ先輩の腕を振り払った。「いくら夜で暗闇だからって、あんな大通りでチュウしてたら、目立ちますよ、旦那」――ッ!!!み、見られてたんだっ!!しかも、コウ先輩に。恥ずかしすぎる!!「ギュッと抱きしめて仲直りのキス。いいよなぁ。 俺も、美羽ちゃんとキスしてー」「黙れっ!! おまえ、マジで殺すぞ」壮吾は、ペダルに乗せていた足で、コウ先輩の足を思い切り蹴っていた。「いっで!! 冗談だろ?」コウ先輩は、壮吾に蹴られた足を大袈裟に押さえている。「でも、よかったじゃん。何があったのか知らねーけど、仲直りできて」
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第87話

私は、コウ先輩に向かってほほ笑んでみせた。「美羽ちゃん、レオにも言っといたから」「え?」「美羽ちゃんは、軽い気持ちでおまえと接してるんじゃないってさ。あいつ、何も言わなかったけど、きっとわかってると思うよ。ただ、表情を表に出さないヤツだからさ。だから、あんまへこむなよ」コウ先輩の手が私の頭に伸びてきて、グシャグシャと乱暴に撫でられた。せっかく解いてきた髪が、鳥の巣のようにボサボサになった。それを手で直していると、また壮吾の蹴りがコウ先輩にとんでいた。「いっで!!!」「どさくさにまぎれて美羽に触れんな」「あ〜ん。壮ちゃんのいけず〜」「だから、おまえはキモいんだよ」朝の通学路に、壮吾達のふざける声が響いている。たくさんの生徒があたし達を追い越して行き、楽しい笑い声に何人かが振り向いた。「仲直りの記念に、もう一枚いきまーす」そう言った日和は、また私達を写真に収めた。「美羽」カメラのシャッター音が聞こえた瞬間。壮吾は私の名前を呼びながら、ペダルに乗せる足に力を入れていた。私が壮吾を見上げて眉をひそめると、「ちゃんと掴まっとけよ!!」そう言って、自転車を急発進させた。「えっ!! うわっ」自転車が急に動き出したせいで、体が一瞬後ろにのけ反った。「だから、ちゃんと掴まれって」壮吾のウエストにきちんと腕を回しているのに、壮吾は私の手をさらに引っ張った。グイッと腕を引っ張られて、壮吾との密着度が増す。「壮吾っ!!てめっ、逃げるなっ!!」「逃げるな〜」背後から、日和とコウ先輩の叫び声が聞こえる。だけど、壮吾はお構いなしに自転車のスピードを上げた。風を切るように、自転車を走らせる。壮吾の白いシャツも、壮吾の金髪も。正面から受ける風に、ハタハタとなびいていた。いつ見ても、壮吾はキラキラと輝いていて、とてもカッコイイ。太陽が、私達のすぐ上でさんさんと笑っている。夏の近づきを知らせながら、制服をなびかせる私達を見守っているようだった。ギュッと腕に力を入れて、壮吾の背中におでこをつける。壮吾の温もり、壮吾の心音、壮吾の匂い。壮吾の全部が、大好き――。
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第88話

「あ…… おはよ」壮吾とコウ先輩と駐輪場で別れた私達は、昇降口で靴を履き替えるレオくんにばったり会った。私がぎこちなく声をかけると、レオくんは、靴箱に手を伸ばしながら私を振り向いた。だけど、すぐに目を逸らすレオくん。昨日の事に触れることもなく、無表情のままで靴を履き替えている。今、レオくんはどんな事を考えているんだろう……。私のあまりのしつこさに、本気で嫌いになった?――ポン。私の手を包み込む、日和の手。日和……うん。 大丈夫。まだ、レオくんの態度に俯いてしまうけど、すぐに顔を上げることができるから。もう、大丈夫。私がギュッと日和の手を握り返した、その時だった。「おー、佐藤、ちょうどよかった」上履きに履き替えたレオくんが歩き出そうとした時、ちょうど廊下を歩いていた私達の担任が、レオくんを呼び止めた。その声に、無表情で目を向けるレオくん。「ちょっと職員室に来い。頼みたいことがある」めんどくさそうに首の後ろをかく先生は、それだけ言うと、足を引きずって廊下を歩いていった。その後を、レオくんが追う。先生と同じように、足を引きずりながら。私と日和は目を見合って、眉をひそめた。先生が呼び出したのはレオくん1人だったけれど、レオくんを放ってはおけなかった。レオくんの後をつけたところで、また、『ウザい』だとか、『俺に近づくな』だとか冷たい言葉をかけられると思ったけど。私は、もう、逃げないんだ。私が1人で職員室に向かうと、レオくんは何やら、先生にいくつもの本を持たされていた。鞄を肩に提げたままのレオくんは、持ちにくそうに両手で本を抱えている。いくらレオくんが男だからとはいえ、この量はちょっと多いよ。先生もひど過ぎる。「先生!! それはちょっと酷いよ」“失礼します”も言わずに職員室につかつかと入ると、突然の声に、先生とレオくんが同時に私を振り向いた。その瞬間、レオくんの眉が微かに動いた気がした。また、あんたか。きっと、そう思ってるに違いない。「先生。いくらレオくんが男だからって、1人にこんなにたくさん持たせなくてもいいじゃなですか!!絶対これ、半端なく重いもん」ね!! そうレオくんに投げかけると、レオくんはプイっとそっぽを向いた。
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第89話

「いや、だって、佐藤は図書委員だろ。おまえが手伝ってくれるって言うなら、おまえにも頼むけど」……あ、そっか。そう言えば、レオくん図書委員だったっけ。もちろん、勝手に決められた委員だけど。「よかったな佐藤。仕事が半分で済むぞ」机の上に広げている資料に目を落とす先生は、私達に一度も目を向けることなく、素っ気なく言った。「別にいいっすよ」こちらの声も、相変わらず素っ気ない。ただそれだけ言葉を落としたレオくんは、私に構うことなくクルリと背中を向けた。両手で大量の本を抱えているレオくんは、当然ドアを開けることができない。私が急いでレオくんの前に回り込み、先にドアを開けてあげる。“ありがとう” 別に、そんな言葉を期待してなかったわけじゃないけれど。無言で、しかも、目も向けずに歩いて行かれると、ちょっと虚しくなった。だけど、私はもうめげないんだ。「レオくん、半分持たせて」廊下を歩くレオくんの横にぴったりくっついて、レオくんの手から本を4冊程取った。それでも、レオくんは何の反応も示さない。4冊取ったのはいいけど、分厚い本は結構な重さがある。合計10冊程の本を抱えていたレオくんには、相当な負担が掛かっていたに違いない。それを、顔色ひとつ変えずに持っていたレオくん。華奢な体なのに、結構、力があるんだなって、正直驚いた。図書室には、誰も人がいなかった。朝、登校したての時間だから当たり前なんだけど、静かな図書室ってちょっと不気味。図書室に通いなれていないせいか、古い本の匂いや、絨毯のどこか湿った匂いで、余計不気味に感じてしまう。まるでお化け屋敷にでも入っているかのように恐る恐る足を進めている私とは裏腹に、レオくんは手際よく、両手に抱えている本を定位置に戻していた。迷うことなく、きちんと本棚にしまっている。それに比べて私ときたら……。わからない……。何がどこの本棚なのか、さっぱりわからない。レオくんに助けを求めたところで、助けてくれるはずもないし。ここでレオくんに頼ってしまうと、わからないのにどうしてついて来たんだってなっちゃうし……。最悪だ――…。とりあえず、一旦机の上に本を下ろそう。本棚には、どのような本が収められているか、きちんと書かれている。まずは、えーと……。国語辞典と漢和辞典。これは、“国語”の本棚に。次
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第90話

中を開いてみると、私のよく知っている花から、初めて見る名前も知らない花までたくさん載っていた。レオくんは、この中の、何の花を見ていたのだろう。この前、膝に本を広げたままうたた寝をしているレオくんを見て、花が好きなのかなって思った。それに、花屋の前で立ち止まっていたレオくん。外に並ぶ色鮮やかな花をずっと眺めていたし。レオくんの好きな花は、この中のどれなんだろう...。そんな事を思っていると、全ての本を片付け終わったレオくんが、本棚の間から現れた。レオくんの目は、私には向けられず、私が手にしていた本に向いている。「あ、これ。レオくん、この前見てたよね。花が好きなの?」「………」「花にも、たくさんの種類があるんだね。知らないものがいっぱい載ってるよ。この中であたしが知ってる花は……。向日葵でしょ、たんぽぽでしょ、チューリップでしょ、それから……」指を折りながら花の名前をあげていると、レオくんは私の手から図鑑を取り上げた。パタンと閉じると、本棚に素早くそれをしまい込んだ。「あんたさ、どうしてそんなにしつこいの?」静かな図書室に、レオくんの声が響いた。相変わらず、感情のこもっていない声だけれど。「あんた、まだ自分に傷をつけたいわけ?」窓から差し込む朝の日差しで、図書室が急に明るくなった。それなのに、私たちの周りだけが暗い。レオくんの茶髪は日差しで輝いているのに、それでも暗いと感じてしまうのは、レオくんの心が沈んでいるから。私は、レオくんの問いに、「そんなわけないじゃん」眉間にしわを寄せながら、ほほ笑んだ。「これ以上、傷は増やしたくないよ」「だったら、もう近づくなよ。何もいいことはないだろ。俺にかまったって時間の無駄」“何もいいことはない”確かに、傷つくだけならそうかもしれないけど。傷ついてもいいと思うくらい、そう思えるようになったくらい、レオくんの事を放っておけなくなったんだ。もちろん、同情なんかじゃない。「無駄だなんて事はないよ」私の言葉に、レオくんは『は?』と片方の眉をあげた。「だって、レオくん、少しずつだけど、私と話してくれるようになってるから」「………」「レオくんがどう思ってるかは知らないけど、私は、これをプラスになってると思ってる」「俺は、思ってない」「私がそう思ってるからいいの」
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