All Chapters of 幸せ色の恋~想いよ、永遠に~: Chapter 71 - Chapter 80

109 Chapters

第71話

日和を悪い気持にさせないように、震える声をできるだけ抑えた。「うーん。それはそうなんだけど……。今までの経験からいっても、あまり効果がなかったものだから」私は口をつぐんだ。唇を噛みしめるのを日和に見られないように、俯きながら、日和の手からスケジュール帳を奪い取る。「一緒にご飯を食べたりとか、レオくんが一人にならないようにずっと一緒にいるとか、ずっとお兄ちゃん達がしてきたけど、結局今も変わらないままだし。親友のお兄ちゃん達にできないのに、私達にはそう簡単にはできないかもね。柊先輩が言うように、レオくん、結構手強いから」日和には、何も悪気がないんだってわかってる。むしろ、今までの経験上、私の考えた計画なんて意味のないものだって教えてくれてる。だけど、なぜか無性にイライラするんだ。そりゃ、私よりもレオくんと接している時間が長いのは日和だ。私よりも、レオくんの事をよく知っている。意味のある行動と、無意味の行動も判別できる。だけど、一度でもやろうと決めた事をこう簡単に否定されると、何て言うか、少しショックで、腹立たしくなった。日和には、やってみてダメだったとわかっても、私にはまだそれがわからない。それが本当にダメなのか、それとも少しは効果があるのか。自分の目で確かめたいんだ。「あっ、ちょ、美羽っ!!」日和の大声を振り切って、私は屋上に向かって走った。なぜ屋上なのかわからないけれど、私の足は勝手に屋上に向かっていたんだ。重たい鉄のドアを開けると、今日も爽やかな空気に包まれた。昼休みにもなると、屋上にはお弁当を広げて楽しげに話をしている人たちでにぎわっていた。こんなにぎやかな場所にレオくんがいるはずもなく、今度は階段を駆け下りた。屋上じゃなければ、あとは図書室しかない。図書室のある階の廊下は、屋上とは対照的にとても閑散としていた。図書室を利用する人の数が少ないのか、廊下を歩いている人も殆どいない。窓から図書室の中を覗いても、1人,2人椅子に座っているだけだった。静かに図書室のドアを開け、この前のように本棚の間を探す。もう足を踏んでしまわないように、慎重に、ゆっくりと。あった...。
Read more

第72話

視界の下に映った、靴。きっと、レオくんの足だ。そーっと、本棚から覗いてみると。この前と同じように、レオくんは本棚に寄りかかって寝息を立てていた。これだけ寝顔が似合う人は、きっといないだろう。私は、レオくんのそばに座り込んで、レオくんの目の前で手の平をヒラヒラと数回振った。その度に、レオくんの白い肌に、私の手の影が映る。何度か手を振った後、レオくんはうっすらと瞼を開けた。重そうな瞼を半分開いて、睨むように私に視線を向ける。「おはよ」私が言うと、レオくんはまた瞼を閉じた。「ここ、気持ちいいね。昼寝には最高の場所。レオくん、よくこんないい場所見つけたね」無言のレオくん。「お昼、もう食べたの?レオくん、細いから小食そうだよね。ちゃんと食べてる?いつもどこで食べてるの?」質問を繰り返しても、微動だにしない。ダメだダメだ。やけになったらダメ。そう思うんだけど、どうしても焦りが生じてしまう。頑張ろうと決めた。壮吾に励ましてもらった。日和に無理だと言われても、絶対にどうにかなると思った。私が、どうにかしようと思ったの。「あんたさ、いい加減ウザいよ」レオくんは、瞼を閉じたまま声だけを出した。「俺にどうしてほしいわけ?あんたらと仲良くヘラヘラ笑ってほしいの?」冷たい、声……。「つーか。あんたさ、ただ俺の過去を聞きたいだけなんだろ?」「………」ゆっくり瞼を開けたレオくん。漆黒の瞳には、全く光がない。とても冷たい視線。高鳴る鼓動で、全身が疼いた。「そんなに知りたいならさ、教えてやるよ」どこかに感情を置き忘れてきたかのような、冷たい声。金縛りにあったように身動きの取れなくなった私を、レオくんの、冷たく、鋭い視線がさしていった。
Read more

第73話

「あんたが望んでるような、面白いネタ、たくさんあるよ。どこから、聞きたい?ああ、全部か。簡単にまとめてほしいだろ? そうだな。俺の親父は、女を作って家から出て行った。それが5歳の時。家に残された母さんは仕事を辞めて鬱状態。家事も育児も放棄。それでも俺は母さんを守ってた。母さんにできないことを俺がやって、もう一度母さんに笑ってもらおうと頑張った。だけど、俺の気持ちは通じなかった。俺が小学校に上がったころ、俺は母さんに連れ出された。施設の前に置き去りにされて、どんなに母さんの帰りを待っても、帰ってこなかった。必要のない俺は、捨てられたんだよ」どう、反応したらいい?私が知りたかった、レオくんの過去――。言葉が、出せなかった。「どう? これで満足?俺の事かわいそうだと思った?」表情を一度も変えずに、一息に言ったレオくん。「これであんたの目的は果たしたんだろ?」微かに口元に笑みが浮かんだと思ったら、急に真顔に戻った。「もう、俺に近づくな」私を突き放す、冷たい声。踵を返したレオくんを、呼びとめられなかった。体に何十トンもの重しがのしかかったようだ。身動きが取れなくてただ、呆然と、本棚と睨めっこ。私、バカだった...…。考えが浅はかだった。レオくんの心の傷を癒したいと思っていたのに、こんな過去を聞かされると、実際何も言えなかった。簡単に考え過ぎてた。レオくんの傷の重みを、一度も考えた事がなかった。R・E計画、なんて、そんな単純なものじゃなかった。日和の言葉に苛立った私は、間違ってた。日和が、正しかったんだ。レオくん……。辛い過去を言葉にさせてしまって。軽い言葉をかけてしまって、ごめんなさい。知らず知らずのうちに、私の頬にはポロポロと涙が伝っていた。やりどころのない、自分への怒りが、体をグルグルと回っている。拳に力が入る。自分が、許せない。『もう、俺に近づくな』私には、レオくんのそばにいる資格なんて、ない...。「ああ、そうだ」自分への怒りで震える体を抑えていると、図書室の入り口でクルリとレオくんが振り返った。「この際だから言っとくけど。壮吾。 あいつ、女いるよ」......え?
Read more

第74話

とても爽やかな朝だった。リビングの窓からサラサラと風が流れ込み、レースを軽やかに揺らしている。キッチンから運ばれてくる、トーストやコーヒーの香り。慌ただしく朝食を準備するお母さんに、テーブルの上で新聞を広げるお父さん。如月家の、いつもと変わらない朝の光景。いつもと違うのは、ずしりと重たい、私の心だけ。「私、やっぱり朝ごはんいらない」ゆっくり椅子から立ち上がったつもりだったのに、椅子が後ろにずれる音があまりにも大きくて、私の鼓膜はビリビリと痛みを感じた。「いらない…… って、美羽っ!!」キッチンから聞こえるお母さんの声を振り切って、階段を駆け上った。あんなことになって、学校に行けるはずがない。一番傷つけたくない人を傷つけてしまったんだ。癒すどころか、日和に言われた通り、逆効果だった。それに...…。レオくんが去り際に言った、衝撃的な言葉。壮吾に、女がいる……?それはどういうこと?今までに彼女なんていなかったって、日和言ってたよね。あれは、日和の嘘?『でも、珍しい。今までに彼女を作ろうとしていなかった先輩が急に告白だなんて』確かに、日和はそう言った。『美羽だから、先輩も告ったんだろうね』一体、何?日和とレオくん――。どっちの言っている事が本当なの?私は頭まで布団をかぶり、レオくんの言葉をかき消そうとした。壮吾に、他に付き合っている人がいるわけない。そんなことは、絶対にあり得ない。
Read more

第75話

「美羽っ! どうしたのよ。一体、何があったの?」ドアの向こうから聞こえる、お母さんの大声。それに答えることなく、私は布団の中で頭を抱えた。そんなことはない。そんなことは、絶対ない。お母さんの声がしなくなってから、どのくらい時間が過ぎたんだろう。ドアの向こうはものすごく静かだ。布団をはいで体を起こすと、風邪でもないのに、全身が気だるさに襲われた。頭もズキズキと疼き、心に風穴ができたようにピューピュー鳴いている。だけど、どんなに大きな風穴が開こうとも、この罪悪感や、不安感は吸い込んではくれなかった。力の入らない瞼は、いつもの半分くらしか開かない。視界の狭まった瞳にふと映ったのは、ベット横の棚に置いてある赤い手帳だった。重みを感じなくなった手を、ふわりと伸ばし、中を開く。嫌でも目に留まるのは、一生懸命考えたはずの『R・E計画』。確かに、あの時は一生懸命で、これしかない、と自負していた。ハッ……。バカだな、あたし。乾いた笑いが出てくる。こんなもの……。何を一生懸命考えていたんだろ。今度は、涙...…。頬を伝い、『R・E計画』の文字を、滲ませていく。どうして……。守れると思った。きっと、笑ってもらえるんだって思った。あの夢は、正夢になるんだって、信じてた。バカだなと思いながらも、私は必死だった。レオくん…。私の気持ちは、届かなかった。
Read more

第76話

涙を流し過ぎたせいか、徐々に、腫れる瞼が重くなってきた。私って、薄情。こんな状態なのに、眠気に襲われるなんて。赤い手帳をベッド横の棚に放り投げ、バタンと体を倒した。意識が薄れ、暗闇に包まれる。そこは、私1人だけの世界。光も、風も、音も、何もない。目の前には道があるのか、それとも、崖っぷちなのか――。暗闇の中の私は、ただ、ぽつんと、そこに立っていた。『……う』あれ? ここは無音の世界だと思っていたのに、遠くで誰かの声がする。『み……う。……よ』それは、徐々に、はっきりと聞こえるようになった。この声を聞くと、とても心が落ち着く。私が病んでいる時、必ず優しく包み込んでくれる声だ。まどろみの中で聞こえた優しい声に、私の体はフワフワと宙を舞った。「美羽。 起きなさい」夢か現実かもわからないぼやけた視界に、私を覗きこむお母さんの姿が。重たい瞼を、ゆっくりと開く。「起きた? お友達が来てるわよ」.......友達?その言葉を聞いた瞬間、私は暗闇からはい上がって、一瞬で現実の世界へと戻ってきた。体を勢いよく起こすと、突然の事に驚いた心臓が、忙しなく動き始めた。「と、友達って… 女の子?」「そうよ。 とてもかわいい女の子」何を言ってるの? といった感じで、お母さんが答えた。「その子、1人?」「1人。あんた、どうしたのよ。会いたくない人でもいるわけ?」何も知らないお母さんは眉をひそめ、「部屋に案内するわよ?」と、ドアへ歩いて行った。びっくりした……。友達と聞いて、一瞬壮吾の事かと思った。今は会いたくない。っていうか、今は会えない。どんな顔をして会えばいいか、わからないから。お母さんが部屋から出て行ってすぐ、遠慮がちにドアから顔だけ覗かせる日和が現れた。
Read more

第77話

「美〜羽。差し入れ持って来たよ」そう言って、コンビニの袋を上に持ち上げ、私の部屋に入ってきた。私はベッドの上で、布団を弄ぶ。ホントの事を言うと、日和にも少し会いづらかった。あの時のあたしのイラつきは、きっと日和にも伝わっていたと思うから。「どうした、どうしたー?外はめっちゃいい天気なのに、ここだけ集中豪雨」悪戯に笑う日和が、私のベッドの前に腰かけた。するとすぐに、手に提げていたコンビニの袋から、甘そうなチョコケーキが出てきた。「あっ。 チョコケーキ、もしかして嫌いだった?」無言で日和に視線を落としていると、日和が慌てた感じで言ってきた。咄嗟に、ううんと首を横に振る。「よかった。ごめんね。コンビニのケーキで。今月のお小遣い少なくてさ。これが私の精一杯です」肩をすくめておどける日和。「元気の出ないときは、甘いものに限るでしょ?」そう言って、私にケーキとプラスチックのスプーンを差し出してきた。「何か、聞いた?」日和からケーキを受け取って、小声で聞く。わざわざ家まで来てくれたんだ。きっと、何か聞いたに違いない。「何も聞いてないよ」...え?「柊先輩も心配してたよ。何か知ってるか聞いてみたけど、何も知らないって言うし」“壮吾”...。今、壮吾の名前を聞くと、心臓が疼く。心配してた? 他に女がいるのに?信じたくないと思いながらも、疑っている自分がいる。「でも、まぁ。 何となく想像はつくけど?」チョコケーキの入ったプラスチックの蓋を開ける日和の視線が、棚の上に広げて置いてあった手帳に向いた。私の涙で、文字が滲んでいる。「レオくんの事でしょ?」「………」「どうだったの? “R・E計画”は」ケーキをパクっと口に運んだ日和は、目だけを私に向けてきた。どうだった?空回りどころか、自分の考えの、甘さに気づいた。「そっか……。やっぱり、難しいよね。一度傷の付いた心を、修復させるってさ」俯く私の表情で理解してくれたのか、日和は眉間にしわを寄せて話し出した。「私らが思ってるよりも、ずっとレオくんの傷って深いんだろうね。どんなにレオくんの事をわかろうって頑張ってもさ、実際、私達ってそんな経験ないわけじゃん?レオくんと同じ気持ちになって接しようとするのは無理だし、だからと言って、放置はできないし」そう、だよね……。私は、
Read more

第78話

「最初は、お兄ちゃん達とも仲良くなかったんだよ。だけど、あのお兄ちゃんと柊先輩だからさ、無理だとわかってるものに関しては、とことん追いかけちゃうんだよね。毎日毎日頑張って、レオくんを口説いて、今の関係になってるの」『それだけでもキセキでしょ?』と言葉を続けた日和は、『うん?待てよ?』と口に手を当てた。「バカ兄貴が口説き上手になったのは、レオくんのせい?」と、首を傾げていた。レオくんのせいで、口説き上手になったって。コウ先輩、本当に面白い。日和から受け取ったケーキに視線を落とすと、少しだけ笑みがこぼれた。「よしっ。 笑ったね」「...え?」「ほらっ、早く食べないと、チョコ溶けちゃうよ」そう言って、私の手の中で温められたケーキを、顎で指した。私はコクンと頷いて、『ありがとう』と、ケーキを一口食べた。口の中ですぐに溶け出した甘いチョコが、じわーっと心を和ませてくれた。「日和...」日和は、うん? と私に視線を向ける。「レオくんの事、詳しく教えてもらってもいいかな」『レオくんはね、今一人ぼっちなんだ。お父さんもお母さんもそれぞれ家を出て行ってさ。残されたレオくんは、施設に預けられたみたいなんだけど、すぐにおじいちゃんとおばあちゃんに引き取られることになったの。それで、うちの近くに引っ越してきて、お兄ちゃん達と仲良くなったってわけ。両親の事があってから、レオくん、人の事を信じられなくなったみたいでさ。裏切りって言うの?どんなに仲良くなっても、どんなに人を愛しても、いずれは、みんな自分から離れて行っちゃうと思ってるんじゃないかな。身内のおじいちゃん達ともあまり話をしなかったらしいしね。中学まではおじいちゃん達と暮らしてたんだけど、やっぱり1人になりたいって、高校に入ってから、マンションで一人暮らししてるの』日和は、悲しげに眉間にしわを寄せながら、詳しく話してくれた。レオくんの過去を聞くと、全身が疼く。体温が徐々に下がっていって、心臓が凍りついた。レオくんが表情を表に出さないのには、そんな理由があったんだ。出さないんじゃなくて、出せない……。人を信じられなくなった。裏切りを、2度と経験しないように。それって、すごく悲しいことだよね……。翌日。私は1枚の紙を片手に、とある場所に向かった。『美羽にいい事教えてあげる。レオくんね、
Read more

第79話

行ってみたら? と言われ、あまり気は乗らないままだったが、少しでも前に進めればと思い、空が茜色に染まる時刻に、レオくんのバイト先を訪れた。学校は、今日まで休んだんだ。もうちょっと、心の整理が必要な気がして。レオくんの事と、壮吾の事……。あ……。本屋の前まで来たのはいいけど、この後どうしよう。レオくんに会って、まず何て言ったらいい?この前はごめん?謝ったところで、許してもらえるような問題じゃない。心の傷を余計に深めちゃったんだから。私はさっきから、本屋の入り口で、地図の書かれた紙を片手に行ったり来たり。横を通り過ぎる人達が、不審な目であたしを見てくる。悩んでいるうちに、ゆらゆら揺らめく夕日はビルに沈んで見えなくなっていく。そのスピードがあまりにも早くて、気持ちが焦るばかりだった。「かわい子ちゃんゲット〜!!」突然、街中に響く大声がしたかと思ったら、ガバっと、後ろから誰かに抱きつかれた。抵抗することもできずに、男の腕にすっぽり納まる私。男の腕の中でもがいていると、次に聞こえてきたのは、心臓に悪い声だった。「おまえ、誰が抱きつけって言った?」……壮、吾。壮吾だ。私が、壮吾の声を聞き間違えるはずがない。「だって、こんなとこで美羽ちゃんを見つけたんだもん。体が勝手に動いちゃってさー」「てめー、いっぺん死ね」私に抱きついていたコウ先輩は、壮吾に一喝されて渋々私から体を離した。2人の正体がはっきりとわかったのに、私は振り向く事が出来なかった。「おまえ、学校休んで何してんだよ」心配と、イラつきがない交ぜになったような壮吾の声。心臓が暴れだして、体が震え始める。瞼を固く閉じると、そこに心臓があるように激しく脈打っていた。「おい、美羽」壮吾のゴツゴツした手が、私の肩に触れた。い、嫌だ。咄嗟に肩に力を入れて、壮吾を拒んだ。「おまえ、どうしたんだよ。何かあったのか」言えないよ……。聞きたいけど、こんな事聞けないじゃない。レオくんが言っていた事は本当なのかって。
Read more

第80話

「おいっ。おまえ、顔ぐらい見せろよ」グイっと、壮吾に肩を引かれる。表情をうまく作れなかった私は、きっと、果てしなく不細工だったに違いない。涙をこらえる為に眉間にしわは寄るし、唇を噛みしめながら無理に笑おうとしているし。ダメだよ、壮吾。今の私に近づかないで。気持ちが整理しきれてない今では、壮吾の前で笑うことはできないから……。壮吾達の方を向いてから、しばらくは2人とも言葉を発しなかった。どんな顔で私を見ているかは知らないけれど、今までと空気が変わったことだけは、容易にわかった。「おまえ……。何か言われた? レオに」お願い……。私を覗き込まないで。お願いだから。私の心を読まないで。真実を知るのが、怖い……。「おまえさ。レオの事を心配してくれんのはマジで嬉しいけど、無理すんなって、俺言ったよね。あいつの事でおまえがつぶれて学校来れんくなったら、シャレになんねーぞ」「そーだよ、美羽ちゃん。あいつのあの性格をわかった上で接しないと、美羽ちゃんの体もたないよ」私は、2人の言葉に曖昧に笑って頷いてみせた。だけど、すぐに消える笑顔。もう、堪えようと思っても、涙を操作することはできなかった。頬を伝う時間を少し遅らせただけで、この冷たい雫を、止める事はできなかった。必死で2人から顔をそむけて、肩が上下するのを抑える。走ってこの場から立ち去るとか、壮吾に真実を問い詰めるとか。そんな器用な事は、今の私にはできなかった。もう、本当に、何がどうなっているのか。何を信じたらいいのか。何を優先したらいいのか。わからない。わからないよ、壮吾。私は、壮吾に泣きついていいのかな。辛くて、つぶれそうで。本当は、声をあげて思い切り泣きたいんだって、壮吾に伝えていいのかな。気持ちがぐちゃぐちゃで、もう、本当に――…私は、どうしたら……。「喧嘩すんなら、他のとこでしろよ」
Read more
PREV
1
...
67891011
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status